インフルエンサーに投稿を依頼したものの、報酬をどの勘定科目で処理すればよいのか、支払いが翌月になる場合はいつ経費にするのか、提供した自社商品はどう記帳するのかと迷う経理・マーケティング担当者は少なくありません。インフルエンサー施策の会計処理は、報酬・商品提供・二次利用料・手数料といった費目ごとに勘定科目と計上時期の考え方が異なります。この記事では、発注企業の立場から、勘定科目の選び方、報酬の仕訳例、経費計上の時期、商品提供の処理、消費税の扱い、交際費との線引き、証憑管理までを2026年10月時点の国税庁の公表資料にもとづいて整理します。源泉徴収の詳しい判断は別記事に譲り、本記事では帳簿にどう載せるかに絞って解説します。

この記事の要点

  • インフルエンサー報酬は、不特定多数への宣伝を目的とする限り「広告宣伝費」で処理するのが基本です。成果報酬は「販売促進費」、プラットフォーム利用料は「支払手数料」に分けると管理しやすくなります。
  • 経費計上の時期は、支払った日ではなく投稿などの役務提供が完了した日が基準です。期末をまたぐ前払いは「前払費用」、未払いは「未払金」で調整します。
  • 自社商品を提供した場合は、売価ではなく原価で「広告宣伝費(見本品費)」に振り替えます。仕入れて渡す物品は課税仕入れとして扱うのが一般的です。
  • 消費税は相手がインボイス発行事業者かどうかで仕入税額控除の額が変わります。源泉徴収の詳細は別記事に分け、本記事では発注企業の勘定科目と仕訳に絞って整理します。
  • 税務の取り扱いは2026年10月時点の国税庁の公表資料にもとづく一般論です。個別の取引は顧問税理士など専門家に確認してください。

インフルエンサー報酬の会計処理とは

インフルエンサー報酬の会計処理とは、発注企業がインフルエンサーに支払う投稿報酬や提供した商品、関連する手数料を、適切な勘定科目・金額・時期で帳簿に記録する一連の作業です。施策そのものは広告やPRの一種ですが、支払先が個人であることが多く、商品提供や二次利用料など費目が混在しやすいため、通常の広告出稿よりも判断のポイントが多くなります。

発注企業が押さえるべき4つの論点

発注企業の会計処理で判断が必要になるのは、大きく分けて「勘定科目」「計上時期」「消費税」「源泉徴収」の4点です。勘定科目は費用の性質をどう表すか、計上時期はどの事業年度の費用にするか、消費税は仕入税額控除をいくら受けられるか、源泉徴収は所得税を預かる必要があるかという論点です。本記事では前の3点を中心に扱い、源泉徴収とインボイス制度の詳しい判断はインフルエンサー報酬の源泉徴収とインボイス対応の実務に役割を分けています。

通常の広告出稿と違う点

Web広告や雑誌広告は、媒体社や広告代理店という法人から請求書が届き、金額と掲載日がはっきりしているため、会計処理で迷うことはあまりありません。一方でインフルエンサー施策は、個人への直接払い、商品だけを送るギフティング、投稿後の成果に応じた報酬、写真や動画の二次利用料などが一つのキャンペーンに同居します。費目ごとに科目や計上時期の考え方が違うため、最初に「何に対する支払いか」を分解しておくことが正しい処理の出発点になります。

会計処理を誤ったときのリスク

勘定科目を誤ると、税務調査で交際費と認定されて損金算入が制限されたり、計上時期のずれを指摘されて追徴課税につながったりするおそれがあります。また、社内の予算管理でも、広告費と販促費が混ざると施策ごとの費用対効果が正しく測れなくなります。税務上の否認だけでなく、マーケティングの意思決定を誤らせる点でも、会計処理のルール化は重要です。

支払形態別の勘定科目の選び方

インフルエンサー関連の支出は、投稿報酬なら「広告宣伝費」、成果報酬なら「販売促進費」、仲介や利用料なら「支払手数料」に分けるのが実務上わかりやすい整理です。勘定科目の名称は法令で決まっているものではないため、社内で一度ルールを決めたら毎期継続して同じ科目を使うことが大切です。

費目と勘定科目の対応表

代表的な支払形態と勘定科目の対応を表にまとめました。会社によっては「広告宣伝費」の補助科目として「インフルエンサー」を設けるケースもあり、その方が施策全体の費用を集計しやすくなります。

支払いの内容主な勘定科目計上時期の目安注意点
投稿・動画制作の報酬広告宣伝費投稿完了日個人宛ての場合は源泉徴収の要否を確認
自社商品の無償提供広告宣伝費(見本品費)発送日売価ではなく原価で振り替える
購入した商品・体験の提供広告宣伝費提供日購入時に貯蔵品として管理する方法もある
売上連動の成果報酬販売促進費成果の確定日確定前の見込み額は計上しない
写真・動画の二次利用料広告宣伝費または支払手数料利用期間に応じて按分長期の一括払いは前払費用を検討
キャスティング会社の手数料支払手数料または広告宣伝費役務提供の完了日報酬部分と手数料部分を分けて記帳
マッチングプラットフォーム利用料支払手数料利用した月年払いは前払費用で月割り
接待目的の会食・贈答交際費支出日宣伝目的との区分を記録しておく

広告宣伝費と外注費の使い分け

投稿の企画から撮影・編集まで丸ごと任せる場合、「外注費」で処理する会社もあります。どちらを使っても法人税の計算上は同じ損金になりますが、外注費は製造原価やシステム開発など幅広い用途で使われるため、マーケティング費用を集計したい場合は広告宣伝費に寄せる方が管理しやすくなります。重要なのは科目名よりも、同じ種類の支出を毎期同じ科目で処理する継続性です。

代理店経由と直接契約で変わる点

広告代理店やキャスティング会社を経由する場合、請求書は法人から届くため、原則として源泉徴収は不要で、請求書の総額を広告宣伝費として計上すれば足ります。ただし、見積書や請求書で「インフルエンサー報酬」「ディレクション費」「手数料」が分かれている場合は、補助科目や摘要で分けて記帳しておくと、次回の発注時に費用構造を比較しやすくなります。見積書の項目の読み方はインフルエンサー起用の見積書の読み方と費用内訳の確認ポイントで詳しく解説しています。

報酬の仕訳の基本パターン

報酬の仕訳は、投稿完了時に「広告宣伝費/未払金」を計上し、支払時に「未払金/普通預金」で消し込む2段階が基本です。個人に支払う場合で源泉徴収が必要なときは、差し引いた所得税を「預り金」で処理します。

法人・事務所に支払う場合の仕訳

インフルエンサーが法人化している、または所属事務所が請求する場合は、源泉徴収の対象外となるのが一般的です。たとえば税抜10万円、消費税1万円の報酬で、投稿完了が3月20日、支払いが4月30日なら、次のように記帳します。

日付借方金額貸方金額
3月20日(投稿完了)広告宣伝費
仮払消費税
100,000円
10,000円
未払金110,000円
4月30日(支払い)未払金110,000円普通預金110,000円

上の例は税抜経理方式の場合です。税込経理方式を採用している会社では、仮払消費税を分けずに広告宣伝費110,000円で計上します。どちらの方式を採用しているかは会社ごとに決まっているため、経理担当者に確認してから仕訳ルールを作りましょう。

個人に支払い源泉徴収が必要な場合の仕訳

個人インフルエンサーへの報酬のうち、モデル報酬やデザイン料など所得税法第204条に列挙された性質を持つものは、源泉徴収が必要になる場合があります。請求書で報酬額と消費税額が明確に区分されていれば、税抜金額を対象に源泉徴収税額を計算できるとするのが国税庁の取り扱いです。税抜10万円、消費税1万円で源泉徴収税率10.21%の場合、源泉徴収税額は10,210円となり、仕訳は次のようになります。

日付借方金額貸方金額
投稿完了日広告宣伝費
仮払消費税
100,000円
10,000円
未払金110,000円
支払日未払金110,000円普通預金
預り金
99,790円
10,210円
翌月10日(納付)預り金10,210円普通預金10,210円

SNSに投稿するだけの報酬は源泉徴収の対象外と整理されることが多い一方、撮影モデルや原稿執筆を含む場合は対象になり得ます。どの報酬が対象になるかの判断基準は、前述の源泉徴収の解説記事を参照してください。本記事では、源泉徴収が必要と判断した場合の記帳方法だけを示しています。

振込手数料の扱い

振込手数料を発注企業が負担する場合は「支払手数料」で処理します。インフルエンサー側の負担として報酬から差し引く場合は、契約書や発注書にその旨を明記しておく必要があります。2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法のもとでは、合意のない手数料の差し引きは報酬の減額と見られるおそれがあるため、条件の事前合意が欠かせません。

経費計上の時期と期ずれの考え方

インフルエンサー報酬を経費計上する時期は、支払った日ではなく、投稿などの役務提供が完了し、支払うべき金額が確定した日です。法人税法の基本通達では、販売費や一般管理費は事業年度末までに債務が確定していることを損金算入の条件としており、この考え方を債務確定基準と呼びます。

債務確定基準の3つの条件

国税庁の法人税基本通達2-2-12では、債務の確定について「期末までに債務が成立していること」「給付の原因となる事実が発生していること」「金額を合理的に算定できること」の3つを満たす必要があるとしています。インフルエンサー施策に当てはめると、契約が締結され、投稿が公開され、報酬額が決まっている状態であれば、支払いが翌期でも当期の費用として計上できます。逆に、契約しただけで投稿が翌期になる場合は、当期の費用にはできません。

前払いが発生する場合の処理

着手金や前払いで報酬を支払い、投稿が翌期以降になる場合は、支払時に「前払金」または「前払費用」として資産に計上し、投稿完了時に広告宣伝費へ振り替えます。法人税基本通達2-2-14には、支払日から1年以内に提供を受ける役務の前払いを支払時の損金にできる短期前払費用の特例がありますが、これは家賃や保険料のように一定の契約に基づき継続的に提供される役務が対象です。単発の投稿報酬は特例の対象外と考えるのが一般的なので、安易に適用しないよう注意が必要です。支払いのタイミングそのものの設計についてはインフルエンサー施策の支払いサイト設計と資金繰りの考え方で整理しています。

複数回投稿・長期契約の按分

アンバサダー契約のように6か月間で毎月1本の投稿を依頼する場合は、投稿のたびに1本分の報酬を計上するのが実態に合った処理です。契約金を一括で受け取りたいという相手の希望で前払いする場合も、前払費用として計上したうえで、各月の投稿完了時に按分して費用化します。月額固定で期間中の発信全体に対価を払う契約なら、期間の経過に応じた月割りで計上しても合理的と考えられます。

期末前に確認したい計上時期のポイント

  • 期末までに公開された投稿の報酬は、未払いでも未払金で当期に計上していますか。
  • 期末時点で未投稿の案件に前払いしていないか、前払費用で資産計上していますか。
  • 投稿日を確認できる証跡として、投稿URLとスクリーンショットを保存していますか。
  • 成果報酬の見込み額を、成果確定前に費用計上していませんか。
  • 年払いのプラットフォーム利用料を、月割りで費用化していますか。

商品提供・ギフティングの会計処理

自社商品をインフルエンサーに無償で提供した場合は、商品の原価を「広告宣伝費」または「見本品費」に振り替えるのが基本です。売価で費用計上するのではなく、帳簿上の取得原価で処理する点が最初のポイントです。

自社商品を提供する場合の仕訳

原価3,000円、売価8,000円の自社商品を10人のインフルエンサーに発送した場合、費用として計上するのは原価の合計30,000円です。棚卸資産から払い出す形で、借方に広告宣伝費30,000円、貸方に商品30,000円と記帳します。期末に実地棚卸で在庫を数えてから売上原価を計算する会社では、払い出した数量を記録しておかないと、提供分が売上原価に紛れて広告費が過小になります。発送リストと出庫記録を経理と共有しておくことが大切です。

購入した商品や体験を提供する場合

他社から仕入れた商品や、飲食・宿泊などの体験を提供する場合は、購入時の支払額を広告宣伝費として計上します。キャンペーン用にまとめて購入し、期末時点で未発送の在庫が残っている場合は、「貯蔵品」として資産に計上し、発送した時点で広告宣伝費に振り替えるのが正確な処理です。少額で毎期おおむね一定量を購入している消耗品的なものは購入時に費用処理する方法も認められていますが、キャンペーン用の在庫がまとまって残る場合は貯蔵品で管理する方が安全です。

投稿義務付きの商品提供に関する注意点

商品を渡す見返りに投稿を義務づける場合、商品が投稿という役務の対価としての性質を持つことになります。この場合、インフルエンサー側では商品の価額が所得になり得るほか、発注企業側でも取引の評価が単純な無償提供と異なる可能性があります。国税庁の質疑応答事例などでも、物品の提供が役務の対価に当たるかどうかで課税関係が変わる考え方が示されているため、投稿義務付きの提供を継続的に行う場合は、契約書の書き方も含めて顧問税理士に確認しておくと安心です。商品提供型の施策の進め方はギフティング施策の進め方と投稿獲得率を上げるコツも参考になります。

消費税の扱いと仕入税額控除

インフルエンサー報酬の消費税は、課税仕入れとして仕入税額控除の対象になりますが、控除できる金額は相手が適格請求書発行事業者かどうかで変わります。発注企業にとっては、同じ報酬額でも相手によって実質負担が変わる点が最大のポイントです。

インボイス発行事業者との取引

相手が適格請求書発行事業者であれば、受け取った適格請求書に記載された消費税額を全額控除できます。適格請求書には登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの対価の額と消費税額などの記載が必要で、記載漏れがあると控除を受けられない場合があります。登録番号は国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで照会できるため、初回取引の前に確認し、取引先マスタに登録しておくと毎回の確認作業が省けます。

免税事業者との取引と経過措置

相手が免税事業者などでインボイスを受け取れない場合でも、経過措置により一定割合を仕入税額とみなして控除できます。控除割合は2026年9月30日までの80%から段階的に縮小する仕組みで、2026年10月以降の割合や期間は税制改正で見直されることがあるため、国税庁の最新の案内で確認してください。この場合、帳簿に経過措置の適用を受ける旨を記載する必要があります。免税事業者との価格交渉で注意すべき点は、源泉徴収の解説記事で詳しく扱っています。

商品提供・海外インフルエンサーの消費税

自社商品を広告宣伝のために無償で提供することは、対価を得て行う資産の譲渡ではないため、原則として消費税の課税対象外です。法人が無償で譲渡しても課税対象とみなされるのは、役員への贈与などに限られています。また、提供用に購入した商品の消費税は、課税仕入れとして控除の対象になるのが一般的です。海外在住のインフルエンサーに報酬を支払う場合は、役務提供の場所や内容によって国外取引として不課税になることや、非居住者への支払いとして20.42%の源泉徴収が必要になることがあるため、通常の国内取引とは別に専門家へ確認しましょう。

消費税区分を間違えやすい3つのケース

  • 海外在住者への報酬を課税仕入れとして処理してしまうケース
  • 免税事業者への報酬を、経過措置の記載なしで全額控除してしまうケース
  • 自社商品の無償提供を、売価で課税売上として計上してしまうケース

二次利用料・成果報酬・プラットフォーム利用料の処理

投稿報酬以外の付随費用は、二次利用料は利用期間に応じて、成果報酬は成果が確定した時点で、プラットフォーム利用料は利用した月ごとに計上するのが原則です。費目ごとに計上のタイミングが違うため、請求書を受け取った段階で内訳を分けて記帳しておくことが重要です。

写真・動画の二次利用料

インフルエンサーが制作した写真や動画を自社の広告やWebサイトで使う二次利用料は、利用期間が1年以内なら支払時またはその期間で費用計上するのが一般的です。3年間の利用権を一括で支払うような場合は、前払費用または長期前払費用として資産計上し、期間に応じて按分する方法が実態に合っています。著作権そのものを買い取る契約の場合は無形の資産としての処理が論点になることもあるため、金額が大きい場合は契約内容を税理士に共有しておきましょう。権利範囲の決め方はインフルエンサー契約書の作り方と必須チェック項目で解説しています。

売上連動の成果報酬

アフィリエイトのように販売件数や売上に応じて報酬を支払う場合は、成果が確定した時点で販売促進費として計上します。返品期間が過ぎてから成果を確定させる契約なら、確定前の見込み額は費用にできません。期末に未確定の成果がある場合は、注記や管理資料で把握するにとどめ、確定した月に計上するのが債務確定基準に沿った処理です。成果報酬型の料率や設計については成果報酬型インフルエンサー施策の仕組みと料率相場・設計の実務で詳しく紹介しています。

マッチングプラットフォームの利用料

インフルエンサーを探して依頼するプラットフォームの月額利用料は、支払手数料または広告宣伝費として利用した月に計上します。たとえばBloomの料金は2026年10月時点で初期費用0円・月額3万円(税別)からで、月払いなら毎月の請求額をそのまま費用にできます。年額で前払いする契約の場合は、支払時に前払費用として計上し、毎月12分の1ずつ費用に振り替えます。利用料とインフルエンサーへの報酬を同じ科目で処理しても問題はありませんが、補助科目で分けておくと、1件あたりの獲得単価を計算しやすくなります。

広告宣伝費と交際費の線引き

インフルエンサー関連の支出は、不特定多数の消費者への宣伝効果を目的とする限り広告宣伝費になり、特定の相手との関係づくりを目的とする接待や贈答は交際費になります。交際費は損金算入に上限があるため、区分を誤ると法人税の負担が増える点に注意が必要です。

交際費になりやすい支出

租税特別措置法第61条の4では、交際費等を「得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のための支出」と定めています。投稿の依頼と無関係に、関係を深めるためだけにインフルエンサーを高級店で接待したり、投稿義務のない高額な贈り物をしたりする場合は、交際費と判断される可能性があります。一方、租税特別措置法関係通達61の4(1)-9では、不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図する支出は交際費等に含まれない旨が示されており、PR投稿を前提とした報酬や商品提供は広告宣伝費として扱うのが一般的です。

イベント招待や会食の扱い

新商品の体験会にインフルエンサーを招待し、会場で商品を体験してもらって投稿を依頼する場合、会場費や体験にかかる飲食費は広告宣伝費として整理しやすい支出です。ただし、体験会のあとに別途行う懇親会の飲食費は、交際費に該当する可能性があります。1人あたり1万円以下の飲食費は一定の書類保存を条件に交際費から除外できる規定が2024年4月以降の支出から適用されているため、参加者名と人数、目的を記録しておきましょう。

判断に迷うときの記録の残し方

広告宣伝費か交際費かの判断は、支出の目的と実態で決まります。税務調査で説明できるよう、依頼書や契約書に投稿の内容と回数を明記し、実際の投稿URLを保存しておくことが最も有効な対策です。投稿義務がなく実態として関係づくりに近い支出は、最初から交際費として処理する方が後から否認されるリスクを抑えられます。中小法人には交際費の定額控除限度額として年800万円の枠があるため、資本金1億円以下の会社では影響が限定的な場合もありますが、区分を明確にしておくこと自体が重要です。

証憑管理と社内フロー

インフルエンサー施策の会計処理を正確に続けるには、契約書・請求書・投稿の証跡の3点を案件ごとにそろえて保存する社内フローが欠かせません。担当者がマーケティング部門で、記帳が経理部門という分業体制では、情報の受け渡しを仕組み化することが処理の精度を左右します。

保存しておきたい証憑

案件ごとに保存しておきたいのは、発注書または契約書、見積書、請求書または適格請求書、投稿URLとスクリーンショット、商品の発送記録、振込の控えです。メールやSNSのメッセージで受け取った請求書は電子取引のデータにあたり、電子帳簿保存法により2024年1月以降は原則として電子データのまま保存する必要があります。紙に印刷しただけの保存は認められない場合があるため、受け取った形式のまま検索できる状態で保管しましょう。

マーケティング部門と経理部門の役割分担

発注担当者は、契約時に相手の名称・法人か個人か・インボイス登録番号・支払条件を経理に共有し、投稿が公開されたら投稿日とURLを報告します。経理は、その情報をもとに勘定科目と計上日を決め、源泉徴収が必要な場合は預り金の管理と翌月10日までの納付を行います。月末に案件一覧と請求書を突き合わせる仕組みにしておくと、期末の計上漏れを防げます。

案件管理表に入れておきたい項目

スプレッドシートなどで案件管理表を作る場合は、案件名、インフルエンサー名、法人か個人か、登録番号、契約日、投稿予定日、投稿完了日、報酬額、源泉徴収の有無、提供商品と原価、支払日、勘定科目の列を用意すると、そのまま仕訳の根拠資料として使えます。施策の効果測定の数値も同じ表に並べておけば、費用と成果を一目で比較でき、次の予算計画の材料にもなります。

発注企業の会計処理チェックリスト

インフルエンサー施策の会計処理は、発注前・投稿後・期末の3つのタイミングで確認項目を決めておくと漏れなく運用できます。ここでは、本記事で整理した論点を発注企業向けのチェックリストにまとめます。

発注前と投稿後に確認すること

発注前には、支払先の区分とインボイス登録の有無、報酬・商品提供・二次利用料・手数料の内訳、源泉徴収の要否、支払条件を確認します。投稿後には、投稿日と投稿内容を記録し、その日付で費用を計上します。商品提供がある場合は、発送数と原価を経理に共有し、広告宣伝費への振り替えを行います。

期末に確認すること

期末には、投稿済みで未払いの案件を未払金で計上し、未投稿の前払いを前払費用として資産に残します。キャンペーン用の未発送在庫は貯蔵品として計上し、成果報酬は確定分だけを計上します。広告宣伝費と交際費の区分に迷う支出は、根拠資料とあわせて税理士に相談しておくと、申告前に判断を固められます。

インフルエンサー報酬の会計処理チェックリスト

  • 支払先が法人か個人か、インボイス登録番号の有無を確認しましたか。
  • 報酬・商品提供・二次利用料・手数料を分けて記帳していますか。
  • 投稿完了日を基準に、正しい事業年度で費用計上していますか。
  • 自社商品の提供を、原価で広告宣伝費に振り替えていますか。
  • 源泉徴収が必要な報酬について、預り金の納付期限を管理していますか。
  • 交際費になり得る会食や贈答を、広告宣伝費と分けて記録していますか。
  • 電子で受け取った請求書を、電子データのまま保存していますか。

施策の運用と会計を両立させるために

インフルエンサー施策を継続するほど、案件数と支払先が増え、会計処理の負担も大きくなります。最初に勘定科目と計上時期のルールを決め、案件管理表と証憑の保存方法を標準化しておけば、担当者が変わっても同じ品質で処理を続けられます。本記事の内容は2026年10月時点の国税庁の公表資料などにもとづく一般的な考え方であり、個別の取引の判断は顧問税理士などの専門家に確認してください。

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