インフルエンサー施策では、投稿が終わった後に「あの投稿は広告として正しく表示されていたのか」「報酬の源泉徴収は適切だったのか」と問われる場面があります。消費者庁の調査、税務調査、社内監査、消費者や取引先からの問い合わせのいずれでも、答えの根拠になるのは施策中に残した記録です。ところが、インフルエンサーとのやり取りはDMやチャットで進むことが多く、気づいたときには証跡が残っていないことも少なくありません。この記事では、インフルエンサー施策の記録保存と監査対応について、ステマ規制・契約・支払いの3領域で何を残すか、保存期間をどう決めるか、どう保管し、問い合わせにどう対応するかを、2026年10月時点の法令と公的機関の情報をもとに発注企業の実務目線で整理しました。

この記事の要点

  • インフルエンサー施策の記録保存とは、ステマ規制・契約・支払いの3領域について「誰に・何を・いくらで依頼し・どう表示されたか」を後から証明できる状態で残しておくことです。
  • 保存期間の目安は、契約書・請求書・領収書などの取引書類が法人税法上の原則7年、会社法上の会計帳簿と重要資料が10年です。ステマ規制の証跡には法定の保存期間がないため、社内規程で取引書類と同じ7年にそろえる運用が管理しやすくなります。
  • ステマ規制の証跡は、依頼文・指示書・投稿前の確認記録・公開時のスクリーンショット(PR表記の位置が分かるもの)の4点をセットで残します。
  • 電子でやり取りした請求書や契約書は、電子帳簿保存法により電子データのまま、検索できる形で保存する必要があります。
  • 監査や問い合わせに備えるには、案件IDで全記録を紐づけ、担当者が不在でも30分以内に一式を取り出せる状態を目標にします。

インフルエンサー施策の記録保存とは

インフルエンサー施策の記録保存とは、施策の企画から依頼、投稿、支払いまでの各段階で発生した書類やデータを、行政・税務・社内監査・取引先からの問い合わせに対して根拠として示せる形で残しておく業務のことです。広告主には、景品表示法のステマ規制に沿った表示をさせたこと、契約どおりに発注したこと、報酬を正しく処理したことを、後から説明する責任があります。

なぜ今、記録保存が重要になっているのか

2023年10月1日に景品表示法のいわゆるステマ規制(一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示の告示)が施行され、広告であることを隠した投稿は広告主の不当表示として扱われるようになりました。消費者庁は2024年6月にステマ規制による初めての措置命令を医療法人に対して出しており、実際に処分が行われる段階に入っています。処分を受けないためには表示を正しくすることが第一ですが、調査を受けた際に「どう依頼し、どう確認したか」を記録で示せるかどうかが、説明の説得力を大きく左右します。

あわせて、2024年1月からは電子帳簿保存法により、電子で受け取った請求書などを電子データのまま保存することが義務になりました。2024年11月にはフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)も施行され、個人のインフルエンサーに発注する際の取引条件の明示が求められています。施策そのものは小さくても、記録の保存に関わる法令は確実に増えています。

情報共有ルールや投稿保全との違い

記録保存は、施策中に関係者へ情報を渡すための「情報共有ルール」や、投稿が消えたときに備える「投稿保全」とは目的が異なります。情報共有ルールは施策を円滑に進めるための社内外の運用であり、詳しくはインフルエンサー施策の情報管理と社内外の共有ルールで整理しています。投稿保全はアカウント凍結や削除に備える取り組みで、アカウント凍結・削除対策と投稿保全の実務が詳しい内容です。この記事では、施策が終わった後に「証明する」ための記録に絞って解説します。

この記事で扱う3つの領域

本記事では、ステマ規制への対応記録、契約と発注の記録、支払いと税務の記録の3領域を扱います。それぞれ根拠となる法令と問い合わせてくる相手が異なるため、保存すべき書類と期間も違います。以降のセクションでは、領域ごとに残す記録、保存期間、保存方法、監査時の取り出し方を順に説明します。

記録の提出を求められる主な場面

記録の提出を求められる場面は、行政による調査、税務調査、社内監査と取引先からの問い合わせの3つに大きく分かれます。それぞれ求められる記録と回答までの期限が異なるため、場面ごとに準備しておくことが大切です。

消費者庁などによる景品表示法の調査

景品表示法に関する調査では、問題となった投稿が広告主の表示に当たるかどうか、つまり広告主が投稿内容の決定に関与したかどうかが確認されます。依頼の有無、指示した内容、提供した商品や報酬、表示の確認方法などについて資料の提出や説明を求められることがあります。また、投稿内容に効果や性能をうたう表現が含まれる場合は、不実証広告規制に基づいて表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求められる可能性があります。消費者庁の運用では、この資料は原則として求めを受けた日から15日以内に提出する必要があるとされているため、平時から資料をそろえておくことが欠かせません。

税務調査

税務調査では、インフルエンサーへの報酬や商品提供が適正に経費処理されているか、源泉徴収が必要な支払いで正しく徴収・納付されているかが確認されます。契約書、発注書、請求書、振込記録、源泉徴収の記録、支払調書の控えが主な確認対象です。商品を無償で提供するギフティングも、内容によっては広告宣伝費や交際費の区分が問われるため、提供した商品と目的を説明できる記録が必要になります。

社内監査・取引先や消費者からの問い合わせ

上場準備や内部統制の整備を進めている企業では、社内監査や監査法人から広告費の発注プロセスについて証跡の提示を求められます。承認者、発注金額、発注先の選定理由が記録で追えることが求められます。また、消費者や競合企業から「この投稿は広告ではないのか」という問い合わせや指摘が届くこともあり、その際も依頼の有無と表示の状況を即座に確認できる記録が役立ちます。

場面主な確認事項中心となる記録対応の緊急度
景品表示法の調査広告主の関与、PR表記、表現の根拠依頼文・指示書・投稿スクリーンショット・根拠資料高い(根拠資料は原則15日以内)
税務調査経費の妥当性、源泉徴収、インボイス契約書・請求書・振込記録・支払調書控え中程度(調査日程に合わせて準備)
社内監査承認手続き、発注金額、選定理由稟議・承認記録・見積書・選定記録中程度(監査計画に沿って準備)
外部からの問い合わせ広告かどうか、表示の状況依頼記録・投稿スクリーンショット高い(初回回答は数日以内が望ましい)

保存すべき記録の全体像

保存すべき記録は、選定・依頼・制作・投稿・支払いの5つのフェーズごとに整理すると漏れがなくなります。フェーズごとに誰が記録を作るのかを決めておき、案件が終わった時点で一式がそろっている状態を目指します。

フェーズ別の記録一覧

次の表は、インフルエンサー施策の1案件で発生する主な記録をフェーズ別にまとめたものです。すべてを紙で残す必要はなく、メールやチャット、管理画面のデータも記録に含まれます。大切なのは、後から第三者が見ても内容と日付が分かる形で残っていることです。

フェーズ残す記録主な目的作成・保管の担当
選定候補リスト、選定理由、見積書、稟議・承認記録社内監査、発注プロセスの証明施策担当
依頼依頼文、契約書・発注書、取引条件の明示記録契約内容とステマ規制上の関与の証明施策担当・法務
制作指示書(ガイドライン)、投稿前の確認記録、修正依頼の履歴表示内容への関与範囲とPR表記指示の証明施策担当
投稿公開時のスクリーンショット・録画、投稿URL、成果レポート実際の表示状況の証明施策担当
支払い請求書、振込記録、源泉徴収の記録、支払調書控え、商品提供の記録税務処理の証明経理

メールやチャットのやり取りも記録になる

インフルエンサーとの連絡は、メールだけでなくInstagramのDMやLINE、マッチングサービスのメッセージ機能で行われることが多くあります。依頼内容の変更や表現の修正指示がDMだけで行われていると、担当者が異動したりアカウントを手放したりした時点で記録が失われます。重要な合意はメールや契約書に転記するか、やり取りの画面を定期的に書き出して案件フォルダに保存するルールにしてください。

残さなくてよいもの・残しすぎに注意するもの

記録は多ければよいわけではありません。インフルエンサーの住所、口座番号、本名などの個人情報は、支払いや発送に必要な期間を過ぎたら削除を検討すべき情報です。個人情報保護法では、利用する必要がなくなった個人データは遅滞なく消去するよう努めることとされています。証跡として必要な取引記録と、目的を終えたら消すべき個人情報を分けて管理することが、記録保存の設計で見落とされがちなポイントです。

ステマ規制対応の証跡の残し方

ステマ規制対応の証跡は、依頼文、指示書、投稿前の確認記録、公開時のスクリーンショットの4点をセットで残すのが基本です。この4点がそろっていれば、広告であることを明示するよう依頼し、確認し、実際に表示されたことを一連の流れとして説明できます。

依頼文と指示書にPR表記の指示を明記する

まず、依頼文や指示書の中に「投稿には#PRまたは#プロモーションなど広告であることが分かる表示を、本文の冒頭など見やすい位置に入れてください」と明記しておきます。口頭やDMで伝えただけでは、指示したことを後から証明できません。表記の具体的な書き方や媒体別の注意点はステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドで解説していますので、指示書のひな形を作る際に参考にしてください。

投稿前の確認記録を残す

投稿前に下書きを確認する運用をしている場合は、確認した日時、確認者、確認した内容、修正を依頼した箇所を記録します。特に、効果をうたう表現を削除してもらった、PR表記の位置を修正してもらったといった履歴は、広告主として適切に管理していたことを示す材料になります。一方で、下書きを確認して内容に深く関与するほど、その投稿は広告主の表示としての性格が強まります。確認の記録は、表示内容への責任を自覚したうえで残すものだと考えてください。

公開時のスクリーンショットと録画

投稿が公開されたら、できるだけ当日中にスクリーンショットを保存します。画像には、アカウント名、投稿日時、本文の冒頭、PR表記、投稿URLが写るようにしてください。リールやショート動画は、PR表記がテロップや冒頭の字幕に入っている場合があるため、画面録画で最初から最後まで残しておくと確実です。ストーリーズは24時間で見られなくなるため、公開されたその日に保存する運用を必ず決めておきます。

ステマ規制の証跡セット(1投稿あたり)

  • 依頼文または契約書(PR表記を求める条項・文言を含むもの)
  • 指示書・ガイドライン(表記の位置や禁止表現を記載したもの)
  • 投稿前の確認記録(確認日時・確認者・修正依頼の内容)
  • 公開時のスクリーンショットまたは画面録画(アカウント名・日時・PR表記・URLが分かるもの)
  • 表現の裏付けとなる根拠資料(効果・性能をうたう場合のみ)

契約・発注の証跡の残し方

契約・発注の証跡で最も重要なのは、発注した時点の取引条件を、日付が分かる書面または電子データで残すことです。口頭やDMだけで条件を決めると、報酬額、投稿内容、二次利用の範囲などをめぐって認識の違いが生じたときに、どちらの主張が正しいかを示せません。

フリーランス法による取引条件の明示

従業員を使用する事業者が、従業員を使用しない個人のインフルエンサーに業務を委託する場合、フリーランス法により、業務の内容、報酬の額、支払期日などの取引条件を書面または電磁的方法で明示する必要があります。報酬の支払期日は、成果物を受け取った日から60日以内のできるだけ短い期間内で定めることとされています。明示した内容は、メールの送信記録や契約書の締結記録として保存しておくと、条件を明示したことを後から示せます。対象になるかどうかは発注先の形態によって異なるため、詳細は公正取引委員会や厚生労働省の公表資料で確認してください。

契約書・発注書で残すべき項目

契約書や発注書には、投稿の内容と本数、投稿期間、報酬額と支払条件、PR表記の義務、二次利用の範囲と期間、投稿の削除や修正に関する取り決めを記載します。契約書の作り方そのものはインフルエンサー契約書の作り方と必須チェック項目で解説していますが、記録保存の観点では「締結日」「締結方法」「最新版がどれか」が分かることが重要です。条件を変更した場合は、変更合意書や変更内容を確認したメールも一緒に保存してください。

社内の承認記録と選定理由

社内監査では、誰がいつ発注を承認したかと、なぜそのインフルエンサーを選んだかが確認されます。稟議システムの承認履歴、見積書、比較した候補のリスト、選定理由のメモを案件フォルダに残しておきます。特に、取引先の関係者や役員の知人に発注した場合は、選定の公平性を説明できる記録が求められやすいため注意が必要です。

依頼の形態記録の残りやすさ注意点
契約書を締結高い変更時の合意書も保存し、最新版を明確にします
発注書と請書高い発注書の控えと請書の受領記録をセットで残します
メールで条件を提示中程度条件の全項目が本文に書かれているか確認し、承諾の返信も保存します
マッチングサービス経由中程度から高いサービス上のメッセージや案件条件を定期的に書き出して保存します
SNSのDMのみ低いアカウントの削除で消えるため、重要な合意は必ず別の手段に転記します

支払い・税務の証跡の残し方

支払い・税務の証跡は、請求書、振込記録、源泉徴収の記録、支払調書の控えを、取引ごとに紐づけて保存することが基本です。インフルエンサーへの支払いは個人宛てが多く、法人間の取引にはない源泉徴収やインボイスの論点が加わるため、経理担当と施策担当が同じ案件IDで記録を管理しておくと調査時に慌てずに済みます。

源泉徴収と支払調書の記録

個人のインフルエンサーに支払う報酬が、所得税法上の源泉徴収の対象となる報酬に当たる場合は、支払額の10.21%(同一人に対する1回の支払いが100万円を超える部分は20.42%)を源泉徴収して納付します。国税庁の案内では、同じ人への年間の支払額が5万円を超える場合は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を税務署に提出する必要があります。源泉徴収した金額、納付した日、支払調書の控えを残しておくことで、税務調査の際に処理の正しさを説明できます。源泉徴収の要否の判断や計算例はインフルエンサー報酬の源泉徴収とインボイス対応の実務で詳しく扱っています。

インボイスと電子帳簿保存法への対応

消費税の仕入税額控除を受けるには、インフルエンサーから受け取った適格請求書(インボイス)を保存する必要があります。登録番号のない免税事業者から請求書を受け取る場合は、経過措置の適用割合が時期によって変わるため、国税庁の最新情報を確認したうえで処理してください。また、メールやPDF、サービスの管理画面で受け取った請求書は電子取引に当たるため、電子帳簿保存法により電子データのまま保存する必要があります。印刷して紙で保存するだけでは要件を満たしません。

商品提供(ギフティング)の記録

報酬を支払わずに商品だけを提供するギフティングでも、提供した商品名、数量、金額、提供日、提供先、提供の目的を記録します。商品の提供は会計上の処理が必要になるうえ、ステマ規制の観点でも、商品を提供して投稿を依頼した場合は広告主の表示に当たり得るため、依頼の有無を示す記録として重要です。発送の記録や配送伝票の控えも、提供した事実を示す資料として保存しておくと安心です。

経理と施策担当で決めておくこと

  • 案件IDの付け方と、請求書・振込記録への記載方法
  • 源泉徴収の要否を判断する担当者と判断の記録方法
  • 電子で受け取った請求書の保存先と、検索に使うファイル名の付け方
  • ギフティングで提供した商品の記録方法と会計処理の区分

記録の保存期間の決め方

保存期間は、法令で期間が決まっている記録はその期間に従い、法定の期間がない記録は社内規程で期間を決めるという二段構えで考えます。2026年10月時点で、ステマ規制の証跡そのものについて法令で定められた保存期間はありません。

法令で期間が決まっている記録

国税庁の案内では、法人の場合、帳簿と、取引に関して作成・受領した契約書、請求書、領収書などの書類は、原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要があります。欠損金が生じた事業年度については10年間の保存が必要です。また、会社法では、会計帳簿とその事業に関する重要な資料を帳簿の閉鎖の時から10年間保存することとされています。インボイスの保存も、消費税法により原則7年間が必要です。

法定期間がない記録は社内規程で決める

依頼文、指示書、投稿前の確認記録、投稿のスクリーンショットといったステマ規制の証跡には、法定の保存期間がありません。ただし、消費者庁の「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」では、表示の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ることが求められています。実務では、同じ案件の契約書や請求書と合わせて7年間保存すると決めておくと、案件フォルダごとにまとめて管理でき、廃棄のタイミングも一本化できます。少なくとも、投稿が公開されている期間と、二次利用している期間の終了後一定期間は保存してください。

記録の種類主な根拠保存期間の目安(2026年10月時点)
契約書・発注書・請求書・領収書法人税法(国税庁)原則7年(欠損金が生じた年度は10年)
電子で受け取った請求書・契約データ電子帳簿保存法(国税庁)原則7年・電子データのまま保存
適格請求書(インボイス)消費税法(国税庁)原則7年
会計帳簿・事業に関する重要な資料会社法10年
源泉徴収・支払調書の控え所得税法(国税庁)帳簿書類と同じく7年を目安
ステマ規制の証跡(依頼文・指示書・スクリーンショット)法定期間なし(消費者庁の管理措置指針を参考)社内規程で設定・7年にそろえる運用が管理しやすい
インフルエンサーの個人情報(住所・口座など)個人情報保護法(個人情報保護委員会)利用目的の達成後は遅滞なく消去に努める

保存期間の起算点をそろえる

保存期間を定めても、いつから数えるかが曖昧だと廃棄の判断ができません。税務上の書類は確定申告書の提出期限の翌日から数えるため、社内規程でも「案件が属する事業年度の確定申告期限の翌日から7年」のように起算点を明記しておくと、案件フォルダを年度単位でまとめて管理できます。二次利用の期間が長い案件は、二次利用の終了日を基準に延長するといった例外も規程に書いておくと迷いがなくなります。なお、ここで示した期間は一般的な目安であり、個別の事情に応じた判断は税理士や弁護士などの専門家に確認してください。

保存方法と管理体制の作り方

保存方法の基本は、案件IDを軸にしたフォルダ構成と、誰でも同じ手順で探せる命名規則を決めることです。記録があっても見つけられなければ、監査や調査の場面では存在しないのと同じになってしまいます。

案件IDとフォルダ構成を統一する

案件ごとに「年度-連番」などの案件IDを付け、選定・依頼・制作・投稿・支払いのサブフォルダを用意します。ファイル名は「案件ID_日付_書類の種類_相手先」のように統一し、電子帳簿保存法で求められる取引年月日・取引金額・取引先による検索にも対応できるようにします。経理システムに請求書を登録する際も同じ案件IDを入力しておくと、施策側の記録と会計データを突き合わせやすくなります。

改ざん防止とアクセス権限

電子帳簿保存法では、電子取引データの真実性を確保するため、タイムスタンプの付与、訂正や削除の履歴が残るシステムの利用、訂正削除の防止に関する事務処理規程の整備のいずれかの措置が求められます。中小企業では事務処理規程を定めて運用する方法が取り入れやすい選択肢です。あわせて、案件フォルダの編集権限は担当者と管理者に限定し、閲覧権限と分けておくと、意図しない上書きや削除を防げます。

担当者の異動・退職に備える

インフルエンサー施策は担当者個人のメールやSNSアカウントで進められがちで、担当者の異動や退職で記録が失われる事故が起こりやすい業務です。施策用の共有メールアドレスや会社管理のアカウントを使う、案件終了時に記録一式がそろっているかを上長が確認する、といったルールを決めておきます。案件の終了を記録保存の完了と結びつけることで、後から慌てて探す事態を防げます。

監査・問い合わせへの対応手順

監査や問い合わせに対応する際は、記録の特定、事実の確認、回答方針の決定、回答と記録の4段階で進めます。手順を事前に決めておけば、担当者が不在でも対応が止まらず、場当たり的な回答で状況を悪化させることも防げます。

初動で確認すること

問い合わせや調査の連絡を受けたら、まず対象となる投稿や取引を特定し、案件IDから記録一式を取り出します。依頼の有無、PR表記の指示内容、公開時の表示状況、支払いの状況を確認し、事実関係を時系列で整理します。この段階で記録に欠けがあることが分かった場合は、インフルエンサー本人に確認する、送信済みメールを検索するといった方法で補い、補った経緯も記録しておきます。

回答方針を決めて記録する

行政機関からの調査や、法的な判断を伴う問い合わせの場合は、回答する前に法務担当や弁護士に相談することをおすすめします。事実と異なる説明や、記録で裏付けられない説明をすると、後から訂正が必要になり信頼を損ないます。回答した内容、回答日、回答者、提出した資料の一覧は、それ自体が新たな記録になるため、案件フォルダに保存してください。

表示に問題が見つかった場合の対応

確認の結果、PR表記が抜けていた、表記が見えにくい位置にあったといった問題が見つかった場合は、インフルエンサーに速やかに修正を依頼します。修正を依頼した日時、修正後の投稿のスクリーンショット、修正の完了を確認した記録を残しておくと、問題を把握した後に適切に対応したことを示せます。同様の問題が他の案件で起きていないかも合わせて点検し、指示書のひな形や確認手順を見直すきっかけにしてください。

段階実施すること目安の時間
1. 記録の特定対象投稿・取引の特定、案件フォルダの取り出し当日中(理想は30分以内)
2. 事実の確認依頼・指示・表示・支払いの時系列整理、欠けている記録の補完1〜3営業日
3. 回答方針の決定法務担当・専門家への相談、回答内容の承認案件の重さに応じて設定
4. 回答と記録回答・資料提出、回答内容と提出資料の保存期限内に実施

よくある失敗と記録保存チェックリスト

記録保存でよくある失敗は、DMだけで合意して記録が残らない、ストーリーズや期間限定の投稿を保存し忘れる、記録が担当者の手元に分散している、の3つです。いずれも案件開始時にルールを決めておけば防げる失敗です。

記録が残らない・見つからない失敗

最も多いのは、報酬額や投稿内容の変更をSNSのDMだけで合意し、インフルエンサーがアカウントを削除したことで記録が消えてしまうケースです。また、ストーリーズや期間限定の投稿は、公開期間が終わると見られなくなるため、保存し忘れるとPR表記の状況を証明できなくなります。記録は残っていても、担当者の個人フォルダやメールに分散していて、監査の場面で集めるのに何日もかかるという失敗もよく見られます。

残しすぎ・消し忘れの失敗

反対に、インフルエンサーの住所や口座情報を施策終了後も表計算ファイルに残し続け、社内で広く共有してしまうケースもあります。証跡として必要な取引記録と、目的を終えた個人情報を分けて管理し、保存期間を過ぎた記録は規程に沿って廃棄することも記録保存の一部です。廃棄した日と対象も記録しておくと、管理の状況を説明しやすくなります。

インフルエンサー施策の記録保存チェックリスト

  • 案件IDを付け、選定・依頼・制作・投稿・支払いのフォルダを用意しましたか。
  • 依頼文・指示書にPR表記の指示を明記し、保存しましたか。
  • 取引条件を書面または電子データで明示し、送信記録を保存しましたか。
  • 投稿前の確認記録と修正依頼の履歴を残しましたか。
  • 公開当日にスクリーンショットや画面録画を保存しましたか(ストーリーズは特に注意)。
  • 請求書を電子データのまま、検索できるファイル名で保存しましたか。
  • 源泉徴収の要否を判断し、徴収・納付の記録と支払調書の控えを残しましたか。
  • 保存期間と起算点を社内規程に定め、個人情報の消去時期も決めましたか。

Bloomで依頼の記録を一か所にまとめる場合

Bloomでは、審査を通過したインフルエンサー30,000人の中から候補を探し、案件の条件提示から応募、やり取り、投稿の確認までをプラットフォーム上で進められます。依頼の条件ややり取りがサービス上に残るため、SNSのDMだけで進める場合に比べて、案件ごとの記録を一か所にまとめやすくなります。社内の案件IDと紐づけて定期的に書き出しておけば、監査や問い合わせの際にも記録をすぐに取り出せる体制を作りやすくなります。

本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。