プレスリリースの配信日に合わせてインフルエンサーの投稿も走らせたい、と考える広報・マーケティング担当者は少なくありません。ところが実際には、広報部門から情報解禁前の外部共有は難しいと言われ、リリースと投稿がばらばらの日に出てしまうことがよくあります。プレスリリースとインフルエンサー施策は、どちらも世の中に知らせるための動きでありながら、情報の扱い方も承認の主体も異なるため、意識して設計しないと連動しません。この記事では、配信日と投稿日の前後関係の決め方、情報解禁日とエンバーゴの扱い、リリース本文への記載可否、メディア転載後の二次拡散、広報とマーケの役割分担、そして効果の測り方までを、社内の運用にそのまま落とせる形で整理しました。
この記事の要点
- リリースと投稿の前後関係は、報道を取りにいくなら投稿を後ろに、話題量を取りにいくなら同時解禁に置くと整理できます。
- 連動パターンはリリース先行型・同時解禁型・ティザー先行型・起用ニュース型・転載引用型の5つに分けられます。
- 解禁日を守ってもらうには、契約書と依頼書の両方に日時を分単位で書き、解禁前に渡す素材を最小限に絞ります。
- 上場企業では、未公表の重要事実を社外に渡さない線引きが最優先で、適時開示の公表後に施策を動かします。
- 効果は掲載数と転載数だけでなく、指名検索数とSNS言及数をセットで見ると連動の価値が見えてきます。
プレスリリースとインフルエンサー施策を連動させる考え方
プレスリリース連動型のインフルエンサー施策とは、広報が発表する事実とインフルエンサーによる発信を同じ企画として設計し、配信日と投稿日の前後関係を意図的に決めて露出を積み上げる進め方です。リリースを出したあとに思い出したように投稿を依頼するのではなく、企画の段階から両方の日程を1本の線に乗せます。この違いだけで、同じ予算でも世の中に残る情報量が変わってきます。
広報とマーケが別々に動くと何が起きるか
もっとも多い失敗は、広報部門がリリースを配信した1週間後に、マーケティング部門がインフルエンサー投稿を出してしまうケースです。この順番だと、記者が記事を書く時点でSNS上に話題がなく、生活者がSNSで投稿を見た時点ではニュースとしての鮮度が落ちています。どちらの露出も単独では成立していますが、互いに補強し合う関係にはなっていません。
逆の順番、つまりインフルエンサーの投稿が先に大量に出てからリリースを配信する形も、報道を狙う発表では不利に働きます。記者は新規性を評価して記事化を判断するため、すでにSNSで広く知られている情報は取り上げにくくなるためです。連動というのは同じ日に何かを出すことではなく、どちらの露出がどちらを助けるのかを決めることだと考えてください。
連動によって得られる3つの効果
連動が機能したときに得られる効果は、大きく3つに整理できます。1つ目は、同じ情報が別の文脈で二度届くことによる想起の強化です。ニュースサイトで見た商品名を、その週にフォローしている人の投稿でも見かけると、記憶に残る確率は単独接触のときより上がります。
2つ目は、信頼性の相互補完です。プレスリリースは企業が発表した事実として読まれ、インフルエンサーの投稿は使った人の実感として読まれます。この2つは説得の役割が違うため、片方だけでは埋まらない部分を互いに補います。3つ目は、検索行動の受け皿が増えることです。投稿を見て社名や商品名で検索した人が、上位に報道記事を見つけられる状態は、企業サイトだけが並ぶ状態よりも安心につながります。
連動が向かない発表もある
すべての発表をインフルエンサー施策と組み合わせる必要はありません。人事異動や組織変更、決算に関する発表など、生活者が関心を持ちにくい内容にインフルエンサーの投稿をぶつけても、フォロワーの反応は得られにくくなります。連動の対象は、生活者が自分ごととして語れる発表、つまり新商品、新サービス、体験型の取り組み、調査結果、社会性のあるプロジェクトあたりに絞るのが現実的です。
連動パターン5類型と向いているケース
連動のパターンは、リリースと投稿の前後関係を軸に5つに整理できます。どの型を選ぶかは、その発表で報道を取りにいくのか、SNS上の話題量を取りにいくのかという目的で決まります。まず型を決め、そのあとに候補者選定や投稿本数を詰める順番が、もっとも手戻りが少なくなります。
リリース先行型と同時解禁型
リリース先行型は、プレスリリースを配信して報道が出るのを待ち、その数日後にインフルエンサーの投稿を出す形です。報道を最優先する発表に向いており、記者にとっての新規性を損ないません。投稿側は報道記事を引用したり、報じられた事実を前提に語ったりできるため、内容にも説得力が出ます。
同時解禁型は、リリースの配信時刻とインフルエンサーの投稿時刻をそろえる形です。同じ日に情報が集中するため、SNS上での話題量が一気に立ち上がります。発売日が決まっている商材や、キャンペーンの開始日に合わせて申込を集めたい場合に向いています。一方で、投稿が先に表示されてしまうリスクを避けるため、解禁時刻の管理は厳密になります。
ティザー先行型と起用ニュース型
ティザー先行型は、中身を明かさない予告投稿を数日前に出し、解禁日にリリースと本投稿をそろえる形です。何かが始まりそうだという空気を先に作れるため、解禁日の反応が大きくなります。ただし、予告の段階で内容を推測されて先に書かれてしまうことがあるため、社名やロゴの露出範囲を決めておく必要があります。
起用ニュース型は、インフルエンサーを起用したという事実そのものをプレスリリースの中身にする形です。アンバサダー就任、共同開発、監修就任などがこれに当たります。この型では発表とインフルエンサーが不可分なので、本人のコメントや写真をリリース本文に入れることが前提になります。アンバサダー体制そのものの設計はアンバサダープログラムの設計と運用の始め方で詳しく扱っています。
転載引用型
転載引用型は、リリースがニュースサイトに転載されたり記事化されたりしたあとに、その記事をインフルエンサーが引用して発信する形です。企業の発表ではなく第三者の記事を起点にできるため、宣伝色が薄まります。転載や記事化がいつ起きるかを事前に確定できないため、投稿日を固定せず、掲載が確認できてから動かす運用にします。
| 連動パターン | リリースと投稿の前後関係 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| リリース先行型 | 配信の3〜7日後に投稿します | 報道・記事化を最優先する発表 | 時間が空きすぎると別施策に見えます |
| 同時解禁型 | 配信時刻と投稿時刻をそろえます | 発売日やキャンペーン開始日がある商材 | 解禁時刻の管理と予約投稿の確認が必須です |
| ティザー先行型 | 3〜5日前に予告、解禁日に本投稿を出します | 期待値を積み上げたい大型の発表 | 予告段階で内容を推測される恐れがあります |
| 起用ニュース型 | 起用の事実がリリースの中身になります | アンバサダー就任・共同開発・監修 | 本人の肖像とコメントの使用許諾が要ります |
| 転載引用型 | 掲載を確認してから投稿を動かします | 調査リリースや社会性のある取り組み | 掲載が出ない場合の代替案が必要です |
実務では、1つの発表でこれらを組み合わせることもあります。たとえば、ティザー先行型で期待値を作り、解禁日は同時解禁型で立ち上げ、1週間後に転載引用型で二次拡散をかけるという三段構えです。ただし段数を増やすほど管理する日程が増えるため、最初の1本は同時解禁型かリリース先行型のどちらかに絞ることをおすすめします。
情報解禁日とエンバーゴの決め方
情報解禁日とは、その情報を公にしてよい日時のことで、プレスリリースでは配信時にメディアへ伝える取り決めとして扱われます。報道関係者に対して解禁前の公開を控えてもらう約束はエンバーゴと呼ばれ、業界や媒体の慣行として機能しています。インフルエンサー施策を連動させるときは、この解禁日を施策側にも同じ厳密さで適用する必要があります。
解禁日時は分単位で決める
解禁日は日付だけでなく、時刻まで決めてください。「9月26日」とだけ伝えると、深夜0時に投稿する人と夕方に投稿する人が出て、話題の山が分散します。実務では「2026年9月26日10時00分」のように分単位で指定し、配信予約と投稿予約の両方を同じ時刻に合わせます。プレスリリースの配信は、記者が動きやすい平日の午前中に設定されることが多く、10時から11時台が選ばれやすい時間帯です。
一方で、インフルエンサーの投稿は、フォロワーが見ている時間帯に出したほうが反応は取れます。解禁時刻を10時にしたうえで、投稿は解禁後であれば各自の最適な時間帯に出してよい、という二段構えにすると両立します。投稿時間帯の考え方そのものはPR投稿のタイミング設計と投稿日を分散させる考え方で整理していますので、あわせてご確認ください。
インフルエンサーに解禁日を守ってもらう伝え方
解禁日の順守は、口頭の依頼だけでは担保できません。契約書の守秘義務条項に解禁日時を書き込み、発注書や依頼書にも同じ日時を再掲します。そのうえで、解禁前のやり取りはDMやクローズドな連絡手段に限定し、公開範囲のあるツールに素材を置かないようにしてください。契約書に盛り込むべき条項の全体像はインフルエンサー契約書の作り方と必須チェック項目にまとめています。
もうひとつ有効なのが、解禁前に渡す情報そのものを減らすやり方です。撮影に必要な現物と、投稿の方向性を決めるための概要だけを先に渡し、価格や発売日といった数字は解禁の直前に共有します。渡していない情報は漏れようがないため、これがもっとも確実な対策になります。渡す情報の区分の考え方はインフルエンサー施策の情報管理と社内外の共有ルールで詳しく扱っています。
解禁前に漏れたときの初動
解禁前に情報が出てしまったときの初動
- まず事実確認を行い、どの投稿・どの記事に、どこまでの情報が出ているかを記録します。
- 本人に削除を依頼するかどうかは、削除によってかえって注目が集まる可能性も含めて判断します。
- 他のインフルエンサーやメディアへ、解禁日を前倒しするか維持するかを同時に連絡します。
- 前倒しを選ぶ場合は、プレスリリースの配信予約も合わせて繰り上げ、社内の問い合わせ窓口に共有します。
- 事後に、どの経路から漏れたのかを特定し、次回以降の共有範囲を見直します。
解禁前に情報が出てしまった場合の最大のリスクは、メディアとの信頼関係が損なわれることです。エンバーゴを守った媒体だけが出遅れる状態になると、次回以降の協力を得にくくなります。そのため、漏れを確認した時点で、解禁日を維持するのか前倒しするのかを短時間で決め、関係先へ一斉に連絡する体制を用意しておいてください。
D-30からD+14までの連動スケジュール
連動施策の標準的な準備期間は、解禁日の30日前からです。リリースの原稿確認とインフルエンサーの選定・契約・撮影が並行で走るため、どちらか一方だけを見ていると必ず遅延します。以下は、解禁日をD0としたときの標準的な工程表です。
D-30からD-15は企画と候補選定
この期間は、発表の中身を確定させる作業と、インフルエンサーの候補を絞る作業を並行して進めます。発表内容が固まらないうちに候補への打診を始めると、条件が変わるたびに再交渉が発生します。逆に、発表が完全に確定してから動き出すと、候補者のスケジュールが押さえられません。現実的には、発表の骨子が固まった時点で守秘義務契約を結び、詳細は後追いで共有する形になります。
D-14からD-4は素材共有と原稿確認
現物の発送、撮影、投稿案の作成と確認がこの期間に集中します。リリース側も、この時期に最終稿の社内承認と配信予約を済ませます。投稿案の確認は、広報とマーケの二重チェックになりがちなので、確認者と確認観点をあらかじめ分けておいてください。承認の回し方はインフルエンサー投稿の承認を早める社内確認フローの作り方で具体的に扱っています。
D-3からD0は配信当日の段取り
解禁前の最終3日間は、新しい判断をしない期間として空けておくことをおすすめします。この時点で投稿の予約設定を完了し、解禁時刻、リンク先URL、ハッシュタグ、広告であることの表示を全員分で突き合わせます。当日は、配信の完了確認、投稿の公開確認、リンク先の表示確認を順に行い、問題があればすぐ差し替えられる担当者を置いてください。
D+1からD+14は二次拡散と追撃
配信の翌日からは、転載や記事化の状況を追いながら二次拡散を仕掛けます。転載記事が出たタイミングで追加投稿を依頼する、コメント欄で寄せられた質問に公式アカウントが答える、反応の良かった投稿を広告配信に転用するといった動きがここに入ります。投稿全体の日程管理を1枚で持つ方法はインフルエンサー施策の投稿カレンダー作成と運用管理の手順にまとめています。
| 時期 | 広報側の作業 | インフルエンサー施策側の作業 | この時点での情報共有範囲 |
|---|---|---|---|
| D-30〜D-22 | 発表骨子の確定、想定問答の作成 | 候補リストの作成、条件の概算 | 社内の企画関係者まで |
| D-21〜D-15 | リリース初稿の作成、掲載素材の準備 | 打診、守秘義務契約、発注確定 | 契約済みのインフルエンサーまで |
| D-14〜D-8 | 法務・関係部署の確認、修正 | 現物発送、撮影、投稿案の作成 | 概要と現物のみ(価格・日付は伏せます) |
| D-7〜D-4 | 最終稿の承認、配信予約の設定 | 投稿案の確認と修正、リンクの発行 | 価格・発売日を含む詳細を共有します |
| D-3〜D-1 | メディアへの事前案内、問い合わせ体制 | 予約投稿の設定、解禁時刻の再確認 | 変更は原則として行いません |
| D0(解禁日) | 配信、掲載状況のモニタリング | 投稿の公開確認、初動の反応確認 | 全面的に公開されます |
| D+1〜D+7 | 転載・記事化の確認、追加取材の対応 | 転載記事の引用、質問への返信対応 | 公開情報として扱います |
| D+8〜D+14 | 掲載クリッピングの集計 | 二次利用の申請、広告転用の判断 | レポート化して社内共有します |
この工程表は、投稿本数が10本前後までの規模を想定しています。起用人数が20人を超える場合は、選定と契約にかかる時間が伸びるため、D-45から逆算したほうが安全です。大人数を同時に動かすときの進行管理の型はインフルエンサー20人を同時に動かす進行管理と抜け漏れ対策で扱っています。
リリース本文に施策を書くかどうかの判断
リリース本文にインフルエンサー施策を書くかどうかは、その起用が発表の中身なのか、告知の手段なのかで決まります。中身であれば書き、手段であれば書かない、というのが基本の線引きです。ここを混同すると、商品発表なのか施策告知なのかが読み取れないリリースになり、記者にとっても生活者にとっても要点がぼやけます。
本文に書いたほうがよいケース
アンバサダー就任、共同開発商品、レシピや監修としての関与、イベントへの登壇など、その人が関わったこと自体が新しい事実である場合は本文に書きます。読み手から見れば、誰が関わっているかが判断材料になるため、名前と役割を明示する価値があります。この場合は、本人のコメントを1つ入れると記事化されやすくなります。コメントは企業が代筆した文面を本人に確認してもらう形が一般的ですが、本人の言葉づかいに寄せないと不自然に読まれます。
本文に書かないほうがよいケース
新商品の発表が主役で、インフルエンサーは発売告知の一手段にすぎない場合は、本文に書きません。「発売に合わせてインフルエンサーによる情報発信を実施します」という一文は、メディアにとって記事化の理由にならないうえ、商品そのものの説明を圧迫します。施策の存在を伝えたい場合は、記者向けの補足資料に回すか、施策の結果が出てから改めて別のリリースにするほうが有効です。新商品発表全体の設計は新商品プロモーションのインフルエンサー設計と発売前後90日の進め方で扱っています。
コメント掲載の実務と確認手順
| 確認項目 | 確認する相手 | 実施タイミング | 見落としやすい点 |
|---|---|---|---|
| コメント文面の最終確認 | 本人または所属事務所 | リリース最終稿の前 | 社内修正のあと再確認を忘れがちです |
| 肖像写真の使用範囲 | 本人または所属事務所 | 撮影・素材受領の時点 | 転載先での二次利用まで含めて取り決めます |
| 肩書きと表記ゆれ | 本人または所属事務所 | 初稿作成の時点 | アカウント名と本名の使い分けを確認します |
| 掲載期間と削除条件 | 本人または所属事務所 | 契約締結の時点 | 契約終了後もリリースは残り続けます |
| 競合商材との関係 | 本人または所属事務所 | 打診の時点 | 就任発表は競合案件と衝突しやすくなります |
とくに注意したいのが、掲載期間と削除条件です。プレスリリースは配信サービスや転載先のニュースサイトに長期間残るため、契約期間が終わったあとも本人の名前と写真が公開され続けます。契約書の段階で、契約終了後のリリースの取り扱いをどうするかを決めておいてください。
インフルエンサー起用そのものをニュースにする設計
インフルエンサーの起用をニュースとして成立させるには、起用したという事実に加えて、なぜその人なのかという必然性が要ります。有名な人を起用したというだけでは、メディアにとっての記事化理由になりません。逆に、その人でなければ成立しない取り組みであれば、規模が小さくても取り上げられます。
ニュースバリューが立つ条件
記事化されやすい起用リリースには、いくつか共通する要素があります。第一に、その人の専門性や経歴と商材の関係がはっきりしていることです。第二に、単なる広告出演ではなく、商品開発や監修、継続的な活動など、関与の深さが示されていることです。第三に、その取り組みが解決しようとしている社会的な課題や、業界での新しさが言語化されていることです。
この3つのうち2つ以上を満たせない場合は、起用リリースとして出すよりも、商品やサービスの発表に本人のコメントを添える形のほうが結果は出ます。無理にニュースの形にすると、読み手からは広告の言い換えに見えてしまいます。
アンバサダー就任リリースの構成
就任リリースは、構成のパターンがある程度決まっています。冒頭で就任の事実と期間を書き、次にその人を選んだ理由を書き、活動内容を具体的に並べ、最後に本人と企業側のコメントを置く流れです。ここで差がつくのは、選定理由と活動内容の具体性です。「親和性が高いため」といった抽象的な理由ではなく、その人がこれまで発信してきた内容と、企業が取り組んでいることの接点を事実で書いてください。
活動内容についても、SNSでの発信という書き方だけでは弱くなります。月に何回の発信を行うのか、商品開発にどう関わるのか、イベントにどう登場するのかまで書けると、記事にしたときの情報量が変わります。
起用リリースが滑るパターン
起用リリースが反応を得られないときの原因は、だいたい3つに絞られます。1つ目は、起用した人の知名度に寄りかかり、取り組みの中身が書かれていない場合です。2つ目は、就任期間や活動内容が曖昧で、実態が読み取れない場合です。3つ目は、同じ時期に似た就任発表が業界内で続いていて、新しさが感じられない場合です。
3つ目については、事前に競合の発表状況を調べておくことで避けられます。同じ週に競合が同種の発表をしていないか、同じインフルエンサーが別の企業のアンバサダーを務めていないかは、必ず確認してください。競合の起用状況を調べる手順は競合のインフルエンサー施策を調べる競合分析の手順で解説しています。
メディア転載後の二次拡散を作る手順
二次拡散とは、プレスリリースが転載・記事化されたあとに、その記事を起点として別の発信が広がっていく流れのことです。配信サービスを使うと、提携先のニュースサイトに記事が転載される仕組みになっており、ここで生まれた第三者の記事をインフルエンサーが引用することで、企業発信ではない形の露出を作れます。
転載記事を引用してもらう設計
転載記事の引用を組み込むときの難しさは、どの媒体にいつ掲載されるかを事前に確定できない点にあります。そのため、契約の段階で「本投稿1本+掲載確認後の追加投稿1本」という形にしておき、追加投稿の日程は掲載が確認できてから確定する運用にします。掲載が出なかった場合に備えて、代わりに何を投稿してもらうかも決めておいてください。
依頼の仕方としては、こちらから記事のURLを共有し、その記事のどの部分に触れてほしいかを伝える形が確実です。ただし、記事の内容をどう受け止めるかは本人に委ねる部分を残してください。全文を指定すると、フォロワーから見て不自然な投稿になります。
引用してよい範囲と著作権の線引き
転載記事を引用してもらうときの注意点
- 記事本文を長く貼り付ける行為は避け、URLのリンク共有と自分の言葉での要約にとどめます。
- 媒体社が制作した写真・図版・グラフの転載は、原則として許諾なしに行いません。
- 企業が配布したリリース素材と、媒体社が独自に制作した素材は区別して扱います。
- 引用に関するガイドラインを公開している媒体もあるため、大量の引用を予定する場合は事前に確認します。
- 引用であっても、企業からの依頼で投稿する以上は広告であることの表示が必要です。
プレスリリース本文そのものは企業に著作権があるため、自社の許諾で扱えます。一方、記者が取材して書いた記事や、媒体社が撮影した写真は媒体社の権利物です。この区別を曖昧にしたまま素材を横流しすると、媒体との関係を損ないます。素材の二次利用全般の考え方はUGCマーケティングの活用法と二次利用の進め方を参考にしてください。
転載を待たずに動かす自社導線
転載や記事化は確実に起こるものではないため、掲載がゼロでも成立する導線を用意しておく必要があります。具体的には、自社サイト内にニュース記事としてリリース全文を掲載し、そのページを投稿のリンク先に指定する方法です。あわせて、リリースの内容を要約した投稿を公式アカウントから出し、インフルエンサーの投稿と相互に参照できる状態を作ります。
この自社ページは、指名検索で訪れた人の受け皿にもなります。投稿を見て社名を検索した人が、公式の説明ページにたどり着ける状態を作っておくと、施策の効果が取りこぼされにくくなります。
広報部門とマーケ部門の役割分担と情報解禁ルール
連動施策がうまくいかない原因の多くは、設計の巧拙ではなく、部門間の役割が決まっていないことにあります。広報とマーケティングは、扱う情報も評価される指標も違うため、放っておくと別々の計画で動きます。最初に決めるべきは、誰が解禁日を決め、誰が対外的な最終確認を持つのかという2点です。
責任分界点の引き方
実務上いちばん収まりがよいのは、解禁日と対外的な情報の正確性は広報が持ち、投稿の内容と表現、起用者との契約はマーケティングが持つという分け方です。広報は、事実と異なる記載がないか、他部署の発表と矛盾しないかを見ます。マーケティングは、投稿として成立しているか、広告表示が適切かを見ます。同じ観点を両部門が二重に見ると、確認が長引くだけで品質は上がりません。
| 作業 | 主担当 | 確認・承認 | 情報共有のみ |
|---|---|---|---|
| 解禁日時の決定 | 広報 | 事業責任者 | マーケティング、営業 |
| リリース本文の作成 | 広報 | 法務、事業責任者 | マーケティング |
| インフルエンサーの選定と契約 | マーケティング | 法務 | 広報 |
| 投稿案の内容確認 | マーケティング | 広報(事実確認のみ) | 事業責任者 |
| 広告であることの表示確認 | マーケティング | 法務 | 広報 |
| メディア対応・問い合わせ | 広報 | 事業責任者 | マーケティング |
| 掲載・投稿のモニタリング | 広報とマーケティングで分担します | — | 事業責任者 |
| 炎上・トラブル発生時の一次判断 | 広報 | 経営層 | 関係部署全体 |
情報の機密区分と共有範囲
解禁前の情報は、渡す相手ごとに段階を分けて管理します。社内の企画関係者、契約済みのパートナー、契約済みのインフルエンサー、そして一般公開という4段階で考えると整理しやすくなります。段階が下がるほど渡す情報は減り、渡すタイミングは遅くなります。各段階で誰に何を渡したかを記録しておくと、万一漏れたときの経路特定が早くなります。
承認フローを二重にしない
投稿案の確認で時間がかかる企業の多くは、広報とマーケが同じ観点で順番に見ています。これを避けるには、確認シートを1枚作り、観点ごとに担当者名を書いておく方法が有効です。事実確認は広報、表現とトーンはマーケティング、法令表示は法務というように分け、各自は自分の担当欄だけを埋めます。投稿確認の進め方はインフルエンサーの投稿確認フローと修正依頼の進め方で具体的に扱っています。
インフルエンサーに渡す素材の範囲と適時開示への配慮
インフルエンサーに渡す素材は、解禁前と解禁後で明確に分けてください。解禁前は、投稿の準備に最低限必要なものだけを渡し、解禁後に残りを開放するという二段構えが基本です。この線引きを曖昧にすると、渡す必要のなかった情報まで社外に出ることになります。
渡してよい素材と渡さない素材
| 素材 | 解禁前に渡すか | 渡し方 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 商品現物・サンプル | 渡します | 撮影に必要な期間を逆算して発送します | パッケージの写り込み範囲を指定します |
| 商品概要・特徴の説明 | 渡します | 専用の資料として配布します | 未確定の仕様は記載しません |
| 価格・発売日 | 解禁の直前に渡します | 個別連絡で共有します | 変更の可能性がある間は伏せます |
| 公式画像・動画素材 | 渡します | 期限付きのダウンロードリンクで渡します | 加工の可否を明記します |
| 調査データ・グラフ | 条件付きで渡します | 出典表記とセットで渡します | 数値の切り出し方を指定します |
| 経営者・開発者コメント | 渡します | 引用してよい範囲を示します | 要約や言い換えの可否を伝えます |
| 未公表の業績・提携情報 | 渡しません | — | 公表後でなければ扱いません |
| 他社との交渉状況 | 渡しません | — | 相手方の同意がない情報は共有しません |
調査データを渡す場合は、切り出し方まで指定してください。全体の傾向を示した調査の一部だけを取り出すと、実態と異なる印象を与える投稿になることがあります。出典名、調査時期、サンプル数をセットで渡し、投稿内でもこの3点を記載してもらう運用にすると、後から指摘を受けるリスクが下がります。
上場企業における適時開示との関係
上場企業の場合、発表内容が適時開示の対象になるかどうかを最初に確認します。業績への影響が大きい提携、新規事業、資本関係の変更などは、取引所のルールに基づく開示が先に来ます。この種の情報は、公表される前に社外の第三者へ渡すことができません。インフルエンサー施策を連動させる場合は、適時開示が完了して公表された状態になってから素材と情報を渡す流れになります。
実務上は、広報だけで判断せず、開示担当部署やIR部門に事前確認を通す手順を入れてください。判断に迷う情報を外部に渡してしまうと、取り返しがつきません。スケジュールを組む際も、適時開示の時刻を起点に、その後にインフルエンサーの投稿解禁時刻を置く形にします。
未公表情報を扱うときの合意書面
やむを得ず解禁前に踏み込んだ情報を渡す必要がある場合は、守秘義務契約を単独で締結し、対象情報の範囲、守秘期間、違反時の取り扱いを明記します。口頭での念押しだけでは、本人が何を守るべきかを判断できません。書面で範囲を示すことは、相手を縛るためというより、うっかり話してしまう事故を防ぐための手当てだと考えてください。
配信サービスを使う場合の実務
プレスリリース配信サービスは、原稿を登録して配信日時を予約すると、登録メディアへの配信と提携ニュースサイトへの転載を行う仕組みです。2026年9月時点では、PR TIMESや@Press、valuepressといった複数のサービスが国内で利用されており、料金体系や提携先の範囲はサービスごとに異なります。契約前に、自社が届けたい媒体領域と提携先が合っているかを確認してください。
予約配信と解禁時刻の合わせ方
配信サービスの多くは、日時を指定した予約配信に対応しています。同時解禁型で組む場合は、この予約時刻とインフルエンサーの予約投稿時刻を同じにそろえます。ただし、配信の反映やページの生成には数分の幅が生じる場合があるため、投稿側を数分後ろにずらしておくと、リンク先が表示されない事故を避けられます。
解禁時刻をまたぐ運用で起きやすいのが、投稿のリンク先URLが配信前に決まらないという問題です。配信サービスによっては、公開前にURLが確定しないことがあります。この場合は、自社サイトのニュースページをリンク先にしておき、配信後に必要であれば差し替える運用が安全です。
配信サービス側の拡散オプション
配信サービスの中には、リリース配信後のSNS拡散やインフルエンサーによるシェアをオプションとして提供しているものもあります。こうしたオプションは、自社で候補者を選定する手間が省ける一方、誰がどのような文脈で発信するかを細かく指定しづらい面があります。ブランドの世界観や語り口を重視する施策では、自社で人選を行ったほうが結果は安定します。料金や提供内容は改定されることがあるため、検討時点の最新情報を各サービスの公式案内で必ず確認してください。
配信サービスを使わない選択
配信サービスを使わず、自社サイトでのニュース掲載と個別のメディアアプローチだけで進める方法もあります。転載による広さは得られませんが、届けたい媒体を選んで丁寧に案内できるため、専門性の高い商材では有効です。この場合、インフルエンサーの投稿が唯一の面的な露出になるため、投稿本数の設計がより重要になります。本数の決め方はインフルエンサー施策の投稿本数を決める考え方と配分方法で整理しています。
連動施策の効果の測り方
連動施策の効果は、掲載数・指名検索数・SNS言及数の3つを並べて見ます。この3つは測るタイミングも取得元も違いますが、同じ期間で並べることで、どこまでが広報の成果で、どこからがインフルエンサー施策の成果なのかが見えてきます。1つの指標だけで判断すると、連動させた意味を説明できません。
掲載数と転載数の数え方
掲載数は、リリースが記事として取り上げられた件数です。転載数は、配信サービスの提携先に自動的に掲載された件数を指し、記者が判断して書いた記事とは性質が異なります。この2つを合算して報告すると実態より大きく見えるため、必ず分けて数えてください。あわせて、媒体の種別、掲載の扱いの大きさ、独自取材の有無まで記録しておくと、次回の打診先を絞り込むときに役立ちます。
指名検索とSNS言及数
指名検索数は、社名や商品名で検索された回数で、連動施策の効果がもっとも表れやすい指標です。リリース単独の月、インフルエンサー施策単独の月、連動させた月を並べると、重ね合わせた効果の大きさが数字で見えてきます。測り方の具体的な手順はインフルエンサー施策の指名検索を測る方法と分析の進め方で扱っています。
SNS言及数は、社名や商品名、ハッシュタグを含む投稿の件数です。起用したインフルエンサー本人の投稿だけでなく、それを見た第三者が自発的に書いた投稿を分けて数えると、拡散が起きたかどうかを判断できます。本人の投稿だけが伸びて第三者の言及が増えていない場合は、リーチは出たが会話にはなっていない状態です。
| 指標 | 取得元 | 測る期間 | 読み取れること |
|---|---|---|---|
| メディア掲載数 | クリッピング、手動確認 | D0〜D+14 | 報道としての評価の高さがわかります |
| 転載数 | 配信サービスの管理画面 | D0〜D+7 | 情報が置かれた面の広さがわかります |
| リリース閲覧数 | 配信サービスの管理画面 | D0〜D+30 | タイトルと内容の引きの強さがわかります |
| 指名検索数 | サーチコンソール、検索広告の管理画面 | D-30〜D+30 | 連動による想起の強さがわかります |
| SNS言及数 | 各SNSの検索、モニタリングツール | D-7〜D+14 | 会話が生まれたかどうかがわかります |
| サイト流入数 | アクセス解析 | D0〜D+14 | どの経路から人が来たかがわかります |
| 投稿エンゲージメント | 各インフルエンサーのインサイト | 投稿後7日 | 投稿単位の反応の良し悪しがわかります |
次回の設計に反映させる読み方
レポートは、数字を並べるだけでなく、次にどの型で組むかの判断材料として書いてください。掲載は出たが指名検索が動かなかった場合は、露出の面はあったが動機づけが弱かったと読めます。SNSの反応はよかったが掲載が出なかった場合は、発表のニュース性そのものを見直す必要があります。効果測定の全体像はインフルエンサー施策の効果測定の方法と計測ツールにまとめています。
連動施策は、1回で完成する種類の取り組みではありません。解禁日の決め方、情報の渡し方、部門間の確認手順は、実際に回してみて初めて詰まる場所が見えてきます。最初の1回は小さな発表で試し、工程表と確認シートを自社の形に直してから、大きな発表に適用していく進め方をおすすめします。広告表示のルールや炎上の予防についてはステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドとインフルエンサー施策の炎上対策と発生時の初動対応もあわせてご確認ください。
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