インフルエンサーから初稿が届いたのに、社内の確認で3日も4日も止まり、投稿予定日が後ろへずれていくという相談をよく受けます。インフルエンサー施策で発生する遅延の多くは、制作や交渉ではなく社内の承認待ちで生まれています。本記事では、投稿の承認にかかる日数を短くするための社内確認フローの作り方を、承認者の絞り込み、リスク別の三段階設計、承認期限のルール化、差し戻しを1回で終わらせる指示の出し方という順に整理しました。2026年9月時点の実務を前提に、明日から自社の運用ルールへ落とし込める形でまとめています。

この記事の要点

  • 投稿承認が遅れる原因は、承認者が多すぎることと承認基準が事前に決まっていないことの2つです。人を増やすより、決めごとを先に置いてください。
  • 承認フローは受領・一次確認・専門確認・最終承認・可否連絡の5つの関門に分解できます。関門ごとに担当と所要時間を決めると、滞留が自動的に見えます。
  • 承認者3人以内・一次回答は受領から48時間以内・差し戻しは1回までという3つの上限を先に決めると、承認リードタイムはおおむね半分になります。
  • すべての投稿を同じフローに通す必要はありません。リスクを3段階で判定し、規制商材や社会的テーマを含む投稿だけ法務と薬事を通す形にします。
  • 承認は速さだけでなく証跡が要ります。誰が・いつ・どの版を・どの条件で承認したかの4点を必ず記録として残してください。

インフルエンサー投稿の承認が遅れる理由

投稿承認が遅れる原因は、承認者が多すぎることと、承認の基準が事前に決まっていないことの2つにほぼ集約されます。インフルエンサー施策における投稿承認とは、インフルエンサーから提出された原稿・画像・動画・ハッシュタグ・リンクの一式について、発注側が公開してよいと確定させる社内手続きのことです。この手続きは本来1日から2日で終わる作業ですが、実務では1週間近くかかっている企業が珍しくありません。遅れの正体は作業量ではなく、判断を下せる人が決まっていないことにあります。

承認待ちが発生する区間

インフルエンサー施策の工程は、打診・条件合意・契約・商品発送・初稿提出・修正・投稿・報告・支払いという流れで進みます。このうち発注側が主導権を握れるのは、初稿が提出されたあとに発生する確認と修正の区間だけです。ほかの工程は相手の都合に左右されますが、承認の区間は自社の意思決定だけで短縮できます。つまり承認フローの改善は、施策全体で唯一、自社の努力がそのままリードタイムの短縮へ直結する領域です。工程全体の組み方はインフルエンサー20人を同時に動かす進行管理と抜け漏れ対策に整理していますので、あわせてご覧ください。

実務でよくあるのは、初稿が届いてから公開までに5営業日以上を要しているケースです。内訳を分解すると、実際に原稿を読んでいる時間は合計しても1時間に満たず、残りはすべて次の人の手番を待っている時間になります。待ち時間の長さは作業の難しさではなく、手番の受け渡しの回数で決まります。ここに気づくと、改善すべきは読む速さではなく渡し方だと分かります。

承認者が増えると往復が急に増える

承認者を1人増やすと、確認の待ち時間は単純に1人分だけ増えるわけではありません。指摘が別々のタイミングで飛んでくるため、修正の往復そのものが増えます。承認者が2人なら指摘は1通にまとめられますが、4人になると、Aさんの指摘で直した原稿にBさんが別の指摘を入れ、その修正にCさんが反対するという状態が生まれます。人数が増えるほど、修正は収束しなくなります。

この現象を避ける方法は、意見を言う人と決める人を分けること以外にありません。意見は何人から集めても構いませんが、公開の可否を確定させる権限は限られた人だけが持つ形にします。この分離ができていない組織では、承認フローをいくら図に描いても運用が回りません。

承認が止まる5つのパターン

症状止まっている場所根本の原因最初に打つ手
原稿を送ったが返事が来ない受領受領を返信するルールがない受領連絡を4時間以内に必須化
指摘が小出しに何度も届く専門確認確認者が個別に連絡している指摘の集約担当を1人決める
最後の一押しで決裁が止まる最終承認決裁者の不在と代理の不在代理承認者を氏名で指名
同じ論点が毎回蒸し返される全関門承認基準が文書化されていない承認基準シートを1枚作る
公開直前に差し止めが入る可否連絡上位者が途中経過を見ていない企画段階で決裁者に見せる

この表で共通しているのは、どの症状も担当者の注意力では解決しないという点です。返事が来ないのは相手が怠慢だからではなく、いつまでに返すというルールが存在しないからです。仕組みの側を直せば、同じ人員のままでも日数は縮みます。

承認フローを5つの関門に分解する

承認フローは、受領・一次確認・専門確認・最終承認・可否連絡という5つの関門に分解してください。5つに分けておけば、どの案件も必ずいずれかの関門に位置づけられますので、いま誰の手番かという問いに即答できます。逆に「確認中」というひとつのラベルで管理していると、そのなかに3日止まっている案件が隠れます。

5関門の定義と標準所要時間

各関門には、判断すべきことと標準の所要時間を必ず紐づけます。以下は2026年9月時点で一般的なPR投稿1本を想定した目安であり、規制の強い商材では専門確認の日数が伸びます。

関門担当ここで判断すること標準所要時間遅延と判断する時間
1. 受領施策担当者提出物が揃っているかどうか4時間以内翌営業日
2. 一次確認施策担当者指示書との整合と事実誤認の有無1営業日2営業日
3. 専門確認法務・薬事・広報法令表現と権利関係の可否2営業日3営業日
4. 最終承認決裁者1名公開してよいかどうかの確定1営業日2営業日
5. 可否連絡施策担当者相手へ伝える結論と修正点4時間以内翌営業日

合計すると、標準は4営業日前後、規制商材でも6営業日前後で収まる計算になります。自社の実績がこれを大きく超えている場合は、どの関門で超過しているかを1件分だけ実測してください。感覚ではなく実測から始めると、直すべき関門がすぐに絞り込めます。

直列で回す関門と並列で回す関門

5つの関門のうち、直列で回す必要があるのは一次確認と最終承認だけです。専門確認は、法務・薬事・広報のそれぞれが同じ版を同時に読む並列運用へ切り替えられます。直列で回すと3人で6営業日かかる作業が、並列なら2営業日で終わります。ここが承認リードタイムの短縮でもっとも効く一手です。

並列にする際の条件は、指摘を1か所へ集約する担当を決めることです。集約担当がいないと、修正の指示が別々にインフルエンサーへ飛び、相手を混乱させます。並列で読ませたうえで指摘は1通にまとめて出すという形を守るだけで、往復回数は目に見えて減ります。

受領した事実を必ず返す

もっとも安価で効果が大きい改善は、原稿を受け取ったことを4時間以内に返信する運用です。相手にとって最大の不安は、送った原稿が読まれているのかどうか分からない状態にあります。受領の一言があるだけで催促の連絡が減り、担当者の対応時間も減ります。文面は「原稿を受領しました。◯月◯日までに確認結果をお返しします」の2文で十分です。

受領連絡には、社内向けの効果もあります。受領した日時が記録に残るため、承認リードタイムを起点から計測できるようになります。起点が曖昧なままでは、遅れているかどうかの判断すらできません。

承認者を3人以内に絞る決め方

承認者は3人以内に絞ってください。承認者とは、公開の可否を確定させる権限を持つ人のことで、意見を述べる人や結果を共有される人とは明確に区別します。3人という上限は、指摘の集約が現実的に可能な人数の限界だからです。4人以上になった時点で、指摘の突き合わせという新しい作業が発生し、その作業自体が新たな遅延を生みます。

承認者・確認者・共有先の3層に分ける

役割できることできないこと回答期限適正人数
承認者公開の可否を確定する期限を過ぎてから覆す1営業日1〜3名
確認者専門領域の指摘を出す単独で公開を止める2営業日2〜4名
共有先結果と投稿URLを閲覧する修正を要求する期限なし制限なし

この3層でもっとも重要なのは、確認者に単独で公開を止める権限を与えないことです。確認者の指摘は承認者へ集約され、採否は承認者が決めます。法務や薬事の指摘は事実上ほぼすべて採用されますが、それでも判断の主体を承認者に置いておくと、指摘が出そろわないまま止まる事態を防げます。

承認者を選ぶ4つの条件

承認者に指名すべき人は、次の4条件を満たす人です。第一に、商材の訴求内容について責任を持てる立場にあることです。第二に、法令上のリスクについて社内の相談先を知っていることです。第三に、24時間以内にチャットへ反応できる稼働状況にあることです。第四に、不在時の代理を自分で指名できる裁量があることです。役職の高さではなく、この4条件で選んでください。

役職だけで選ぶと、決裁者が多忙すぎて手番が滞るという典型的な失敗に陥ります。上位者の関与が必要な施策であれば、投稿ごとの承認ではなく企画段階の合意で関与してもらう形が現実的です。企画段階での合意形成についてはインフルエンサーマーケティングの稟議を通す提案資料の作り方で扱っていますので、決裁者を巻き込むタイミングの設計に使ってください。

4人目が出てきたときの扱い

運用を始めると、必ず「自分も見たい」という4人目が現れます。この申し出は断るのではなく、確認者か共有先のどちらかへ振り分けてください。指摘を出したいのであれば確認者として期限内に出してもらい、状況を知りたいだけであれば共有先として結果だけを届けます。役割を明示すれば、関与したい気持ちを満たしながら、承認の直列を伸ばさずに済みます。

承認者を増やすほど止まる確率が上がります

承認者が1人のときに1営業日で終わる確認は、3人でおよそ2営業日、5人になると4営業日以上に伸びるのが実務の体感です。人数が増えるほど、全員の手番が空くタイミングを待つ時間が長くなるためです。安心のために人を増やしたつもりが、投稿予定日を守れない原因になっていないか点検してください。

リスク別に承認フローを三段階へ分ける

すべての投稿を同じ承認フローに通す必要はありません。投稿1本ごとにリスクを3段階で判定し、段階ごとに承認者と期限を変える形が、速さと安全性を両立させる現実的な設計です。低リスクの投稿まで法務を通していると、本当に法務が読むべき投稿の確認が後回しになります。

リスクレベルの判定基準

判定は担当者の主観で行うのではなく、該当する条件が1つでもあれば上の段階へ上げるという機械的なルールにします。判断に迷った時点で上の段階へ上げるのが原則です。

レベル該当する投稿の例承認者専門確認標準リードタイム
商品の紹介のみで効果効能に触れない施策担当者1名不要1営業日
価格・キャンペーン条件・比較表現を含む担当者+上長広報の目視3営業日
化粧品・健康食品・医療・金融・酒類などの規制商材担当者+上長+決裁者法務または薬事の書面確認5営業日

レベルの判定は、初稿が届いてからではなく依頼を出す前に決めてください。募集や依頼の段階でレベルが確定していれば、初稿が届いた瞬間に誰へ回すかが決まり、振り分けの時間がゼロになります。

レベルで変えるものと変えてはいけないもの

レベルによって変えるのは、承認者の人数、専門確認の有無、そして期限の3点だけです。承認基準そのものは全レベルで共通にしてください。低リスクだから表記を省いてよいという運用にすると、#PR表記の漏れのような致命的な事故が低リスク側から発生します。ステマ規制への対応は投稿の内容にかかわらず必須ですので、ステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドで示している表示ルールは全レベル共通の必須項目として扱ってください。

もう一点、変えてはいけないのが記録の残し方です。低リスクの投稿でも、承認者と承認日時は必ず記録します。事故は低リスクだと思っていた投稿から起きることが多く、そのときに記録がないと事実関係の確認から始めることになります。

規制商材はレベル判定の前に別枠へ入れる

化粧品・健康食品・医療・金融・酒類などの規制商材は、レベル判定を待たずに最初から高リスク枠へ入れてください。これらの商材は表現の可否が法令で細かく定められており、担当者の判断で線引きできる領域ではありません。商材ごとのNG表現と確認の手順は薬機法とインフルエンサー起用の基本と商材別NG表現・確認フローに整理していますので、承認基準シートを作る前に目を通しておくと、法務との往復が減ります。

規制商材で承認が遅れる最大の理由は、法務が読む順番が来ないことではなく、法務に渡す情報が足りないことです。原稿だけを渡すのではなく、商品の届出区分、使用できる表現の範囲、過去に承認された類似表現の3点をセットで渡してください。この3点が揃っていれば、法務の確認は初回で終わります。

承認期限をSLAとして数値で決める

承認期限は、原稿の受領から48時間以内に一次回答という形で数値化してください。「なるべく早く」という表現は期限として機能しません。数字で決めておけば超過したかどうかを誰でも判定でき、催促が個人的な依頼ではなくルールの適用になります。

提出物の種類別の期限表

提出物受領連絡一次回答最終承認合計の上限
フィード投稿の文面と静止画4時間1営業日1営業日2営業日
リール・ショート動画4時間2営業日1営業日3営業日
YouTubeのタイアップ動画4時間3営業日2営業日5営業日
ライブ配信の進行台本4時間2営業日1営業日3営業日
規制商材を含むすべての形式4時間3営業日2営業日5営業日

この上限は、投稿予定日から逆算した原稿提出日の設定にそのまま使えます。フィード投稿なら投稿予定日の5営業日前、動画なら7営業日前を提出期限として契約時に明記しておくと、承認の遅れが投稿日を押す事態を防げます。提出期限を契約条件へ書き込む方法はインフルエンサー契約書の作り方と必須チェック項目で扱っています。

みなし承認を置くかどうかの判断

期限を過ぎたら自動的に承認とみなす、いわゆるみなし承認のルールは、低リスクの投稿に限って有効です。中リスク以上で採用すると、誰も読んでいない原稿が公開される事故につながります。導入するのであれば対象を低リスクの投稿に限定し、みなし承認が発動した件数を月次で集計してください。発動が続く場合は、承認者の稼働が足りていない証拠になります。

みなし承認を置かない選択も十分に合理的です。その場合は、期限の超過を自動で検知する仕組みを代わりに置きます。管理表に受領日時と回答期限の列を持たせ、超過した行だけを毎朝抽出する運用にすれば、催促の判断に迷いがなくなります。

不在時の代理承認をあらかじめ指名する

承認が止まる典型的な原因は、承認者の出張・休暇・終日の会議です。この対策は単純で、承認者を指名した時点で代理承認者も同時に指名しておくだけです。代理承認者は役職ではなく氏名で指定し、承認基準シートの閲覧権限を平時から与えておいてください。当日になって代理を探し始めると、それだけで1営業日が失われます。

代理承認者には、判断の範囲もあわせて渡します。たとえば「必須項目の不備がなければ承認してよい」「新しい訴求表現が出てきた場合は保留にする」という2行の指針があれば、代理でも迷わず判断できます。権限だけを渡して基準を渡さないと、代理承認者は結局本人の帰任を待ちます。

差し戻しを1回で終わらせる指示の出し方

差し戻しは1回で終わらせる前提で設計します。修正の往復が2回を超えると、日程が崩れるだけでなく、インフルエンサー側の意欲が明確に下がります。1回で終わらせる鍵は、指摘の量を減らすことではなく、指摘の性質を分類して優先順位を明示することです。

指摘を4分類にして優先順位を示す

分類該当する内容対応伝え方
必須(法令)薬機法・景表法・#PR表記の不備修正しなければ公開しない該当箇所と根拠を明示する
必須(事実)価格・仕様・期間の誤り修正しなければ公開しない正しい情報を併記して渡す
推奨訴求の順序や導線の不足可能なら反映を依頼する理由と期待できる効果を添える
任意言い回しや語尾の好み本人の判断に委ねるそもそも伝えない

この分類でいちばん効くのは、任意の指摘を伝えないという判断です。表現の細部はインフルエンサーの資産であり、企業側の好みで書き換えるとフォロワーにとって不自然な投稿になります。修正依頼の書き方そのものはインフルエンサーディレクションの進め方と指示書で詳しく扱っていますので、指示書の作成とあわせて型を決めておいてください。

全員の指摘を1通にまとめて出す

指摘は必ず1通にまとめ、施策担当者の名前で送ります。法務から届いた文言をそのまま転送すると、相手には冷たい通知として届き、意図が伝わりません。集約する際は必須・推奨・任意の順に並べ、必須の項目には修正後の文案を添えてください。文案まで用意すると、差し戻しから再提出までの日数がおおむね半分になります。

まとめる作業には30分ほどかかりますが、往復が1回減ることで得られる時間はその何倍にもなります。急いでいるときほど指摘を小出しに送りたくなる誘惑が生まれますが、結果的に全体は遅くなります。

2回目の差し戻しが起きたときの扱い

2回目の差し戻しが必要になった場合は、原稿の問題ではなく指示書の問題だと考えてください。同じ論点で2回指摘が発生しているなら、そもそも依頼時の条件提示が不足していた可能性が高くなります。この場合は3回目を出す前に担当者と承認者で15分だけ話し、何を必須として残すかを絞り込んでください。指摘の総量を減らすほうが、結果として品質は上がります。

また、2回目の差し戻しを出す時点で、投稿予定日を動かすかどうかも同時に判断します。無理に元の日程へ戻そうとして確認を省略した投稿が、表記漏れや表現の逸脱を招く事例は少なくありません。日程の再設定は、遅れの報告ではなく事故の予防だと位置づけてください。

承認基準を依頼前に文書化する

承認を早めるもっとも効果的な打ち手は、承認基準を依頼の前に文書化し、インフルエンサーと社内の双方へ同時に配ることです。基準が事前に共有されていれば初稿の段階で外れる箇所が激減し、そもそも差し戻す必要がなくなります。承認フローの改善とは、確認を速くする取り組みではなく、確認すべき量を減らす取り組みです。

承認基準シートに載せる10項目

承認基準シートは、A4で1枚から2枚に収めてください。載せる項目は次の10点です。

この10項目のうち、上から4つは法令とブランド保護に直結するため、例外なく必須として扱ってください。残りは商材や媒体によって重要度が変わりますので、施策ごとに取捨選択して構いません。項目を増やしすぎると読まれなくなりますので、迷ったら削る方向で判断します。

指示書と承認基準書を1つにまとめない

指示書は「何を作ってほしいか」を伝える文書で、承認基準書は「何が揃えば公開できるか」を定める文書です。目的が異なるため、1つにまとめると分量が膨らみ、どちらも読まれなくなります。指示書はインフルエンサー向けに、承認基準書は社内の承認者向けに、それぞれ最適な粒度で書き分けてください。ただし両者の内容が矛盾すると現場が混乱しますので、必須項目だけは同じ文言をコピーして揃えます。

承認基準書がある状態では、承認者の作業は判断ではなく照合になります。判断には時間がかかりますが、照合は数分で終わります。承認が速い組織とそうでない組織の差は、この一点にあると言っても言い過ぎではありません。

NG表現リストの更新サイクル

使ってはいけない表現のリストは、四半期に1回の頻度で見直してください。法令の解釈や媒体の規約は変わりますし、自社の商品説明が変われば言えることも変わります。更新の担当は法務ではなく施策担当者に置き、法務には差分だけを確認してもらう形にすると、更新が止まりません。過去に指摘を受けた表現は必ずリストへ追記して、次回以降の差し戻しを予防します。

承認ログの残し方と証跡の粒度

承認の記録は、誰が・いつ・どの版を・どの条件で承認したかの4点をセットで残します。この4点が揃っていない記録は、後から問題が起きたときに証跡として機能しません。速さを追求する取り組みであっても、記録の省略だけは避けてください。

記録すべき5項目と保存期間

実務で必要になる記録は、承認者の氏名、承認の日時、承認した原稿の版数、承認時に付した条件、そして公開後の投稿URLの5項目です。版数を残さない運用が非常に多いのですが、修正を重ねた案件では「承認したのはどの版か」が争点になります。ファイル名に日付と版数を必ず入れてください。保存期間は二次利用の許諾期間が終わるまでを最低ラインとし、規制商材では3年程度を目安にすると安全です。

承認時に付した条件というのは、たとえば「公開日を9月10日以降とすること」「コメント欄で効果効能に言及しないこと」といった但し書きのことです。この但し書きは口頭で伝わりやすい一方、記録されないまま忘れられます。条件付き承認の場合は、条件そのものを本文に書いて残してください。

記録媒体の使い分け

媒体向いている用途弱点証跡としての強さ
メール最終承認の確定連絡検索性が低い強い
ビジネスチャット指摘の集約と社内相談過去ログが流れる中程度
スプレッドシート状態と期限の管理本文が残らない弱い
個人のDM速報的な連絡のみ担当者以外が読めない非常に弱い
プラットフォーム提出から承認までの一元管理社外の関係者を招く手間強い

実務では、日常のやり取りをチャットで行い、最終承認だけをメールかプラットフォーム上で確定させる二段構えが扱いやすくなります。個人のDMだけで完結させる運用は、担当者が交代した瞬間に経緯が失われるため避けてください。

問題が起きたときに効く記録の粒度

投稿後に指摘や炎上が発生した場合、最初に問われるのは、その表現を誰が承認したかという点です。承認ログが残っていれば事実関係の確認に時間を取られず、一次対応へ集中できます。逆に記録がないと社内の責任追及が先に始まり、対外的な対応が遅れます。発生時の初動についてはインフルエンサー施策の炎上対策と発生時の初動対応にまとめていますので、承認フローの設計とあわせて確認しておいてください。

記録は自社を守るためだけのものではありません。指示どおりに投稿したインフルエンサーを守る材料にもなります。承認の証跡があれば、相手に責任が及ばない範囲を明確に示せます。

承認リードタイムの測り方と改善

承認の速さは、受領から一次回答までの時間、受領から最終承認までの時間、そして差し戻し回数という3つの指標で測ります。感覚で「最近遅い」と話しても改善は進みませんので、まずは直近5件分を実測してください。5件あれば、どの関門がボトルネックになっているかは十分に見えます。

3指標の定義と目標値

指標計算のしかた目標値黄信号主な原因
一次回答までの時間受領日時から最初の返信まで24時間以内48時間超受領連絡の運用がない
最終承認までの時間受領日時から公開可否の確定まで3営業日以内5営業日超専門確認が直列になっている
差し戻し回数再提出を求めた回数の平均1回以下2回超承認基準が共有されていない

この3指標は、月に1回、施策単位で集計すれば十分です。指標の値そのものより、前月からの変化と、目標を外した案件で何が起きていたかを見てください。1件ごとの深掘りのほうが、平均値の追跡より改善に直結します。

ボトルネックを特定する手順

ボトルネックの特定は3つのステップで進みます。第一に、直近5件の受領日時・一次回答日時・最終承認日時を1枚の表に並べます。第二に、関門ごとの所要時間を計算し、標準所要時間との差分がもっとも大きい関門を1つだけ選びます。第三に、その関門の担当者へ当時の状況を口頭で確認します。原因はたいてい、別の締切と重なっていたか、基準が分からず判断を保留したかのどちらかです。

原因が稼働の重なりであれば代理承認者の指名で解決し、基準の不明確さであれば承認基準シートへの追記で解決します。どちらも仕組みで対処できる問題ですので、担当者個人の努力目標にしないでください。

最初に削るべき2つの工程

改善の初手として効果が大きいのは、原稿確認のための会議と、任意指摘の2つを廃止することです。確認のために30分の会議を設定している場合、その会議が開かれるまでの待ち時間が承認リードタイムの大半を占めています。非同期のコメントに切り替えるだけで、平均1営業日以上を短縮できます。任意指摘の廃止は前述のとおりで、差し戻し回数そのものを減らします。

逆に、削ってはいけないのが受領連絡と承認ログです。この2つは所要時間が短いうえに、削ると遅延と事故の両方を招きます。短縮の対象は待ち時間であって、記録ではありません。

体制別の承認フロー例と導入の3ステップ

自社に合う承認フローは、社内の体制と商材の規制の強さで決まります。以下は2026年9月時点で実務上よく見られる4つの型の目安です。自社に近い型を出発点にして、関門の数と期限だけを調整してください。

体制別の承認者構成と標準リードタイム

体制承認者の構成標準リードタイム向いている施策注意点
担当者1人で運用担当者のみ1営業日ギフティング中心の少人数施策不在時に完全に止まる
マーケ部門+上長担当者+上長2〜3営業日報酬ありの通常のPR投稿上長の会議日程に依存する
法務・薬事を含む担当者+上長+法務4〜5営業日規制商材・大型キャンペーン並列化しないと倍の日数になる
代理店を経由代理店+自社担当+上長5〜7営業日多数の起用を束ねる施策関門が二重になりやすい

代理店を経由する場合にリードタイムが伸びるのは、代理店側の確認と自社側の確認が直列に積み上がるためです。契約時に、代理店の一次確認と自社の一次確認を同時に行うと取り決めておくだけで、1〜2営業日は短縮できます。施策全体の進め方はインフルエンサーマーケティングの進め方6ステップと標準スケジュールで整理していますので、承認フローを全体スケジュールへ組み込む際の下敷きにしてください。

プラットフォーム上で承認を完結させる

提出から承認までを1つのプラットフォーム上で完結させると、受領日時・版数・承認者・条件が自動的に記録として残ります。メールとチャットとスプレッドシートに情報が散らばっている状態と比べて、探す時間がなくなる分だけリードタイムが縮みます。担当者の交代や増員が発生しても、経緯をたどれる状態が保たれます。

Bloomでの投稿承認の進め方

Bloomでは、審査制インフルエンサー30,000人への打診から原稿の提出、修正のやり取り、投稿の報告までを同じ画面上で進められます。やり取りが個人のDMに閉じないため、誰がいつどの版を確認したのかが記録として残り、承認の経緯を後から追えます。初期費用0円・相場の1/3の水準から始められますので、まずは1本の投稿を対象に、受領から承認までの日数を測るところからお試しください。

導入の3ステップ

これから承認フローを整えるなら、着手の順序は3段階です。第一に、直近5件の承認リードタイムを実測し、現状の日数を数字で把握します。第二に、承認者・確認者・共有先の3層を紙に書き出し、承認者を3人以内に確定します。第三に、承認基準シートを1枚作り、次の依頼から相手にも同時に配ります。この3つを終えるまでにかかる時間は、合計で3時間ほどです。

ツールの導入やフロー図の清書は、この3ステップのあとで構いません。順序を逆にすると、決まっていない基準をツールへ載せることになり、運用が定着しないまま形だけが残ります。承認を早める作業は、道具を増やす作業ではなく、決めごとを先に置く作業です。

投稿承認は、施策のなかで唯一、自社の意思決定だけで日数を縮められる工程です。承認者3人以内、一次回答48時間以内、差し戻し1回までという3つの上限を今日決めるだけで、次の施策から投稿予定日を守りやすくなります。まずは直近の1件について、受領から承認までに何時間かかったのかを測るところから始めてみてください。

本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。