インフルエンサーに投稿してもらった直後、社内で必ず出てくるのが「結局どれくらい効いたのか」という問いです。クリック数やクーポン利用数は追えますが、SNSで見て気になった人の多くは、その場でリンクを踏まずに後からブランド名で検索します。この動きを数字にできるのが指名検索です。ところが実務では、どのクエリを指名として数えるのか、いつからいつまでを比べるのか、増えた分をどう説明するのかが決まっていないまま、感覚で「増えた気がする」と報告されがちです。この記事では、指名クエリの定義づくりから、Search Consoleとトレンドの使い分け、施策前のベースライン取得、投稿日を起点にした計測ウィンドウ、増分と1件あたりコストの出し方、社内共有の型までを、2026年9月時点で実行できる手順としてまとめました。

この記事の要点

  • 指名検索とは、企業名・ブランド名・商品名といった固有名詞を含む検索のことです。インフルエンサー施策では、投稿を見た人が「あとで調べよう」と思ったかどうかを示す、もっとも素直な認知指標になります。
  • 測定はクエリの定義から始めます。純粋指名・準指名・併記型の3層に分け、表記ゆれと打ち間違いまで含めた指名クエリ辞書を、施策が始まる前に確定させてください。
  • 主な計測手段はSearch Console・Google トレンド・キーワードプランナー・サードパーティのSEOツール・指名検索広告の表示回数の5つです。日次の実数に最も近いのはSearch Consoleです。
  • Search Consoleには2025年11月にGoogleが発表したブランドクエリフィルタがあり、指名と非指名の切り分けが一気に楽になりました。ただし判定は自動で編集できないため、自前の指名クエリ辞書との併用が前提です。
  • ベースラインは投稿日の直前ではなく8〜12週間さかのぼって取り、投稿日を0日目としてD0〜D2、D3〜D7、D8〜D28の3段階で比較します。増分を施策費用で割れば、指名検索1件あたりコストとして他施策と比較できます。

指名検索がインフルエンサー施策の指標になる理由

指名検索は、インフルエンサー施策で生まれた興味が、実際の検索行動にまで変わったかどうかを示す指標です。投稿を見ただけの人と、名前を覚えて後から自分で調べた人とでは、購買に至る確率がまったく違います。リーチ数やいいね数は投稿の届き方を表しますが、その人が行動を起こしたかまでは表しません。指名検索は、その一段先を見るための数字です。

指名検索の定義と対象範囲

指名検索とは、企業名・ブランド名・商品名といった固有名詞を含む検索のことです。ブランドを知らない人は打ちようがない語なので、指名検索数の推移はそのまま「そのブランドを知っている人がどれだけ増えたか」の代理指標になります。英語圏ではブランデッドサーチと呼ばれ、Googleも自社のドキュメントの中で、ブランド名そのものに加えて、ブランド名の表記ゆれやスペルミス、ブランドに紐づく商品名やサービス名を含む検索をブランドクエリとして扱うと説明しています。

裏返せば、一般名詞だけの検索は指名検索には入りません。たとえば「オールインワン美容液」は非指名クエリで、「◯◯(ブランド名)美容液」は指名検索です。この境界をどこに置くかで数字が大きく動きますので、後述する定義リストを先に作ることが重要になります。

クリック計測だけでは取りこぼす動き

インフルエンサー施策の計測は、計測用リンクと固有クーポンコードが基本になります。ただしこの2つだけでは、投稿を見た人の行動をかなり取りこぼします。ストーリーズのリンクは24時間で消えますし、フィード投稿ではプロフィール欄のリンクを経由する必要があり、動画を見ている最中に画面を切り替えたくない人は、そもそもリンクを踏みません。

その代わりに起きるのが、後から検索エンジンでブランド名を打つ行動です。この経路は計測用リンクを通りませんので、リンククリックだけを見ていると、施策の貢献を実態より小さく見積もることになります。計測手段全体の組み立て方はインフルエンサー施策の効果測定の方法と計測ツールで整理していますので、指名検索を全体のどこに置くかを確認したうえで読み進めてください。

指名検索でわかることとわからないこと

観点指名検索でわかること指名検索ではわからないこと
認知名前を覚えて調べた人がどれだけ増えたかがわかります覚えたけれど調べなかった人の数はわかりません
興味の強さ検索するほど気になったかどうかがわかります好意的に受け止めたかどうかはわかりません
時間の広がり投稿から何日後まで想起が続いたかがわかります誰が検索したかという属性はわかりません
媒体の貢献投稿日をずらせば媒体別の傾向がつかめます投稿が重なった日の内訳は分解できません
売上との関係検索から自社サイトへの流入増は追えます検索した人が競合を選んだ場合は見えません
ブランド態度関心の量的な変化は追えます好感度や購入意向の変化は追えません

右の列を見てわかるとおり、指名検索は万能ではありません。好意度や購入意向まで知りたい場合は、別途アンケート調査を組み合わせる必要があります。逆に言えば、追加コストをかけずに毎日取れる認知指標としては、これ以上に扱いやすいものがありません。まず指名検索を土台に据え、必要に応じて調査を足すという順番が現実的です。

指名クエリの定義リストを施策前に固める

指名検索の測定は、どのクエリを指名として数えるかを決めるところから始まります。この定義が曖昧なままだと、月ごとに数え方が変わり、増減の議論が成立しません。作業自体は1時間もかかりませんので、施策の企画段階でスプレッドシートに落とし、関係者の合意を取っておいてください。

3層に分けて洗い出す

指名クエリは、純粋指名・準指名・併記型の3層に分けると管理しやすくなります。層を分ける理由は、インフルエンサー施策で最初に動くのが純粋指名であり、時間をかけて増えていくのが準指名だからです。まとめて1つの数字にすると、この時間差が見えなくなります。

含めるクエリ例(架空ブランド「ソラリ」の場合)施策での動き方
純粋指名ブランド名・企業名・商品名の単独検索ソラリ/SOLARI/ソラリ 公式投稿当日から数日で最も鋭く動きます
準指名ブランド名+購買に近い語ソラリ 口コミ/ソラリ 解約/ソラリ 店舗純粋指名の数日〜2週間あとに動きます
併記型ブランド名+競合名・一般語ソラリ 比較/ソラリ ◯◯(競合)検討が進んだ段階で少しずつ増えます
インフルエンサー起点ブランド名+起用者名や投稿の文脈ソラリ ◯◯(起用者名)/ソラリ 紹介 動画誰の投稿が刺さったかを示す手がかりになります

4行目のインフルエンサー起点のクエリは見落とされがちですが、施策の評価では非常に価値があります。起用者の名前と自社ブランド名を並べて検索する人が出ているなら、その投稿は視聴者の記憶に強く残ったと判断できます。次回の継続起用を検討する材料にもなりますので、必ず監視対象に入れてください。継続起用の考え方はインフルエンサーの継続起用と長期契約の設計・運用ガイドにまとめています。

表記ゆれと打ち間違いを拾う

指名クエリの取りこぼしで最も多いのが、表記ゆれとローマ字入力の打ち間違いです。カタカナ表記、ひらがな表記、アルファベット表記、全角と半角の違い、スペースの有無、長音記号の有無を、それぞれ独立したクエリとして辞書に入れてください。動画を見て名前を耳で覚えた人は、正しい綴りを知らないまま検索しますので、聞き取りに近い誤表記もかなりの割合で発生します。

洗い出しの近道は、Search Consoleの検索パフォーマンスでブランド名の一部を部分一致で検索し、実際に発生しているクエリを眺めることです。想定していなかった綴りが必ず数件見つかります。作業は施策の前に一度、施策の直後にもう一度行い、新しく現れた綴りを辞書に追加してください。インフルエンサーが動画内でブランド名をどう発音したかによって、新しい表記ゆれが生まれることがあります。

除外リストを先に決める

拾うだけでなく、除外するクエリも決めておく必要があります。よくあるのが、同じ読みの別ブランドや、一般名詞に近いブランド名の扱いです。たとえばブランド名が一般的な単語と同じ場合、その語の検索数には自社と無関係な検索が大量に混ざります。この場合は単独の語を指名から外し、必ずカテゴリ語と組み合わせたクエリだけを指名として数えると安定します。

また、社内からの検索や、取引先が社名を調べる動きもノイズになります。規模の大きな企業ほど無視できない量になりますので、自社ドメインへの流入を見る場合は社内IPを除外した計測環境を用意してください。除外ルールも辞書と同じシートに書き残し、判断した理由まで添えておくと、担当者が変わっても数字の連続性が保たれます。

指名検索を測る5つの手段と使い分け

指名検索を測る手段は、Search Console・Google トレンド・キーワードプランナー・サードパーティのSEOツール・指名検索広告の表示回数の5つです。それぞれ見ている数字の性質が違うため、1つだけで判断すると読み違えます。日次の実数に最も近いSearch Consoleを主軸に置き、他の手段は補助として使う構成が扱いやすくなります。

Search Consoleの検索パフォーマンス

Search Consoleは、自社サイトが実際に検索結果に表示された回数とクリック数を、クエリ単位で日次に確認できるツールです。指名検索の測定においては、これがもっとも実数に近い数字になります。検索パフォーマンスのレポートを開き、クエリのフィルタでブランド名を部分一致に設定すれば、その語を含む検索での表示回数とクリック数の推移が取れます。

注意すべき制約が3つあります。Search Consoleのヘルプによると、検索パフォーマンスのデータは16か月分しか保持されず、表に表示される行は1,000行までに制限され、さらにプライバシー保護のため、まれなクエリは項目別の一覧から省略されます。省略されたクエリの数値は合計には含まれるため、クエリ別の合計とサイト全体の合計は一致しません。長期比較をしたい場合は、月次でデータをエクスポートして自社側に保管しておいてください。

Google トレンドで相対的な山を見る

Google トレンドは、自社サイトへの流入を伴わない検索も含めて、世の中全体の検索の動きを見られる点が強みです。指名検索が増えても、検索結果で競合サイトやまとめ記事がクリックされた場合、Search Consoleには表示回数としてしか残りません。トレンドはそうした状況でも山の形を教えてくれます。

ただしトレンドの数値は実数ではありません。Google トレンドのヘルプによると、表示されるのは指定した期間と地域の中でもっとも人気が高かった時点を100とした0〜100の相対値であり、検索回数そのものではありません。検索数が少ない語は0と表示されることもあります。立ち上げ期のブランドでは、指名検索が数百件増えてもトレンド上はまったく動かないという状況が普通に起こりますので、小規模な施策の評価には使わないでください。

キーワードプランナーとサードパーティのSEOツール

Google広告のキーワードプランナーは、月間平均検索ボリュームを確認できます。ただし広告の運用実績がないアカウントでは、1万〜10万といった幅のある表示になり、月次の粗い把握にしか使えません。日次で動く施策の評価には向きませんので、年間の推移を見る用途に限定してください。

サードパーティのSEOツールは、独自の推定値でブランド名の検索ボリュームを出してくれます。競合ブランドの指名検索と自社を並べて比較できる点が最大の利点です。推定値である以上、絶対値の精度は期待できませんが、競合との相対的な位置関係を追う目的なら十分に役立ちます。競合の動きを含めた分析の進め方は競合のインフルエンサー施策を調べる競合分析の手順にまとめています。

5つの手段の比較

手段取れる数値粒度向いている用途注意点
Search Console表示回数・クリック数・掲載順位日次・クエリ別施策前後の増分の算出16か月保持・まれなクエリは省略されます
Google トレンド相対的な人気度(0〜100)日次・週次大型施策の山の確認実数ではなく小さな変化は0になります
キーワードプランナー月間平均検索ボリューム月次年単位の底上げの確認広告実績がないと幅表示になります
サードパーティSEOツール推定検索ボリューム月次競合ブランドとの比較推定値のため絶対値は参考程度です
指名検索広告の表示回数広告の表示回数・検索回数日次日次の需要変動の把握広告費が発生し配信設定に左右されます

5番目の指名検索広告は、自社ブランド名に少額で検索広告を出しておき、その表示回数を指名検索の日次センサーとして使う方法です。すでに指名検索広告を運用しているなら、追加コストなしで日次データが手に入ります。Search Consoleが自社サイトの表示分しか拾えないのに対し、こちらは検索そのものの発生を拾えるため、両者を並べると解像度が上がります。

Search Consoleのブランドクエリフィルタの使い方と限界

ブランドクエリフィルタは、Search Consoleの検索パフォーマンスをブランドクエリと非ブランドクエリに一括で切り分けられる機能です。従来は正規表現を自分で書いて指名クエリを抽出する必要がありましたが、この機能によって数クリックで切り分けられるようになりました。指名検索を継続的に追う担当者にとっては、作業時間が大きく減る変更です。

2025年11月に発表された機能の位置づけ

Googleは2025年11月、検索セントラルのブログでSearch Consoleへのブランドクエリフィルタの導入を発表しました。当初は一部のプロパティに限定された公開でしたが、その後段階的に展開が進み、2026年3月には広く利用できる状態になったと国内のSEO専門メディアが報告しています。2026年9月時点では、多くのプロパティで標準機能として利用できます。

この機能でブランドクエリとして扱われるのは、ブランド名そのものに加え、ブランド名の表記ゆれやスペルミス、そのブランドに紐づく商品名やサービス名を含むクエリです。前章で作った指名クエリ辞書の考え方とほぼ同じ範囲を、Googleが自動で判定してくれると理解してください。

実務での操作手順

操作は難しくありません。Search Consoleにログインし、左メニューの検索パフォーマンスを開いて、データテーブル上部のフィルタ追加からクエリを選び、ブランドクエリの条件を適用します。ブランドクエリのみ、非ブランドクエリのみのどちらでも絞り込めますので、施策期間とベースライン期間でそれぞれ数値を出し、差分を取る流れになります。

実務では、非ブランドクエリ側も同時に確認することをおすすめします。インフルエンサー施策の影響はブランドクエリに集中して現れますので、非ブランド側が横ばいのままブランド側だけが伸びていれば、SEOの一般的な変動ではなく施策の効果だと説明しやすくなります。逆に両方が同じ比率で伸びている場合は、サイト全体の順位変動など別の要因を疑ってください。

自動判定の精度と自前の辞書の併用

自動判定は編集できません

ブランドクエリの判定はGoogle側の内部システムが自動で行っており、2026年9月時点では利用者が対象語を編集できません。国内のSEO専門家からは、サイトによって分類の精度に差があり、明らかに自社名を含む語が非ブランドクエリ側に分類される事例も報告されています。したがって、この機能だけで指名検索を管理するのは危険です。自前の指名クエリ辞書による正規表現フィルタを併用し、両方の数字を並べて記録してください。両者に大きな乖離が出た場合は、辞書側の数字を正としたほうが説明がつきます。

実務上の落としどころは、日常のモニタリングをブランドクエリフィルタで軽く回し、四半期ごとの正式なレポートでは自前の辞書で集計するという二段構えです。前者は工数が小さく毎週見られますし、後者は定義が固定されているため、期をまたいだ比較に耐えます。どちらの数字を使ったかをレポートに明記しておけば、後から見返したときに混乱しません。

施策前に取るベースラインの設計

ベースラインは、投稿日の直前ではなく8週間から12週間さかのぼって取ります。直前の2週間だけを基準にすると、たまたま静かだった週や、別の広告が動いていた週の影響をまるごと背負ってしまいます。長めに取って平均と振れ幅の両方を押さえておけば、施策後の数字が誤差の範囲かどうかを判断できます。

期間の長さと曜日の揃え方

指名検索には明確な曜日の波があります。BtoC商材では週末に伸び、BtoB商材では平日に伸びるのが一般的です。この波を無視して「投稿翌日が前日比で30%増えました」と報告すると、曜日の影響なのか施策の影響なのかを説明できません。比較は必ず同じ曜日どうし、あるいは7日間の単位で行ってください。

推奨する取り方は、施策開始の12週間前から前週までを週単位で並べ、週合計の平均値と標準的な振れ幅を出しておく方法です。振れ幅は、最大週と最小週の差を平均で割った比率で十分です。この比率を超える増加が出たときに初めて、施策の効果として説明できます。

記録しておくデータ項目

記録する項目取得元粒度使いどころ
指名クエリの表示回数Search Console日次増分の主指標になります
指名クエリのクリック数Search Console日次受け皿ページの吸収力を見ます
指名クエリのCTRSearch Console週次検索結果での取りこぼしを見ます
ノーリファラー流入GA4日次アプリ経由や直接入力の動きを見ます
オーガニック検索の新規セッションGA4日次初見の来訪が増えたかを見ます
他チャネルの出稿量各広告管理画面週次ノイズ要因の切り分けに使います
プレス・メディア露出社内の広報記録都度想定外の山の原因特定に使います

この表のうち、下2行を軽視しないでください。指名検索が跳ねた日に別の広告が始まっていたり、テレビや大手メディアで取り上げられていたりすると、施策の効果として説明した数字が後から覆ります。関係部署の予定を先に集め、施策期間と重なる出稿やリリースがあれば、レポートに注記する前提で記録しておいてください。投稿日の置き方そのものの考え方はPR投稿のタイミング設計と投稿日を分散させる考え方で詳しく扱っています。

ベースラインを取り損ねた場合の代替案

もう投稿が始まってしまった場合

ベースラインを取らないまま施策が始まってしまうことは実際によくあります。その場合でも、Search Consoleは過去16か月分のデータを保持していますので、遡って取得すれば十分に間に合います。前年の同じ週を比較対象に使う方法も有効で、季節性の影響を自然に打ち消せます。どうしても比較対象が作れない場合は、施策の対象外にしている別ブランドや別カテゴリの指名検索を対照群として並べ、そちらが動いていないことを確認する形でも説明できます。次回に向けては、企画書の段階でベースライン取得のタスクを入れておいてください。

投稿日を起点にした計測ウィンドウの決め方

計測ウィンドウは、投稿日を0日目としてD0〜D2、D3〜D7、D8〜D28の3段階に分けます。指名検索は投稿直後に鋭い山を作り、その後なだらかに減衰し、最終的にベースラインより少し高い水準で落ち着くという形をとることが多いためです。この3段階に分けると、瞬間的な反応と、記憶に残った分とを切り分けて説明できます。

3段階のウィンドウと見るべき指標

ウィンドウ期間主に現れる動きこの期間で判断すること
D0〜D2投稿当日から2日目指名検索の急峻な山投稿の初速と訴求の強さを判断します
D3〜D73日目から7日目山の減衰の傾き記憶にどれだけ残ったかを判断します
D8〜D288日目から28日目ベースラインの底上げ認知が定着したかを判断します
D29以降29日目以降新しい平常値次回施策のベースラインとして使います

もっとも見落とされるのがD8〜D28です。この期間の平均がベースラインより高い水準で安定していれば、一過性の話題ではなく認知が積み上がったと判断できます。投稿から1週間で計測を打ち切ると、この最も価値のある部分を見ずに終わることになりますので、最低でも28日間は追ってください。

媒体ごとの立ち上がりの違い

ウィンドウの読み方は媒体によって変わります。ストーリーズは24時間で消えるため、D0〜D1に山が集中し、その後はほとんど尾を引きません。フィード投稿は数日かけてじわじわ届きます。リールやTikTokの短尺動画はレコメンドで配られ続けるため、投稿から1週間後に伸び始めることもあり、D8〜D28に二つ目の山が立つケースがあります。

YouTubeのタイアップ動画は、さらに時間軸が長くなります。検索やレコメンドから継続的に視聴されるため、指名検索も数か月にわたって少しずつ発生します。この場合はD28で締めず、90日間の累積で評価したほうが実態に合います。媒体ごとの性質の違いはInstagram・TikTok・YouTube インフルエンサー施策の媒体比較にまとめていますので、計測期間を決める前に確認しておいてください。

起用人数が多いときの投稿日の配置

複数人を同時に起用する場合、投稿日を同じ日に集中させると、誰の投稿が指名検索を動かしたのかが分解できなくなります。同日に10人が投稿すれば大きな山は作れますが、その山を10で割って説明することしかできません。分解して評価したいのであれば、投稿日を意図的にずらす設計が必要です。

実務的な配置は、2日から3日の間隔を空けて1人ずつ投稿してもらう形です。前の投稿の山がベースライン付近まで戻ってから次の投稿が入るため、それぞれの寄与を独立して読めます。認知の総量を短期間で最大化したい発売日などの場面では集中投下が正解になりますので、分解して測りたいのか、瞬間最大風速を作りたいのかを先に決めてください。目的別のKPIの置き方はインフルエンサー施策のKPI設計とテンプレートで整理しています。

増分の出し方と指名検索1件あたりコスト

増分は、施策期間の指名検索数からベースラインの同じ日数分を引いて求めます。式そのものは単純ですが、比較する日数と曜日構成を揃えること、そして他の要因を差し引くことの2点を守らないと、社内で通用する数字になりません。ここでは具体的な計算の手順を示します。

増分の計算式と実例

基本の式は、増分指名検索数イコール施策期間28日間の指名検索表示回数マイナス、ベースライン期間の1日あたり平均掛ける28、です。ベースラインの1日あたり平均は、施策開始前の12週間の合計を84で割って求めます。曜日構成を揃えるため、施策期間は必ず7の倍数で区切ってください。

数値例で確認します。ベースライン12週間の指名クエリ表示回数の合計が16,800回だったとすると、1日あたり平均は200回です。施策期間28日間の合計が8,600回であれば、期待値は200掛ける28で5,600回ですので、増分は3,000回になります。伸び率でいえば約1.54倍です。この3,000回が、施策によって新たに発生した指名検索の推定量になります。

指名検索1件あたりコストの考え方

増分が出たら、施策費用を増分で割って1件あたりのコストを出します。この数字があると、他の認知施策と同じ土俵で比較できるようになります。以下は考え方を示すための計算例です。

起用構成施策費用28日間の増分指名検索数指名検索1件あたりコスト
ナノ・マイクロ中心10人30万円3,000回100円
ミドル層5人60万円4,000回150円
ミドル層3人+マイクロ10人80万円8,000回100円
メガ1人150万円10,000回150円

※上の表は計算方法を説明するための架空の数値で、実際の増分は商材・起用者・季節によって大きく変わります。自社の1件あたりコストは、最初の施策で実測してから基準値として使ってください。

この数字の使い道は2つあります。1つは施策間の比較で、次にどの構成に予算を寄せるかを決める材料になります。もう1つは他チャネルとの比較で、同じ予算をSNS広告に投じた場合に指名検索がどれだけ増えるかと並べれば、認知施策としての効率を議論できます。金額ベースの評価軸をそろえる考え方はインフルエンサーマーケティングのROIと費用対効果の測り方に詳しくまとめています。

他の要因を差し引く簡易的な方法

増分をそのまま施策の成果と言い切ると、必ず「他の広告の影響では」という指摘が入ります。厳密な因果推論には差分の差分法やマーケティング・ミックス・モデリングといった手法がありますが、中小規模の施策でそこまで組むのは現実的ではありません。実務では、対照となる数字を1つ用意する簡易的な方法で十分に説得力が出ます。

使いやすい対照は3つあります。1つ目は自社の非ブランドクエリで、こちらが横ばいならサイト全体の変動ではないと示せます。2つ目は前年同期の指名検索で、季節性を打ち消せます。3つ目は施策の対象にしていない自社の別ブランドや別カテゴリで、全社的な要因ではないと示せます。この3つのうち2つで「動いていない」ことを確認できれば、増分を施策の寄与として説明して差し支えありません。

増えた指名検索を取りこぼさない受け皿の点検

指名検索が増えても、検索結果の1位が自社でなければ売上には届きません。せっかく興味を持って名前を検索した人が、まとめサイトや競合の比較記事に流れてしまえば、施策の費用で競合を助けたことになります。投稿が始まる前に、自社ブランド名で検索したときの1ページ目がどうなっているかを必ず確認してください。

検索結果の1ページ目を自社で埋める

理想は、公式サイト・公式SNSアカウント・公式のブランド紹介ページなどで1ページ目の上位を占めている状態です。実際に検索してみて、口コミサイトや価格比較サイトが上位に入っている場合は、その面での見え方を整えることが先決になります。ネガティブなサジェストが出ている場合も、施策で検索が増えるほど目に触れる回数が増えますので、先に対処が必要です。

あわせて確認したいのが、指名クエリのCTRです。表示回数は伸びているのにクリック率が低い場合、タイトルや説明文が検索意図に合っていない可能性があります。ブランド名で検索する人は公式情報を探していますので、タイトルにブランド名と「公式」を明示するだけで改善することがあります。

着地ページと導線の点検

クリックされた先のページが、投稿で見た内容とつながっているかも確認してください。インフルエンサーが特定の商品を紹介したのに、着地するのがトップページで、その商品にたどり着くまでに3クリック必要という状態は珍しくありません。施策期間中だけでも、トップページに該当商品への導線を目立つ位置で用意しておくと取りこぼしが減ります。

ECサイトの場合は、在庫と表示の整合も重要です。投稿を見て検索した人が来たときに品切れ表示になっていると、その需要はそのまま消えます。施策の開始前に在庫数と補充のリードタイムを確認しておいてください。ECにおける導線の作り方はインフルエンサー施策をEC売上につなげる導線設計で具体的に解説しています。

指名検索への広告出稿を判断する基準

自然検索での状況指名検索広告の出稿判断の理由
公式サイトが1位で競合の広告もない出稿しない選択も合理的ですすでに取りこぼしが少ない状態です
公式サイトが1位だが競合が広告を出している出稿します広告枠に自社が不在だと上部を取られます
公式サイトが2位以下出稿します自然検索での取りこぼしを広告で補えます
施策期間中で検索が急増している期間限定で出稿します山の期間だけ確実に受け止められます
ブランド名が一般名詞と重なる慎重に判断します無関係な検索にも配信され費用が膨らみます

指名検索広告は1クリックあたりの単価が低く抑えられることが多く、施策期間中だけ出す運用は費用対効果が読みやすい打ち手です。ただし、自然検索で確実に1位を取れており競合の広告もない状態では、本来無料で取れた流入に費用を払うことになります。実際の検索結果を目視で確認してから判断してください。

週次レポートと社内共有の型

レポートは、指名検索の推移グラフ1枚と数値表1枚の合計2枚に収めます。枚数を増やすほど読まれなくなりますし、指名検索は単独で完結する指標ではありませんので、施策全体のレポートの中に定位置を作って毎回同じ形で載せるほうが伝わります。フォーマットを固定すれば、作成時間も回を追うごとに短くなります。

1枚目のグラフと2枚目の表に載せる項目

1枚目のグラフは、横軸を日付、縦軸を指名クエリの表示回数にした折れ線で、ベースラインの平均値を水平の点線で重ねます。投稿日には縦の目印を入れ、誰の投稿かがわかるラベルを添えてください。この1枚で、投稿と検索の山の対応関係がひと目で伝わります。

記載する内容作り方
ベースライン1日あたり平均の指名検索表示回数施策前12週間の合計を84で割ります
施策期間の実績D0〜D28の合計表示回数Search Consoleから期間指定で取得します
増分実績マイナス期待値期待値はベースライン平均掛ける28です
伸び率実績を期待値で割った倍率小数第2位まで記載します
1件あたりコスト施策費用を増分で割った金額費用には二次利用料も含めます
受け皿の状況指名クエリのCTRと掲載順位ベースライン期間との差で記載します
対照の確認非ブランドクエリと前年同期の動き動いていないことを一文で添えます

数字が動かなかったときの書き方

指名検索がまったく動かない回も当然あります。そのときに「効果がありませんでした」とだけ書くと、施策そのものの継続判断が感情的になります。動かなかった理由の候補を、事実にもとづいて並べてください。投稿の再生数が想定を下回った、商品名が検索しにくい語だった、投稿でブランド名が音声でしか触れられずテキストに出ていなかった、といった具体的な原因が見つかることが多くあります。

特に多いのが、投稿内でブランド名が正確に表示されていなかったケースです。動画で口頭に触れるだけでは、視聴者は正しい綴りを覚えられません。次回の依頼書に、テロップとキャプションでのブランド名表記を必須項目として入れるだけで、指名検索の伸びが変わることがあります。改善点を次回の依頼内容に翻訳して書くところまでがレポートの役割です。

次の発注判断につなげる

レポートの最後には、次にどうするかを1行で書いてください。指名検索が想定以上に伸びた起用者には継続を打診する、伸びなかった構成は次回の候補から外す、受け皿のCTRが低かったのでタイトルを改修する、といった具体的な行動です。数字を並べるだけで終わるレポートは、回を重ねても施策が良くなりません。

意思決定に必要な情報が毎回同じ場所にそろっていれば、稟議の場でも議論が短くなります。指名検索は経営層にも直感的に理解されやすい指標ですので、予算の継続を説明する材料としても使いやすい数字です。認知目的の施策で成果を説明しにくいと感じている場合は、まずこの1枚を作るところから始めてみてください。

指名検索の分析でよくある失敗

もっとも多い失敗は、比較する期間の取り方が揃っていないことです。日数も曜日構成も違う期間を並べて増減を語ると、施策とは無関係な差が混ざります。ここでは、実務で繰り返し起きる3つの落とし穴と、その回避の仕方をまとめます。

期間と曜日のずれによる誤解

投稿翌日と前日を比べる、あるいは30日間と28日間を比べるといった比較は避けてください。指名検索には曜日の波があり、月末月初の波を持つ商材もあります。比較は7の倍数の日数で、同じ曜日構成になるように区切るのが原則です。祝日を含む週は前後の週より動きが変わりますので、注記を添えておくと後から読み返したときに誤解されません。

もう1つ注意したいのが、Search Consoleのデータ反映の遅れです。直近1日から2日のデータは確定していないことがあり、そのまま集計すると数字が過少に出ます。締めの作業は最低でも3日空けてから行ってください。

ツールの数値を実数として扱う

Google トレンドの数値を検索回数として資料に書いてしまう例をよく見かけます。前述のとおりトレンドが示すのは0〜100の相対値で、期間や比較対象を変えれば同じ日の値が変わります。資料に載せる場合は、必ず相対値である旨と、比較の基準にした期間を明記してください。

キーワードプランナーの月間平均検索ボリュームも同様です。あれは複数月をならした平均値ですので、施策があった月の実際の検索数とは一致しません。日次や週次の変化を語る場面では使わず、Search Consoleの実測値を使ってください。ツールの性質を理解して使い分けることが、社内の信頼を落とさない一番の近道です。

投稿日と実績データを揃える運用

分析が破綻する原因の多くは、分析手法ではなく元データの管理にあります。誰がいつ投稿したのか、投稿URLはどれか、実際の再生数はいくつだったのかが担当者のメモやチャットに散らばっていると、指名検索の山と投稿を突き合わせる作業そのものが成立しません。起用人数が10人を超えると、この照合だけで数時間かかることも珍しくありません。

Bloomのようなマッチングプラットフォームを使う利点は、投稿日と投稿URL、そして実績値が案件単位で一箇所にそろうことです。指名検索の推移をエクスポートして横に並べれば、どの投稿の直後に山が立ったかをその日のうちに確認できます。審査制のため候補の質が一定に保たれ、同じ条件で複数回の施策を回したときに、指名検索の増分を横比較しやすいという利点もあります。計測の設計と発注の運用は別物に見えますが、実際には元データがそろっているかどうかで、分析にかけられる時間が決まります。

本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。