インフルエンサーの投稿で商品が売れても、その人がその後もう一度買ってくれるかどうかは、顧客データを残していなければ追いかけられません。この記事では、インフルエンサー経由で獲得した顧客をCRMに取り込み、既存顧客への施策につなぐまでの手順をまとめます。流入を顧客レコードに紐づける4つの手段の比較、CRMに持たせる項目の設計、流入元別のLTVと再購入率の追い方、そして獲得単価と突き合わせて次回の起用を判断する運用までを扱います。EC・サブスク・予約型サービスのマーケティング担当者が、今回の施策から実装できる形で解説します。

この記事の要点

  • インフルエンサー施策とCRMの連携とは、投稿から入ってきた人を顧客レコードとして保存し、獲得元のインフルエンサーと結びつけて既存顧客施策につなぐ仕組みのことです
  • 紐づけ手段は「専用クーポンコード」「インフルエンサー別LP」「UTMパラメータ」「初回アンケートの流入元設問」の4つが軸で、精度と実装難度が違うため2つ以上の併用が前提になります
  • CRM側には最低限「獲得インフルエンサーID」「投稿ID」「獲得日」「紐づけ手段」の4項目を持たせます
  • 流入元別にLTVと再購入率を並べ、獲得単価と突き合わせて次回の起用可否を決めます
  • データを取る前に、同意取得と利用目的の明示、そして使っているツールで何ができないのかを先に確認します

インフルエンサー施策とCRM連携の基本

インフルエンサー施策とCRMの連携とは、投稿を見て入ってきた人の情報を自社の顧客データベースに取り込み、獲得元のインフルエンサーや投稿と結びつけて管理する取り組みのことです。広告の効果測定が「今回いくら売れたか」で完結するのに対し、CRM連携は「その人がこの先いくら買うか」までを同じ顧客レコードの上で追いかけます。

インフルエンサー施策は、投稿が出た当日から数日で反応のピークを迎えます。その短い山の中で獲得した人を、名前もメールアドレスも流入元もわからないまま通り過ぎさせてしまうと、施策はその場の売上だけで終わります。逆に、獲得した人がCRMに乗っていれば、翌月も半年後も、その人に対して打ち手を持てます。連携の目的はここにあります。

連携していない状態で何が失われるのか

連携していない現場では、インフルエンサー施策の評価が投稿直後の売上と広告管理画面の数字だけで完結します。この状態では、同じ売上額でも「一度買って終わる顧客を集めた施策」と「その後も買い続ける顧客を集めた施策」の区別がつきません。単価の安いインフルエンサーが実は定着率の低い層を連れてきていた、という事実は、CRM側に流入元が残っていない限り一生わからないままです。

もうひとつ失われるのが、既存顧客施策との接続です。インフルエンサー経由の顧客は、広告経由や検索経由の顧客と比べて、商品を知った文脈がかなり具体的です。誰のどんな投稿を見て買ったのかがわかっていれば、初回フォローのメールもそこから始められます。流入元が残っていなければ、全員に同じ定型メールを送るしかありません。

連携の対象は「人」であって「セッション」ではない

効果測定ツールが扱うのはセッションやブラウザ単位の行動です。一方でCRMが扱うのは人単位のレコードです。この違いを意識しないまま設計すると、Cookieが切れた時点で流入元が消える、アプリとブラウザで別人として登録される、といった形で情報が失われます。

実務上の原則はシンプルで、流入元の情報は「セッションの属性」ではなく「顧客レコードの属性」として、会員登録や初回購入のタイミングで書き込みます。一度書き込んだ獲得元は、その後どれだけ時間が経っても上書きしません。この「初回獲得元は不変」というルールを最初に決めておくことが、後の分析の精度を左右します。

連携によって判断できるようになること

CRMに流入元が乗ると、次の4つが判断できるようになります。まず、インフルエンサー別・投稿別の獲得単価です。次に、その顧客群の平均LTVです。三つ目が再購入率と離脱までの期間です。四つ目が、次回に同じインフルエンサーを起用すべきかどうかの判断材料になります。

この4つがそろって初めて、インフルエンサー施策は「やってみて売れた施策」から「再現できる獲得チャネル」に変わります。効果測定の全体像についてはインフルエンサー施策の効果測定の方法と計測ツールもあわせてご確認ください。

流入を顧客レコードに紐づける4つの手段

インフルエンサー経由の流入を顧客レコードに紐づける手段は、専用クーポンコード、インフルエンサー別LP、UTMパラメータ、初回アンケートの流入元設問の4つが基本です。どれか1つで完結する方法は存在しないため、精度と実装難度を見比べて2つ以上を組み合わせます。

4手段の比較

下表は、それぞれの手段の紐づけ精度、実装難度、CRMに取り込めるデータをまとめたものです。精度は「その顧客が本当にそのインフルエンサー経由か」を取り違えにくいかどうか、実装難度はエンジニアの工数と運用の手間をあわせた体感で示しています。

紐づけ手段紐づけ精度実装難度CRMに取れるデータ向いているケース
専用クーポンコード高い(本人が入力するため取り違えが起きにくい)低い(EC標準機能で発行できることが多い)インフルエンサーID・利用日時・注文ID・割引額ECで即時購入を狙う施策
インフルエンサー別LP高い(着地したURLが一意)中程度(人数分のページ生成と管理が必要)インフルエンサーID・着地日時・フォーム入力内容予約・資料請求・会員登録など非EC
UTMパラメータ中程度(Cookie失効や別端末で欠落する)低い(URL発行のみ)流入元媒体・キャンペーン名・投稿単位の識別子全施策の土台として常時付与
初回アンケートの流入元設問中程度(本人申告のため記憶違いが混じる)低い(フォームに1問追加するだけ)自己申告の流入元・インフルエンサー名の選択値計測が切れやすいアプリや実店舗
紹介コード入力欄(会員登録フォーム)高い(登録と同時に人に紐づく)中程度(フォーム改修とコード管理が必要)インフルエンサーID・登録日時・会員ID会員制サービス・サブスク商材
専用QRコード(同梱物・店頭)中程度(読み取り後の離脱で欠落する)中程度(印刷物の手配が必要)読み取り元の識別子・読み取り日時オフライン接点を挟む施策

組み合わせの基本形

実務でまず整えたいのは、「UTMパラメータを全投稿に付けたうえで、インフルエンサーごとにクーポンコードを発行する」という形です。UTMは取りこぼしが出ますが全流入に付けられるため面の把握に向き、クーポンコードは付与率が低くても確実に人と結びつくため点の把握に向きます。役割が違うので、どちらかで代替することはできません。

非EC商材の場合は、クーポンコードの代わりにインフルエンサー別LPと紹介コード入力欄を置きます。予約や資料請求のフォームに「紹介コード」欄を1つ足すだけで、流入元が顧客レコードに直接書き込めるようになります。個別の設定手順はインフルエンサー施策のUTMパラメータ設定と流入計測の手順とインフルエンサー施策のクーポンコード設計と利用数の測り方で解説しています。

初回アンケートの流入元設問の書き方

初回アンケートは、計測が切れやすい環境で最後の砦になります。ポイントは、自由記述にしないことです。「どこで知りましたか」という自由記述は集計できない回答の山になるため、選択肢としてインフルエンサー名を並べます。施策で起用した人数が多い場合は、「Instagramの投稿で知った」→「どなたの投稿でしたか」と2段階に分けると回答率を落とさずに精度を保てます。

設問は購入完了直後、サンクスページまたは初回メールの中に置きます。時間が空くほど記憶は曖昧になるため、24時間以内に聞くのが目安です。回答はCRMのカスタム項目に保存し、クーポンやUTMの情報と突き合わせて、どちらも取れなかった顧客の補完に使います。

紐づけ手段を1つに絞らない

クーポンコードだけに頼ると、コードを使わずに買った顧客が丸ごと抜け落ちます。UTMだけに頼ると、投稿を見てから後日ブランド名で検索して買った顧客が「自然検索」として記録されます。最低でも2手段を併用し、どちらでも取れなかった分は初回アンケートで補うのが安全です。

CRM側に持たせる項目の設計

CRM側に持たせる項目は、「獲得インフルエンサーID」「投稿ID」「獲得日」「紐づけ手段」の4つが最小構成です。この4つがあれば、インフルエンサー別・投稿別・時期別・精度別のどの切り口でも集計できます。逆にこれより少ないと、後から分析軸を足したくなったときに作り直しになります。

最小構成の4項目

項目はすべて顧客レコード(コンタクト、会員、アカウントなど呼び方はツールによって異なります)に持たせます。注文レコード側ではなく顧客レコード側に置くのは、LTVや再購入率が人単位の指標だからです。

項目名型値の例役割
獲得インフルエンサーID文字列(固定値)INF-0142誰の投稿から獲得したかを一意に特定する
獲得投稿ID文字列INF-0142-IG-2609-01同じ人の複数投稿を見分ける
獲得日日付2026-09-25投稿日からの経過日数を測る
紐づけ手段選択肢クーポン / LP / UTM / アンケートデータの確からしさを区別する
獲得キャンペーン名文字列2026秋_新商品_第1弾施策単位でまとめて評価する
獲得媒体選択肢Instagram / TikTok / YouTube媒体別の質の違いを見る

インフルエンサーIDは、SNSのアカウント名ではなく自社で採番した固定IDにしてください。アカウント名は改名されることがありますし、同じ人が複数媒体でアカウントを持っている場合に名寄せができなくなります。IDと媒体アカウントの対応表は、CRMとは別に管理台帳として持っておきます。

「紐づけ手段」項目を必ず入れる理由

紐づけ手段を項目として残すのは、データの確からしさが手段によって違うからです。クーポンコード経由の100人と、アンケートの自己申告による100人を、同じ重みで扱うと判断を誤ります。分析のときに「クーポン経由のみ」で絞った数字と「全手段」で見た数字を並べれば、推計の幅を持ったまま意思決定ができます。

この項目があると、精度の低い手段の割合が高いインフルエンサーを見つけることもできます。UTMとアンケートでしか取れていない人が多いということは、クーポンの提示が投稿内で弱かった可能性があります。次回の指示書を直す材料になります。

上書きルールと例外処理

獲得元の4項目は、最初に書き込んだ値を上書きしないのが原則です。2回目以降に別のインフルエンサーの投稿を経由して買った場合は、「再訪インフルエンサーID」など別項目に追記します。初回獲得元を上書きしてしまうと、獲得単価の分母がずれ、LTVの計算も壊れます。

例外として扱うのが、同一人物が複数アカウントで登録してしまったケースです。メールアドレスや電話番号で名寄せして統合する際は、獲得日が古いほうのレコードの獲得元を残します。この統合ルールを決めずに運用を始めると、半年後にデータの整合が取れなくなります。

取り込みの運用フローと投稿前の準備

データの取り込みは、投稿が出る前に準備が完了していなければ成立しません。投稿公開の3営業日前までに、コード発行・URL発行・CRM項目の作成・テスト購入までを終えているのが理想の状態です。投稿が出てから慌てて設定すると、初日の最も反応が大きい時間帯のデータが丸ごと欠けます。

投稿前に終えておく6つの準備

  1. インフルエンサーIDの採番と管理台帳への登録
  2. インフルエンサー別クーポンコードまたは紹介コードの発行
  3. UTM付きURLの発行と、短縮URLを使う場合はその設定
  4. CRMのカスタム項目6つの作成と、値の選択肢の登録
  5. フォームやチェックアウトからCRMへの書き込み経路のテスト
  6. テスト注文を1件流し、CRM側に4項目が正しく入ることの確認

特に見落とされやすいのが6番目です。クーポンコードはEC側に記録されていても、それがCRMの顧客レコードにコピーされる経路が組まれていない、というケースは珍しくありません。テスト注文を1件流して、CRMの画面上で項目が埋まっていることを目視で確認してください。

インフルエンサー側への伝え方

コードやURLは、インフルエンサーに渡す指示書の中で用途まで含めて説明します。「このコードを投稿のキャプション末尾と、ストーリーズのテキストに入れてください」というところまで書かないと、プロフィールリンクだけに置かれて使われないまま終わります。コードの有効期限と割引率も明記します。

あわせて、コードが計測目的であることも伝えておくと協力を得やすくなります。成果が可視化されることは、継続起用や報酬の交渉材料としてインフルエンサー側にも利点があります。指示書全体の作り方はインフルエンサーディレクションの進め方と指示書を参照してください。

取り込み後のデータ点検

投稿から3日後、7日後、30日後の3回、データの点検日を決めておきます。点検するのは、獲得元が空欄のまま登録された顧客の件数と割合、同じコードが想定外の回数使われていないか、そして手段別の内訳です。空欄の割合が3割を超えている場合は、計測の設計そのものを見直す必要があります。

点検作業は月次レポートの前ではなく、施策の最中に行うことに意味があります。投稿から30日経ってから欠損に気づいても、その施策のデータは取り戻せません。

流入元別のLTV比較の作り方

流入元別のLTV比較は、獲得月でコホートを切り、同じ経過月数で横並びにして作ります。獲得時期がばらばらの顧客を単純平均すると、単に古い顧客が多い流入元のLTVが高く見えるだけの表になってしまいます。

コホートの切り方

基本は「獲得月 × 流入元」でグループを作り、獲得から30日後・90日後・180日後・365日後の累計購入金額を並べます。インフルエンサー施策は投稿のタイミングで獲得が集中するため、月ではなく「投稿週」で切ったほうが実態に合う場合もあります。

比較対象には、必ずインフルエンサー以外の流入元も入れてください。広告経由、自然検索経由、既存顧客の紹介経由を並べることで、インフルエンサー経由の顧客が相対的にどうなのかが見えます。単独で見ても、その数字が良いのか悪いのか判断できません。

比較表の例

下表は、獲得から180日時点の累計購入金額を流入元別に並べた集計表の書式です。入っている数値は表の形を示すための記入例であり、実在の調査データではありません。実際の水準は商材や価格帯によって大きく変わるため、自社のデータで同じ形の表を作ることが目的になります。

流入元獲得人数初回平均単価180日LTV再購入率(180日)獲得単価
インフルエンサーA経由120人5,800円14,200円41%3,900円
インフルエンサーB経由64人6,100円8,300円22%7,200円
SNS広告経由430人5,400円10,900円31%5,100円
自然検索経由280人6,300円16,500円47%—
既存顧客の紹介38人7,100円21,400円58%1,200円

この記入例では、インフルエンサーAは獲得単価3,900円に対して180日LTVが14,200円となり、回収倍率はおよそ3.6倍です。一方のインフルエンサーBは獲得単価7,200円に対して8,300円で、倍率は1.2倍にとどまります。同じ「インフルエンサー経由」でも、1枚の表に並べれば評価が分かれることがわかります。

この表の使い方は、180日LTVと獲得単価を割り算して回収倍率を出すことです。倍率が1を下回っていれば、その流入元は180日時点でまだ投資を回収できていません。回収までにどれだけの期間が必要かを見るために、30日・90日・180日と時点を刻んで並べます。

人数が少ない場合の扱い

インフルエンサー1人あたりの獲得人数が数十人に満たない場合、個人単位のLTVは偶然の影響を強く受けます。高額商品を1人が買っただけで平均が跳ね上がるためです。この場合は、フォロワー規模帯や媒体でまとめたグループ単位で比較し、個人の数字は参考値として扱います。

判断に使えるだけの人数がそろうまでは、LTVよりも再購入率や初回購入から2回目までの日数のほうが安定した指標になります。母数が小さいうちは、金額ではなく行動の指標を見るのが実務的です。ROIの考え方全般はインフルエンサーマーケティングのROIと費用対効果の測り方でも整理しています。

インフルエンサー経由の顧客に出す初回フォローの設計

インフルエンサー経由の顧客への初回フォローは、獲得元の文脈を引き継いだ内容に出し分けます。全流入元に同じウェルカムメールを送ることは、せっかくCRMに書き込んだ獲得元情報を使わないまま捨てているのと同じです。

出し分けの分岐条件

分岐の条件は、CRMに入れた「獲得インフルエンサーID」または「獲得キャンペーン名」を使います。条件の粒度は、インフルエンサー1人ごとに作り込むのではなく、施策単位または商材単位でまとめるのが運用上は現実的です。20人起用して20通のメールを作ると、更新が追いつかなくなります。

実務では、共通のウェルカムメールの中で1ブロックだけを差し替える形が扱いやすくなります。冒頭の一文と、おすすめ商品のブロックだけを流入元で切り替え、残りは共通にします。

盛り込む内容と避ける内容

盛り込むのは、投稿で紹介された商品の使い方、同じ悩みに向けた関連商品、次回購入のきっかけになる情報です。インフルエンサーが投稿で触れていた使い方を、そのまま初回メールで補足するとつながりが自然になります。

避けたいのは、インフルエンサーの名前や写真を、本人の許諾範囲を超えて使うことです。投稿の二次利用可否は契約で定めた範囲に従います。メールへの転載が契約に含まれていない場合、名前を出すだけでもトラブルの原因になります。二次利用の考え方はUGCマーケティングの活用法と二次利用の進め方にまとめています。

送信タイミングの目安

初回フォローは購入または登録の当日、2通目は商品が届く頃、3通目は初回使用から2週間後というのが基本形です。インフルエンサー経由の顧客は、投稿を見た勢いで購入していることが多いため、届いてからの体験づくりが再購入を左右します。

ステップ全体の本数は3通から5通に収めます。反応の良し悪しは開封率よりも、2回目の購入に至った割合で判断してください。

再購入率と定着の追跡

再購入率は、獲得元ごとに「初回購入から90日以内に2回目の購入があった人の割合」で追うのが基本です。LTVよりも早く結果が出るため、次回の起用判断に間に合う指標として使えます。

見るべき3つの指標

追跡するのは、2回目購入率、2回目までの平均日数、そして3回目到達率の3つです。2回目購入率は定着の入口、2回目までの日数は商品との相性、3回目到達率は本当のロイヤル化を示します。この3つを流入元別に並べると、インフルエンサー経由の顧客がどこで落ちているかがわかります。

よくあるパターンは、2回目購入率は他チャネルと同等なのに、2回目までの日数が明らかに長いというものです。これは、投稿を見て買ったものの、自分の消費ペースに合っていない商品を選んだ可能性を示します。初回フォローで使い方を補足することで改善することがあります。

解約・離脱の追跡

サブスク商材の場合は、購入回数ではなく継続月数と解約率で追います。インフルエンサー経由の顧客は初月の解約率が高く出ることがあり、その場合は投稿での説明と実際のサービス内容にずれがあった可能性を疑います。サブスク特有の採算設計はサブスク商材のインフルエンサー施策とLTV基準の採算設計で詳しく扱っています。

解約理由のアンケートにも、流入元別の集計を効かせてください。インフルエンサー経由だけ特定の理由が突出しているなら、投稿内容の作り方に原因があります。

追跡結果をインフルエンサー側に返す

再購入率や定着の結果は、可能な範囲でインフルエンサー本人にも共有すると、次回の投稿の質が上がります。個別の顧客情報は当然共有できませんが、「あなた経由の方は2回目の購入率が高かった」といった集計レベルの情報であれば問題なく伝えられます。

この情報共有は、継続起用の関係づくりにも効きます。単発発注を繰り返すより、成果を共有しながら継続するほうが結果的に安くつくケースが多くあります。継続起用の設計はインフルエンサーの継続起用と長期契約の設計・運用ガイドを参考にしてください。

獲得単価とLTVを突き合わせた起用判断

次回の起用可否は、獲得単価とLTVの回収倍率で決めます。投稿の再生数やいいね数ではなく、「この人経由の顧客1人を獲得するのにいくらかかり、その人が180日でいくら使ったか」という2つの数字を並べるのが、CRM連携ができている企業の判断基準です。

判断マトリクス

下表は、獲得単価と回収倍率の組み合わせで次のアクションを整理したものです。自社の許容獲得単価をあらかじめ決めておき、それを基準に4象限に振り分けます。

獲得単価180日回収倍率判断次のアクション
許容範囲内1倍以上継続起用投稿本数を増やし、二次利用で広告に転用する
許容範囲内1倍未満条件付き継続初回フォローとリピート導線を改善してから再評価する
許容超過1倍以上条件交渉報酬形態や本数の見直しで単価を下げられるか交渉する
許容超過1倍未満起用見送り類似の属性を持つ別のインフルエンサーを探す

判断に必要なデータがそろうまでの期間

180日の回収倍率を待っていると、判断が半年遅れます。実務では、90日時点の中間評価で仮判断を下し、180日時点で確定させる二段構えにします。90日時点では、2回目購入率と累計購入金額の伸び方を見て、180日の着地を推定します。

季節性の強い商材では、獲得時期によって回収カーブが変わります。年末商戦で獲得した顧客と閑散期に獲得した顧客を同じ基準で比べないよう、比較は同じ時期同士で行ってください。

単価だけで切らない

獲得単価が高いインフルエンサーでも、連れてくる顧客の質が高ければ回収できます。逆に、単価が安くても定着しない顧客ばかりなら、安さは意味を持ちません。CRM連携の最大の価値は、この「単価と質を同時に見る」判断を可能にすることです。

なお、判断は複数回の起用データで行ってください。1回の投稿だけでは、投稿時期や内容の当たり外れの影響が大きく、その人の実力を測れません。最低2回、できれば3回のデータで判断します。

個人情報の取扱いと同意取得の注意点

インフルエンサー経由で取得した顧客データも、取得と利用のルールは通常の顧客データと同じです。日本では個人情報保護法に基づき、利用目的をあらかじめ公表または通知したうえで、その範囲内で利用することが求められます。CRM連携を始める前に、自社のプライバシーポリシーの記載が実際の運用と合っているかを確認してください。

確認すべき4点

  • プライバシーポリシーの利用目的に、マーケティング分析やメール配信が含まれているか
  • メール配信について、受信者の同意を取得する導線が用意されているか
  • 取得した流入元情報を第三者に提供する場面がないか(インフルエンサー本人への共有も含む)
  • データの保管場所と保管期間、削除の手順が定められているか

特に3点目は見落とされがちです。集計値の共有は問題になりませんが、「誰が買ったか」の個別情報をインフルエンサーに渡すことは第三者提供にあたります。共有する情報は必ず個人が特定できない粒度にしてください。

アンケートで流入元を聞くときの注意

初回アンケートで流入元を聞く場合も、その回答を何に使うのかを画面上に短く書き添えます。「今後のご案内の改善に利用します」といった一文があるかないかで、回答率にも信頼感にも差が出ます。回答を任意にするか必須にするかは、離脱率とのトレードオフで判断してください。

キャンペーン応募のような形でデータを集める場合は、応募条件と個人情報の取扱いを同じ画面に明示します。ステルスマーケティング規制への対応と混同しやすい領域ですが、別の論点として整理してください。表示ルールはステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドにまとめています。

社内での取り扱い範囲

CRMに入った顧客データにアクセスできる人の範囲も決めておきます。インフルエンサー施策の担当者が顧客の個別情報まで見る必要があるかというと、多くの場合は集計画面だけで足ります。権限設計を絞ることは、事故の防止と同時に、退職や異動のときの引き継ぎも軽くします。

外部の代理店やキャスティング会社に分析を委託する場合は、委託先の監督義務が発生します。契約書に再委託の可否とデータの取り扱いを明記してください。

CRM・MAツール側の制約と現実的な回避策

ツール側の制約は、導入前に「できること」ではなく「できないこと」から確認するのが実務的です。多くのつまずきは、機能不足そのものではなく、想定していた連携が標準機能では実現できないと後から判明することで起きます。

よくある3つの制約

1つ目は、カスタム項目の数や型の制限です。プランによって作れる項目数に上限があり、選択肢型の項目に登録できる値の数にも制限がある場合があります。インフルエンサーを数十人単位で起用する場合、IDを選択肢型で持つと上限に当たることがあるため、文字列型で持つほうが安全です。

2つ目は、ECカートやフォームからCRMへの項目引き渡しです。標準連携で渡せるのは氏名・メールアドレス・注文情報までで、カスタム項目は別途APIや連携ツールを挟む必要があるケースが多くあります。ここは要件定義の段階で必ず確認してください。

3つ目は、コホート分析の作り込みです。獲得月別の累計購入金額を時点で切って並べる集計は、CRMの標準レポート機能では作れないことがあります。その場合はデータを書き出して表計算ソフトやBIツールで集計する運用になります。

ツール選定時に確認する質問

  1. 顧客レコードにカスタム項目をいくつまで作れますか
  2. 利用中のECカートやフォームから、カスタム項目に値を渡せますか
  3. カスタム項目の値でセグメントを作り、メールを出し分けられますか
  4. 獲得月別のコホート集計は標準機能で作れますか、データ書き出しは可能ですか
  5. 顧客レコードの統合(名寄せ)をしたとき、カスタム項目はどちらが残りますか

これらは、製品名で比較する前に、自社の要件として言語化しておくべき項目です。国内外に多くのCRM・MA製品がありますが、料金体系も機能範囲もプランや時期によって変わるため、2026年9月時点の情報であっても各社の最新の公式資料で確認することをおすすめします。

ツールがない場合の最小構成

CRMやMAを導入していない段階でも、連携の考え方自体は始められます。ECカートの顧客一覧に「備考」や「メモ」の欄があれば、そこにインフルエンサーIDを書き込むだけでも、後から集計は可能です。表計算ソフトで顧客リストを管理し、獲得元の列を1つ足すという形からでも十分に始まります。

大切なのは、完璧な仕組みを待たずに、今回の施策から獲得元を記録し始めることです。記録がない期間のデータは後から復元できません。導線設計そのものについてはインフルエンサー施策をEC売上につなげる導線設計もあわせてご覧ください。

今日から始めるための3ステップ

  • 今動いている施策のインフルエンサーにIDを採番し、管理台帳を1枚作ります
  • 顧客データの保管場所に「獲得インフルエンサーID」「獲得日」「紐づけ手段」の3列を足します
  • 次の投稿分から、クーポンコードとUTMの2手段を必ず付けて配信します

インフルエンサー施策は、投稿が出た日の数字で語られがちです。しかし本当に見るべきなのは、そこで獲得した人がその後どう振る舞ったかです。CRMに獲得元を書き込む作業は地味ですが、これができている企業とできていない企業では、1年後に持っている判断材料の量がまったく違います。今回の施策から、まず1列足すところから始めてみてください。

本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。