インフルエンサーに仕事を依頼しようとしたとき、候補の人が事務所に所属しているか、個人で活動しているかによって、連絡の窓口も契約の相手も、費用の決まり方も大きく変わります。「事務所経由のほうが安心だが高い」「個人に直接頼むと安いが手間がかかる」という印象はあっても、具体的に何が違い、自社の施策ではどちらを選ぶべきかを説明できる担当者は多くありません。この記事では、インフルエンサーの事務所経由と個人起用の違いを、窓口・契約・請求・料金・スピード・表現の自由度・競合案件の制約といった実務の観点から比較し、商材や目的に応じた使い分けの基準とチェックリストまで、発注企業の担当者向けに整理します。

この記事の要点

  • インフルエンサーの起用経路は、所属事務所を通す「事務所経由」と、本人と直接やり取りする「個人起用(直接依頼)」の2つに大きく分かれます。
  • 事務所経由は窓口・契約・請求が整っていて安心感がある一方、事務所の取り分が乗るため費用は高めになりやすく、競合排他や事務所の承認といった制約も増えます。
  • 個人起用は費用を抑えやすく表現の自由度も高い反面、条件の明示・支払期日・源泉徴収・ステマ規制対応などの実務を発注企業がすべて担います。
  • 商材のリスクの高さ、起用人数、二次利用の範囲、社内の運用体制の4点で使い分けると判断がぶれません。
  • どちらの経路でも、条件を書面で残し、投稿の確認手順と競合案件の確認を事前に決めておくことが共通の前提です。

事務所所属と個人起用の違い(起用経路の基本)

インフルエンサーの起用経路は、本人が所属する事務所を通して依頼する「事務所経由」と、本人に直接依頼する「個人起用」の2つに分かれます。どちらを選ぶかで、連絡の窓口、契約の相手、請求書の発行元、報酬の決まり方、投稿内容に対する確認の流れまでが変わります。

インフルエンサー事務所とは、インフルエンサーやクリエイターと所属契約やマネジメント契約を結び、企業案件の受付・条件交渉・スケジュール管理・契約手続き・請求などを本人に代わって行う会社のことです。YouTuberを中心としたMCN(マルチチャンネルネットワーク)や、モデル・タレント事務所がSNSで活動する人材をマネジメントしている形も含まれます。一方の個人起用とは、事務所に所属していない、あるいは所属していても個人での受注が認められているインフルエンサーに、企業がDMやメール、マッチングプラットフォームなどを通じて直接依頼する形です。

起用経路の全体像を比較します

まず、2つの起用経路の違いを主要な観点で一覧にします。細かい実務の違いは次章以降で順に解説します。

観点事務所経由個人起用(直接依頼)
連絡の窓口事務所のマネージャー・営業担当インフルエンサー本人
契約の相手事務所(法人であることが多い)本人(個人事業主・一人法人など)
請求書の発行元事務所本人
費用の水準事務所の取り分が乗るため高めになりやすい本人報酬のみで抑えやすい
条件交渉事務所の料金表や規定に沿うため柔軟性は低め本人と直接話せるため柔軟性は高め
対応スピード確認が事務所を経由するため段階が増える本人が即答できれば速い
表現の自由度事務所の方針・NG事項の範囲内本人と企業の合意次第
競合排他・他案件の制約事務所の承認や既存契約が絡む本人の申告に依存する
発注企業の事務負担少なめ多め(法令対応・源泉徴収など)

キャスティング会社・代理店との違いも押さえます

事務所経由と混同されやすいのが、キャスティング会社や広告代理店を通した起用です。事務所は「自社に所属する人材」を企業につなぐ立場で、キャスティング会社は「事務所所属・個人を問わず外部の人材」を企業の要望に合わせて探して手配する立場です。つまり、キャスティング会社を使っても、その先で起用される人が事務所所属であれば、実務上は事務所の規定や承認が絡みます。発注先の業態ごとの違いはキャスティング会社 vs プラットフォーム徹底比較、施策の運用を誰が担うかの比較は自社運用 vs 代理店委託 メリデメ完全ガイドで整理しています。本記事は、その手前の「インフルエンサー本人が事務所所属か個人か」で起用実務がどう変わるかに絞って解説します。

所属しているかどうかの確かめ方

候補のインフルエンサーが事務所に所属しているかは、プロフィール欄の「お仕事のご依頼は〇〇まで」という記載や、連絡先メールアドレスのドメインで判断できることが多いです。プロフィールに事務所名が書かれていなくても、DMで依頼すると「事務所を通してください」と案内されることがあるため、最初の連絡で所属の有無と依頼窓口を確認しておくと二度手間を防げます。所属していても、ジャンルや媒体によっては個人での受注が認められている場合があるので、その範囲も合わせて確認します。

窓口と連絡体制の実務差

事務所経由では事務所の担当者が窓口になり、個人起用ではインフルエンサー本人が窓口になります。この違いは、連絡の速さだけでなく、情報の伝わり方や記録の残り方、担当者の負担にまで影響します。

事務所経由の窓口の特徴

事務所経由では、マネージャーや営業担当者が企業とのやり取りを一手に引き受けます。案件の打診、条件のすり合わせ、スケジュール調整、投稿内容の確認依頼、請求までを同じ担当者とメールで進めるのが一般的で、ビジネス上の連絡に慣れているため、企業側の担当者にとってはやり取りがしやすい形です。複数の所属インフルエンサーをまとめて提案してもらえることもあり、候補探しの手間を減らせる点も利点です。

一方で、企業の意図が本人に伝わるまでに担当者を1人挟むため、細かいニュアンスが抜け落ちることがあります。「商品の使用感は正直に書いてほしい」「この表現は避けたい」といった要望は、ブリーフ(依頼概要書)に文章で明記し、本人に原文のまま渡してもらうよう依頼しておくと安心です。

個人起用の窓口の特徴

個人起用では、本人と直接やり取りするため、企業の意図を誤解なく伝えやすく、企画の相談や撮影のアイデア出しも双方向で進められます。熱量の高いインフルエンサーであれば、商品への理解を深めたうえで独自の切り口を提案してくれることもあります。

ただし、本人は撮影・編集・投稿・他案件の対応を1人でこなしていることが多く、返信が数日空くことも珍しくありません。また、連絡手段がSNSのDMに偏ると、条件のやり取りが記録として散らばり、後から「言った・言わない」の確認が難しくなります。条件が固まった段階でメールや発注書、プラットフォーム上のメッセージなど、記録が残る手段に移すことをおすすめします。

窓口の違いで変わる社内の工数

窓口の違いは、そのまま企業側の工数の差になります。事務所経由で5人を起用する場合、窓口が1つの事務所にまとまれば連絡先は1か所で済みますが、個人起用で5人を起用すれば連絡先は5か所になり、条件確認・催促・請求書の受領もそれぞれ発生します。起用人数が増えるほど、個人起用では進行管理の仕組みが欠かせません。進行管理の具体的な方法はインフルエンサー20人を同時に動かす進行管理と抜け漏れ対策も参考になります。

契約と請求・支払いの実務差

契約・請求・支払いの実務は、事務所経由では「法人間取引」、個人起用では「個人への業務委託」として扱うのが基本です。この違いによって、適用される法律、源泉徴収の要否、書面に書くべき項目が変わります。

事務所経由の契約と請求

事務所経由では、企業と事務所の間で業務委託契約や出演契約を結び、請求書も事務所から届きます。事務所側が契約書のひな形を用意していることも多く、報酬・投稿内容・二次利用・競合排他・キャンセル料などの規定が最初から盛り込まれています。発注企業は内容を確認して、自社の条件と食い違う箇所を修正するのが主な作業になります。

注意したいのは、事務所のひな形は事務所と本人を守る内容になっているという点です。二次利用の期間が短く設定されていたり、キャンセル料が高めに定められていたりすることがあるため、自社の利用予定と照らし合わせて確認します。契約書に必要な項目はインフルエンサー契約書の作り方と必須チェック項目で一覧にしています。

個人起用の契約と請求

個人起用では、企業が本人と直接契約を結びます。従業員を使用しない個人や一人法人に業務を委託する場合は、2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(いわゆるフリーランス法)の対象になる可能性が高く、業務内容・報酬額・支払期日などの取引条件を書面やメールで明示する義務があります。支払期日は、成果物を受け取った日から60日以内のできるだけ短い期間で定める必要があります(2026年10月時点の公正取引委員会・厚生労働省の公表資料に基づきます)。詳しくはフリーランス法の発注者義務とインフルエンサー発注の実務を参照してください。

また、個人に支払う報酬のうち、原稿料や出演料・モデル料などに当たるものは、所得税の源泉徴収の対象になることがあります。インボイス制度への対応として、本人が適格請求書発行事業者かどうかの確認も必要です。報酬の税務処理はインフルエンサー報酬の源泉徴収とインボイス対応の実務で解説しています。

契約・請求の違いを一覧にします

項目事務所経由個人起用
契約の相手事務所インフルエンサー本人
契約書のひな形事務所が用意していることが多い企業側で用意することが多い
フリーランス法事務所が従業員を使用する法人なら原則対象外対象になる可能性が高い(条件明示・60日以内の支払など)
源泉徴収法人の事務所への支払いは原則不要報酬の内容によって必要になることがある
インボイス事務所の登録状況を確認本人の登録状況を確認
支払先の数事務所単位でまとまる起用人数分に分かれる

表の内容は一般的な整理であり、個別の取引では契約の形や報酬の性質によって扱いが変わります。判断に迷う場合は、顧問の税理士や弁護士に確認してください。

料金体系と報酬折衝の難易度

同じインフルエンサーに同じ内容を依頼しても、事務所経由のほうが個人起用より費用は高くなりやすいです。事務所経由の見積もりには、本人に渡る報酬に加えて、事務所のマネジメント手数料や進行管理の費用が含まれているためです。

見積もりの中身の違い

事務所経由の見積もりは「1投稿〇〇円」のように一式で提示されることが多く、内訳が開示されないのが一般的です。事務所の取り分の割合は事務所や契約ごとに異なり、外部には公開されていません。個人起用では、本人が提示する金額がそのまま報酬になるため、何に対していくら払うのかが分かりやすくなります。ただし、本人が相場を把握していない場合は金額のばらつきが大きく、同じ規模のアカウントでも数倍の差が出ることがあります。料金の全体的な相場感はインフルエンサー起用の料金相場【2026年完全ガイド】で確認できます。

費用の要素事務所経由個人起用
本人への報酬見積もりに含まれる(内訳は非開示が多い)提示額がそのまま報酬
マネジメント手数料含まれることが多いなし
二次利用料別料金で明確に設定されていることが多い交渉次第(取り決め漏れに注意)
競合排他の対価別料金として求められることがある交渉次第
キャンセル料規定で定められていることが多い個別に取り決め
商品・交通費などの実費見積もりに明記されることが多い事前に確認しないと後から発生しやすい

折衝の難易度の違い

事務所経由では、料金表や社内規定に沿って金額が決まるため、大幅な値引きは通りにくい傾向があります。その代わり、複数人をまとめて起用する、長期で継続起用する、二次利用の範囲を絞るといった条件の組み替えには応じてもらえることがあります。個人起用では本人と直接話せるため、商品提供と報酬の組み合わせや、投稿本数と報酬のバランスなどを柔軟に調整しやすくなります。ただし、相手が個人であるぶん、企業側の立場が強くなりやすく、一方的な値下げや無理な条件の押し付けはフリーランス法上の問題にもなり得ます。交渉の進め方はインフルエンサー報酬の条件交渉の進め方と合意のまとめ方を参考にしてください。

総額で比べるときの注意点

費用を比べるときは、見積もりの金額だけでなく、社内の工数を含めた総額で判断します。個人起用で報酬を抑えられても、候補探し・連絡・契約書作成・源泉徴収の処理・請求書の管理などに担当者の時間がかかれば、その人件費も実質的なコストです。たとえば、想定例として、A社が個人起用で10人に依頼した場合、報酬は事務所経由より低く抑えられても、担当者1人が1か月の大半を進行管理に費やすことがあります。報酬の差と工数の差を並べて比べると、自社にとって割安な経路が見えてきます。

見積もりを比べる前にそろえる条件

  • 投稿の媒体・形式・本数(フィード投稿・リール・ストーリーズなど)
  • 二次利用の有無・媒体・期間
  • 競合排他の有無・範囲・期間
  • 修正の回数と、事前確認の有無
  • 商品提供・交通費などの実費の扱い

条件をそろえずに事務所経由と個人起用の見積もりを比べると、含まれている内容が違うため正しく比較できません。

対応スピードとスケジュール調整

対応スピードは、個人起用のほうが速くなる場合と遅くなる場合の両方があります。本人がすぐに返信できる状況なら個人起用が速く、本人が多忙で連絡が滞りがちなら、窓口が常に稼働している事務所経由のほうが安定して進みます。

事務所経由のスピードの特徴

事務所経由では、企業からの連絡はまず担当者が受け、本人に確認したうえで返答が届きます。確認の段階が1つ増えるため、ちょっとした質問でも1〜2営業日かかることがあります。その一方で、担当者は平日の営業時間内に安定して返信してくれるため、全体のスケジュールは読みやすくなります。撮影日や投稿日の調整も、事務所が本人の予定を把握していれば早く決まります。

個人起用のスピードの特徴

個人起用では、本人が即答できれば当日中に条件が固まることもあり、急ぎの案件や小規模なテスト施策に向いています。一方で、本人の都合で返信が遅れたり、投稿日が直前に変わったりすることもあります。返信の目安や、投稿日を変更する場合の連絡期限を最初に取り決めておくと、スケジュールの乱れを抑えられます。

スケジュールの遅れを防ぐ工夫

どちらの経路でも、遅れの多くは「投稿内容の確認」の工程で発生します。企業側の社内確認に時間がかかると、事務所経由では担当者経由の差し戻しが重なり、個人起用では本人のスケジュールを圧迫します。確認の担当者と期限を事前に決めておくことが、スピードを保ついちばんの近道です。社内確認の流れはインフルエンサー投稿の承認を早める社内確認フローの作り方で詳しく解説しています。

表現の自由度と投稿内容の確認

表現の自由度は、一般に個人起用のほうが高く、事務所経由では事務所の方針や規定の範囲内に収まります。どちらが良いかは、企業がどこまで投稿内容をコントロールしたいかによって変わります。

事務所経由での表現の制約

事務所経由では、所属インフルエンサーのイメージを守るため、事務所が独自のNG事項を設けていることがあります。たとえば、特定のジャンルの商品を扱わない、過度な比較表現を使わない、顔出しの範囲を限定するといった内容です。また、投稿の事前確認を事務所も行うため、企業・事務所・本人の三者で内容を調整することになります。結果として、投稿内容は手堅くなりやすい一方で、本人らしい自由な表現は出にくくなる場合があります。

個人起用での表現の自由度

個人起用では、本人と企業の合意さえあれば、企画の切り口や見せ方を柔軟に決められます。普段の投稿の雰囲気に近い自然な紹介ができるため、フォロワーからの共感を得やすい傾向があります。その反面、企業側が確認すべき範囲も広がります。薬機法や景品表示法に触れる表現、事実と異なる効果の表現、PR表記の漏れなどは、事務所という確認者が間にいないぶん、企業側がしっかり確認しなければなりません。

どちらでも欠かせないPR表記の確認

2023年10月1日から、景品表示法に基づく告示により、いわゆるステルスマーケティングが規制対象になりました(消費者庁の公表資料に基づきます)。広告であることを分かりやすく表示する義務は、起用経路にかかわらず広告主である企業が負います。事務所経由だから大丈夫と考えず、投稿前の確認項目にPR表記を必ず含めてください。具体的な表示方法はステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドで整理しています。

競合案件・他案件の制約と事務所の承認

事務所所属のインフルエンサーを起用するときは、競合案件の制約と事務所の承認が、個人起用よりも大きく影響します。事務所はほかの企業とも取引しているため、自社の希望だけでは条件が決まらないことがあるからです。

既存の競合排他契約による制約

所属インフルエンサーが他社のアンバサダーや専属契約を結んでいる場合、同じカテゴリの商品を紹介できないことがあります。事務所はこの情報を把握しているため、打診の段階で「競合の契約があるため受けられません」と回答してもらえることが多く、うっかり競合と重なるリスクは下げられます。一方で、自社が競合排他を求める場合は、事務所の他の案件にも影響するため、排他の対価を求められたり、範囲や期間の交渉が必要になったりします。排他の範囲の設計はインフルエンサーの専属契約・独占契約の設計と注意点で解説しています。

事務所の承認が必要になる場面

事務所経由では、次のような場面で事務所の承認が必要になるのが一般的です。

  • 投稿内容・台本・撮影の構成の確定
  • 投稿素材の二次利用や広告配信への転用
  • イベント出演やライブ配信など、投稿以外の稼働の追加
  • 投稿後の追加の依頼(追加の投稿、ストーリーズでの再告知など)
  • 本人の肖像や名前を使った自社サイト・店頭での掲載

これらは本人と直接話がまとまっていても、事務所を通していなければ契約違反になるおそれがあります。所属インフルエンサーから「個人的に追加で投稿します」と申し出があった場合も、必ず事務所に確認してから進めます。

個人起用での競合確認

個人起用では、競合案件の有無は本人の申告に頼ることになります。本人が過去の案件を覚えていなかったり、契約上の排他義務を正しく理解していなかったりすることもあるため、企業側でも過去の投稿を遡って確認するのが安全です。確認の手順はインフルエンサーの競合案件を確認する方法と起用前の注意点にまとめています。

事務所所属者を起用するときの確認ポイント

  • 現在有効な競合排他・専属契約の有無とカテゴリ・期間
  • 事務所独自のNG事項(扱わない商材・表現・露出の範囲)
  • 二次利用・広告転用の可否と別料金の有無
  • 投稿内容の確認に事務所が加わるか、確認にかかる日数
  • 本人と直接連絡してよい範囲(撮影当日の連絡など)

トラブル発生時の対応とリスク管理

トラブルが起きたときの対応力は、事務所経由のほうが高い傾向があります。事務所には所属インフルエンサーを守り、取引先との関係を保つための対応の経験と体制があるためです。

事務所経由でのトラブル対応

投稿後に炎上した、本人が体調不良で撮影に来られない、本人の不祥事が発覚したといった場面では、事務所が窓口となって状況の説明や代替案の提示を行います。契約書に損害の扱いや代替起用の規定があれば、それに沿って対応が進みます。企業側にとっては、交渉の相手が法人であるため、話し合いが感情的になりにくい点も安心材料です。

個人起用でのトラブル対応

個人起用では、トラブルの対応も本人と企業の間で直接行います。本人が対応に慣れていない場合、投稿の削除や謝罪文の掲載などの判断が遅れることがあります。また、連絡が途絶える、投稿が期日までに行われないといった事態に備えて、期日に投稿されなかった場合の扱いや、報酬の支払い条件を契約に明記しておくことが大切です。トラブル全般の対処法はインフルエンサー案件のトラブル対処と督促・返金の実務で解説しています。

どちらでも共通するリスク管理

経路にかかわらず、起用前の事前調査、契約書での取り決め、投稿前の確認、投稿後のモニタリングという4つの工程は共通です。事務所経由であっても、事務所がすべてのリスクを引き受けてくれるわけではありません。広告主としての責任は企業に残るため、自社の確認工程を省略しないようにします。

商材・目的別の使い分け基準

事務所経由と個人起用は、商材のリスクの高さ、起用人数、二次利用の範囲、社内の運用体制の4つの軸で使い分けるのが実務的です。どちらか一方に決めるのではなく、施策ごとに組み合わせる企業も少なくありません。

事務所経由が向いているケース

事務所経由が向いているのは、ブランドイメージへの影響が大きい施策や、法規制への配慮が強く求められる商材です。たとえば、化粧品・健康食品・医療関連などで薬機法への配慮が必要な場合、テレビCMや屋外広告と連動した大型キャンペーン、知名度の高い人物を起用して認知を一気に広げたい場合などです。社内にインフルエンサー施策の経験者がおらず、契約や進行管理を任せたい場合にも向いています。

個人起用が向いているケース

個人起用が向いているのは、費用を抑えて多くのインフルエンサーに依頼したい施策や、テストを繰り返しながら効果を検証したい施策です。たとえば、新商品の認知を広げるためにマイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーを数十人単位で起用する場合、地域の店舗の集客のために地元で影響力のある人に依頼する場合、商品提供を中心にしたギフティング施策などです。社内に進行管理の仕組みがあれば、個人起用の費用面の利点を最大限に生かせます。

使い分けの基準を一覧にします

判断の軸事務所経由が向く条件個人起用が向く条件
商材のリスク薬機法・景品表示法への配慮が強く必要表現上のリスクが比較的低い
起用人数少数の影響力の大きい人を起用多数のマイクロ・ナノ層に分散して起用
目的短期間での大規模な認知獲得口コミの量・継続的な発信・効果検証
二次利用広告転用やマス媒体での利用が前提SNS上での利用が中心
予算1人あたりの予算を厚くかけられる総予算を多くの人に分けたい
社内体制経験者が少なく、手続きを任せたい進行管理や法令対応の仕組みがある
スピード計画的に数か月前から準備できる小さく早く始めて改善したい

表は一般的な傾向をまとめたもので、実際には個々のインフルエンサーや事務所の方針によって異なります。迷った場合は、少人数の個人起用でテストして手応えをつかみ、成果の出た方向性で事務所所属者を起用して規模を広げるという順番も有効です。

起用経路を決める実務チェックリストと進め方

起用経路を決めるときは、施策の条件を先に書き出し、チェックリストに沿って判断すると迷いが減ります。担当者の好みや過去の慣習で決めず、毎回同じ基準で判断することが大切です。

判断前に確認するチェックリスト

確認項目確認する内容判断のヒント
目的とKPI認知・購買・口コミのどれを重視するか認知の規模重視なら事務所経由も検討
起用人数1施策で何人に依頼するか多人数なら個人起用と進行管理の仕組み
商材のリスク薬機法・景品表示法などの配慮の度合い高ければ確認体制の厚い経路を
二次利用広告転用・期間・媒体の予定範囲が広ければ契約の整った経路を
競合排他排他の要否と範囲事務所所属者は既存契約を必ず確認
社内の工数連絡・契約・支払に割ける時間少なければ窓口が1つにまとまる形を
法令対応フリーランス法・源泉徴収・インボイスの処理体制体制が無ければ個人起用の前に整備

経路別の進め方の流れ

事務所経由の場合は、施策の概要と予算を事務所に伝えて候補の提案を受け、条件をすり合わせて契約を結び、事務所を通して投稿内容を確認するという流れになります。個人起用の場合は、候補を探して本人に打診し、取引条件を書面で明示して合意し、投稿内容を確認して、期日までに報酬を支払うという流れです。どちらの場合も、最初に施策のブリーフを作り、依頼内容・NG事項・確認の流れを文章で共有しておくと、後の行き違いを防げます。依頼文の作り方はインフルエンサーへの依頼文面の書き方とテンプレート例文も参考になります。

プラットフォームで個人起用の負担を減らす方法

個人起用の費用面の利点を生かしつつ、窓口や記録の分散といった負担を減らす方法として、マッチングプラットフォームの活用があります。Bloomでは、審査を通過したインフルエンサー30,000人の中から、案件の募集に応募してきた人を選んで起用できます。やり取りや投稿の進行はプラットフォーム上に記録として残り、AIが進行管理を自動化するため、起用人数が増えても担当者の負担を抑えやすくなります。事務所経由の手厚さが必要な施策と、個人起用で数を広げたい施策を分けて考え、後者の運用基盤として使う形が現実的です。

本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。