2024年4月にトラックドライバーの時間外労働の上限規制が始まって以降、物流・運送業界の人手不足はさらに深刻になっています。求人媒体に掲載するだけでは応募が集まらず、SNSで自社の仕事を発信したり、インフルエンサーに協力を依頼したりする運送会社が増えてきました。一方で、運転中は撮影できない、荷主の情報は出せない、求人の条件は正確に伝えなければならないなど、物流ならではの制約も多くあります。この記事では、物流・運送業界のインフルエンサー活用について、ドライバー募集の発信、業務内容の可視化、荷主など取引先への認知形成という3つの目的別の設計、トラックドライバー系インフルエンサーの選び方、職業安定法の募集情報の的確表示などの法令上の注意点、費用とKPIまでを2026年10月時点の実務目線で整理しました。
この記事の要点
- 物流・運送業界のインフルエンサー活用は、ドライバー募集の発信、業務内容の可視化、荷主など取引先への認知形成の3つの目的を分けて設計すると成果が出やすくなります。
- 2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限が適用され、人手不足は採用広報の工夫なしには埋まりにくい状況です。
- 起用の中心は、現役トラックドライバーなど仕事の実像を語れる発信者です。フォロワー数よりも、運転・荷役の実体験と安全への姿勢を重視して選びます。
- 求人に触れる投稿は職業安定法の「募集情報の的確表示」の対象になるため、給与・休日・勤務地は求人票と一字一句そろえ、成果報酬で応募者の勧誘を任せる形は避けます。
- KPIは再生数よりも、応募数・面接到達率・入社後の定着、荷主向けには問い合わせ数と商談化数で評価します。
物流・運送業界のインフルエンサー活用とは
物流・運送業界のインフルエンサー活用とは、運送会社や倉庫会社が、ドライバーの仕事や現場の様子を発信できるインフルエンサーと組み、採用・企業認知・取引先開拓につながる情報をSNSで届ける施策のことです。消費者向けの商品PRとは異なり、主な目的は「この会社で働きたい」「この会社に荷物を任せたい」と思ってもらうことにあります。
2024年問題で採用広報の重要性が増した
働き方改革関連法により、2024年4月1日から自動車運転の業務にも時間外労働の上限規制が適用され、トラックドライバーの時間外労働は年960時間までとなりました。国土交通省などが開催した「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の資料では、何も対策を講じなかった場合、2024年度に輸送能力の約14%、2030年度には約34%が不足する可能性があるという試算が示されています。1人あたりの運転時間が短くなる以上、同じ量の荷物を運ぶにはドライバーの数を増やすか、生産性を上げるしかありません。
一方で、厚生労働省の「一般職業紹介状況」を見ると、自動車運転の職業の有効求人倍率は、2026年10月時点で公表されている直近の統計でも、全職業平均を大きく上回る2倍台の水準で推移しています。求人を出せば人が集まる時代ではないため、運送会社は求人媒体に掲載するだけでなく、自社の仕事を知ってもらう段階から手を打つ必要があります。
求人広告だけでは届かない層がいる
物流業界の採用で課題になるのは、そもそも「ドライバー」という仕事を選択肢に入れていない層です。20代の若手や女性、異業種からの転職希望者の多くは、長時間労働や体力的な厳しさといったイメージを持っており、求人サイトでドライバー職を検索すること自体がありません。こうした層には、普段見ているSNSのタイムラインの中で、実際の働き方や1日の流れを自然に見てもらうことが有効です。インフルエンサーの発信は、検索されない仕事を「知ってもらう」入口として機能します。
一般的な採用インフルエンサー施策との違い
物流・運送業界の施策には、採用施策一般とは異なる3つの特徴があります。1つ目は、運転免許の種類や車両の大きさなど、職種の中身が専門的で細かく分かれている点です。2つ目は、運転中の撮影ができない、荷主の情報を出せないといった、撮影と公開の制約が多い点です。3つ目は、同じ発信が求職者だけでなく荷主企業の担当者にも見られ、BtoBの営業にも影響する点です。社員発信の運用ルールなど採用施策の一般論は採用インフルエンサー活用の設計と社員発信の運用ルールで解説していますので、本記事では物流・運送業界に固有の論点を中心に整理します。
物流・運送業界でSNSを使う3つの目的
物流・運送業界のSNS活用は、ドライバー募集、業務内容の可視化、荷主など取引先への認知形成という3つの目的に分けて設計するのが基本です。目的ごとに届けたい相手、向いている発信者、評価する指標が異なるため、1つの施策で全部を狙うと焦点がぼやけてしまいます。
目的ごとに相手と指標を分ける
3つの目的の違いを整理すると、次の表のようになります。多くの運送会社にとって最も切実なのはドライバー募集ですが、業務内容の可視化はその土台になり、荷主への認知形成は運賃交渉や新規取引にも効いてきます。
| 目的 | 主な届け先 | 向いている発信者 | 主な媒体 | 評価する指標 |
|---|---|---|---|---|
| ドライバー募集の発信 | 未経験の若手、女性、異業種からの転職希望者、経験ドライバー | 現役ドライバー系、キャリア・転職系、地域系 | TikTok、Instagram、YouTube | 採用サイト流入、応募数、面接到達率 |
| 業務内容の可視化 | 求職者とその家族、地域住民、既存社員 | 現役ドライバー系、働く車・車両好き系 | YouTube、Instagram、TikTok | 視聴維持率、保存数、応募者の志望動機の変化 |
| 取引先への認知形成 | 荷主企業の物流担当者、経営者、協力会社 | 物流専門家・経営者系、業界メディア系 | X、LinkedIn、YouTube、note | 指名検索、問い合わせ数、商談化数 |
優先順位の決め方
最初に取り組む目的は、自社の経営課題から決めます。車両はあるのに乗る人がいない状態であればドライバー募集を、応募はあるのに入社後すぐに辞めてしまう状態であれば業務内容の可視化を、ドライバーは足りているのに運賃が上がらない状態であれば荷主への認知形成を優先します。予算が限られる場合は、まず業務内容の可視化に取り組むことをおすすめします。仕事の実像を伝える動画や写真は、採用にも営業にも転用できる共通の資産になるためです。
自社アカウントとの役割分担
インフルエンサーの起用は、自社アカウントの運用と組み合わせて初めて効果が持続します。インフルエンサーの投稿で興味を持った人は、ほぼ必ず会社のアカウントや採用サイトを見に来ます。そのときに、会社のアカウントが何年も更新されていなかったり、採用サイトに具体的な情報がなかったりすると、せっかくの関心が応募につながりません。インフルエンサーは「知ってもらう」役割、自社アカウントと採用サイトは「確かめてもらう」役割と考え、受け皿を先に整えてから起用を始めてください。
起用するインフルエンサーの類型と選び方
物流・運送業界で起用を検討するインフルエンサーは、現役ドライバー系、働く車・車両好き系、キャリア・転職系、地域系、物流専門家・経営者系の5つに分けて考えると整理しやすくなります。採用目的であれば、仕事の実像を自分の言葉で語れる現役ドライバー系が中心になります。
5つの類型と得意な役割
類型ごとの特徴と、向いている目的は次のとおりです。同じ「物流系」の発信者でも、フォロワーの属性は大きく異なるため、自社の目的に合う類型から候補を探します。
| 類型 | 発信内容の例 | フォロワーの傾向 | 向いている目的 |
|---|---|---|---|
| 現役ドライバー系 | 1日の運行の流れ、車中泊、休憩の過ごし方、給与の考え方 | 同業ドライバー、転職を考える20〜40代 | ドライバー募集、業務内容の可視化 |
| 働く車・車両好き系 | トラックの車種紹介、架装、洗車、車両のカスタム | 車好きの男性、10〜30代 | 業務内容の可視化、若手への認知 |
| キャリア・転職系 | 職種の比較、資格の取り方、未経験からの転職 | 転職を検討中の20〜30代 | ドライバー募集 |
| 地域系 | 地元の企業や仕事の紹介、地域のイベント | 特定エリアの住民 | 地域密着の運送会社の採用 |
| 物流専門家・経営者系 | 物流の法改正、業界動向、効率化の事例 | 荷主企業の担当者、物流業界の管理職 | 取引先への認知形成 |
現役ドライバー系を選ぶときの確認点
現役ドライバー系の発信者を選ぶ際は、フォロワー数よりも、運転と荷役の実体験、そして安全への姿勢を確認します。具体的には、過去の投稿で運転中に撮影していないか、法定速度や休憩時間を軽く扱う発言がないか、他社や荷主の悪口を投稿していないかを見てください。ドライバー系の発信には、現場の不満を率直に語るスタイルのものも多く、それ自体は共感を集める要素ですが、自社の採用広報と組み合わせると逆効果になる場合があります。起用前の確認手順はインフルエンサー起用前のリスクチェックと事前調査の手順を参考にしてください。
免許・車格・運行形態をそろえる
ドライバー職は、普通・準中型・中型・大型といった免許の区分や、ルート配送・地場・長距離といった運行形態によって、働き方が大きく異なります。大型の長距離ドライバーとして発信している人に、地場の2トン車ルート配送の求人を紹介してもらっても、フォロワーにとっては別の仕事に見えてしまいます。発信者の免許区分、普段乗っている車格、運行形態が、自社の募集職種とどの程度重なっているかを必ず確認してください。なお、2017年3月に準中型免許が新設され、18歳から3.5トン以上7.5トン未満のトラックを運転できる免許を取得できるようになりました。高卒採用を狙う場合は、この制度を説明できる発信者が適任です。
ドライバー募集の発信設計
ドライバー募集の発信は、ターゲットを「未経験の若手」「女性」「異業種からの転職者」「経験ドライバー」のどれに置くかを先に決め、それぞれが抱く不安に答える内容にするのが基本です。同じ求人でも、相手によって知りたいことはまったく違います。
ターゲット別に答えるべき不安
未経験の若手は「免許がなくても始められるのか」「体力的に続けられるのか」を、女性は「重い荷物を扱うのか」「トイレや休憩の環境はどうか」を気にします。異業種からの転職者は「収入が下がらないか」「家に帰れるのか」を、経験ドライバーは「拘束時間」「待機時間の扱い」「車両の新しさ」を重視します。国土交通省は女性ドライバーの活躍を後押しする「トラガール促進プロジェクト」を2014年から進めていますが、女性に向けた発信では、こうした具体的な疑問に正面から答えることが最も効果的です。依頼時のブリーフには、狙うターゲットと、その人が抱く不安を3つ程度書き出して渡してください。
| ターゲット | 主な不安 | 投稿で見せたい内容 |
|---|---|---|
| 未経験の若手 | 免許、体力、教育体制 | 免許取得支援の制度、同乗研修の様子、入社1年目の社員の1日 |
| 女性 | 荷物の重さ、休憩環境、職場の雰囲気 | 荷役の実際、休憩所や車内の様子、女性社員の働き方 |
| 異業種からの転職者 | 収入、帰宅頻度、将来性 | 運行形態ごとの帰宅頻度、給与の仕組み、キャリアの道筋 |
| 経験ドライバー | 拘束時間、待機時間、車両の状態 | 運行管理の考え方、待機削減の取り組み、車両の装備 |
投稿から応募までの導線
投稿を見た人が応募するまでの導線は、できるだけ短くします。プロフィールのリンクやストーリーズのリンクから、職種別の採用ページに直接移動できるようにし、そこから電話・LINE・応募フォームのいずれかで連絡できる状態を整えます。ドライバー職を検討する人は、履歴書を準備する前に「まず話を聞きたい」と考えることが多いため、カジュアル面談や会社見学の申し込み窓口を用意しておくと応募数が伸びやすくなります。流入の計測には、投稿ごとにUTMパラメータを分けておくと便利です。設定方法はインフルエンサー施策のUTMパラメータ設定と流入計測の手順で解説しています。
媒体ごとの使い分け
若手の認知獲得にはTikTokやInstagramのリールが、仕事の詳細を伝えるにはYouTubeが向いています。TikTokは、トラックの迫力ある映像や、荷役の手際の良さといった「一瞬で目を引く場面」が拡散しやすい媒体です。一方、1日の運行に密着した10分程度の動画は、YouTubeでじっくり見てもらうほうが、転職を真剣に考えている人に届きます。TikTokでの起用の進め方はTikTokインフルエンサーマーケティング完全ガイド【費用と進め方】で詳しく紹介しています。
業務内容を可視化するコンテンツの作り方
業務内容の可視化で最も効果的なのは、ドライバーの1日に密着し、出庫から帰庫までの実際の流れを見せるコンテンツです。求職者が知りたいのは、会社の理念よりも「自分がこの会社に入ったら、どんな1日を過ごすのか」という具体的な姿です。
1日密着型コンテンツの構成
1日密着型の動画は、出勤と点呼、車両の日常点検、積み込み、運行、休憩、納品、帰庫と日報という順序で構成すると、仕事の全体像が伝わります。特に、アルコールチェックを含む点呼や日常点検は、安全を大切にする会社であることを示す場面として効果があります。休憩の取り方や、昼食をどこでとっているかといった生活に近い場面は、視聴者の関心が高く、コメントが集まりやすい部分です。
見せ方の工夫と撮影の制約
運転中の場面は、発信者が自分でスマートフォンを操作して撮影することはできません。道路交通法では、運転中に携帯電話を手に持って通話したり画面を注視したりすることが禁止されており、2019年12月の改正で罰則が強化されています。運転中の映像を使う場合は、車載カメラやドライブレコーダーの映像を停車後に編集する、同乗した撮影担当者が撮るといった方法をとり、運転者本人には撮影操作をさせないことを依頼時に明確に伝えてください。また、荷主の社名や納品先の建物、伝票、荷物のラベルが映り込まないよう、撮影場所と編集時の確認ルールを決めておきます。
撮影前に決めておく安全・守秘のルール
- 運転者本人は運転中にスマートフォンやカメラを操作しないことを、依頼書に明記しましたか。
- 荷主の社名、納品先、伝票、荷物のラベルが映る場面を撮影禁止または編集でぼかす対象にしましたか。
- 車両のナンバープレートや社員の顔を出すかどうか、本人の同意を確認しましたか。
- 構内や倉庫での撮影について、荷主や施設管理者の許可を得ましたか。
- 公開前に、安全管理の担当者が映像を確認する工程を入れましたか。
待遇と改善の取り組みは事実で伝える
待遇の改善や働き方の工夫は、具体的な事実で伝えるほど信頼されます。「働きやすい職場です」と言うよりも、「荷待ち時間を減らすために予約受付システムを導入した」「中継輸送で日帰り運行を増やした」といった取り組みを、実際の現場とともに見せるほうが説得力があります。国土交通省などが推進する「ホワイト物流」推進運動に賛同している場合は、その取り組み内容を紹介するのも有効です。ただし、取り組みの成果を数字で語る場合は、社内の実績データに基づく数字だけを使い、時点を明記してください。
荷主・取引先への認知形成
荷主など取引先への認知形成では、物流の法改正や効率化への対応力を、専門性のある発信者やビジネス向けの媒体を通じて伝えることが効果的です。荷主企業の担当者は、運送会社を選ぶ際に、運賃だけでなく「安定して運んでくれるか」「法令に対応できているか」を重視するようになっています。
荷主側の関心が高まっている背景
2024年5月に公布された改正物流効率化法では、荷主と物流事業者に物流効率化のための取り組みが求められるようになり、一定規模以上の特定荷主には、2026年4月から物流統括管理者の選任や中長期計画の作成などが義務づけられています。荷主企業の側でも、荷待ち時間や荷役時間の削減、積載効率の向上を、自社の課題として考える必要が出てきました。この流れの中で、効率化の提案ができる運送会社や、法改正への対応を分かりやすく説明できる運送会社は、荷主から見て選ばれやすい存在になります。
BtoB向けの発信者と媒体
荷主への認知形成には、物流の専門家や物流系の経営者、業界メディアの編集者など、ビジネスの文脈で発信している人が向いています。媒体は、XやLinkedIn、YouTubeの解説動画、noteなどの長文記事が中心です。自社の倉庫や配送の仕組みを専門家に見学してもらい、その解説を発信してもらう形は、荷主にとって自社を知る良い機会になります。BtoBでのインフルエンサー活用の考え方はBtoB・SaaS企業のインフルエンサーマーケティング活用法で、LinkedInでの発信設計はLinkedInのインフルエンサー活用とBtoBの信頼を作る発信設計で詳しく解説しています。
採用発信が営業にも効く理由
採用目的の発信は、荷主への認知形成にも間接的に効いてきます。荷主企業の担当者は、取引先の運送会社がドライバーを確保できているか、安全に運行しているかを気にしているためです。若手ドライバーが前向きに働いている様子や、点呼や点検を丁寧に行う様子が発信されていれば、それ自体が「この会社なら安定して運んでくれる」という信頼材料になります。採用と営業の発信を別々に考えず、同じ素材を目的に合わせて編集し直して使うと、限られた予算でも効率よく発信量を確保できます。技術的な商材や仕組みの伝え方は製造業・メーカーのインフルエンサー活用と技術系商材の伝え方も参考になります。
職業安定法・ステマ規制など法令上の注意点
求人に触れるインフルエンサー投稿は、職業安定法の「募集情報の的確表示」とステマ規制の両方の対象になると考えて運用するのが安全です。物流・運送業界では、さらに道路交通法や荷主との守秘義務にも注意が必要です。
募集情報の的確表示と労働条件の明示
2022年10月1日に施行された改正職業安定法では、求人等に関する情報について、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保つことが求められるようになりました。SNSでの募集情報の発信もこの対象に含まれます。インフルエンサーの投稿で「月収50万円以上」「残業ほぼなし」などと紹介され、それが求人票の条件や実態と異なる場合、求職者に誤解を与える表示になるおそれがあります。給与、休日、勤務地、運行形態は、求人票と一字一句そろえた情報をブリーフで渡し、「最大で」「経験者の場合」といった条件を省略しないよう依頼してください。また、2024年4月からは、労働条件の明示事項に就業場所・業務の変更の範囲などが追加されています。求人票そのものを最新の内容に保つことが前提です。
応募者の勧誘を任せる形は避ける
インフルエンサーへの依頼は、自社の仕事や求人を紹介する発信にとどめるのが原則です。職業安定法では、自社の従業員以外の者に報酬を与えて労働者の募集を行わせる「委託募集」には厚生労働大臣の許可が必要とされ、求職者を企業にあっせんして報酬を得る行為は職業紹介にあたるため、別途許可が必要です。インフルエンサーに応募者の勧誘や取り次ぎ、面談の設定まで任せ、「採用1名につき◯円」といった成果報酬を支払う形は、これらの規制に抵触するおそれがあります。発信の範囲を超える依頼を考えている場合は、事前に社会保険労務士や管轄の労働局に確認してください。
求人に触れる投稿で確認したいこと
- 投稿に出す給与・休日・勤務地・運行形態は、求人票と一致していますか。
- 「最大」「例」などの条件を省略した、誤解を招く表現になっていませんか。
- 求人の募集が終わった後に、投稿の修正や募集終了の追記を依頼する取り決めがありますか。
- 報酬は発信への対価として定額で支払い、採用人数に連動した成果報酬にしていませんか。
- すべての投稿に、広告であることが分かる#PRなどの表記を入れる取り決めがありますか。
ステマ規制と広告表記
2023年10月1日から、景品表示法の指定告示によって、いわゆるステルスマーケティングが規制の対象になりました。企業が依頼して報酬を支払う投稿は、採用目的であっても広告であることが分かるように表示する運用にしておくのが安全です。社員が業務として発信する場合も、所属を明らかにしておけば、第三者を装った発信という誤解を避けられます。表記の詳しいルールはステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドで解説しています。
費用感とKPIの置き方
物流・運送業界のインフルエンサー起用の費用は、2026年10月時点で、フォロワー1万人未満の発信者で1投稿数千円から3万円前後、1万人から10万人で3万円から15万円程度が目安です。1日密着型の動画のように撮影の拘束時間が長い依頼は、通常の投稿より費用が上がります。
依頼内容ごとの費用の目安
依頼内容による費用の違いは、次の表のとおりです。いずれもBloom編集部が2026年10月時点の一般的な取引水準をもとに整理した目安で、発信者の実績や撮影条件によって変動します。全体の相場感はインフルエンサー起用の料金相場【2026年完全ガイド】もあわせて確認してください。
| 依頼内容 | 費用の目安(2026年10月時点) | 拘束時間の目安 | 向いている目的 |
|---|---|---|---|
| 会社や求人の紹介投稿(静止画・短尺) | 数千円〜15万円 | 半日程度 | ドライバー募集の認知 |
| 会社見学・職場紹介のリール動画 | 3万円〜20万円 | 半日〜1日 | ドライバー募集、業務内容の可視化 |
| 1日密着型のYouTube動画 | 10万円〜50万円以上 | 1日〜2日 | 業務内容の可視化 |
| 専門家による解説・見学レポート | 5万円〜30万円 | 半日〜1日 | 取引先への認知形成 |
目的別のKPI
ドライバー募集では、再生数やいいね数ではなく、採用サイトへの流入数、応募数、面接に進んだ人の割合を中心に評価します。業務内容の可視化では、動画の視聴維持率や保存数に加えて、面接で「動画を見て応募した」と話す人の数や、入社後3か月・6か月時点の定着率を確認します。仕事の実像を事前に知った人は、入社後のギャップによる早期離職が起きにくいためです。荷主への認知形成では、社名での指名検索数、問い合わせ数、商談に進んだ件数を追います。指標の組み立て方はインフルエンサー施策のKPI設計とテンプレートを参考にしてください。
応募経路の記録を仕組みにする
採用目的の施策で最もつまずきやすいのは、応募者がどの発信をきっかけに応募したのかが分からなくなることです。応募フォームに「当社を知ったきっかけ」の選択肢を設け、電話での応募にも同じ質問を必ずするよう、受付担当者に徹底してください。運送会社では、配車担当者や営業所長が電話応募を受けることも多いため、全員が同じ聞き方で記録できるよう、簡単な受付シートを用意しておくと集計が楽になります。
施策を進める手順とスケジュール
物流・運送業界のインフルエンサー施策は、目的の設定から効果検証まで、おおむね2〜3か月を1サイクルとして進めるのが標準的です。繁忙期は撮影や受け入れが難しくなるため、自社の閑散期に撮影を入れる計画を立てます。
6つのステップ
1つ目は、目的と募集職種、ターゲットを決めることです。2つ目は、採用サイトや自社アカウントといった受け皿を整え、求人票を最新の内容にすることです。3つ目は、類型と免許区分・運行形態を基準に候補を選び、過去の投稿を確認することです。4つ目は、ブリーフと契約で、伝える条件、撮影・守秘のルール、広告表記、二次利用の範囲を取り決めることです。5つ目は、撮影と投稿で、公開前に安全管理と採用の担当者が内容を確認します。6つ目は、応募数や定着率などで効果を検証し、次のサイクルに反映することです。契約で決めておく項目はインフルエンサー契約書の作り方と必須チェック項目で整理しています。
繁忙期を避けたスケジュール
物流業界では、年末やお中元・お歳暮の時期、年度末などに荷物が集中します。この時期は、撮影の受け入れも、応募者との面接の時間確保も難しくなります。一般的には、繁忙期の2〜3か月前に撮影を終え、繁忙期明けの採用活動が本格化する時期に合わせて投稿を公開すると、面接の受け入れ体制も整えやすくなります。新卒・高卒採用を狙う場合は、学校への求人票の提出時期や会社見学の時期とあわせて逆算してください。
想定ケースで見る進め方
ここでは、地方で中型車のルート配送を中心に行う運送会社が、20代のドライバーを採用したい場合の想定ケースで考えます。この会社は、まず採用サイトに職種別のページと会社見学の申し込みフォームを用意し、地元の地域系インフルエンサー1名と、中型車に乗る現役ドライバー系の発信者1名に依頼します。地域系の発信者には会社見学の様子をリール動画で、ドライバー系の発信者には1日の運行の流れをYouTube動画で紹介してもらいます。採用担当者は、応募時に「当社を知ったきっかけ」を必ず聞き、3か月後に応募数と面接到達率を振り返ります。地域密着型の発信者の探し方はローカルインフルエンサーで地方の店舗集客を設計する方法も参考になります。
よくある失敗と発注前チェックリスト
物流・運送業界の施策でよくある失敗は、条件の誇張、受け皿の不備、現場の巻き込み不足の3つです。いずれも事前の準備で防げるため、発注前にチェックリストで確認しておくことをおすすめします。
条件の誇張と受け皿の不備
応募を増やしたいあまり、給与の上限額だけを強調したり、拘束時間の長さに触れなかったりする投稿は、応募数を一時的に増やしても、面接での辞退や入社後の早期離職を招きます。また、投稿を見て問い合わせた人に、折り返しの連絡が数日後になる、採用サイトの情報が古いといった受け皿の不備があると、関心がそのまま離れていきます。インフルエンサーの起用を始める前に、問い合わせへの対応を誰がいつまでに行うかを決めておいてください。
現場のドライバーを巻き込めていない
撮影の対象になる現場のドライバーが、施策の目的を理解していないと、撮影への協力が得られなかったり、撮影の負担への不満が生まれたりします。撮影の前に、なぜ発信するのか、誰に向けた発信なのかを現場に説明し、撮影に協力した社員の負担に配慮することが大切です。現場の社員が自分の仕事を誇りに思える発信になっていれば、既存社員の定着にもつながります。
物流・運送業界の発注前チェックリスト
- ドライバー募集・業務内容の可視化・取引先への認知形成のうち、今回の目的を1つに絞りましたか。
- 発信者の免許区分・車格・運行形態が、募集職種と合っているか確認しましたか。
- 求人票を最新の内容にし、投稿で使う条件を一字一句そろえて渡しましたか。
- 運転中の撮影禁止と、荷主情報の映り込み防止のルールを依頼書に入れましたか。
- 報酬は発信への定額の対価とし、採用人数に連動させていませんか。
- #PRなどの広告表記と、募集終了後の投稿の扱いを取り決めましたか。
- 応募経路の記録方法と、応募数・面接到達率・定着率の確認時期を決めましたか。
Bloomで物流・運送系の発信者を探す場合
Bloomでは、審査を通過したインフルエンサー30,000人の中から、ジャンルやフォロワー層、活動地域を見ながら候補を探せます。物流・運送業界の施策では、現役ドライバー系や車両好き系、地域系といった発信スタイルと、募集エリアを組み合わせて選ぶことが成果の分かれ目になります。案件を公開して応募を募る形にすれば、物流の仕事に関心があり、自社の職種と相性の良い発信者から手を挙げてもらえるため、仕事の実像を丁寧に伝える投稿を集めやすくなります。
本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。