インフルエンサー施策は、企画書、依頼文、ブリーフ、修正依頼、レポートと、似た文書を何度も作る仕事です。起用人数が増えるほど作業は膨らみ、担当者が本来時間をかけたい人選や関係づくりに手が回らなくなります。この記事では、発注企業の担当者が生成AIをマーケティング業務に活用する方法を、インフルエンサー施策の工程ごとに解説します。工程別の使いどころ表、生成AIで企画書や投稿案を作るためのプロンプト例、AIによる効果測定とレポートの進め方、AI生成物の表示・権利・ステマ規制上の注意、そして人が必ず判断すべき箇所までまとめました。

この記事の要点

  • インフルエンサー施策で生成AIが最も効くのは、企画書の叩き台、依頼文・ブリーフの下書き、投稿の表記チェック、レポートの要約といった「文章を作る・整える」工程です。
  • 候補の最終判断、契約条件、PR表記の最終確認、成果の評価は、生成AIに任せず必ず人が判断します。
  • プロンプトは「役割・前提・条件・出力形式・禁止事項」の5要素で書くと、誰が使っても品質がそろいます。
  • インフルエンサーの個人情報や未公開の商品情報は、学習に使われない設定や法人向けプランを確認してから入力します。
  • AIで作った画像や文章を投稿に使う場合は、著作権・肖像・ステマ規制(2023年10月施行)・各SNSのAI表示ルールを事前に確認します。

インフルエンサー施策で生成AIを活用する意味

インフルエンサー施策で生成AIを活用する意味は、企画から報告までの「文章を作る作業」の時間を減らし、担当者が人選や関係づくりといった判断の仕事に時間を回せるようになることです。生成AIとは、大量のデータから学習したモデルが、指示(プロンプト)に応じて文章・画像・要約などを新しく作り出すAIのことです。ChatGPT、Claude、Geminiなどの対話型サービスが代表例で、2026年10月時点では多くの企業がマーケティング業務の一部に取り入れています。

本記事で扱う範囲とAIインフルエンサーとの違い

本記事で扱うのは、インフルエンサーに仕事を依頼する発注企業の担当者が、自分たちの業務(企画・候補選定・依頼文・投稿チェック・レポート)に生成AIを使う方法です。CGやAIで作った仮想の人物をインフルエンサーとして起用する「AIインフルエンサー」とは別のテーマです。仮想人物の起用についてはAIインフルエンサーの活用法とリスク・実在インフルエンサーとの使い分けで詳しく解説しています。

インフルエンサー施策の業務が生成AIと相性の良い理由

インフルエンサー施策は、1つの案件の中で企画書、募集要項、依頼文、ブリーフ、修正依頼、レポートと、似た形式の文書を何度も作る仕事です。しかも起用人数が増えるほど、同じ内容を人ごとに少しずつ書き換える作業が増えます。生成AIは「型が決まっていて、中身を条件に合わせて書き換える」作業が得意なため、こうした定型文書の下書きで大きな効果が出ます。

一方で、インフルエンサー施策の成否を分けるのは、誰に頼むか、どの条件で合意するか、投稿をどう評価するかという判断です。これらは自社の商品理解、過去の経験、相手との関係性に左右されるため、生成AIの出力をそのまま使うことはできません。生成AIは「下書きと整理の担当」、人は「判断と責任の担当」と分けて考えるのが基本です。

導入前に押さえておきたい前提

生成AIの出力は、もっともらしい誤りを含むことがあります。これはハルシネーションと呼ばれ、存在しない統計や、実在しないアカウント名、誤った法令の解釈が自然な文章で出てくる現象です。インフルエンサー施策では、フォロワー数や過去の案件実績、法令に関する記述を誤ると、選定ミスや法令違反につながります。数字・固有名詞・法令に関わる部分は、必ず一次情報で確かめる前提で使い始めましょう。

工程別に見た生成AIの使いどころ

生成AIの使いどころは、インフルエンサー施策の6つの工程ごとに「任せてよい作業」と「人が判断すべき作業」がはっきり分かれています。どの工程に使うかを先に決めておくと、社内で使い方がばらつかず、効果も測りやすくなります。

工程別の使いどころ一覧

次の表は、企画からレポートまでの工程ごとに、生成AIに向く作業、人が判断すべき作業、時短の目安をまとめたものです。時短の目安は、定型文書を一から書く場合と比べた一般的な感覚値で、業務内容や慣れによって変わります。

工程生成AIに向く作業人が判断すべき作業時短の目安
企画企画書の構成案、訴求軸の洗い出し、ペルソナの仮説出し、想定リスクの列挙目的・KPI・予算の決定、訴求軸の採用大きい
候補選定選定基準の文書化、プロフィール文や過去投稿テキストの要約、比較表の整形起用の可否、ブランド適合性、フェイクフォロワーの判断中程度
依頼・ブリーフ依頼文の下書き、人ごとの書き分け、ブリーフの抜け漏れチェック報酬・条件・権利範囲の最終決定、送信大きい
投稿案・ディレクション訴求ポイントの整理、構成例の提示、ハッシュタグ候補の列挙表現の自由度の線引き、インフルエンサーへの指示内容中程度
投稿チェックPR表記の有無、NG表現、誤字、ブリーフとの差分の一次チェック修正依頼を出すかの判断、法令適合の最終確認中程度
効果測定・レポート数値表の要約、コメントの分類、報告文の下書き成果の評価、次回施策の意思決定大きい

効果が出やすい工程から始める

初めて導入する場合は、依頼文とレポートから始めるのがおすすめです。どちらも型が決まっていて、誤りがあっても送信前・提出前に人が確認できるため、リスクが小さく効果を実感しやすい工程です。企画や投稿チェックは、社内のルールやNG表現の一覧が整ってからの方が精度が上がります。

生成AIに任せない方がよい作業

インフルエンサー本人とのやり取りを自動で送信する、契約書を生成AIの出力だけで作る、フォロワー数や実績を生成AIに調べさせてそのまま選定に使う、といった使い方は避けます。生成AIは最新のSNSデータに直接アクセスできないことが多く、数値を推測で埋めてしまう場合があるためです。候補のデータは、SNSのインサイトや分析ツール、プラットフォーム上の実測値から取り、生成AIにはその整理だけを任せます。

企画・企画書作成での生成AI活用

企画段階での生成AI活用は、企画書の「叩き台」を短時間で作り、検討の抜け漏れを減らすことに向いています。白紙から書き始めるよりも、AIが出した構成案や論点を人が取捨選択する方が、短い時間で網羅性の高い企画書になります。

訴求軸とペルソナの仮説出し

商品の特徴、価格帯、販売チャネル、既存顧客の傾向を入力し、「この商品をインフルエンサー施策で訴求する場合の訴求軸を10案、想定する生活者像と合わせて出してください」と依頼すると、担当者だけでは思いつかない切り口が得られます。ただし、AIの出したペルソナはあくまで仮説です。実際の購入者データやレビュー、インフルエンサーのフォロワー属性と照らし合わせて、採用するものを人が選びます。ペルソナの考え方はインフルエンサー施策のペルソナ設定と訴求軸を決める手順もあわせて参考にしてください。

生成AIで企画書を作る手順

生成AIで企画書を作るときは、いきなり全文を書かせるのではなく、構成→各項目の下書き→人による修正の順に進めると精度が上がります。まず目的、ターゲット、予算の上限、期間、使う媒体といった前提を箇条書きで渡し、企画書の目次案を出させます。次に目次の各項目を1つずつ下書きさせ、最後に担当者が数字と判断の部分を書き込みます。企画書に入れるべき項目そのものはインフルエンサー施策の企画書の作り方と必須項目11点で整理していますので、そのリストをプロンプトに含めると抜け漏れが減ります。

企画のリスク洗い出し

企画が固まったら、「この企画で起こりうるトラブルを、法令、炎上、進行、成果の4分類で挙げてください」と依頼すると、想定リスクの一覧を短時間で作れます。薬機法や景品表示法に関わる商材では、該当しそうな表現の例も出させておくと、後のブリーフ作成に使えます。ただし法令の解釈そのものはAIに頼らず、行政のガイドラインや専門家の確認を取ります。

候補選定での生成AI活用

候補選定での生成AI活用は、選定基準の言語化と、集めた候補情報の整理・比較に限定するのが安全です。起用するかどうかの判断材料となる数値や投稿の質は、必ず実測データと人の目で確かめます。

選定基準の文書化

選定の基準が担当者の頭の中にしかないと、人によって判断がぶれます。過去に成果が良かった人と悪かった人の特徴を箇条書きで渡し、「この傾向から、次回の選定基準を必須条件と加点条件に分けて整理してください」と依頼すると、評価表の叩き台を作れます。できあがった基準は社内で合意してから使い、案件ごとに見直します。

プロフィールと過去投稿の要約

候補者のプロフィール文や過去投稿のキャプションを集めたら、生成AIに要約と分類を任せられます。たとえば「この20人の過去投稿テキストから、主な発信ジャンル、よく使う言葉づかい、PR投稿の頻度の傾向を表にまとめてください」と依頼すれば、比較表の下地が短時間でできます。ただし、画像や動画の雰囲気、コメント欄の質、フォロワーの実在性は文章の要約だけでは判断できません。フェイクフォロワーの確認方法はフェイクフォロワーの見分け方と選定でのチェック手順を参考にしてください。

選定で生成AIを使うときの注意

候補者の氏名、連絡先、住所、過去の取引条件などを含むデータを、学習に使われる設定のままの生成AIに入力してはいけません。個人情報保護委員会は2023年6月に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を公表し、個人情報を含むプロンプトの入力について、利用目的の範囲内かを確認するよう求めています。アカウント名や公開投稿だけを扱う場合でも、社内のルールで入力してよい情報の範囲を決めておきましょう。

依頼文・ブリーフ作成での生成AI活用

依頼文とブリーフの作成は、インフルエンサー施策の中で生成AIの効果が最も出やすい工程です。条件や伝える項目が決まっていて、相手ごとに書き分ける必要があるため、下書きの時間を大きく減らせます。

人ごとに書き分けた依頼文の下書き

依頼文は、全員に同じ文面を送るよりも、相手の発信内容に触れた一文を入れた方が返信率が上がりやすいとされています。生成AIに共通の依頼条件と、相手の過去投稿の特徴を渡せば、1人ずつ冒頭の一文を書き分けた下書きを作れます。依頼文に入れるべき項目はインフルエンサーへの依頼文面の書き方とテンプレート例文にまとめていますので、そのテンプレートを生成AIに渡すと形式がそろいます。なお、送信は必ず人が内容を読んでから行います。

ブリーフの抜け漏れチェック

ブリーフ(投稿の依頼内容をまとめた指示書)は、項目の抜け漏れがあると、投稿後の修正や揉め事の原因になります。作成したブリーフを生成AIに渡し、「インフルエンサーが投稿を作るうえで不足している情報、解釈が分かれそうな表現を指摘してください」と依頼すると、第三者の目で見直せます。PR表記の位置、投稿期限、二次利用の範囲、NG表現、商品の受け取り方法などが抜けていないかを確認しましょう。

依頼文で生成AIに書かせてはいけない部分

報酬額、支払い時期、二次利用の範囲と期間、競合案件の制限といった契約条件は、生成AIに考えさせず、社内で決めた内容をそのまま書き入れます。生成AIは文章を自然にするために条件を言い換えたり、存在しない特典を付け加えたりすることがあります。条件部分は最後に元の決定事項と1項目ずつ照合してください。フリーランスとして活動するインフルエンサーへの発注では、2024年11月施行のフリーランス法により、取引条件の明示が義務になっている点にも注意が必要です。

投稿案づくりとディレクションでの生成AI活用

投稿案づくりでの生成AI活用は、インフルエンサーに渡す「訴求ポイントの整理」と「構成の例」を作るところまでにとどめるのが基本です。投稿そのものをAIで作ってインフルエンサーに読ませる進め方は、本人らしさが失われ、反応が落ちる原因になります。

訴求ポイントと構成例の作成

商品の特徴、ターゲット、使用シーンを渡し、「リール動画で伝えるべき訴求ポイントを優先順位つきで3つに絞り、15秒・30秒それぞれの構成例を出してください」と依頼すると、ディレクションの材料が短時間でそろいます。構成例は「こういう流れもあります」という参考として渡し、最終的な表現はインフルエンサーに任せます。ディレクションの考え方はインフルエンサーディレクションの進め方と指示書で解説しています。

キャプション案・ハッシュタグ候補の扱い

キャプション案やハッシュタグ候補を生成AIで作ること自体は問題ありません。ただし、企業が作った文章をそのままインフルエンサーに投稿させる場合、その投稿は企業の表示として扱われる度合いが強くなります。ステマ規制の観点では、企業の関与がある投稿であることを明示する必要がある点は変わりません。また、AIが出したハッシュタグには、無関係な話題や不適切な文脈で使われているものが混ざることがあるため、投稿前に実際の検索結果を確認します。

インフルエンサー本人がAIを使う場合の取り決め

最近は、インフルエンサー自身が台本づくりや画像編集に生成AIを使うことも増えています。本人の制作工程に口を出しすぎる必要はありませんが、AIで生成・加工した画像を商品の使用前後の比較に使う、実在しない人物の声や顔を入れる、といった使い方は、優良誤認や肖像の問題につながります。ブリーフに「商品の効果を示す画像はAIで生成・加工しないこと」「AI生成の素材を使う場合は事前に相談すること」と書いておくと安心です。

投稿チェックと効果測定・レポートでの生成AI活用

投稿チェックとレポートでの生成AI活用は、人が見る前の「一次チェック」と「要約・下書き」を任せることで、確認と報告にかかる時間を短くするものです。最終的な合否判断と評価は人が行います。

投稿の一次チェック

投稿前のキャプションや台本を生成AIに渡し、「次のチェックリストに沿って、問題のありそうな箇所を指摘してください」と依頼すると、PR表記の有無、ブリーフで指定したNG表現、誤字脱字、商品名の表記ゆれなどを一次的に洗い出せます。チェックリストは自社で用意し、プロンプトに含めることが重要です。指摘がなかったからといって問題がないとは限らないため、人による確認は省略しません。投稿確認の流れはインフルエンサーの投稿確認フローと修正依頼の進め方も参考にしてください。

コメントの分類と効果測定の補助

AIによる効果測定で役立つのは、数値の計算そのものよりも、コメントや感想などの「文章データ」の分類です。投稿についたコメントを集めて、「購入意向」「質問」「好意的な感想」「否定的な反応」「無関係」に分類させれば、いいね数やリーチだけでは分からない反応の質を把握できます。数値の集計は表計算ソフトや分析ツールで正確に行い、生成AIには集計結果の解釈の候補を出させる使い方が安全です。

レポートの下書きと社内共有

集計した数値表と、施策の目的・KPIを生成AIに渡し、「決裁者向けに、結論→根拠→次回の改善案の順で、A4一枚程度の報告文を下書きしてください」と依頼すると、報告書作成の時間を短縮できます。ただし、成果の良し悪しの評価と次回の方針は担当者と決裁者が決めることです。AIの文章が数字を言い過ぎていないか、都合のよい解釈になっていないかを確認してから共有します。レポートの構成はインフルエンサー施策のレポート作成手順と社内共有のポイントで詳しく解説しています。

そのまま使えるプロンプト例

プロンプトは「役割・前提・条件・出力形式・禁止事項」の5要素で書くと、誰が使っても出力の品質がそろいます。ここでは工程ごとに、社内でそのまま使い回せるプロンプト例を紹介します。[ ]の部分は自社の内容に置き換えてください。

プロンプトの基本構成

役割は「あなたはインフルエンサー施策の担当者です」のように立場を指定するもの、前提は商品や目的などの背景情報、条件は守ってほしいルール、出力形式は箇条書きや表などの形、禁止事項は書いてはいけない内容です。特に禁止事項に「事実が不明な数値や実績は書かない」「法令の適否は断定しない」を入れておくと、ハルシネーションによる誤りを減らせます。

要素書く内容例
役割AIに担当させる立場化粧品メーカーのインフルエンサー施策担当者
前提商品・目的・ターゲット・予算新発売の美容液、20代後半の乾燥肌、認知拡大が目的
条件守ってほしいルール薬機法の効能効果の範囲を超えない、PR表記を冒頭に入れる
出力形式欲しい形表形式、各案50字以内、優先順位つき
禁止事項書いてはいけない内容根拠のない数値、医薬品的な効果の断定、他社商品の名前

企画・依頼文のプロンプト例

企画の叩き台を作るときは、次のように前提と出力形式をはっきり指定します。

あなたはインフルエンサー施策の企画担当者です。
前提:商品は[商品名・特徴・価格]、目的は[認知拡大/購入促進]、ターゲットは[年代・関心]、予算上限は[金額]、期間は[期間]です。
依頼:インフルエンサー施策の企画書の目次案と、訴求軸を5案出してください。
出力形式:目次は番号つき、訴求軸は「訴求軸/想定する生活者/向いている媒体」の表。
禁止事項:根拠のない市場規模や成功率の数字は書かないでください。

依頼文の下書きでは、共通条件と相手ごとの特徴を分けて渡すと、書き分けの精度が上がります。

あなたは企業のインフルエンサー担当者です。
共通条件:[商品・依頼内容・報酬・投稿期限・PR表記・二次利用の範囲]
相手の特徴:[アカウント名と、過去投稿で印象に残った点を2つ]
依頼:上の条件を一切変えずに、初回の依頼文を300字以内で下書きしてください。冒頭に相手の発信に触れた一文を入れてください。
禁止事項:条件の追加・省略・言い換え、過度な称賛。

投稿チェック・レポートのプロンプト例

投稿チェックでは、自社のチェックリストをそのまま貼り付けることが精度を上げるポイントです。

あなたは広告表現のチェック担当者です。
次の投稿文を、下のチェックリストに沿って確認してください。
チェックリスト:①PR表記が冒頭にあるか ②[NG表現の一覧]を使っていないか ③商品名の表記が[正式名称]か ④効果を断定する表現がないか
出力形式:「項目/判定(問題なし・要確認)/該当箇所/理由」の表。
注意:法令に違反するかどうかは断定せず、要確認として挙げてください。

レポートの下書きでは、数値の計算はさせず、こちらで集計した表を渡します。

あなたはマーケティング部の担当者です。
次の表は今回のインフルエンサー施策の集計結果です。[表を貼り付け]
目的とKPIは[目的・KPI]です。
依頼:決裁者向けに「結論/根拠となる数値/うまくいった点/改善点/次回の提案」の順で、600字以内の報告文を下書きしてください。
禁止事項:表にない数値の追加、因果関係の断定。

AI生成物の表示・権利・ステマ規制上の注意

生成AIをインフルエンサー施策に使うときは、著作権、肖像・パブリシティ、ステマ規制、各SNSのAI表示ルールの4点を必ず確認します。業務効率化のつもりで使った生成AIが、権利侵害や不当表示の原因になっては本末転倒です。

著作権と肖像の注意点

文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会は、2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめています。そこでは、AIで生成した画像や文章でも、既存の著作物との類似性と依拠性が認められれば著作権侵害になりうるという考え方が示されています。特定の作家の画風をまねるよう指示した画像、他社の広告コピーに似た文章を、そのまま企画書や投稿素材に使うのは避けましょう。また、実在の人物に似せた画像や声を生成して使うと、肖像権やパブリシティ権の問題が生じます。インフルエンサーの写真をAIで加工して二次利用する場合は、契約で許諾した範囲内かを確認します。投稿の権利の考え方はインフルエンサー投稿の肖像権・著作権対応と二次利用の範囲で解説しています。

ステマ規制と優良誤認への注意

2023年10月1日に施行された景品表示法のステルスマーケティング規制(いわゆるステマ規制)では、企業が関与した表示であるにもかかわらず、それが分からない形で行うことが不当表示とされます。生成AIで作った投稿案を使う場合も、PR表記の義務は変わりません。さらに、AIで生成・加工した使用前後の画像で商品の効果を実際より良く見せると、優良誤認表示にあたるおそれがあります。PR表記の具体的な書き方はステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドを確認してください。

SNSのAI表示ルールと社内ガイドライン

主要なSNSでは、本物と見分けがつきにくいAI生成コンテンツに対して、ラベル表示や申告を求めるルールが設けられています。InstagramやFacebookを運営するMetaは「AI情報」のラベルを、TikTokはAI生成コンテンツのラベルを導入しており、規約は随時更新されています。投稿に生成AIの素材を使う場合は、公開前に各SNSの最新の規約を確認し、必要なラベルを付けるようインフルエンサーと取り決めておきます。社内では、経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン」(2024年4月公表、以後改訂)などを参考に、入力してよい情報、使ってよい用途、確認の責任者を定めたルールを作っておくと安心です。

AI生成物を使う前の確認チェックリスト

  • 既存の作品・広告・人物に似ていないか(特定の作家名や人物名を指示していないか)
  • 商品の効果を示す画像や表現をAIで作っていないか
  • PR表記が分かりやすい位置に入っているか
  • 投稿するSNSのAIラベルのルールを確認したか
  • インフルエンサーの写真・動画をAIで加工する場合、契約の許諾範囲内か

生成AIの導入手順と社内ルールの作り方

生成AIの導入は、ツールを選ぶ前に「どの工程に使うか」と「入力してよい情報の範囲」を決めることから始めます。目的と範囲が決まっていれば、ツール選びや社内ルールづくりで迷いません。

ツールの選び方と料金の目安

汎用の対話型生成AIは、個人向け有料プランで月額20米ドル前後が目安です(2026年10月時点の海外比較記事の情報で、ChatGPT Plus、Claude Pro、Google AI Proはいずれも月額約20米ドル。為替・税・地域で変わるため、最新の料金は各社の公式ページで確認してください)。業務で使う場合は、入力データを学習に使わない設定ができるか、管理者がメンバーの利用を管理できるかを重視し、必要に応じて法人向けプランを検討します。

比較項目無料プラン個人向け有料プラン法人向けプラン
料金の目安(2026年10月時点)0円月額約20米ドル1人あたり月額で個別設定(各社公式で確認)
入力データの学習利用設定で停止できる場合が多いが要確認設定で停止できる場合が多い初期設定で学習に使わないものが一般的
管理機能なしなしメンバー管理・利用ログなど
向いている使い方試験的な利用、公開情報のみの作業少人数での定型文書作成個人情報や未公開情報を扱う部署での利用

導入の4ステップ

導入は、次の4ステップで進めると社内に定着しやすくなります。

  1. 対象工程を決める:依頼文とレポートなど、リスクが小さく効果が出やすい工程を1〜2つ選びます。
  2. 入力ルールを決める:個人情報、未公開の商品情報、契約条件など、入力してはいけない情報を明文化します。
  3. プロンプトを共有する:本記事のような5要素のプロンプトを社内のテンプレートとして保存し、誰でも使えるようにします。
  4. 効果を測って広げる:作業時間や修正回数を導入前と比べ、効果があった工程から対象を広げます。

人が判断すべき箇所を明文化する

社内ルールには、生成AIに任せる作業だけでなく、「必ず人が判断する箇所」も明記します。具体的には、起用の可否、報酬と契約条件、PR表記と法令適合の最終確認、インフルエンサーへの送信、成果の評価と次回方針の決定の5つです。これらを担当者と承認者の名前つきで決めておけば、生成AIの出力に頼りすぎて責任の所在があいまいになることを防げます。

人が必ず判断する5つの箇所

  • インフルエンサーの起用の可否(実測データと投稿の目視で判断)
  • 報酬・投稿条件・二次利用の範囲などの契約条件
  • PR表記・薬機法・景品表示法などの法令適合の最終確認
  • インフルエンサーへの依頼文・修正依頼の送信
  • 成果の評価と次回施策の意思決定

プラットフォームとの組み合わせ

候補探しや進行管理、成果計測までを手作業で行っている場合、生成AIだけで効率化できる範囲には限りがあります。インフルエンサーのマッチングプラットフォームを使えば、候補のデータ、やり取り、投稿、成果の記録が一か所にまとまるため、生成AIに渡す材料もそろえやすくなります。生成AIで文書作成を、プラットフォームで候補集めと進行・計測を担う形にすると、少人数の担当者でも多くのインフルエンサーと施策を回せるようになります。

本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。