インフルエンサー施策をやろうという話が社内で出たあと、最初に手が止まるのが企画書です。何をどこまで書けば決裁が下りるのか、どの粒度で書けば現場がそのまま動けるのか、その基準が社内にないまま白紙のスライドを開くことになります。結果として、目的とKPIがぼやけた企画書が回覧され、差し戻しと修正だけで2週間が溶けていきます。この記事では、インフルエンサー施策の企画書に必ず入れる11の必須項目と、着手から提出までの6ステップ、そして提出前に確認する18項目のチェックリストまでを、2026年9月時点の相場感を交えて整理しました。混同されやすい企画書・提案資料・依頼書という3種類の書類の違いから始めますので、今どの書類を作るべきか分からない段階からでも、この順番どおりに進めれば形になります。

この記事の要点

  • インフルエンサー施策の企画書とは、施策の目的・対象・実施内容・予算・評価方法を1つにまとめ、社内の意思決定と現場の実行を同時に成立させるための設計図です。
  • 必須項目は11点です。背景、目的、KPI、ターゲット、起用方針、施策内容、投稿仕様、スケジュール、予算内訳、リスク対応、体制と承認フローを押さえれば、決裁にも実行にも耐えます。
  • 企画書・提案資料(稟議用)・依頼書(オリエンシート)は別の書類です。1つに混ぜると、決裁者には長すぎ、インフルエンサーには曖昧すぎる中途半端な資料になります。
  • 目的は必ず1つに絞ってください。認知と売上を同時に主目的へ置くと、KPIも起用基準も投稿設計もすべてぶれます。
  • 分量は本編10〜15ページが目安です。候補者リスト・投稿案・契約条項・レポート様式は別紙へ逃がし、本編には決裁判断に必要な情報だけを残します。

インフルエンサー施策の企画書が担う役割と3種類の書類の違い

インフルエンサー施策の企画書とは、施策の目的・対象・実施内容・予算・評価方法を1つの書類にまとめ、社内の意思決定と現場の実行を同時に成立させるための設計図です。決裁者に「やってよい」と判断させることと、実行担当者が「明日から動ける」状態にすることの2つを、同じ書類で満たす必要があります。この二重の役割を意識せずに書き始めると、抽象的すぎて決裁者が判断できないか、細かすぎて誰も読み通せないかのどちらかに寄ります。

企画書・提案資料・依頼書の役割分担

実務でもっとも多い混乱が、この3種類の書類を1つにまとめようとすることです。読み手も目的も分量もまったく違いますので、最初に切り分けておいてください。

書類読み手目的主な中身分量の目安
企画書社内の関係部署・実行担当施策の全体設計を共有し合意を取る目的・KPI・ターゲット・施策内容・予算・スケジュール・リスク10〜15ページ
提案資料(稟議用)決裁者・経営層投資判断を仰ぎ承認をもらう投資額・期待効果・撤退基準・比較検討した代替案3〜7ページ
依頼書(オリエンシート)起用するインフルエンサー制作物の条件を正確に伝える伝える事実・禁止表現・広告表記・納期・権利・修正回数2〜4ページ

順番としては、企画書を先に固めてから、そこから抜き出して提案資料と依頼書を派生させるのがもっとも早い進め方です。稟議用に絞り込む考え方はインフルエンサーマーケティングの稟議を通す提案資料の作り方で、インフルエンサーへ渡す指示書の書き方はインフルエンサーディレクションの進め方と指示書で詳しく扱っていますので、あわせてご覧ください。

企画書を先に作ると決裁が早くなる理由

決裁が遅れる原因のほとんどは、決裁者の質問に即答できないことです。「なぜこの人数なのか」「なぜこの媒体なのか」「失敗したときはどうするのか」という3つの質問は、ほぼ確実に飛んできます。企画書の段階でこの3問に対する答えを本文へ書き込んでおけば、会議の場で持ち帰りが発生しません。逆に、答えを用意せずに提案資料だけを先に作ると、質問のたびに企画の前提へ差し戻され、資料を一から作り直すことになります。

もう1つの効果は、部署間の調整コストが下がることです。法務は権利と表記を、経理は支払条件を、広報は炎上時の対応を見ます。それぞれが見る欄が企画書に用意されていれば、レビューは並行して進みます。

企画書がないまま進めたときに起きること

企画書を省いて依頼から始めた施策は、投稿が出たあとに必ず揉めます。よくあるのは、二次利用の可否を決めていなかったために投稿を広告素材へ転用できない、修正回数の上限を決めていなかったために往復が続いて公開日に間に合わない、評価指標を決めていなかったために振り返りの会議で結論が出ない、という3つです。いずれも企画書の1行で防げた種類の事故です。

企画書に必ず入れる11の必須項目

企画書に必ず入れる項目は11点です。この11点がそろっていれば、決裁者の判断材料としても、実行担当の作業指示としても機能します。逆に、この中の1つでも空欄のまま提出すると、その欄が差し戻しの理由になります。

11項目の一覧と決裁者が確認する点

#項目書く内容決裁者が確認する点
1背景・課題今この施策が必要になった事業上の理由他の施策ではなくこれを選ぶ理由があるか
2目的認知・検討・購買のいずれか1つ目的が1つに絞られているか
3KPI・目標値主KPIと補助KPI、目標値とその算出根拠数字の根拠が示されているか
4ターゲット購買データに基づく想定顧客像自社の顧客像と一致しているか
5起用方針フォロワー規模の配分と選定基準個人の好みでなく基準で選んでいるか
6施策内容媒体・投稿形式・本数・実施期間予算と本数の関係が説明できるか
7投稿仕様訴求軸・必須表記・禁止表現・二次利用法務チェックが済む状態か
8スケジュール公開日から逆算した週次の工程社内確認の日数が入っているか
9予算内訳費目ごとの金額と積算根拠、予備費総額ではなく内訳で示されているか
10リスク対応想定リスクと発生時の初動、撤退基準最悪ケースが想定されているか
11体制・承認フロー役割分担と各工程の承認者、所要日数誰が意思決定するか明確か

この表をそのまま企画書の目次に使ってかまいません。項目名を見出しにして各1ページ、重い項目は2ページ配分すると、本編はおおむね13ページ前後に収まります。

省いてよい項目と省いてはいけない項目

予算規模が小さい施策では、項目をいくつか簡略化できます。ギフティング中心で総額30万円以下の施策なら、背景・目的・KPI・起用方針・施策内容・予算・リスクの7項目に圧縮しても実務は回ります。一方で、どれだけ小規模でも省いてはいけないのが、目的、KPI、投稿仕様、リスク対応の4項目です。この4つは金額の大小と関係なく、抜けると必ず後工程で問題になります。

投稿仕様を省くと法務が通りません

広告表記の方法、薬機法や景品表示法に触れる可能性のある表現、二次利用の範囲。この3つが書かれていない企画書は、法務レビューでほぼ確実に止まります。企画段階で確定できない場合でも、「誰がいつまでに決めるか」を書いておけば審査は進みます。空欄のまま出すことだけは避けてください。

本編から別紙へ逃がす4つの資料

本編を薄く保つために、次の4つは別紙へ分けます。個別のインフルエンサー候補リスト、投稿クリエイティブ案、契約条項の全文、レポートの様式です。特に候補者リストを本編に載せると、候補が1人差し替わっただけで企画書全体の再承認が必要になることがあります。本編では「マイクロ層8名・ナノ層12名」という枠だけを承認してもらい、個人名は別紙で共有するほうが、実務は圧倒的に速く回ります。

企画書作成の6ステップと着手前に集める情報

企画書は、情報収集から提出まで6つのステップで進めます。合計の作業時間は、初めて作る場合で12〜16時間、2回目以降は6〜8時間が目安です。スライドを開くのは4番目のステップからで、それより前に手を動かすと必ず書き直しになります。

着手前に集める5つの情報

先に集めるのは、自社の購買データ、過去の類似施策の実績、競合のSNS施策の状況、今期の予算枠と使える上限、そして社内の承認フローと各段階の所要日数の5つです。とくに承認フローの所要日数は、スケジュールの現実性を左右します。法務レビューに5営業日かかる会社で、公開日の1週間前に投稿案を出す前提のスケジュールを書いても、その企画書は実行されません。

競合の動きは、施策の必要性を説明する材料になります。調べ方は競合のインフルエンサー施策を調べる競合分析の手順にまとめていますので、背景の欄を埋める前に一度確認しておくと説得力が変わります。

6ステップの進め方と所要時間の目安

ステップ作業内容所要の目安この段階の成果物
1. 情報収集購買データ・過去実績・競合状況・予算枠・承認フローを集める3〜4時間前提条件のメモ
2. 目的とKPIの決定目的を1つに絞り、主KPIと目標値を置く1〜2時間目的とKPIの1枚
3. 設計ターゲット・起用方針・施策内容・本数を決める3〜4時間設計メモと概算予算
4. 執筆11項目をスライドに落とす3〜4時間企画書ドラフト
5. 社内レビュー法務・経理・広報へ先出しし指摘を反映する2〜5営業日修正版
6. 提出サマリーを付けて決裁ルートへ回す1時間提出版と提案資料

ステップ5を省く人が非常に多いのですが、ここを飛ばすと決裁会議の場で法務や経理から初出しの指摘が入り、その場で差し戻しになります。関係部署には正式提出の前に必ず一度見せておいてください。所要日数の見積もりが甘い場合は、インフルエンサーマーケティングの進め方6ステップと標準スケジュールの標準スケジュールと突き合わせると現実的な線が見えます。

書き始める順番はページ順ではありません

スライドの1ページ目から順に書くと、目的があいまいなまま施策内容の詳細を書き込むことになり、後で全部を直す羽目になります。書く順番は、目的とKPI、次に予算とスケジュール、その次にターゲットと起用方針、最後に背景とサマリーです。背景とサマリーは中身が固まってから書くほうが、はるかに短時間で説得力のある文章になります。

目的とKPIの書き方と目標値の根拠

企画書の目的は必ず1つに絞ります。認知と売上を同時に主目的へ置いた企画書は、KPIの優先順位が決まらず、起用する相手の基準も投稿の設計もぶれ、振り返りの会議で「結局どうだったのか」が言えなくなります。副次的な効果として売上を期待するのは自由ですが、主目的として並べてはいけません。

目的は認知・検討・購買のどれかに置きます

目的の置き方は、商品がいま置かれている段階で決まります。発売直後で商品名を知っている人がほとんどいない状態なら認知、比較検討はされているが選ばれていない状態なら検討、指名検索も比較も済んでいて最後のひと押しが欲しい状態なら購買です。この判断を1行で企画書に書き、なぜその段階だと判断したかの根拠を1つ添えてください。根拠には、指名検索数の推移、サイトの新規訪問比率、カート放棄率などの自社データが使えます。

フェーズ別のKPIと測り方

目的主KPI補助KPI測り方
認知リーチ数・インプレッション保存数・プロフィール遷移数投稿ごとのインサイト提出を依頼書で義務づけます
検討サイト流入数・指名検索数滞在時間・カート投入数計測用リンクとサーチコンソールで追います
購買コンバージョン数・売上クーポン利用数・新規顧客比率クーポンコードと計測用リンクを人ごとに分けます

KPIの設計手順とテンプレートはインフルエンサー施策のKPI設計とテンプレートに、計測の実装はインフルエンサー施策の効果測定の方法と計測ツールにまとめています。企画書には結論としての主KPIと目標値だけを書き、算出方法は別紙に回すと本編が読みやすくなります。

目標値には必ず根拠の1行を添えます

目標値だけが書かれた企画書は、決裁の場で必ず「その数字はどこから来たのか」と聞かれます。根拠は複雑である必要はありません。「起用20名の合計フォロワー数18万人に、自社の過去施策の平均リーチ率28%を掛けて算出しました」という1行で十分です。過去実績がない場合は、業界の一般的な水準を出典名とともに引き、それを保守側に置いた前提だと明記してください。2026年9月時点で目安として語られるInstagramのフィード投稿リーチ率はフォロワー数の20〜40%程度ですが、アカウントの状態で大きく変わりますので、初回は下限で置くほうが安全です。

撤退基準も同じページに書きます

目標値を書いたら、その下に撤退基準を1行だけ添えてください。「1回目の10名で目標リーチの50%に届かない場合、2回目の発注は行わず起用方針を見直します」という形です。上限だけを示す企画書より、下限で止める条件まで示す企画書のほうが、決裁は明らかに通りやすくなります。判断材料の作り方はインフルエンサーマーケティングのROIと費用対効果の測り方が参考になります。

ターゲット設計と起用方針の示し方

ターゲットは、想像ではなく自社の購買データから書き起こします。年齢・性別・居住地・購入のきっかけ・併売商品といった実データを起点にすると、起用するインフルエンサーのフォロワー属性と突き合わせる作業がそのままできます。ペルソナを美しく作り込むこと自体が目的ではありませんので、1ページに収めてください。

ペルソナは1枚に収めます

企画書に載せるペルソナに必要なのは、属性、抱えている課題、情報収集に使っている媒体、購入を決める最後の要因の4点だけです。名前や趣味の設定を細かく作り込んでも、起用判断には使えません。逆に、情報収集に使っている媒体が書かれていないと、なぜInstagramなのかTikTokなのかという媒体選定の根拠が消えます。媒体ごとの向き不向きはInstagram・TikTok・YouTube インフルエンサー施策の媒体比較で整理しています。

起用方針はフォロワー規模の配分で示します

個人名ではなく枠で承認をもらうため、起用方針はフォロワー規模ごとの人数配分で書きます。2026年9月時点の国内の目安として、報酬はフォロワー1人あたり2〜4円の水準で語られることが多く、規模ごとの単価感を並べると予算との整合が説明しやすくなります。

フォロワー数の目安企画上の役割1本あたり報酬の目安
ナノ1,000〜1万人本数を確保しUGCの起点を作ります0.2万〜4万円
マイクロ1万〜10万人施策の主力として質と量を両立します2万〜40万円
ミドル10万〜50万人認知の山を作り話題性を担保します20万〜200万円
メガ50万人以上大型発表に合わせて一気に広げます100万円以上

※金額はいずれも2026年9月時点でフォロワー単価2〜4円を機械的に当てはめた税抜の目安です。実際は媒体、投稿形式、二次利用の範囲、専属条件の有無で大きく上下します。配分の考え方はインフルエンサーのフォロワー数別の使い分けとミックス設計を、選定基準の作り方は失敗しないインフルエンサー選定7つのポイントを参照してください。

選定基準を先に書くと候補差し替えが速くなります

候補者名を本編に載せない代わりに、選定基準を明文化しておきます。フォロワー属性の一致率、エンゲージメント率の下限、直近3か月の投稿頻度、競合商材のPR履歴の有無、過去の炎上履歴。この5つを数値と条件で書いておけば、候補が変わっても基準は変わりませんので、再承認が不要になります。フォロワー属性の見方はインフルエンサーのフォロワー属性分析と一致率の見方で解説しています。

施策内容とクリエイティブ方針・投稿仕様

施策内容の欄には、誰が・どの媒体で・何を・いつ投稿するかを、読んだ人が同じ絵を思い浮かべられる粒度で書きます。「Instagramで商品を紹介してもらう」では粒度が粗すぎます。「マイクロ層8名がリール1本とストーリーズ2枚を投稿し、リールでは使用シーンを15秒以内で見せる」まで書けば、見積もりも法務チェックも同じ資料の上で進みます。

投稿フォーマットと本数の決め方

本数は、目的から逆算して決めます。認知が目的なら、同時期に一定数の投稿が重なることで話題として認識されますので、人数を優先して本数を厚くします。購買が目的なら、1人あたりの投稿数を増やして接触回数を確保するほうが効きます。同じ予算でも、人数を増やすか1人あたりの本数を増やすかで結果が変わりますので、その判断理由を企画書に1行残しておくと、次回の設計がやりやすくなります。

投稿形式ごとの特性も明記します。フィード投稿は保存されて後から見返されやすく、ストーリーズは24時間で消える代わりにリンク遷移が取りやすく、リールやショート動画はレコメンドで数日から数週間かけて配られ続けます。この違いを踏まえて組み合わせを書くと、KPIの設定とも整合が取れます。

訴求軸は3つまでに絞ります

企画書のクリエイティブ方針では、必ず伝えたい訴求軸を3つまでに絞ってください。伝えたいことを5つも6つも並べた依頼書を渡された投稿は、情報が詰まりすぎて誰の心にも残りません。優先順位を付け、1番目は必ず言及、2番目と3番目は任意という形で指定すると、投稿の自然さを保ったまま伝達を担保できます。表現の型は成果が出るPR投稿クリエイティブの作り方と7パターンにパターン別でまとめています。

二次利用の範囲を企画段階で決めます

投稿を広告素材やLPへ転用する予定があるなら、企画書の段階で範囲・期間・媒体を書いておきます。後から交渉すると追加費用が発生しますし、断られることもあります。一般的には、期間3か月・自社SNSとLPに限定という条件なら報酬の20〜50%程度の追加が目安になりますが、条件次第で変わりますので、企画書には「二次利用あり・想定追加費用は報酬の30%」のように前提を明記してください。投稿アカウントを使った広告配信まで想定するなら、ホワイトリスト広告の仕組みと始め方を実務フローで解説もあわせて確認しておくと設計が早くなります。

予算内訳とスケジュールの組み立て方

予算は総額ではなく内訳で書きます。「インフルエンサー施策一式300万円」という書き方では、決裁者は妥当性を判断できませんし、実行段階で費目が足りなくなっても追加を通せません。費目ごとに金額と積算根拠を並べ、最後に予備費を置く形が、もっとも通りやすく、もっとも後で困らない書き方です。

予算内訳の標準的な費目

費目内容金額の置き方
起用報酬投稿1本あたりの報酬の合計フォロワー単価×人数で積算します
二次利用料広告素材やLPへの転用許諾報酬の20〜50%を想定して置きます
商品原価・送料提供する商品と配送の実費原価×人数+送料で計算します
制作・撮影費指定の撮影やスタジオを伴う場合該当がなければ0円と明記します
仲介手数料代理店やキャスティング会社の手数料報酬総額の20〜30%が一般的な水準です
計測・ツール費分析ツールや計測基盤の利用料月額×実施月数で計上します
予備費差し替え・追加発注・修正対応総額の10%を目安に確保します

※比率はいずれも2026年9月時点で一般に示されている水準の目安であり、契約条件によって変わります。相場の詳細はインフルエンサー起用の料金相場【2026年完全ガイド】、見積書の読み解き方はインフルエンサー起用の見積書の読み方と費用内訳の確認ポイントで確認できます。予算枠が小さい場合の配分は低予算で始めるインフルエンサーマーケティングの予算配分術が実務的です。

スケジュールは公開日から逆算します

スケジュールは、投稿の公開日を起点にして逆算で組みます。前から積み上げると、社内確認の日数が最後に押し出されて破綻します。標準的な逆算の形は次のとおりです。

公開日からの逆算作業内容担当
8週間前企画書作成・社内レビュー・決裁マーケ担当
6週間前候補選定・条件提示・打診開始マーケ担当
5週間前契約締結・商品発送手配マーケ・法務・物流
4週間前依頼書配布・撮影開始マーケ担当
2週間前投稿案の受領・社内確認・修正依頼マーケ・法務
1週間前最終稿の確定・公開日時の確定マーケ担当
公開日投稿・URL回収・初速の確認マーケ担当
2週間後インサイト回収・レポート作成マーケ担当

季節商戦に合わせる場合は、この逆算にさらに前倒しが必要です。年末年始や大型セールに絡む施策の組み方はインフルエンサーの季節キャンペーン設計と逆算スケジュールにまとめています。同時に多人数を動かす場合の進行管理はインフルエンサー20人を同時に動かす進行管理と抜け漏れ対策が参考になります。

予備費と上振れ時の扱いを書いておきます

予備費を総額の10%確保しておくと、辞退による差し替えや追加の修正対応にその場で対応できます。企画書には、予備費の使い道と、使う場合の判断者まで書いておいてください。あわせて、想定を大きく上回る反応が出た場合に追加発注を行うかどうかの方針も1行入れておくと、好調時に社内調整で時間を失わずに済みます。

リスク・法令対応と体制・承認フローの明記

リスクの欄には、起こりうる事象と、起きたときに誰が何をするかまで書きます。「炎上のリスクがあります」だけでは、決裁者は判断できません。想定される事象を3〜5個並べ、それぞれに発生確率の感覚値、影響範囲、初動の担当者と行動を対応づける形が実務的です。

表示規制の確認欄を必ず設けます

広告であることの明示は、2023年10月に施行された景品表示法上の指定告示、いわゆるステルスマーケティング規制で事業者側の義務とされています。規制の対象になるのは広告主である自社ですので、企画書には表記のルールと確認方法を明記してください。詳しくはステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドで整理しています。化粧品・健康食品・医療関連の商材なら、薬機法に触れる表現の可否も企画段階で確認が必要です。商材別のNG表現は薬機法とインフルエンサー起用の基本と商材別NG表現・確認フローにまとめました。

炎上時の初動を1行で決めておきます

企画書に書くべきは、事後対応の詳細な手順書ではなく、最初の1時間で誰が何をするかです。第一報を受ける窓口、投稿の一時削除を判断する権限者、広報への連絡経路の3つを書いておけば、実際に何かが起きたときの初動が止まりません。想定シナリオと対応の型はインフルエンサー施策の炎上対策と発生時の初動対応を参照してください。

体制と承認フローは図ではなく表で書きます

工程実行担当承認者所要日数の目安
企画書の承認マーケ担当部門長・決裁者3〜5営業日
候補者の確定マーケ担当部門長2〜3営業日
契約書の締結マーケ担当法務3〜5営業日
投稿案の確認マーケ担当法務・広報3〜5営業日
公開の最終承認マーケ担当部門長1営業日

この表があると、スケジュールの現実性が一目で伝わります。契約書に盛り込むべき条項はインフルエンサー契約書の作り方と必須チェック項目で確認できますので、法務レビューに出す前に自分で一度突き合わせておくと往復が減ります。

決裁が通る企画書と落ちる企画書の分かれ目

決裁が通る企画書は、判断に必要な情報が先頭に並んでいます。決裁者は忙しく、13ページを最初から丁寧に読むことはありません。冒頭1ページのサマリーで「いくら使って、何を得て、失敗したらどうするか」が分かる状態にしておけば、残りのページは根拠の確認に使われるだけになります。

冒頭サマリーに入れる5行

サマリーに書くのは、目的、投資額、期待できる成果と目標値、実施期間、撤退基準の5行です。この5行が数字で書かれていれば、決裁者はその場で判断できます。逆に、市場動向やインフルエンサーマーケティングの一般論から始まるサマリーは、読み飛ばされたうえで「で、いくらなの」と聞かれることになります。一般論は背景の欄に1行だけ置き、サマリーには自社の数字だけを並べてください。

落ちる企画書に共通する4つのパターン

パターン症状修正の方向
目的が複数認知も売上もブランディングも狙うと書いてある主目的を1つに絞り、残りは副次効果として1行に落とします
根拠のない数字目標リーチ50万という数字だけが載っている算出式と前提を1行添えます
候補者ありき特定の1人を起用したい理由から始まっている選定基準を先に示し、候補はその基準の適合例として出します
失敗の想定がないうまくいく前提だけで組まれている撤退基準とリスク時の初動を追記します

4つのうち、決裁者の心証をもっとも悪くするのは「候補者ありき」です。基準ではなく好みで選んでいるように見えると、企画全体の客観性が疑われます。候補者への熱意は別紙で伝え、本編では基準で語ってください。

過去実績がなく数字が読めないときの書き方

初めての施策で予測が立たない場合は、無理に精緻な数値を作らず、テスト設計として提示するほうが通ります。「1回目は10名・予算50万円で実施し、得られた実績値をもとに2回目以降の規模を決めます」という書き方です。このとき、1回目で何を検証するのか、どの数字が出れば次に進むのかを明記してください。全額を一度に投じる企画より、段階的に投じる企画のほうが、決裁者にとっては承認しやすい形になります。

提出前の最終チェックリストと実行への引き継ぎ

提出前に確認する項目は18点です。作成に時間をかけたあとほど見落としが増えますので、書き上げた翌日に、この一覧を上から順に潰してから提出してください。1項目でも空欄が残っていると、そこが差し戻しの起点になります。

提出前チェックリスト18項目

この18項目のうち、実務でもっとも抜けやすいのは撤退基準と予備費、そして社内承認の所要日数の3つです。いずれも書いていなくても企画書としては成立してしまうため、レビューでも指摘されにくく、実行段階になって初めて困る種類の項目になります。

承認後に依頼書へ引き継ぐ内容

企画書が承認されたら、そこから依頼書へ転記する項目を決めておきます。目的、伝える事実、訴求軸、必須表記、禁止表現、成果物の仕様、納期、二次利用の範囲、修正回数の上限、インサイト提出の義務。この10項目が企画書から依頼書へまっすぐ流れる設計にしておくと、転記の際に条件がずれません。打診段階の文面はインフルエンサーへの依頼文面の書き方とテンプレート例文のテンプレートをそのまま使えます。

実施後は同じ企画書に結果を追記します

施策が終わったら、新しくレポートを作るのではなく、企画書の各項目の横に実績値を追記してください。目標リーチ50万に対して実績42万、想定単価に対して実績単価、といった形で並べると、次回の企画書の目標値がそのまま根拠を持ちます。この積み重ねが2〜3回続くと、目標値の設定に社内の誰も反対しなくなります。企画書を使い捨ての資料にせず、施策ごとに更新される台帳として運用することが、決裁のスピードを恒久的に上げるいちばん確実な方法です。

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