母の日にコスメを、夏に飲料を、ブラックフライデーにセール告知を——季節の商戦に合わせてインフルエンサーを起用したいと考えたとき、いちばん多いつまずきは企画の中身ではなく時間の使い方です。声をかけた時点で有力な候補の枠がすでに埋まっていた、商品発送が間に合わず投稿がピーク後にずれ込んだ、といった事故は毎年繰り返されます。この記事では、年間商戦カレンダーの読み方から、投稿日を起点にした逆算スケジュール、繁忙期の単価と枠の実態、年間予算の配分までを、企業のマーケティング担当者が明日から使える形で整理しました。2026年8月時点の公開情報と実務の目安にもとづく内容です。

この記事の要点

  • 季節キャンペーンの成否は企画の質より発注の早さで決まります。平常期は投稿日の6〜8週間前、繁忙期は10〜12週間前が声かけの目安です。
  • 狙う山は年3〜4本に絞ってください。すべての商戦に乗ろうとすると、1本あたりの予算も準備時間も足りなくなります。
  • 11〜12月は依頼が集中し、提示額が平常期より1〜3割高くなる例が見られます。単価そのものより、投稿日指定や優先枠といった条件で総額が上がる点に注意が必要です。
  • 年間予算は山に5〜6割、平常月の継続露出に3〜4割、予備費に1割という二層構造が組みやすい配分です。
  • 投稿はピーク当日に集中させず、検討が始まる時期と直前期の二段構えで分散させるほうが取りこぼしが減ります。

季節キャンペーン設計の全体像と逆算の考え方

季節キャンペーン設計とは、需要が高まる特定の時期を起点に、投稿日から逆算して候補の打診・契約・商品発送・制作・確認の各工程を並べ、期日どおりに露出を出しきるための計画づくりです。通常のインフルエンサー施策との違いは、投稿日をこちらの都合でずらせないという一点に尽きます。母の日は5月の第2日曜日から動きませんし、ブラックフライデーの週末も固定です。この動かせない締切があるために、平常期なら吸収できる小さな遅れが、そのまま機会損失に直結します。

季節施策が通常施策と決定的に違う点

通常のインフルエンサー施策であれば、候補との条件がまとまらなければ翌月に回す、商品の到着が遅れたら投稿日を1週間ずらすといった調整ができます。ところが季節施策では、その調整先がありません。ハロウィンの投稿を11月に出しても意味がなく、母の日ギフトの紹介が5月中旬に出れば売り場はすでに次の季節へ切り替わっています。つまり、計画のなかに「間に合わなかった場合の逃げ道」を最初から用意しておく必要があります。

もうひとつの違いは、競合も同じ日を狙って動いているという点です。同じ時期にタイムラインへ流れるPR投稿の総量が増えるため、平常月と同じ企画では埋もれます。単に露出を確保するだけでなく、他社と切り口をずらす設計まで含めて考えなければならないところが、季節施策の難しさです。施策全体の標準的な進め方はインフルエンサーマーケティングの進め方6ステップと標準スケジュールで整理していますので、基本の流れを押さえたうえで季節要因を上乗せしてください。

逆算で崩れやすい四つの工程

逆算計画が崩れる場所は、実務ではほぼ四つに集約されます。第一に候補への打診と返信待ちの期間です。第二に契約書と条件のすり合わせです。第三に商品の手配と発送です。第四に投稿前の原稿確認の往復です。このうち自社の努力だけで短縮できるのは第二と第四だけで、第一と第三は相手都合や物流事情に左右されます。したがって、短縮できない工程には余裕を厚く積み、短縮できる工程は社内の決裁ルートを事前に整えておくという配分が合理的です。

とくに見落とされやすいのが第三の商品発送です。年末の物流繁忙期は配送が通常より遅れることがあり、地方在住のインフルエンサーへの到着が読みにくくなります。撮影に季節感のある小物が必要な場合は、その調達期間も加算されます。商品が届いてから投稿までに、実際に使ってもらう期間も要ります。スキンケアのように使用実感を語ってもらう商材では、到着から投稿まで2週間以上を見込むほうが安全です。

年間で見ると変わってくること

単発の商戦だけを見ていると、毎回ゼロから候補を探すことになります。年間を通した設計に切り替えると、春に起用した相手に夏も声をかけられる、前年の実績が残っているので条件交渉が早いといった蓄積が効いてきます。年間契約や複数回起用の考え方はインフルエンサーの継続起用と長期契約の設計・運用ガイドで詳しく扱っています。季節施策こそ、継続起用の恩恵がいちばん出やすい領域だとお考えください。

年間商戦カレンダーと狙う山の選び方

狙う商戦の山は、年3〜4本に絞ってください。国内の販促カレンダーには毎月なにかしらのイベントが並びますが、すべてに乗ろうとすると1本あたりの予算も準備期間も薄くなり、どれも中途半端に終わります。自社の売上データを月別に並べ、実際に数字が動いている月と、動かせる可能性がある月を見極めたうえで選ぶという順番が現実的です。

主要な商戦期と準備の起点

国内で一般的に販促の山とされる時期を、インフルエンサー施策の準備起点とあわせて整理しました。準備起点は、候補への打診を始めるべき時期を示しています。

商戦の山ピーク時期打診の起点相性のよい商材
お正月・初売り1月上旬10月中旬福袋・食品・美容・旅行
バレンタイン2月上旬〜14日11月下旬菓子・ギフト・雑貨
新生活・年度末3月〜4月上旬1月中旬家電・家具・日用品・サービス
母の日5月第2日曜2月下旬コスメ・花・食品・ギフト
父の日6月第3日曜4月上旬酒類・ガジェット・アパレル
夏商戦・夏休み7月〜8月5月上旬飲料・レジャー・旅行・日焼け対策
ハロウィン10月下旬8月上旬菓子・コスメ・アパレル・飲食店
ブラックフライデー11月下旬8月下旬EC全般・家電・アパレル
クリスマス12月中旬〜25日9月中旬ギフト・食品・玩具・ジュエリー
年末年始12月下旬〜1月9月下旬食品・掃除用品・帰省関連

打診の起点は、後述する逆算スケジュールの標準値から算出した目安です。商材の性質や必要な制作物によって前後しますので、自社の過去案件の実績があればそちらを優先してください。なお、この表にある山のうち10月下旬から12月にかけては依頼が集中しますので、同じ時期に複数の山へ乗る計画は避けたほうが無難です。

山を三つに絞り込む判断基準

絞り込みの基準は三つあります。第一に、その時期に自社商材の検索や指名の動きが実際に増えているかという点です。第二に、その山でSNS上に会話が生まれやすいかという点です。第三に、競合の出稿が過密すぎないかという点です。売上が伸びる月であっても、競合の広告費が桁違いに投じられている山であれば、限られた予算では埋もれます。あえて一つ手前の時期や、競合が手薄なイベントを取りにいくほうが投資効率は上がります。

「二番目の山」を狙うという選択

予算規模で勝てない場合は、最大の山の一歩手前を取る設計が有効です。たとえばクリスマス本番ではなく11月中旬の「贈り物を考え始める時期」に投稿を集める、ブラックフライデー当日ではなく事前告知の週に露出を寄せるといった形になります。競合のPR投稿が最も濃くなる数日を外すだけで、同じ予算でも到達の質は変わります。低予算での戦い方は低予算で始めるインフルエンサーマーケティングの予算配分術もあわせてご覧ください。

山と山のあいだの谷の使い方

商戦の山が年3〜4本だとすると、残りの8〜9か月は谷の時期になります。この谷を空白にしないことが、翌年以降の調達力を左右します。谷の期間はギフティングを中心にした低コストの継続露出に充て、山で起用する候補との関係を作っておくという使い方が定石です。谷で一度でも一緒に仕事をした相手は、山の時期の打診に対する返信率が明らかに高くなります。ギフティングの進め方はギフティング施策の進め方と投稿獲得率を上げるコツにまとめています。

投稿日から逆算するスケジュールの組み立て

逆算スケジュールは、投稿希望日から数えて平常期で6〜8週間、繁忙期で10〜12週間を確保してください。インフルエンサー施策は実施の確定から公開まで1.5か月程度を要するのが通例とされており、年末商戦の時期には2か月以上かかることもあるという指摘が、THECOOなど複数の支援会社の解説記事で共通して出ています。この標準値に、自社商材固有の事情を加算して計画を組みます。

工程別のリードタイム内訳

実務でよく使われる工程の内訳を、平常期と繁忙期に分けて整理しました。所要はいずれも投稿日から遡った期間の目安です。

工程平常期の所要繁忙期の所要短縮の可否
企画・KPI設定・予算確定1週間1〜2週間社内調整次第で短縮できます
候補のリストアップ・打診1〜2週間2〜3週間短縮しにくい工程です
条件交渉・契約締結1週間1〜2週間雛形整備で短縮できます
商品手配・発送・到着1週間1〜2週間短縮しにくい工程です
使用期間・撮影・編集1〜2週間2〜3週間商材により固定されます
原稿確認・修正1週間1週間ルール整備で短縮できます
投稿・返信対応投稿日〜3日投稿日〜3日

この表を見ると、短縮しにくい工程が全体の半分近くを占めていることが分かります。だからこそ、削れるところを削って詰めるより、着手を前倒しするほうが効きます。とくに契約書の雛形と原稿確認のルールは、案件のたびに作り直すのではなく、年度初めに整備して使い回す運用へ切り替えてください。契約面の要点はインフルエンサー契約書の作り方と必須チェック項目で解説しています。

繁忙期に前倒しが必要になる理由

10月から12月にかけては、企業側の依頼が集中するだけでなく、インフルエンサー側の稼働も落ちます。年末は旅行や帰省でコンテンツ制作から離れる期間が生まれ、返信のペースも普段より遅くなるためです。加えて、同時期に複数のPR案件を抱える人が増えるため、投稿の間隔調整で希望日に投稿できないという断りも起きます。この二重の要因がありますので、繁忙期は平常期の1.5倍の期間を見込むという前提で組んでおくと、計画が破綻しにくくなります。

「10月に決めて12月に投稿」では遅い場合があります

クリスマス商戦で12月上旬の投稿を狙う場合、10月に動き始めると打診・契約・発送で11月中旬まで消え、制作期間がほとんど残りません。12月上旬投稿なら9月中旬、12月下旬投稿でも10月上旬には候補選定を始めるほうが安全です。夏のうちに年末の候補を確保しておく企業も珍しくありませんので、8月から9月にかけては翌年末の準備月と位置づけてください。

投稿日を分散させる設計

投稿日は、ピーク当日に全員をぶつけるのではなく、期間内に分散させてください。同じ日に6人が一斉に投稿すると、フォロワーが重なっている層には同じ日に同じ商品が何度も届き、広告色が強く感じられます。また、その日の反応が悪かった場合に打ち手が残りません。6人であればピーク前の3週間に2人ずつ配置し、反応の良い切り口が見えた段階で後半の指示を微調整するという進め方が現実的です。

分散のもうひとつの効果は、検討期間の異なる層を拾えることです。母の日やクリスマスのような贈答需要では、2〜3週間前から候補を探し始める人と、直前の数日で慌てて決める人が混在します。前者には比較や体験の投稿が効き、後者には在庫や配送締切を伝える投稿が効きます。同じ商材でも時期によって伝えるべき内容が変わるという前提で、配置を決めてください。

繁忙期の単価上昇と枠の埋まり方

繁忙期のインフルエンサー単価は、平常期より1〜3割程度高い提示になる例が見られます。年末はブランドからの依頼が増えるため金額を上げる傾向にあるという指摘が支援会社から出ており、実務でも同様の感触があります。ただし、季節ごとの単価変動を業界横断で集計した公式な数値は2026年8月時点で公開されていませんので、以下は実務上の目安としてお読みください。

枠が埋まっていく時期の実感

フォロワー規模が大きく実績のあるインフルエンサーほど、枠は早く埋まります。年末商戦で言えば、9月時点で12月のスケジュールに複数の案件が入っている人は珍しくありません。10月に入ってから声をかけると、選べる候補が「まだ空いている人」に限られ、選定の質が落ちます。第一希望が取れないことを前提に、候補リストは実際に起用したい人数の3倍程度を用意しておくほうが安全です。

時期枠の状況価格の傾向取れる打ち手
ピークの4か月前ほぼ空いています平常期と同水準第一希望を押さえられます
ピークの3か月前人気層から埋まり始めます平常期と同水準候補の選定に余裕があります
ピークの2か月前人気層は半分程度が埋まりますやや上昇します第二希望まで含めて確保します
ピークの1か月前選択肢が大きく減ります1〜3割上昇の例がありますマイクロ・ナノ層に切り替えます
ピークの3週間前制作期間が確保できません特急対応で上乗せされますギフティング中心に変更します

この表の時期区分は目安であり、分野によって埋まり方は変わります。美容やファッションのように季節企画の多いジャンルは埋まるのが早く、BtoB寄りの領域では比較的余裕があります。自社の分野がどちらに近いかは、過去に打診した際の返信率と成約率を月別に並べれば見当がつきます。

上がるのは単価だけではない

繁忙期に総額が膨らむ要因は、投稿単価そのものより条件面にあることが多いという点は押さえておいてください。投稿日を1日単位で指定する場合の指定料、他社案件との掲載間隔を空けてもらうための優先枠、締切に間に合わせるための特急制作費といった項目が積み上がります。見積もりを比較するときは、投稿1本あたりの金額ではなく、指定条件を含めた総額と、その条件が本当に必要かどうかをセットで確認してください。相場全般の考え方はインフルエンサー起用の料金相場【2026年完全ガイド】で詳しく整理しています。

費用を抑えながら枠を確保する方法

繁忙期の費用を抑える現実的な方法は三つあります。第一に、早期に確保して平常期の単価で合意しておく方法です。第二に、フォロワー規模の大きい層を1人押さえるのではなく、マイクロ層やナノ層を複数人組み合わせる方法です。この層は繁忙期でも比較的枠が残りやすく、単価の上昇幅も小さい傾向があります。第三に、固定報酬ではなく成果連動の条件を組み合わせる方法です。成果報酬型の仕組みは成果報酬型インフルエンサー施策の仕組みと料率相場・設計の実務で解説しています。

年間予算の配分と山谷のバランス

年間予算は、狙う山3〜4本に5〜6割、平常月の継続露出に3〜4割、予備費に1割という配分が組みやすい形です。山に全額を寄せる企業は多いのですが、その場合、平常期にインフルエンサーとの接点が途切れ、翌年また一から候補を探すことになります。山で刈り取り、谷で関係を育てるという二層構造にすると、二年目以降の調達コストが目に見えて下がります。

予算規模別の配分イメージ

年間のインフルエンサー予算の規模別に、配分の考え方を整理しました。金額は自社の状況に置き換えてご覧ください。

年間予算狙う山の本数山への配分平常月の使い方予備費
100万円未満1〜2本60〜70%ギフティング中心で月2〜3人5〜10%
100〜300万円2〜3本55〜60%マイクロ層に月3〜5人の有償依頼10%
300〜1,000万円3〜4本50〜55%継続起用の年間枠を数名分確保10%
1,000万円以上4本前後45〜50%アンバサダー体制と広告転用を併走10〜15%

予算が大きくなるほど山への集中度が下がるのは、平常期に仕込む価値が相対的に高まるためです。年間で一定数の投稿が積み上がっていれば、山の時期に新規で探す必要が減り、既存の関係者へ増枠を依頼するだけで露出量を確保できます。長期的な関係づくりの形としてはアンバサダープログラムの設計と運用の始め方も参考になります。

予備費を必ず残す理由

季節施策では、予定していた投稿が出ないという事故が一定の確率で発生します。体調不良による延期、商品到着の遅延、原稿確認で折り合わずに中止といったケースです。ピーク直前にこれが起きたとき、予備費がなければ露出量が計画を下回ったまま商戦が終わります。年間予算の1割を確保しておけば、直前でもマイクロ層を数名追加したり、SNS広告で不足分を補ったりする選択肢が残ります。

山の予算を「投稿」だけに使い切らない

商戦期は投稿の本数を増やしたくなりますが、良い投稿が出たときにそれを広告として配信し直す枠も残しておいてください。反応の良かった投稿をホワイトリスト広告として回すほうが、追加で1人起用するより費用対効果が高くなる場面は多くあります。仕組みはホワイトリスト広告の仕組みと始め方を実務フローで解説にまとめています。二次利用の許諾を契約時に取っておくことが前提になりますので、発注段階で忘れずに条件へ入れてください。

単月ではなく四半期で見る

予算の消化を月単位で管理すると、山の月に集中投下する計画が社内の月次目標と噛み合わなくなることがあります。季節施策は準備月に費用が発生し、成果は投稿月以降に出るという時間差が必ずありますので、四半期単位で投下と回収を見る運用に切り替えるほうが実態に合います。準備月の支出だけを見て効果が出ていないと判断されないよう、計画段階で経営層と時間差の合意を取っておいてください。

商戦期の企画とクリエイティブの型

商戦期の投稿は、ティザー・ローンチ・サステインの三段構成で組み立ててください。ピーク当日に向けて期待を作り、ピークで一気に露出を集め、その後も余韻を残すという配分です。同じ本数の投稿でも、この三段に配分するかピーク当日に固めるかで、到達の総量と検討層への当たり方が変わります。

三段構成の役割分担

ティザー期は、商品名を前に出さずに季節の話題として会話を作る段階です。「今年の母の日は何を贈るか」といった問いかけや、去年の失敗談から入る投稿が向いています。ローンチ期は、商品と具体的な理由を明示して検討の土俵に乗せる段階です。比較や使用実感がここに入ります。サステイン期は、購入した人の反応やUGCを拾って、まだ迷っている層の背中を押す段階になります。

フェーズ時期の目安投稿の中身見る指標
ティザーピークの3〜4週間前季節の話題・悩み提起・問いかけ閲覧数・コメント数
ローンチピークの1〜2週間前商品紹介・比較・使用実感保存数・プロフィール遷移
ピークピーク当日前後締切・在庫・限定特典の告知クリック数・購入数
サステインピーク後1〜2週間購入者の反応・UGCの紹介UGC件数・指名検索数

この配分は、投稿数が6本以上ある場合に効果を発揮します。3本以下しか用意できない場合は、ローンチ期とピーク期に寄せ、ティザーは自社アカウントの発信で代替するという割り切りが現実的です。クリエイティブの型そのものは成果が出るPR投稿クリエイティブの作り方と7パターンで7つのパターンに分けて解説しています。

山ごとに変わる訴求の軸

同じ商材でも、山によって刺さる訴求は変わります。母の日やクリスマスのような贈答需要では「贈る相手にどう思われるか」が判断軸になるため、パッケージや渡したときの反応を語ってもらう構成が効きます。一方、ブラックフライデーや初売りのようなセール需要では「今買う理由」が判断軸ですので、価格差と期限を明確に伝える構成が必要です。夏商戦のような生活文脈の需要では、暑さや汗といった具体的な困りごとから入る構成が向いています。

ギフティングと有償依頼の使い分け

商戦期の企画では、有償依頼とギフティングを組み合わせると露出量を確保しやすくなります。有償依頼で投稿日と内容を確実に押さえ、ギフティングで同時期の言及量を増やすという二段構えです。ただし、ギフティングは投稿の有無も時期も相手次第ですので、ピーク当日の露出を担保する用途には使えません。ギフティングは商戦の2か月前から少しずつ送り始め、自然発生の投稿が積み上がった状態でピークを迎える設計にしてください。

商材タイプ別の季節設計パターン

季節設計の型は、商材が「その場で買えるか」「検討にどれだけ時間がかかるか」で大きく三つに分かれます。EC・D2Cのように即購入できる商材、店舗ビジネスのように来店という行動を挟む商材、サービスやアプリのように無料で試せる商材では、投稿を置くべき時期も測るべき指標も変わります。

EC・D2Cの場合

EC商材では、ピークの2〜3週間前に検討を作り、ピーク直前に配送締切で背中を押すという配分が基本になります。とくに贈答需要では、いつまでに注文すれば当日に間に合うかという情報が購入の決め手になりますので、配送締切日をクリエイティブに明記する指示を入れてください。売上への導線づくりはインフルエンサー施策をEC売上につなげる導線設計で詳しく扱っています。

また、ECではセール期間中にサイト側の負荷やクーポンの適用条件でトラブルが起きやすくなります。インフルエンサーの投稿からの流入が集中する時間帯にサイトが重くなれば、せっかくの露出が売上に変わりません。投稿スケジュールを社内のEC担当と共有し、流入が集中する時間帯を事前に伝えておく連携が必要です。

店舗・飲食・サロンの場合

店舗ビジネスでは、投稿から来店までに数日から数週間の時間差が生まれるため、ピークの手前に厚く配置する設計が向いています。年末の忘年会需要であれば11月上旬から、母の日の食事需要であれば4月中旬から投稿を始めるという具合です。また、来店のキャパシティに上限がある以上、露出を増やしすぎて予約が取れない状態を作らないという配慮も要ります。予約枠の残数を見ながら投稿本数を調整できる体制が理想です。業種別の設計は飲食店・店舗集客のインフルエンサー活用ガイドにまとめています。

サービス・アプリ・無形商材の場合

無形商材では、季節の山そのものより、生活イベントに紐づくタイミングを狙うほうが効きます。新生活シーズンの家計見直し、夏休みの学習需要、年末の大掃除や確定申告の準備といった文脈です。この場合はピーク当日という概念が薄いため、需要が立ち上がる時期に2〜3週間かけて露出を並べる設計になります。購入の締切がない分、投稿の分散が効きやすい商材タイプでもあります。

商材タイプ投稿を置く時期主に見る指標注意点
EC・D2Cピーク2〜3週間前と直前クリック数・購入数・客単価配送締切とサイト負荷の管理
店舗・飲食ピーク3〜5週間前から厚く予約数・来店数・指名検索予約キャパを超えない配分
サロン・クリニックピーク4〜6週間前予約数・新規比率表現規制の事前確認が必須
アプリ・Webサービス需要立ち上がりに2〜3週間インストール数・登録数ピーク依存が低く分散しやすい
高単価・長期検討商材山の3か月前から段階的に資料請求数・問い合わせ数単発では動かず継続が前提

効果測定と翌年への引き継ぎ

季節キャンペーンの効果測定は、投稿期間ではなく商戦期間全体で区切って評価してください。投稿日から3日間だけを見ると、贈答需要のように検討期間の長い商材では成果を取りこぼします。ピークの4週間前から2週間後までを1つの期間として設定し、その期間の数字を前年同期と並べるという測り方が実態に近くなります。

季節要因を分離して見る

季節施策の評価でいちばん難しいのは、伸びた数字のうちどこまでが施策の効果かという切り分けです。商戦期は施策を打たなくても数字が伸びますし、同時期に広告も強化されているのが普通です。完全な分離は困難ですが、施策を打った商品と打たなかった商品の伸び率を比べる、投稿があった地域とそれ以外を比べるといった相対比較を用意しておくと、判断の精度が上がります。測定手法の全体像はインフルエンサー施策の効果測定の方法と計測ツールで解説しています。

前年同期比を使うときの注意

前年同期比は季節施策の評価に欠かせませんが、そのまま使うと誤読を招く場面があります。カレンダーの並びで商戦期の日数が前年と異なる年、大型セールの開催期間が変わった年、天候が大きく違った年などです。比較する際は、単純な期間比較だけでなく、日数を揃えた1日あたりの数字や、市場全体の伸び率と自社の伸び率の差分もあわせて見てください。KPIの立て方はインフルエンサー施策のKPI設計とテンプレートが参考になります。

翌年に引き継ぐべき記録

季節施策の最大の資産は、翌年に同じ山へ挑むときの記録です。残しておくべき項目は、打診した候補と返信率、実際の合意単価と条件、発送から投稿までに要した日数、投稿ごとの反応と流入、そして何がボトルネックになったかという振り返りの五点です。この記録があれば、翌年は打診の起点を何週間前に置けばよいかを推測ではなく実績で決められます。担当者が交代しても再現できるよう、案件フォルダに定型で残す運用にしてください。

商戦期こそ#PR表記の確認を徹底してください

投稿本数が増え、進行が慌ただしくなる商戦期は、広告表示の抜けが起きやすい時期です。景品表示法のステルスマーケティング規制で措置命令の対象になるのは広告主である企業側ですので、投稿URLを1件ずつ回収し、表示の有無をスクリーンショットとともに記録してください。詳細はステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドで確認できます。

実行チェックリストとつまずきやすい点

季節キャンペーンの実行前チェックは、投稿日の確定から順に十項目を潰していくと漏れが出ません。担当者が変わっても同じ品質で回せるよう、社内のテンプレートとして残しておくことをおすすめします。ここでは、実務で使いやすい形にまとめました。

着手前に確定させる十項目

確認すべき順番は次のとおりです。第一に投稿希望日とピークの定義、第二に商戦期間の始点と終点、第三に確保したい投稿本数と分散配置、第四に必要な候補リストの人数、第五に打診開始日の逆算、第六に商品発送の締切日、第七に原稿確認の担当と回答期限、第八に二次利用と広告転用の許諾範囲、第九に予備費の額と使いどころ、第十に投稿URLの回収方法と記録先です。この十項目が埋まっていれば、進行中の判断はほとんど迷いません。

確認項目確定させる時期決めておく内容
投稿希望日とピーク定義着手時動かせない日と調整可能な日を分けます
商戦期間の始点・終点着手時効果測定の対象期間を先に決めます
投稿本数と分散配置着手時週ごとの本数と担当の割り当てを決めます
候補リストの人数打診2週間前起用予定人数の3倍を用意します
打診開始日着手時繁忙期は10〜12週間前を起点にします
商品発送の締切日契約時物流繁忙期の遅延を織り込みます
原稿確認のルール契約時修正回数と回答期限を明文化します
二次利用の許諾範囲契約時広告転用の可否と期間を明記します
予備費の額予算確定時年間予算の1割を目安に確保します
投稿URLの回収方法投稿1週間前提出先と提出期限を共有します

毎年繰り返されるつまずき

実務でよく見る失敗は五つあります。第一に、着手が遅れて選べる候補が残っていないという事態です。第二に、商品発送が遅れて投稿がピーク後にずれ込むという事態です。第三に、投稿を同じ日に固めてしまい、反応を見ながら調整する余地がなくなるという事態です。第四に、山にすべての予算を投じて平常月が空白になり、翌年また一から探し直すという事態です。第五に、二次利用の許諾を取っていなかったために、反応の良かった投稿を広告へ転用できないという事態です。失敗の型を体系的に押さえたい場合はインフルエンサーマーケティングの失敗例10パターンと回避策もご覧ください。

まず何から始めるか

これから年間設計を始めるなら、最初にやることは自社の売上を月別に並べて山を特定する作業です。次に、その山に対して逆算した打診開始日をカレンダーに書き込み、社内の予算承認プロセスがその日までに終わるかを確認してください。多くの企業でボトルネックになるのは候補探しではなく、社内の意思決定にかかる時間です。予算の枠だけ先に取っておき、細部は打診しながら詰めるという進め方に切り替えるだけで、着手が数週間早まります。

Bloomでの季節キャンペーンの組み立て方

Bloomでは審査制インフルエンサー30,000人の中から、商材のジャンルやフォロワー属性で候補を絞り、複数人へまとめて打診できます。季節施策でいちばん時間がかかるのは候補探しと打診の往復ですので、この工程を短縮できると逆算スケジュール全体に余裕が生まれます。初期費用0円で始められますので、まずは次の商戦の候補リストづくりから試してみてください。

本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。