コスメやサプリのPR投稿を依頼したところ、インフルエンサーが「シミが消えた」「1か月で5kg落ちた」と書いてしまった、という事故は珍しくありません。原因は担当者が薬機法を知らないことではなく、どこまでが言える表現なのかを商材区分ごとに整理しないまま依頼していることにあります。この記事では、化粧品・医薬部外品・健康食品・医療機器を横断して薬機法の基本を整理し、区分別に言ってよい表現とNG表現を対照表にまとめました。あわせて、広告主が負う責任の所在、投稿前の原稿確認フロー、監修体制の作り方、修正依頼の伝え方までを、明日から使える手順として解説します。本記事は2026年8月時点の公開情報にもとづく一般的な情報提供であり、個別案件は薬事の専門家にご確認ください。

この記事の要点

  • 薬機法の広告規制は「何人も」を対象にしていますが、実務で行政指導や課徴金の矢面に立つのは、依頼した広告主である企業側です。
  • 言える表現は商材の区分で決まります。化粧品は56項目の効能効果の範囲内、医薬部外品は承認された効能の範囲内、健康食品は薬機法上あくまで食品であり効能効果を標榜できません。
  • 「個人の感想です」「効果には個人差があります」という注記を添えても、本文が言えない効能を語っていれば違反の評価は変わりません。
  • 事故を防ぐ現実的な方法は、依頼書へのNG表現リスト同梱と、投稿前の原稿確認を7ステップで固定することです。表現の判断を投稿者の善意に委ねないでください。
  • 修正依頼は「どこが・なぜ・どう直すか」を必ずセットで伝えると、往復が減り関係も壊れません。

薬機法とインフルエンサー起用の関係

薬機法とは、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品の品質と有効性と安全性を確保するための法律で、企業が依頼したインフルエンサーのPR投稿も、この法律の広告規制の対象になります。正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。テレビCMやパッケージだけを規制する法律だと誤解されがちですが、SNSの投稿であっても広告と判断されれば同じ物差しで評価されます。この前提が共有できていないと、依頼書に表現ルールを書く発想そのものが生まれません。

SNS投稿が「広告」と判断される三つの要件

行政の運用では、広告に該当するかどうかを三つの要件で見るという考え方が一般に知られています。第一に、顧客を誘引する意図が明確であること、第二に、特定の商品名が明らかにされていること、第三に、一般人が認知できる状態にあることの三点です。企業が報酬や商品を提供して依頼したPR投稿は、この三つをそろって満たすことがほとんどです。したがって、投稿者が個人アカウントで発信していても、内容が広告として扱われるという前提で組み立てる必要があります。

注意したいのは、商品名を出していなければ大丈夫という理解が成り立たない場面があることです。プロフィール欄のリンクや同時に表示される画像から特定の商品が明らかであれば、本文に商品名がなくても特定性は満たされ得ます。ハッシュタグやストーリーズのリンクスタンプも表示の一部として扱われますので、キャプション本文だけを確認して安心するのは危険です。

「何人も」規制という条文の構造

薬機法の広告規制でおさえておきたいのは、条文が主語を事業者に限定していない点です。虚偽・誇大広告を禁じる第66条は「何人も」という書き出しになっており、広告主だけでなく、代理店、キャスティング会社、インフルエンサー、アフィリエイター、ライターまでが名宛人になり得るという解説が、薬事法ドットコムをはじめ複数の専門機関から示されています。つまり法律の建て付け上は、投稿した本人も規制の対象から外れていません。

ただし、これは「だからインフルエンサーに責任を取ってもらえばよい」という話にはなりません。詳しくは責任の所在の章で扱いますが、実務で行政や消費者から追及されるのは、企画し発注した企業側であることがほとんどです。条文の広さと実務の当たり方は別物だと理解しておいてください。

違反したときに何が起きるのか

違反が認定された場合の帰結は、行政指導や措置命令、課徴金、刑事罰という段階に分かれます。2021年8月に施行された改正で虚偽・誇大広告に対する課徴金制度が導入され、課徴金対象期間に取引した対象商品の売上額の4.5%が課される仕組みとなりました。金額の規模が売上に連動するため、売れている商品ほど経済的な打撃が大きくなるという構造です。

加えて実務上は、法的な制裁より前に投稿の削除と謝罪、取引先からの説明要求、SNS上での批判といった対応コストが発生します。炎上に発展した場合の初動についてはインフルエンサー施策の炎上対策と発生時の初動対応で手順を整理していますので、規制商材を扱う企業は事前に読んでおくことをおすすめします。

この記事の位置づけ

本記事は一般的な情報提供であり、個別案件は薬事の専門家にご確認ください。条文の解釈や個別表現の可否は、商品の区分・承認内容・訴求の文脈によって結論が変わります。以下で紹介する表現例も、一般に指摘されている考え方を整理したものであり、特定の商品について可否を保証するものではありません。

商材区分ごとに変わる規制の枠組み

言ってよい表現の範囲は、その商品が薬機法上のどの区分に属するかで決まります。同じ「肌がきれいになった」という主旨でも、化粧品として言えるのか、医薬部外品なら言えるのか、健康食品では一切言えないのかが変わります。したがって依頼書を作るときの最初の作業は、コピーの検討ではなく、扱う商品の区分と承認内容を確認することです。

四つの区分と表現の余地

インフルエンサー施策でよく登場する区分を、表現の余地とあわせて整理しました。区分の判断は自社の商品担当や製造委託先に確認すれば必ず分かりますので、推測で進めないでください。

区分位置づけ言える効能効果の範囲投稿での主な注意点
化粧品人体への作用が緩和なもの告示で定められた効能効果の範囲内治る・改善・修復といった語が使えません
医薬部外品(薬用化粧品)効果が期待できる有効成分を配合し承認を受けたもの品目ごとに承認された効能効果の範囲内承認文言の一部を省略すると逸脱になります
健康食品・サプリメント薬機法上は食品効能効果の標榜そのものができません体験談での暗示も標榜と評価され得ます
機能性表示食品・特定保健用食品制度に沿って表示が認められた食品届出・許可された表示の範囲内届出文言からの言い換えが逸脱になります
医療機器・家庭用美容機器クラス分類により規制の強さが変わります承認・認証の範囲内雑貨扱いの機器で医療的効果を語れません

この表のうち、担当者がいちばん取り違えやすいのは医薬部外品と化粧品の境目、そして健康食品と機能性表示食品の境目です。パッケージに「薬用」と書かれていれば医薬部外品ですが、その承認内容までは記載されていないことがありますので、社内で承認書の写しを確認できる体制を作っておくと確実です。

化粧品と医薬部外品の違い

化粧品は、厚生労働省の告示で定められた効能効果の範囲内でしか表現できません。一般に56項目と呼ばれる一覧がそれで、「皮膚にうるおいを与える」「肌荒れを防ぐ」「皮膚をすこやかに保つ」「毛髪にハリ・コシを与える」といった、保つ・与える・整えるという方向の言い回しで構成されています。人体の構造や機能を変えることを想起させる「改善」「修復」「回復」「促進」といった語は、化粧品では使えないという整理が広く共有されています。

一方の医薬部外品は、有効成分と効能効果を品目ごとに審査したうえで承認されているため、化粧品より踏み込んだ表現が可能です。ただし可能なのは承認された文言の範囲内に限られ、そこから条件を落とすと逸脱になります。「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」と承認されている商品で「しみ、そばかすを防ぐ」だけを書くのは不可とされる、という指摘が東京都の資料や広告の実務解説で繰り返し出ています。条件節を省略しないという一点は、インフルエンサーへの指示でも必ず伝えてください。

健康食品は薬機法上あくまで食品

健康食品やサプリメントは、薬機法上の区分としては食品ですので、医薬品的な効能効果を標榜することができません。「痩せる」「血糖値が下がる」「関節の痛みが取れる」といった表現は、成分の説明として書いても、体験談として書いても、暗示として書いても同じく問題になり得ます。重要なのは使った単語ではなく、受け手にどのような効果を想起させるかという視点だと、複数のOEM事業者や薬事の専門会社が共通して指摘しています。健康食品ジャンルの実務は健康食品・サプリのインフルエンサー起用と薬機法対応の実務で個別に扱っていますので、サプリ単体の案件を担当される方はそちらもご覧ください。

機能性表示食品の場合は、届け出た機能性表示の範囲内であれば機能を伝えられます。ただし、インフルエンサーが届出文言を自分の言葉に置き換えた瞬間に範囲を外れることが多く、実務ではむしろ事故が起きやすい類型です。届出文言はそのまま引用してもらう形にし、言い換えを認めないという運用が安全です。

区分別・言ってよい表現とNG表現の対照表

依頼書に落とし込むときは、NG表現を並べるだけでなく、代わりに使える表現とセットで渡してください。禁止事項だけを列挙すると、投稿者は何も書けなくなり、当たり障りのない内容になって成果が落ちます。ここでは区分別に、よく問題になる表現と代替案を対照させました。いずれも一般に指摘されている考え方の整理であり、最終判断は薬事の専門家にご確認ください。

化粧品の対照表

投稿で出やすいNG表現問題になる理由言い換えの方向
シミが消えた/シミが薄くなった化粧品の効能効果の範囲を超えますメイクで気になる部分をカバーできた
ニキビが治った治療の効果を示すことになります肌をすこやかに保つケアに使っています
シワがなくなった構造の変化を想起させますうるおいでふっくら見える印象になりました
肌の奥まで浸透する角質層を超える浸透を想起させます角質層までうるおいが届きます
アトピーや敏感肌が良くなる疾病への効果を示すことになります低刺激設計で毎日使いやすい処方です
効果は医薬品並み/医薬品よりすごい医薬品的な効能の標榜になります日々のケアを続けやすい設計です

右列の言い換えは、あくまで方向性を示すものです。実際の投稿では、効能を語らせるのではなく使い心地や質感、使う場面といった感覚的な要素に寄せてもらうと、規制に触れずに魅力が伝わります。コスメ領域の投稿設計の考え方は美容・コスメブランドのインフルエンサー活用事例と勝ち筋でも取り上げています。

医薬部外品・薬用化粧品の対照表

投稿で出やすいNG表現問題になる理由言い換えの方向
しみ・そばかすを防ぐ(条件節を省略)承認文言の一部を落とすと逸脱になります承認された文言をそのまま引用します
ニキビに効く「防ぐ」と「効く」では意味が変わりますニキビを防ぐと承認されている場合はその文言で書きます
薬用だから安全・副作用がない安全性の保証は認められません使用方法と注意事項を必ず添えます
効果を実感するまで飲み続けた用法から外れた使い方の推奨になります記載の用法用量に沿って使っています

医薬部外品でとくに多い事故は、承認文言をSNS向けに短くしてしまうケースです。文字数制限のあるプラットフォームでは短縮したくなりますが、条件節は削れないという原則を先に伝えておけば防げます。原稿確認の際は、承認文言と投稿文を並べて逐語で照合してください。

健康食品・サプリと機器類の対照表

投稿で出やすいNG表現問題になる理由言い換えの方向
飲み始めて1か月で5kg落ちました食品で痩身効果を標榜することになります毎朝の習慣として続けやすい味です
疲れが取れる/よく眠れるようになった身体機能への作用を示すことになります忙しい日の食事にプラスしています
免疫力が上がる医薬品的な効能の標榜にあたります不足しがちな栄養素を補えます
血圧・血糖値が下がった疾病の治療・予防を示すことになります届出のある商品は届出文言をそのまま使います
この美容家電で肌のたるみが治る雑貨区分では医療的効果を語れません使用後の見た目の印象を語ってもらいます
医療機器レベルの効果承認・認証の範囲を超えます認証番号の範囲で表示された効能に限定します

この三つの表を、依頼書の別紙としてそのままインフルエンサーへ配布できる形に整えておくと、毎回ゼロから説明する手間がなくなります。ディレクション資料の作り方全般はインフルエンサーディレクションの進め方と指示書にまとめていますので、指示書の構成ごと見直したい場合はあわせてご覧ください。

「個人の感想です」で免責されない理由

「個人の感想です」「効果には個人差があります」という注記を添えても、本文が言えない効能を語っていれば違反の評価は変わりません。この注記は打消し表示と呼ばれ、本体の表示が与える印象を打ち消せる場合にだけ意味を持ちます。強い効果を印象づける本文に小さな注記を添えても、受け手の理解は変わらないと評価されるため、免罪符にはならないというのが実務での共通理解です。

打消し表示が無効と判断される理屈

消費者庁が公表してきた打消し表示に関する調査報告書では、体験談で強い効果を訴求している場合、近くに注記があっても消費者は自分にも同様の効果があると認識する傾向が示されています。つまり、注記があることによって誤認が解消されていないという評価になります。本文で効能効果をうたいながら注記で打ち消すのは、表示として矛盾しており意味をなさないという指摘も広告法務の専門家から繰り返し出ています。

さらに薬機法の観点では、そもそも言えない効能を語っている時点で問題が生じますので、打消し表示の有効性を議論する以前の話になります。景品表示法の優良誤認と薬機法の効能効果の標榜は別の論点であり、片方をクリアしてももう片方が残る点にも注意が必要です。

体験談だから許されるという誤解

体験談は事実の記述だから規制されない、という理解は成り立ちません。企業が依頼して掲載された体験談は、企業の広告表現として評価されます。実際に体重が落ちたという事実があったとしても、食品で痩身効果を標榜したことになるという結論は変わりません。撮影した写真が本物であること、投稿者が本当にそう感じたことは、表現の可否とは別の問題です。

また、良い反応だけを選んで掲載することも、実態より優良な印象を与えるという意味で問題になり得ます。UGCを二次利用する場合も同じ判断が必要になりますので、集めた投稿をそのまま自社サイトに転載する運用には確認の工程を挟んでください。二次利用の進め方はUGCマーケティングの活用法と二次利用の進め方で整理しています。

注記が意味を持つ場面

打消し表示がまったく無意味かというと、そうではありません。表現できる範囲の中で、使用感や個人差のある感覚について述べるときに、誤解を避ける補足として機能する場面はあります。たとえば使用感やテクスチャーの評価、味の好み、使うタイミングといった主観的な要素については、個人差がある旨を添えることに実務的な意味があります。境界は、本文が効能効果に踏み込んでいるかどうかです。

「レビューだから自由」という前提で依頼しないでください

「率直な感想をお願いします」とだけ伝えて発注すると、投稿者は良かれと思って効果を具体的に書きます。悪意のない善意の記述が違反になるのが、この領域の難しいところです。表現の自由度を残すのであれば、自由に書いてよい領域と、こちらが指定する領域を最初に線引きして伝えてください。

責任を問われるのは投稿者ではなく広告主

薬機法違反として企業名が公表されたり、課徴金の対象になったりするのは、多くの場合、投稿したインフルエンサー本人ではなく、依頼した広告主である企業です。条文が「何人も」と定めている以上、投稿者が対象外というわけではありません。それでも実務で追及が向かうのは、商品を製造・販売し、その広告から利益を得ている企業側になります。

実務で企業側に来る三つの理由

第一に、行政の目的は違反表示の是正と再発防止ですので、商品の供給元に対応させるほうが実効性があります。第二に、課徴金は対象商品の売上に連動する仕組みですので、売上を得ている企業でなければ算定できません。第三に、消費者や取引先からの問い合わせは商品ブランドに向かいますので、そもそも企業が説明を求められる立場になります。この三点を踏まえると、インフルエンサーに責任を転嫁する契約は現実の解決策になりません。

ステルスマーケティング規制との違いも押さえておいてください。景品表示法上のステマ規制で措置命令の対象になるのは事業者であり、インフルエンサー個人は名宛人になりません。一方の薬機法は条文上「何人も」ですので、理屈のうえでは投稿者も対象に入ります。ただし、どちらの制度でも企業が矢面に立つという結論は同じです。表示の実務はステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドで詳しく扱っています。

責任構造の比較

観点薬機法景品表示法(ステマ規制)
条文上の対象何人も供給する事業者
実務で追及される相手広告主である企業広告主である企業
問題になる中身言えない効能効果の標榜広告であることの隠蔽・優良誤認
主な措置行政指導・措置命令・課徴金・刑事罰措置命令・課徴金
投稿者個人の立場理屈のうえでは対象になり得ます名宛人にはなりません

この表は制度の輪郭を比較したものであり、個別の事案でどちらが適用されるかは内容によります。実務では両方を同時に確認する運用にしておくと漏れません。PR表記の有無と表現の可否を、別々のチェック項目として原稿確認シートに並べてください。

契約書で決めておくべきこと

責任が企業に来るとしても、契約で何も決めなくてよいということにはなりません。決めておくべきは、投稿前に原稿を提出する義務、企業が修正を求めた場合に従う義務、投稿後に企業から削除・修正を求められた場合の対応期限、指定した表現ルールに反した投稿を行った場合の取り扱いの四点です。これらを口頭の合意で済ませると、いざ削除を依頼したときに応じてもらえないという事態が起きます。契約書の作り方はインフルエンサー契約書の作り方と必須チェック項目で解説しています。

投稿前の原稿確認フローと監修体制の作り方

規制商材の投稿確認は、依頼書配布・初稿提出・薬事確認・修正依頼・再提出・最終承認・記録保存という七つのステップで固定してください。案件ごとに流れが変わると、誰がどこまで見たのかが曖昧になり、抜けが生まれます。とくに複数人を同時に起用する施策では、確認の順番と期限を定型化しておかないと投稿日直前に処理が詰まります。

七ステップの標準フロー

ステップ担当期限の目安確認するもの
1. 依頼書とNG表現リストの配布企業の担当者契約締結時区分・承認文言・使用可否リスト
2. 初稿の提出インフルエンサー投稿日の10日前本文・ハッシュタグ・画像・動画の全体
3. 薬事の確認薬事担当または監修者提出から2営業日効能効果の逸脱・断定表現・比較表現
4. 修正依頼企業の担当者確認から1営業日該当箇所・理由・代替案の三点
5. 再提出インフルエンサー依頼から2営業日修正反映の有無
6. 最終承認企業の担当者投稿日の3日前PR表記・リンク先・表示位置
7. 投稿後の記録保存企業の担当者投稿から3日以内投稿URLとスクリーンショット

この日程は投稿日から逆算した目安です。動画やライブ配信を伴う案件では、確認の対象が長くなるため各ステップに1〜2日を上乗せしてください。修正が二往復することも想定して、初稿の提出期限は余裕を持って設定するほうが安全です。

依頼書に必ず入れる四点セット

依頼書に入れるべき情報は四つあります。第一に、商品の薬機法上の区分と、医薬部外品であれば承認された効能効果の文言そのものです。第二に、使ってよい表現の例を10個程度並べたリストです。第三に、使えない表現の例と、その理由を一言添えたリストです。第四に、投稿前に原稿を提出してもらう期限と提出先です。理由を添えるのが重要で、なぜ駄目なのかが分かると、投稿者は似た表現も自分で避けられるようになります。

逆に入れないほうがよいのは、法律の条文をそのまま貼り付ける対応です。読まれませんし、判断の助けにもなりません。投稿者が実際に書く場面で参照できる粒度、つまり具体的な言い回しのレベルまで落として渡してください。

誰が確認するのかを決める

確認者の置き方には三つの型があります。社内に薬事担当を置く型、外部の監修者や専門会社に都度依頼する型、代理店やプラットフォームの確認機能を使う型です。自社の投稿本数と商材のリスクに応じて選ぶことになりますが、いずれの型でも、最終的に投稿を承認する責任者を一人決めておくことが欠かせません。複数人が並列で見る体制は、全員が誰かが見ていると考えて抜けが生じます。

体制の型向いている状況費用の目安弱点
社内に薬事担当を置く投稿本数が多く継続的に発生します人件費として固定します属人化しやすく不在時に止まります
外部監修に都度依頼する本数が少なくスポットで発生します1件あたりの従量課金になります繁忙期に確認が滞ることがあります
代理店・支援会社に任せる施策全体を委託しています運用費に含まれることが多いです最終責任は自社に残ります
社内ルール+チェックリスト運用低リスク商材で本数が中程度です整備の初期工数のみです判断が難しい事案に対応できません

費用は2026年8月時点の一般的な相場観としての整理であり、監修の範囲や商材によって変わります。どの型を選んでも、確認済みであることを記録に残す運用は共通で必要です。表現の確認をチャットのやり取りだけで済ませていると、後から経緯をたどれなくなります。

修正依頼の伝え方と文面テンプレート

修正依頼は「どこが・なぜ・どう直すか」の三点をセットで伝えると、往復が一回で終わります。該当箇所だけを指摘して「ここは薬機法的に難しいです」と返すやり方は、投稿者にとって何をどう直せばよいかが分からず、二度三度の往復を招きます。往復が増えるほど投稿日が迫り、関係も悪くなります。

伝え方の三原則

第一の原則は、否定ではなく代替案を示すことです。「この表現は使えません」で止めず、「こう書き換えていただけますか」まで書きます。第二の原則は、理由を一言添えることです。商品の区分ではその効果を書けない決まりになっている、と伝えるだけで納得感がまったく違います。第三の原則は、企業側の都合ではなく投稿者を守るための確認だと位置づけて伝えることです。実際に、表現の統制は投稿者自身のアカウントを守ることにもつながります。

もうひとつ実務的なコツとして、修正が必要な箇所と、そのまま活かしたい良い箇所を両方伝えるという方法があります。全体が否定されたと感じると、次の稿で表現が萎縮し、当たり障りのない内容になります。良かった部分を明示すれば、その方向性を保ったまま該当箇所だけを直してもらえます。

そのまま使える文面テンプレート

修正依頼の文面テンプレート

いつもありがとうございます。ご提出いただいた原稿を拝見しました。使用シーンの描写がとても具体的で、そのまま活かしていただきたい内容でした。1点だけ、下記の箇所について修正をお願いできますでしょうか。

該当箇所は「(該当の一文をそのまま引用します)」の部分です。本商品は薬機法上の区分が化粧品にあたるため、肌の状態が治る・改善するという趣旨の表現をお願いできない決まりになっています。恐れ入りますが「(代替案の一文)」のような書き方に変えていただけますと幸いです。

お手数をおかけしますが、◯月◯日までにご返信いただけますと助かります。ご不明な点があれば、遠慮なくお知らせください。

このテンプレートの要点は、引用・理由・代替案・期限の四つが一つの文面に収まっていることです。複数箇所ある場合は箇条書きにして、それぞれに同じ四点を書いてください。まとめて「全体的に表現を緩めてください」と伝えるのは、修正の方向が定まらず最も避けたい依頼の仕方です。

依頼文面全体の設計

修正依頼だけでなく、最初の依頼文面から表現ルールに触れておくと、初稿の精度が上がります。オファー段階で規制商材であることと原稿確認があることを伝えておけば、投稿者は最初からその前提で書いてくれます。オファー文面の型はインフルエンサーへの依頼文面の書き方とテンプレート例文にまとめていますので、規制商材向けに一段落を足す形で流用してください。

初稿でよく出る記述伝える理由提案する代替案
使い続けたらシミが薄くなりました化粧品では言えない効能にあたります朝のメイク前に使うのが習慣になりました
飲み始めてから体重が落ちました食品で痩身効果を示すことになります忙しい朝でも続けやすい粒の大きさです
敏感肌でも絶対に荒れません安全性の保証は認められません私は毎日使っていて心地よく感じています
他社のものより効果が高いです比較優位の標榜は問題になり得ます私の生活リズムには合っていました

媒体・フォーマット別に見落としやすい点

同じ文章でも、ハッシュタグ・画像・動画・ライブ配信のどこに入るかで見落としやすさが変わります。原稿確認をキャプション本文だけで済ませていると、画像内の文字や動画のテロップ、ライブ中の発言といった経路から違反表現が出ていきます。確認の対象は、投稿を開いたときに視聴者が目にする情報のすべてだと考えてください。

ハッシュタグとキャプション

ハッシュタグも表示の一部として扱われますので、本文で避けた表現をタグで書いてしまえば同じことになります。実務では、投稿者が普段使っている定番タグの中に効能を示す語が紛れているケースが多く見られます。原稿提出の際にはタグ一覧も含めて提出してもらい、使用してよいタグを企業側から指定するほうが確実です。

もうひとつ注意したいのは、プロフィール欄やストーリーズのリンク先です。投稿本文が問題ない内容でも、遷移先のランディングページに逸脱表現があれば、そちらが指摘の対象になります。インフルエンサー投稿の確認と自社サイトの確認を別工程にしていると、この接続部分が抜けます。

ビフォーアフター画像と加工

ビフォーアフターの写真は、効能効果を視覚的に示す表示として評価され得ます。文章で書けないことは画像でも表現できないという整理が、広告実務では一般的です。加えて、撮影条件や照明を変えて差を強調した画像、加工アプリで補正した画像は、実際より優良な印象を与えるという別の論点も生みます。規制商材では原則としてビフォーアフター構成を避け、使用場面やテクスチャーの描写に切り替えるほうが安全です。

どうしても変化を伝えたい場合は、化粧品であればメイクによる見た目の変化として構成する、医薬部外品であれば承認された効能の範囲で説明を添えるといった形になります。この判断は個別性が高いため、企画段階で薬事の確認を通してください。

ライブ配信とショート動画

ライブ配信は事前の原稿確認が効かないという点で、規制商材ではもっとも難易度の高いフォーマットです。台本を用意しても、視聴者からの質問に答える場面で言えない表現が出やすくなります。対策としては、想定質問と回答例を事前に渡す、企業の担当者が同席して補足する、生配信ではなく事前収録に切り替えるという三つが現実的です。ライブコマースの運営設計はライブコマースの始め方とインフルエンサー起用のコツで扱っています。

ショート動画では、テロップと音声の両方が確認の対象になります。編集済みの完成尺で提出してもらい、テロップの文言を書き起こしで併せて出してもらうと確認が早くなります。尺が短い分だけ表現が断定的になりやすいという傾向もありますので、言い切りの語尾に注意を向けてください。

フォーマット別の確認対象

  • 静止画投稿では、キャプション・ハッシュタグ・画像内文字・タグ付けの四点を確認します。
  • リールやショート動画では、テロップ・音声・概要欄・サムネイル文字を確認します。
  • ストーリーズでは、テキストスタンプ・リンク先ページ・アンケート文言を確認します。
  • ライブ配信では、台本・想定質問への回答例・アーカイブ公開の可否を事前に決めます。

起用前チェックリストと社内体制の整え方

規制商材でインフルエンサーを起用する前に確定させるべき項目は十個です。この十項目が埋まっていれば、進行中に判断へ迷う場面はほとんどなくなります。担当者が交代しても同じ品質で回せるよう、社内のテンプレートとして残しておくことをおすすめします。

着手前に確定させる十項目

確認項目確定させる時期決めておく内容
商品の薬機法上の区分企画時化粧品・医薬部外品・食品・機器のどれかを確定します
承認・届出された文言企画時逐語で使える文言を控えておきます
使ってよい表現リスト依頼書作成時具体的な言い回しを10個程度用意します
使えない表現リストと理由依頼書作成時理由を一言添えて配布します
原稿提出の期限と提出先契約時投稿日の10日前を目安に設定します
薬事確認の担当者契約時最終承認者を一人に決めます
修正依頼の伝え方と回数上限契約時往復の回数と回答期限を明文化します
PR表記の位置と文言契約時冒頭表示か否かまで指定します
投稿後の削除・修正対応契約時依頼から対応までの期限を定めます
投稿URLと記録の保存先投稿前スクリーンショットの保存ルールを決めます

この十項目のうち、実務で抜けやすいのは投稿後の削除・修正対応と、記録の保存先です。問題が起きるのは投稿の後ですので、そのときに動ける約束を先に取り付けておくかどうかで、初動の速さが変わります。

よくあるつまずき

現場でよく見る失敗は五つあります。第一に、区分を確認しないまま依頼書を作り、化粧品なのに医薬部外品の文言を渡してしまうという失敗です。第二に、原稿確認の期限を投稿日の直前に置いてしまい、修正する時間が残らないという失敗です。第三に、キャプションだけを確認して画像内の文字を見落とすという失敗です。第四に、良かれと思って投稿者に表現の自由を与え、結果として効能を具体的に書かれてしまうという失敗です。第五に、確認の記録を残しておらず、後から経緯を説明できないという失敗です。施策全体で起きやすい失敗の型はインフルエンサーマーケティングの失敗例10パターンと回避策にまとめています。

医療・美容医療の領域では、薬機法に加えて医療広告ガイドラインという別の枠組みが重なります。クリニックや自由診療の集患を扱う場合は規制の構造が変わりますので、クリニックのインフルエンサー起用と医療広告ガイドライン対応を先にご確認ください。金融・保険のように別の業法が広告表現を縛る領域もありますので、規制商材を扱う企業は金融・保険のインフルエンサーマーケティングと広告規制対応の実務の考え方も参考になります。

まず何から始めるか

これから体制を整えるなら、最初にやることは自社商品の区分一覧と承認文言をまとめた社内資料を一枚作ることです。マーケティング担当が商品担当に都度確認している状態では、案件のたびに時間がかかり、確認漏れも起きます。次に、その資料をもとに使ってよい表現とNG表現の対照リストを作り、依頼書の別紙として定型化してください。この二つがあれば、案件ごとの立ち上がりが一段速くなります。

Bloomでの規制商材の進め方

Bloomでは審査制インフルエンサー30,000人の中から、商材のジャンルやフォロワー属性で候補を絞り込み、依頼書の配布から原稿のやり取りまでをプラットフォーム上に記録として残せます。規制商材では、誰にいつ何を伝え、どの原稿を承認したのかを追える状態にしておくことが実務上の防御になります。初期費用0円で始められますので、まずは候補リストづくりと依頼書の整備から試してみてください。

繰り返しになりますが、本記事は一般的な情報提供であり、個別案件は薬事の専門家にご確認ください。表現の可否は商品の区分と承認内容、訴求の文脈によって結論が変わります。判断に迷う表現が出てきた場合は、投稿を止めて確認するという判断が、結果としてもっとも早い解決になります。

本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。