映画館の集客は、作品の公開日と上映期間があらかじめ決まっているため、「いつ、誰に、何を投稿してもらうか」を逆算できるかどうかで成果が大きく変わります。一方で、ストーリーの核心に触れる投稿は嫌われやすく、館内での撮影には法律上の制約もあるため、飲食店や物販と同じ感覚でインフルエンサーに依頼するとうまくいきません。この記事では、シネコンやミニシアターなどの映画館がインフルエンサーを起用して来館を増やすための考え方を、公開スケジュールからの逆算、ネタバレに配慮した依頼の設計、前売券やグッズへの導線、試写会への招待、来館の計測まで、実務の順番に沿って解説します。
この記事の要点
- 映画館の集客にインフルエンサーを使う目的は、作品の認知ではなく「この館で、この期間に観る理由」を伝えて来館を増やすことです。
- 投稿は公開日から逆算し、公開前(期待づくり)・公開週(初動)・公開2週目以降(口コミの継続)の3つの波に分けて依頼します。
- 依頼書には「ネタバレの範囲」「館内で撮影してよい場所と時間」「権利物の扱い」を必ず書き、映画の盗撮防止法に触れる撮影は依頼しません。
- 前売券・座席予約・グッズ・飲食を投稿の導線に組み込み、予約経路や館独自のコードで来館を計測します。
- 試写会や先行上映への招待は、感想の自由を保証しつつ、投稿時期と表示(広告である旨)だけを明確に合意します。
映画館の集客にインフルエンサーを活かす考え方
映画館の集客にインフルエンサーを活かすときの基本は、作品そのものの宣伝ではなく「この館で観る体験」を伝えてもらうことです。映画館の集客とは、上映作品の鑑賞を目的とした来館者を増やし、チケットに加えて飲食やグッズの売上まで含めた館の収益を伸ばす取り組みのことです。作品の宣伝は配給会社や製作委員会が全国規模で行うため、個々の映画館が同じことをしても埋もれてしまいます。館として打ち出すべきなのは、音響や大型スクリーン、座席の快適さ、立地、限定の飲食メニュー、舞台挨拶などのイベント、館の雰囲気といった「ここで観る理由」です。
作品の宣伝と館の集客は役割が違う
作品の宣伝は「この映画を観たい」と思ってもらうこと、館の集客は「その映画をこの館で観よう」と決めてもらうことです。多くの観客は、作品を決めたあとに上映館と時間を選びます。そのため、館の集客で効くのは、作品を観たいと思っている人が館を選ぶ瞬間に後押しする情報です。たとえば「この作品は大きなスクリーンと音響の館で観ると迫力が違う」「仕事帰りに寄れる時間帯の上映がある」「限定のドリンクが作品の世界観に合っている」といった投稿は、館を選ぶ理由になります。インフルエンサーには、作品の魅力の説明よりも、館での体験を具体的に伝えてもらうように依頼します。
映画館ならではの3つの制約
映画館の施策には、ほかの業種にはない制約が3つあります。1つ目は日程が固定されていることで、公開日は動かせず、上映期間も興行の状況によって短くなることがあります。2つ目はネタバレへの配慮で、観る前の人が多いタイミングで物語の核心に触れる投稿をすると、反発を招いたり、作品側との関係を損ねたりします。3つ目は撮影の制約で、上映中のスクリーンを撮影・録音する行為は「映画の盗撮の防止に関する法律」で禁じられており、館内の撮影可能な場所も館のルールで限られます。これらを踏まえた依頼の設計が、映画館の施策では欠かせません。
来館の動機をつくる投稿の種類
来館の動機をつくる投稿には、いくつかの型があります。公開前の「観に行く予定」の投稿、館の設備や雰囲気を紹介する投稿、限定の飲食やグッズを紹介する投稿、鑑賞後のネタバレなしの感想、イベントや舞台挨拶の参加レポート、複数回鑑賞やシリーズの一気見の記録などです。どの型を誰に依頼するかは、後述する公開スケジュールの段階によって変えます。地域の生活者に向けた発信が得意な人に館の紹介を、映画の感想が得意な人に鑑賞後の投稿を、というように役割を分けると、投稿全体の幅が広がります。地域密着の集客全般の考え方はローカルインフルエンサーで地方の店舗集客を設計する方法も参考になります。
映画館の来館につながる口コミの特徴
映画館の来館につながる口コミは、「観た人の熱量」と「観る前の人への配慮」が両立している投稿です。映画は観てみないと良さがわからない体験型の商品であるため、実際に観た人の感想が、ほかの人の鑑賞を決める大きな材料になります。ただし、熱量が高くても、ネタバレを含む投稿や、作品を観ていない人には意味が伝わらない投稿は、来館にはつながりにくくなります。
観る前の人に届く感想の書き方
観る前の人に届く感想には共通点があります。物語の結末には触れず、「どんな気持ちになったか」「誰と観るとよいか」「どの館のどの設備で観ると良いか」を伝えていることです。たとえば「音の迫力で座席が揺れるように感じた」「後半は涙が止まらなかったので、ハンカチを持っていくとよい」「2時間半あるので、飲み物はMサイズで足りた」といった投稿は、ネタバレにならずに鑑賞のイメージを具体的にします。インフルエンサーに依頼するときは、こうした書き方の例を依頼書に添えると、投稿の質がそろいやすくなります。
口コミが連鎖する仕組み
映画の口コミは、1つの投稿で終わらずに連鎖しやすいという特徴があります。感想を見た人が鑑賞し、自分も感想を投稿し、さらに別の人がそれを見て鑑賞するという流れです。この連鎖を起こすには、公開週の早い段階で一定数の感想投稿があることが重要です。インフルエンサーの投稿は、この最初のきっかけを作る役割を担います。あわせて、館の公式アカウントで感想投稿を紹介したり、館内に感想を書き込めるボードを置いたりと、一般の観客が投稿しやすい仕掛けを用意しておくと、連鎖が起きやすくなります。一般の観客の投稿を活かす考え方はUGCマーケティングの活用法と二次利用の進め方で解説しています。
推し活・ファン層の口コミの強さ
俳優やアーティスト、アニメ作品などのファンは、映画館の重要な顧客層です。応援する対象が出演する作品を複数回観たり、入場者特典を目当てに週ごとに来館したり、仲間を誘って観に行ったりする行動が見られます。ファンの間で影響力を持つインフルエンサーの投稿は、同じファン層に強く届きます。一方で、ファンの間には独自のマナーや暗黙のルールがあることが多く、それを理解していない依頼は反発を招きます。ファン層の行動と配慮の仕方は推し活マーケティングとは?企業がインフルエンサーで活かす手法で詳しく整理しています。
公開スケジュールから逆算する投稿計画
投稿計画は、公開日を基準に「公開前」「公開週」「公開2週目以降」の3つの波に分けて逆算するのが基本です。映画の興行は公開直後の動きがその後を大きく左右すると言われており、公開週に向けて期待を高め、公開週に感想を集中させ、その後は口コミの継続と再来館を促す、という流れで投稿を配置します。
段階別の投稿の役割
次の表は、公開スケジュールの段階ごとに、投稿の目的、依頼する投稿の型、依頼に向くインフルエンサーの例をまとめたものです。日数は一般的な目安で、作品の規模や上映期間に合わせて調整します。
| 段階 | 投稿の目的 | 依頼する投稿の型 | 向いているインフルエンサー |
|---|---|---|---|
| 公開の4〜2週間前 | 期待づくり・前売券の購入 | 予告の感想、前売券や特典の紹介、館の設備紹介 | 映画紹介が得意な人、地域の情報発信者 |
| 公開の1週間前〜前日 | 座席予約の後押し | 試写会の感想(ネタバレなし)、観る予定の宣言 | 試写会に招待した人、ファン層に影響力のある人 |
| 公開週 | 初動の来館 | 鑑賞後の感想、限定メニューやグッズの紹介 | 感想の言語化が得意な人、飲食やライフスタイル系の人 |
| 公開2週目以降 | 口コミの継続・再来館 | 2回目の鑑賞記録、特典の切り替わり、別の上映形式での鑑賞 | ファン層の人、複数回鑑賞を楽しめる人 |
| 上映終了の直前 | 駆け込みの来館 | 「今週まで」の案内、まだ観ていない人への推薦 | 地域の情報発信者 |
依頼の開始時期の目安
公開の4週間前に投稿してもらうには、それよりさらに前に候補の選定と依頼を済ませておく必要があります。一般的には、候補の選定と打診に1〜2週間、条件の合意に数日、投稿内容の確認に数日を見込むため、公開日の6〜8週間前には施策の準備を始めておくと安全です。試写会への招待を組み込む場合は、試写会の日程が決まった時点で招待候補を固めます。季節ごとの施策を逆算して準備する方法はインフルエンサーの季節キャンペーン設計と逆算スケジュールも参考になります。
上映期間の変動に備える
映画の上映期間は、興行の状況によって延長されることもあれば、短くなることもあります。上映回数が減って時間帯が限られると、投稿を見て来館しようとした人が都合のよい回を見つけられなくなります。そのため、公開2週目以降の投稿は、上映の継続が確定した時点で最終的な日程を決められるよう、投稿日に幅を持たせた依頼にしておくのが現実的です。また、投稿文には「上映時間は館のサイトでご確認ください」といった案内を入れてもらうと、上映回数の変更による混乱を防げます。
公開日から逆算する準備のチェックリスト
- 公開日の6〜8週間前: 施策の目的と対象作品、予算、KPIを決める
- 公開日の5〜6週間前: 候補の選定と打診、試写会の招待枠の確保
- 公開日の4週間前: 依頼書の確定(ネタバレ範囲・撮影ルール・表示方法)
- 公開日の2週間前: 前売券や予約ページの計測用リンクの準備
- 公開週: 投稿の確認と公式アカウントでの紹介、問い合わせ対応の準備
ネタバレに配慮した依頼の設計
ネタバレに配慮した依頼の設計とは、投稿で触れてよい範囲と触れてはいけない範囲を、具体的な言葉で依頼書に書いておくことです。「ネタバレに注意してください」とだけ伝えても、どこまでがネタバレにあたるかは人によって解釈が異なります。作品側の公式情報の範囲を基準にして線を引くと、インフルエンサーも迷わずに済みます。
触れてよい範囲の決め方
触れてよい範囲は、原則として「予告編や公式サイトで公開されている情報まで」とするのが分かりやすい基準です。物語の前提や登場人物の設定、公開済みの場面写真などは、すでに多くの人が目にしているため、投稿で触れても問題になりにくい情報です。反対に、物語の結末、重要な展開、意外な登場人物、エンドロール後の映像などは、触れてはいけない範囲として明記します。作品によっては配給会社がネタバレに関する案内を出していることもあるため、配給会社との取り決めがある場合はそれに従います。
ネタバレの範囲を伝える依頼書の書き方
依頼書には、触れてよい範囲と触れてはいけない範囲を、それぞれ箇条書きで具体的に書きます。あわせて、公開から一定期間が過ぎたあとにネタバレを含む感想を投稿する場合の扱いも決めておくと親切です。たとえば「公開から3週間は結末に触れない」「ネタバレを含む場合は投稿の冒頭に注意書きを入れる」といった取り決めです。次の表は、依頼書に書く項目の例です。
| 項目 | 依頼書に書く内容の例 |
|---|---|
| 触れてよい範囲 | 予告編・公式サイトで公開されている設定、登場人物、公開済みの場面写真 |
| 触れてはいけない範囲 | 結末、重要な展開、エンドロール後の映像、未発表のキャスト |
| 感想の伝え方の例 | 鑑賞後の気持ち、誰と観るとよいか、上映形式や設備の体験 |
| ネタバレを含む投稿の扱い | 公開から一定期間は控える、含む場合は冒頭に注意書きを入れる |
| 使用してよい画像 | 館が提供する素材、配給会社が許諾した公式素材、館内の撮影可能な場所で撮った写真 |
感想の自由と配慮のバランス
ネタバレへの配慮を求めることと、感想の内容を指定することは別の話です。「必ず褒めてください」「この点を評価してください」といった指定は、投稿の信頼性を下げるうえ、広告であることを隠した投稿と受け取られかねません。依頼書で決めるのは、ネタバレの範囲、表示の方法、撮影のルールといった形式面だけにして、感想の中身はインフルエンサー自身の言葉に任せます。作品が合わなかった場合の扱いも事前に決めておき、無理に好意的な投稿を求めないことが、長く続く関係につながります。
館内撮影のルールと権利の扱い
館内撮影で守るべき最も重要なルールは、上映中のスクリーンを撮影・録音しないことです。「映画の盗撮の防止に関する法律」(2007年施行)は、映画館で上映中の映画を録画・録音する行為を、私的な目的であっても著作権法の例外として扱わないことを定めています。インフルエンサーへの依頼では、上映中の撮影を一切求めないことはもちろん、館内で撮影してよい場所と時間を明確に伝える必要があります。
撮影してよい場所と時間の決め方
撮影してよい場所は、館が自ら決めて依頼書に書きます。一般的には、ロビーの装飾やパネル、売店のメニュー、グッズ売り場、館の外観などが撮影の対象になります。シアター内は、上映前後で照明が点いている時間に座席や内装を撮影できるとする館もあれば、一切の撮影を禁じる館もあります。また、ほかの観客が写り込むと肖像やプライバシーの問題が生じるため、混雑する時間帯の撮影は避け、開場前や閉館後に撮影の時間を設けるのが安全です。撮影の時間を設ける場合は、館の担当者が立ち会うようにします。
作品の素材とパネルの権利
作品のポスター、場面写真、キャラクターのパネルなどは、配給会社や製作委員会が権利を持つ素材です。館が宣伝に使うことを許されていても、インフルエンサーが自分の投稿で使ってよいかどうかは、別に確認が必要な場合があります。ロビーに飾られたパネルを背景に写真を撮る程度であれば問題になりにくい一方で、公式の場面写真をそのまま投稿に使ったり、ロゴを加工したりする場合は、配給会社の許諾が必要になることがあります。依頼書には「使ってよい素材」と「使い方の条件」を書き、迷った場合は館の担当者に確認してもらう流れにします。権利の扱いの全体像はインフルエンサー投稿の肖像権・著作権対応と二次利用の範囲で解説しています。
撮影ルールを伝えるときの注意点
撮影ルールは、依頼書に書くだけでなく、撮影当日の前に口頭でも確認します。特に、初めて映画館の案件を受けるインフルエンサーは、上映中の撮影が法律で禁じられていることを知らない可能性があります。「上映中のスクリーンは、たとえ数秒でも撮影しない」「予告編の上映中も同じ」と具体的に伝えることで、うっかりした違反を防げます。違反があった場合は館や作品の評判を損なうため、投稿前の確認で上映中の映像が含まれていないかを必ず確かめます。
館内撮影の依頼で必ず伝えること
- 上映中のスクリーン(予告編・本編・エンドロール)は撮影・録音しない
- 撮影してよい場所(ロビー、売店、グッズ売り場、外観など)と時間
- ほかの観客やスタッフの顔が写り込まないようにする
- 作品の素材やパネルを使うときの条件と、迷ったときの確認先
- 投稿前に館の担当者が写真と動画を確認すること
前売券・グッズ・飲食への導線づくり
来館を確実に増やすには、投稿を見た人が前売券の購入や座席の予約にすぐ進める導線を用意することが欠かせません。映画館の売上は、チケットだけでなく、売店の飲食やグッズからも生まれます。投稿のなかでこれらを自然に紹介してもらうことで、来館1回あたりの売上も伸ばせます。
前売券と座席予約への導線
前売券や入場者特典は、公開前の投稿で最も紹介しやすい題材です。前売券に限定の特典が付く場合は、その写真や内容を紹介してもらい、購入ページへのリンクを添えてもらいます。オンラインの座席予約が使える館では、予約ページへのリンクを館ごと、または上映形式ごとに用意しておくと、投稿を見た人が迷わずに予約できます。ストーリーズのリンク機能やプロフィールのリンクを使い、どのインフルエンサーの投稿から予約に進んだかが分かるように、リンクにパラメータを付けておきます。
限定メニュー・グッズの紹介
作品とのコラボレーションメニューや限定グッズは、写真映えしやすく、インフルエンサーの投稿と相性の良い題材です。飲食やライフスタイルの発信が得意な人に、限定メニューを実際に味わってもらい、感想とあわせて紹介してもらう方法が効果的です。グッズは数量や販売期間が限られることが多いため、在庫や販売状況の最新情報をインフルエンサーと共有し、売り切れたあとに投稿が出て問い合わせが増えるといった事態を避けます。飲食を伴う集客の進め方は飲食店・店舗集客のインフルエンサー活用ガイドも参考になります。
導線の種類と向いている場面
次の表は、映画館の施策で使える導線の種類と、向いている場面、計測の方法をまとめたものです。
| 導線の種類 | 向いている場面 | 計測の方法 |
|---|---|---|
| 前売券の購入ページへのリンク | 公開前の期待づくり | リンクのパラメータ別の購入数 |
| 座席予約ページへのリンク | 公開週・公開2週目以降 | 予約経路別の予約数 |
| 館独自のクーポンや合言葉 | 売店の飲食・グッズの購入促進 | クーポンの利用数、合言葉を伝えた来館者の数 |
| 会員登録やアプリのダウンロード | 再来館の促進 | 登録経路別の会員数 |
| 館の公式アカウントのフォロー | 次の作品の告知につなげる | 施策期間中のフォロワー増加数 |
試写会・先行上映への招待の進め方
試写会や先行上映への招待は、公開前に感想の投稿を集められる、映画館ならではの有効な手段です。公開前に「観た人の声」が出ていることで、公開を待っている人の期待が高まり、公開週の来館を後押しします。ただし、試写会の実施には配給会社との調整が必要なことが多く、館の判断だけで決められない場合もあります。
招待する人の選び方
試写会に招待する人は、作品の想定観客とフォロワー層が重なっているかどうかを基準に選びます。恋愛映画であれば恋愛やライフスタイルの発信者、アクション映画であれば映画全般やエンタメの発信者、アニメ作品であればその作品やジャンルのファンに影響力のある人、というように作品ごとに選び分けます。フォロワー数の多さだけで選ぶと、作品に関心のない層に届いてしまい、来館につながりません。招待する人数は、会場の座席数と、一般招待の観客との配分を考えて決めます。体験型の招待イベント全般の企画と運営はインフルエンサーを招待するイベント・体験会の企画と運営で解説しています。
招待時に合意しておくこと
試写会への招待では、投稿の解禁日時、ネタバレの範囲、広告であることの表示、撮影のルールを事前に合意しておきます。特に、試写会の感想の解禁日時は配給会社が指定することが多いため、それより早い投稿がないように徹底します。招待のみで報酬を支払わない場合でも、招待という経済的な利益を提供して投稿を依頼する以上、広告であることの表示が必要になるのが原則です。表示の方法はステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドを参照し、迷う場合は消費者庁のステルスマーケティングに関する告示・運用基準で確認してください。
試写会のあとのフォロー
試写会のあとは、感想の投稿を確認し、館の公式アカウントで紹介するなどの形で拡散を手伝います。公開週には、試写会で観た人に「公開後の2回目の鑑賞」を案内すると、別の上映形式での鑑賞記録や、特典を目当てにした再来館の投稿につながることがあります。試写会の感想が好評だった場合は、その声を館内の掲示や公式サイトで紹介することも検討します。ただし、インフルエンサーの投稿を館の広告に転用する場合は、二次利用の許諾が別途必要になる点に注意します。
シネコンとミニシアターの施策の違い
シネコンとミニシアターでは、来館者の動機と強みが異なるため、インフルエンサーに依頼する投稿の内容も変えるべきです。シネコンは上映作品の多さや設備、商業施設との組み合わせが強みで、ミニシアターは作品選びの独自性や館そのものの文化的な価値が強みです。
業態別の施策の比較
次の表は、シネコンとミニシアターの違いを、施策の観点から整理したものです。同じ館でも、上映する作品によって向いている施策は変わります。
| 観点 | シネコン | ミニシアター |
|---|---|---|
| 来館者の主な動機 | 話題作を良い設備で観たい、買い物ついでに観たい | ここでしか観られない作品を観たい、館の雰囲気が好き |
| 打ち出すべき強み | 大型スクリーン、音響、特殊な上映形式、限定メニュー | 作品選び、館主の想い、トークイベント、館の歴史 |
| 向いているインフルエンサー | エンタメ全般、ライフスタイル、地域の情報発信者 | 映画好き、カルチャー系、地域の文化に詳しい人 |
| 投稿の型 | 設備の体験、限定メニュー、話題作の感想 | 館の紹介、作品の背景、館での過ごし方 |
| 計測の中心 | 予約経路別の予約数、売店の売上 | 会員数、イベントの参加者数、来館者の声 |
シネコンでの施策のポイント
シネコンでは、話題作の公開に合わせて多くの来館が見込める一方、近くの別のシネコンとの競争もあります。来館者が館を選ぶ決め手になる設備や上映形式、商業施設内での過ごし方を、インフルエンサーに具体的に紹介してもらうのが効果的です。家族連れが多い館であれば、子ども向け作品の鑑賞と、施設内での食事や買い物を組み合わせた1日の過ごし方を紹介してもらう方法もあります。家族向けの発信が得意な人の起用はママインフルエンサー起用の選び方と費用・依頼の配慮点でも解説しています。
ミニシアターでの施策のポイント
ミニシアターでは、作品そのものよりも、館の存在や上映の企画を伝える投稿が来館につながりやすくなります。館がなぜその作品を選んだのか、上映に合わせてどのようなトークイベントを開くのか、館の周辺でどのように過ごせるのかといった情報は、ほかでは得られない価値です。フォロワー数は少なくても、映画やカルチャーへの関心が高いフォロワーを持つ人に、館の常連として継続的に発信してもらうと、熱量の高いファンを育てられます。予算が限られる場合は、少人数のフォロワーを持つ人を継続して起用する方法が向いています。
来館の計測と効果の振り返り
来館の計測は、予約経路やクーポンの利用数といった直接の数字と、投稿への反応や口コミの量といった間接の数字を組み合わせて行います。映画の興行は作品そのものの人気に大きく左右されるため、インフルエンサーの施策だけの効果を正確に切り分けることは難しいのが実情です。そのため、施策の前に「何を見て効果を判断するか」を決め、作品ごとに記録を積み重ねていくことが大切です。
計測の指標の決め方
計測の指標は、施策の目的に合わせて選びます。公開前の期待づくりが目的であれば前売券の購入数や予約ページへの流入数、公開週の初動が目的であれば座席の予約数や売店の売上、再来館が目的であれば会員登録数や複数回の来館者の割合を見ます。インフルエンサーごとにリンクのパラメータやクーポンを分けておけば、どの投稿がどれだけの行動につながったかを比べられます。リンクの計測の仕組みはインフルエンサー施策のUTMパラメータ設定と流入計測の手順、クーポンの設計はインフルエンサー施策のクーポンコード設計と利用数の測り方で解説しています。
作品の人気と施策の効果を分けて見る
作品の人気による来館と、施策による来館を分けて考えるには、同じ時期に上映している別の作品や、同じ作品を上映している近隣の館の動きと比べる方法があります。完全な比較はできませんが、施策を行った作品だけ予約の伸びが大きい、施策の投稿が出た日に予約が増えている、といった傾向を見ることで、施策の手応えをつかめます。また、来館者アンケートで「何を見て来館したか」を聞くと、投稿を見て来館した人の割合をおおまかに把握できます。
次の作品に活かす振り返り
施策が終わったら、作品のジャンル、起用したインフルエンサーの属性、投稿のタイミング、投稿の型ごとに、反応と来館への影響を記録します。映画館は年間を通じて多くの作品を上映するため、作品ごとの記録を積み重ねると、「このジャンルの作品にはこのタイプの人が合う」「公開前のこの時期の投稿が効きやすい」といった館独自の知見がたまります。反応の良かったインフルエンサーとは継続的に関係を築き、次の作品でも声をかけられるようにしておくと、施策の準備にかかる時間も短くなります。
映画館の施策でよくある失敗と対策
映画館の施策でよくある失敗は、「投稿の時期のずれ」「ネタバレや撮影ルールの違反」「来館への導線の欠如」の3つに集約されます。いずれも、依頼の段階での取り決めと、投稿前の確認で防げるものです。
投稿の時期がずれる失敗
公開週に感想を集中させたかったのに、投稿が公開2週目以降にばらけてしまうという失敗はよく起きます。インフルエンサー側の都合で鑑賞の日程が後ろにずれたり、編集に時間がかかったりすることが原因です。これを防ぐには、鑑賞の日程を館側で指定して座席を確保し、投稿の期限を依頼書に明記しておきます。公開週の投稿を重視する場合は、試写会や先行上映で事前に鑑賞してもらう方法も有効です。投稿のタイミングの考え方はPR投稿のタイミング設計と投稿日を分散させる考え方でも整理しています。
ルールの違反による失敗
ネタバレを含む投稿や、上映中の撮影が含まれる投稿は、館と作品の評判を大きく損ねます。依頼書に書いたつもりでも、伝わっていなかったというケースは少なくありません。投稿前に館の担当者が内容を確認する流れを必ず設け、ネタバレの範囲と撮影のルールを守っているかをチェックします。投稿後に問題が見つかった場合の修正や削除の依頼方法も、事前に合意しておきます。
導線がなく来館につながらない失敗
投稿の反応は良かったのに、来館が増えなかったという失敗は、投稿から予約や購入への導線がないことが原因で起きます。作品の感想だけが投稿され、どの館で観られるのか、いつまで上映しているのかが分からないと、投稿を見た人は別の館を選ぶかもしれません。投稿には館の名前と所在地、予約ページへのリンクを必ず入れてもらい、館で観る理由を一言添えてもらうように依頼します。
マッチングプラットフォームを使うと楽になる部分
公開日が決まっている映画館の施策では、候補探しから依頼、投稿の確認までを短い期間で進める必要があります。インフルエンサーのマッチングプラットフォームを使えば、作品のジャンルや地域、フォロワー層の条件を示して応募を募れるため、作品ごとに合う人を短期間で集められます。依頼の条件ややり取り、投稿の記録も一か所に残るため、作品ごとの振り返りと、次の作品への引き継ぎが楽になります。
本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。