インフルエンサーを継続起用したいけれど、本当に自社の商品と相性が良いのか分からない――そんなときに有効なのが、本採用の前に少人数・少額でテスト投稿を依頼する「お試し起用」です。フォロワー数や過去投稿だけでは、自社の商品を紹介したときの反応や、一緒に進行したときの仕事ぶりまでは分かりません。この記事では、インフルエンサーのお試し起用の設計(人数・単価・投稿数・期間)、テスト投稿で見る評価項目、本採用への移行を決める判定基準、契約・権利上の注意、よくある失敗と回避策までを、実務の手順に沿って解説します。

この記事の要点

  • インフルエンサーのお試し起用とは、本採用(継続起用や大型契約)の前に、少人数・少額・短期間でテスト投稿を依頼し、実データで相性を確かめる進め方です。
  • 設計の目安は「候補5〜10人・1人1投稿・期間2〜4週間・総予算は本番想定の1〜2割」で、比較できるように依頼条件をそろえます。
  • 評価は「数字(保存率・クリック率・コメントの質)」「進行(連絡の速さ・修正対応・締切順守)」「表現(世界観と商品の自然さ)」の3軸で行います。
  • 判定基準と本採用の条件は、テスト投稿の前に文書で決めておき、結果を見てから基準を動かさないことが重要です。
  • お試し段階でも、PR表記・二次利用の範囲・継続時の単価の扱いは契約書に明記し、後からの揉め事を防ぎます。

お試し起用の意義と本採用前に試す理由

お試し起用の意義は、プロフィールや過去投稿だけでは分からない「自社の商品を紹介したときの反応」と「一緒に進行したときの仕事ぶり」を、小さな費用で事前に確かめられる点にあります。インフルエンサーのお試し起用とは、本採用(継続起用・長期契約・大型キャンペーンへの起用)を決める前に、少人数・少額・短期間でテスト投稿を依頼し、実際の数値と進行の記録をもとに相性を判断する進め方です。フォロワー数やエンゲージメント率は候補を絞る材料としては有効ですが、それらはあくまで「その人の普段の投稿」に対する反応であり、自社の商品を紹介したときに同じ反応が得られる保証はありません。

事前調査だけでは分からないこと

起用前の調査で確認できるのは、フォロワーの属性、過去投稿のジャンルや雰囲気、炎上履歴、偽フォロワーの有無といった「静的な情報」です。こうした選定前のチェック項目は失敗しないインフルエンサー選定7つのポイントで整理していますが、選定の段階で分かるのは「合いそうかどうか」までです。実際に商品を渡して投稿してもらうと、紹介の切り口が自社の想定と違っていた、フォロワーの関心が商品カテゴリと微妙にずれていた、連絡の返信に数日かかったといった「動かしてみて初めて分かること」が必ず出てきます。お試し起用は、この見えない部分を本採用の前に表に出すための工程です。

いきなり本採用するリスク

候補の印象だけで半年契約や複数回の投稿をまとめて発注すると、相性が悪かった場合の損失が大きくなります。たとえば月2回・6か月の契約を結んだあとで、1回目の投稿の保存数が想定の半分以下だったと分かっても、契約の途中で条件を変えるのは簡単ではありません。報酬の減額や契約解除を持ちかければ関係が悪くなり、続ければ成果の出ない投稿に予算を使い続けることになります。最初の1回をお試し起用として独立させておけば、相性が悪かった場合はそこで終え、良かった場合だけ本採用へ進めるため、判断のやり直しがききます。

インフルエンサー側にとっての利点

お試し起用は企業だけでなく、インフルエンサーにとっても利点があります。初めて組む企業の商品が自分のフォロワーに受け入れられるか、ブリーフの出し方や確認の進め方が自分に合っているかを、1回の投稿で確かめられるからです。いきなり長期契約を求められると慎重になる人でも、1投稿のテストであれば応じやすくなります。テストであることを最初に正直に伝え、結果が良ければ継続の相談をする前提を示しておくと、双方が同じ目線で取り組めます。

お試し起用が向いているケースと向かないケース

お試し起用が向いているのは、継続起用や大型施策を前提にしていて、誤った人選のコストが大きい場合です。反対に、1回きりの告知や短期のキャンペーンで、そもそも本採用という段階がない場合は、テストを挟むことでかえって時間を失います。自社の施策がどちらに当てはまるかを最初に確認しておくと、お試し起用の設計に無駄がなくなります。

お試し起用が向いているケース

お試し起用が特に役立つのは、アンバサダーや継続起用の候補を選ぶ場合、初めてインフルエンサー施策に取り組み自社商品で反応が出る層を知りたい場合、新しい媒体(TikTokやYouTubeショートなど)に進出する場合、投稿素材を広告に転用する予定があり素材の質を見極めたい場合です。いずれも「一度決めると数か月単位で続く」「判断を誤ると予算の大部分が無駄になる」という共通点があります。こうした施策では、お試し起用の費用を「人選の保険料」と考えると、社内の理解も得やすくなります。

お試し起用が向かないケース

一方で、発売日が決まっている新商品の告知や、季節限定キャンペーンのように公開時期が固定されている施策では、テスト期間を取る余裕がありません。この場合は、選定の段階で過去のPR投稿の反応を細かく確認し、複数人に分散して依頼することで、1人あたりの相性リスクを下げる方が現実的です。また、予算が数万円しかない場合は、お試しと本採用を分けると1人あたりの報酬が小さくなりすぎ、良い候補に応じてもらえないこともあります。

施策のタイプお試し起用との相性理由代わりの進め方
アンバサダー・継続起用の候補選び非常に向いている長期で続くため人選の失敗コストが大きい―
初めてのインフルエンサー施策向いている反応が出る層や訴求が分かっていない―
新しい媒体への進出向いている媒体ごとに反応の出方が違う―
発売日が固定の新商品告知向いていないテスト期間を取る余裕がない過去PR投稿の精査+複数人への分散
単発の季節キャンペーンあまり向いていない本採用という段階がない前年の結果を次年度の選定に反映

ABテストとの違い

お試し起用は、投稿の訴求や形式を比べるABテストとは目的が違います。ABテストは「同じ条件で1つの要素だけを変え、どちらの表現が効くか」を確かめる手法で、比べる対象はクリエイティブです。お試し起用で比べる対象は「人」であり、誰と組めば成果が出るか、誰となら継続できるかを判断します。表現の比較を本格的に行いたい場合はインフルエンサー施策のABテスト設計と検証の進め方を参照し、お試し起用で選んだ人とのあいだで実施すると、人と表現の両方を順に絞り込めます。

お試し起用の設計(人数・単価・投稿数・期間)

お試し起用の設計は「候補5〜10人・1人1投稿・期間2〜4週間・総予算は本番想定額の1〜2割」が基本の目安です。人数が少なすぎると比較ができず、多すぎると1人あたりの観察が雑になります。投稿数を1人1本に絞るのは、同じ条件で横並びに比べるためです。期間は、投稿後の反応が落ち着くまでの約1〜2週間と、依頼から投稿までの準備期間を合わせた長さで考えます。

人数と単価の決め方

人数は、本採用で起用したい人数の2〜3倍を目安にします。たとえば最終的に3人と継続契約を結びたいなら、6〜9人にテスト投稿を依頼すると、相性の悪い人が出ても候補が残ります。単価は、通常の相場から大きく値引きしないことが大切です。Bloomナレッジ「インフルエンサー起用の料金相場」では、2026年10月時点の目安としてナノインフルエンサー(1千〜1万フォロワー)で1投稿3千円〜3万円、マイクロインフルエンサー(1万〜3万フォロワー)で3万円〜10万円、フォロワー単価は1フォロワーあたり2〜4円程度としています。お試しだからといって相場の半額以下で依頼すると、応じてくれる人が偏り、テストの結果が本採用時の実力を反映しなくなります。

投稿数・期間・予算配分の目安

投稿は1人1本を基本とし、媒体はフィード投稿かリール(ショート動画)のどちらかにそろえます。ストーリーズは24時間で消えるため、テストの比較対象には向きません。予算は、本採用で使う予定の総額の1〜2割をお試し起用に充て、残りを本採用に回す配分が目安です。以下は、本採用でマイクロインフルエンサー3人と継続契約を結ぶ想定の設計例です(想定例)。

設計項目目安設計例(想定例)決めるときの注意
人数本採用予定人数の2〜3倍8人階層(ナノ/マイクロ)をそろえるか、意図的に混ぜるかを先に決める
単価通常相場どおり(大幅値引きしない)1人5万円フォロワー単価2〜4円(2026年10月時点の目安)を基準にする
投稿数1人1本フィード投稿1本媒体と形式を全員同じにする
期間2〜4週間依頼〜投稿2週間+計測2週間投稿日を近い時期にそろえる
総予算本番想定額の1〜2割40万円+商品・送料本採用に回す予算を先に確保しておく
計測の仕組み人ごとに分けて計測専用URL・クーポンコードを1人ずつ発行投稿前に配布し、計測漏れを防ぐ

ギフティングをお試しに使う場合

報酬を払わず商品だけを渡すギフティングを、お試し起用の代わりにする方法もあります。費用を抑えられる一方で、投稿の義務がないため「投稿されなかった」「投稿の時期がばらばらだった」という結果になりやすく、比較の精度は下がります。ギフティングは「商品を気に入ってくれる人を見つける」段階には向いていますが、本採用の判断材料にするなら少額でも報酬を払い、投稿の時期と形式を約束してもらう方が確実です。ギフティングの進め方はギフティングマーケティングの解説にまとめています。

テスト投稿の依頼内容とブリーフの作り方

テスト投稿のブリーフは「全員に同じ条件を渡し、表現の自由度は残す」形で作るのが基本です。条件がばらばらだと、反応の差が人の違いによるものか、依頼内容の違いによるものか分からなくなります。一方で、台本のように細かく指定すると、その人らしさが出ず、相性を確かめる意味がなくなります。

そろえる条件と自由にする部分

全員にそろえるのは、紹介する商品、媒体と投稿形式、投稿日の範囲、PR表記の方法、必ず伝えてほしい事実(価格・特徴・購入先)、計測用のURLやクーポンコードです。自由にするのは、紹介の切り口、構図や撮影場所、文章のトーン、使用シーンの選び方です。自由にした部分にこそ、その人の企画力やフォロワーとの関係性が表れます。テスト後の評価では、この自由な部分をどう使ったかを「表現」の軸で見ていきます。

テストであることの伝え方

依頼の段階で、今回はお試し起用であること、結果を見て継続や長期契約の相談をしたいこと、評価で見る項目のおおまかな内容を伝えておきます。評価項目を伝えると数字を作られるのではと心配する担当者もいますが、保存率やコメントの質は短期間で意図的に操作しにくく、むしろ「何を大事にしている企業か」が伝わることで投稿の質が上がる傾向があります。継続を約束できない場合は、約束しないことをはっきり書いておくと、後の誤解を防げます。

テスト投稿ブリーフに入れる項目

  • 今回がお試し起用であることと、継続を検討していること(約束はしない旨も明記)
  • 商品情報と、必ず伝えてほしい事実(価格・特徴・購入先)
  • 媒体・投稿形式・投稿日の範囲(全員共通)
  • PR表記の方法(「PR」「広告」表記とタイアップ投稿機能の使用)
  • 計測用URL・クーポンコード(1人ずつ別のもの)
  • 表現で自由にしてよい範囲と、避けてほしい表現
  • 投稿後に共有してほしいインサイト(保存数・リーチ・プロフィールアクセスなど)と提出期限

インサイト共有の依頼を忘れない

保存数やリーチ、プロフィールへのアクセス数、リンクのクリック数といった数値は、投稿者本人のアカウントのインサイト画面でしか確認できません。テスト投稿の評価にはこれらの数値が欠かせないため、投稿後7日時点などのタイミングを決めて、スクリーンショットで共有してもらうようブリーフに明記します。共有のタイミングを全員同じにすることで、投稿日による差を小さくできます。

テスト投稿で見る評価項目

テスト投稿の評価は「数字」「進行」「表現」の3軸で行います。数字だけで判断すると、一時的に伸びた投稿や、偶然タイミングが良かった投稿を過大評価しがちです。継続起用では同じ人と何度も仕事をするため、進行のしやすさや表現の安定感も、数字と同じくらい重要な判断材料になります。

数字で見る項目

数字の軸では、いいね数よりも保存率、リンクのクリック率、クーポンコードの利用数、プロフィールへのアクセス数を重視します。いいねはフォロワーとの関係性で反射的に押されることが多く、商品への関心を示す指標としては弱いからです。保存は「あとで見返したい」という意思表示であり、購入検討に近い行動です。比較するときは絶対数ではなく、リーチ数やフォロワー数で割った率でそろえると、規模の違う人同士でも公平に比べられます。指標の設計はインフルエンサー施策のKPI設計も参考にしてください。

進行で見る項目

進行の軸では、初回の返信までの時間、質問の的確さ、下書き提出の締切を守ったか、修正依頼への対応の速さと丁寧さ、投稿日を守ったか、インサイトを期限どおり共有したかを記録します。継続起用では毎月のように同じやり取りが発生するため、ここでのストレスは回数を重ねるほど大きくなります。担当者の主観に頼らないよう、日時と事実をそのまま記録しておくのがコツです。

表現で見る項目

表現の軸では、普段の投稿の世界観と商品紹介が自然につながっているか、商品の特徴を正しく伝えているか、フォロワーからのコメントが商品そのものへの質問や感想になっているかを見ます。コメント欄が「かわいい」「素敵」といった本人への反応ばかりの場合、投稿は好評でも商品への関心にはつながっていない可能性があります。逆に「どこで買えますか」「色違いはありますか」といった質問が多い投稿は、数字以上に購買への影響が期待できます。

評価軸評価項目確認方法重視する理由
数字保存率(保存数÷リーチ)本人のインサイト共有購入検討に近い行動を表す
数字リンククリック率・クーポン利用数専用URL・コードの計測売上への貢献を直接追える
数字プロフィールアクセス・リーチ本人のインサイト共有フォロワー外への広がりを把握できる
進行返信速度・締切順守やり取りの記録継続時の運用負荷を左右する
進行修正対応の質修正依頼と反映結果の記録ブランド表現の調整がしやすいかが分かる
表現世界観と商品の自然さ投稿の目視確認フォロワーに広告と感じさせない
表現コメントの質コメント欄の分類商品への関心の深さが分かる

データの集め方と比較のしかた

テスト投稿のデータは、1枚の評価シートに全員分を同じ形式でまとめ、率に換算して比べるのが基本です。担当者ごとに記録の仕方が違ったり、数値の取得タイミングがずれたりすると、比較の精度が一気に落ちます。評価シートはテスト開始前に作り、項目と記録のタイミングを決めておきます。

計測の仕組みを投稿前に用意する

リンクのクリック数やクーポンの利用数は、投稿後に計測を始めても取り戻せません。投稿前に、1人ずつ別のパラメータを付けたURLと、1人ずつ別のクーポンコードを発行して渡しておきます。URLの計測方法はインフルエンサー施策のUTM計測で詳しく解説しています。ECサイトがない商材でも、問い合わせフォームに「どなたの投稿を見ましたか」という項目を追加しておくと、人ごとの貢献をある程度追えます。

規模の違いをならして比べる

フォロワー3千人の人と3万人の人では、保存数やクリック数の絶対値は当然違います。比べるときは、保存数÷リーチ数、クリック数÷リーチ数、クーポン利用数÷フォロワー数のように率に換算し、さらに1件あたりの費用(報酬÷保存数、報酬÷クリック数)も並べます。率が高くても費用あたりの成果が低ければ、継続したときの費用対効果は良くありません。率と費用あたり成果の両方で上位に入る人が、本採用の有力候補です。

普段の投稿との比較も行う

テスト投稿の数字は、他の候補と比べるだけでなく、その人の普段の投稿の数字とも比べます。普段の投稿と比べて保存率やコメント数が大きく落ちていない場合、フォロワーがPR投稿を自然に受け入れていると判断できます。反対に、普段より大幅に落ちている場合は、商品とフォロワーの関心がずれているか、紹介の仕方に無理があった可能性があります。普段の平均値は、依頼前に直近10〜20投稿から算出してもらうか、公開されている数値から推計しておきます。

判定基準と本採用(継続起用)への移行判断

本採用への移行は、テスト投稿の前に決めた判定基準に照らして「継続」「条件を変えて再テスト」「見送り」の3つに振り分けて判断します。結果を見てから基準を決めると、印象の良かった人を残す理由を後付けで探すことになり、お試し起用の意味が薄れます。基準は数値と進行・表現の両方で決め、評価シートと同じ文書にまとめておきます。

3段階の判定基準の作り方

判定は、数字・進行・表現の3軸それぞれに合格ラインを設け、すべてを満たせば「継続」、1つだけ満たさなければ「条件を変えて再テスト」、2つ以上満たさなければ「見送り」とするのがわかりやすい方法です。数字の合格ラインは、テスト参加者全員の中央値や、自社の過去施策の平均値を基準にします。進行と表現は「締切を2回以上遅らせていない」「商品の特徴に誤りがない」のように、誰が判定しても同じ結果になる書き方にします。

判定条件の例(想定例)次のアクション
継続保存率・クリック率が参加者の中央値以上、進行・表現に大きな問題なし継続起用・回数契約・アンバサダー契約の打診
条件を変えて再テスト3軸のうち1つが基準未満(例: 数字は良いが表現が商品と合っていない)媒体・訴求・商品を変えてもう1本だけ依頼
見送り3軸のうち2つ以上が基準未満、または規約違反・PR表記漏れお礼を伝えて終了し、理由を社内で記録

本採用時の条件の決め方

継続と判定した人には、本採用の条件として、投稿の回数と期間、単価、二次利用の範囲、独占の有無を提示します。お試し起用の単価を基準にしつつ、回数をまとめて発注する分の調整や、成果に応じた報酬の上乗せを組み合わせると、双方が納得しやすくなります。継続起用の契約形態や途中解約の考え方はインフルエンサーの継続起用と長期契約の設計・運用ガイドで詳しく解説しています。

判定結果の伝え方

見送りと判断した人にも、お礼とテストの結果を簡潔に伝えます。将来、別の商品や別の媒体で相性が合う可能性もあるため、関係を閉じないことが大切です。再テストと判断した人には、何を変えてもう一度試したいのかを具体的に伝え、本人の意見も聞いてから条件を決めます。インフルエンサー自身が「この商品なら別の切り口の方が合う」と提案してくれることも多く、その提案が本採用の決め手になる場合もあります。

判定でぶれないための3つのルール

  • 判定基準はテスト投稿の前に文書化し、結果を見てから変更しない
  • 判定は担当者1人ではなく、2人以上で評価シートを見ながら行う
  • 「なんとなく良かった」は判定理由にせず、必ず評価項目の数値か記録を根拠にする

お試し段階の契約・権利上の注意

お試し起用であっても、契約書(または発注書と合意したメール)で、報酬・投稿内容・PR表記・二次利用・継続時の条件を明記する必要があります。「テストだから口頭で」と簡略化すると、本採用の段階や素材の再利用の場面で認識のずれが表面化します。契約書の基本的な項目はインフルエンサー契約書の作り方を参照してください。

PR表記はテスト投稿でも必須です

2023年10月1日に施行されたステルスマーケティング規制(景品表示法の告示)により、企業が依頼した投稿には、テスト目的であっても広告であることの表示が必要です。報酬を払わず商品だけを提供した場合でも、企業が投稿内容に関与していれば規制の対象になります。テスト投稿では「PR」「広告」などの表記と、各媒体のタイアップ投稿機能の使用をブリーフに明記し、公開後に表記が漏れていないかを必ず確認します。詳しくはステマ規制の解説を参照してください。

二次利用と著作権の扱い

テスト投稿の写真や動画を、自社のサイトや広告に使いたくなることはよくあります。投稿の著作権は原則として撮影した本人にあるため、二次利用する場合は、利用する媒体・期間・加工の可否を契約で決めておく必要があります。お試し段階では二次利用をしない前提で契約し、結果が良かった素材だけ追加で利用許諾を得る方法もあります。権利の整理はインフルエンサー投稿の著作権と二次利用にまとめています。

継続時の条件と独占の扱い

お試しの単価が、そのまま本採用の単価になると誤解されることがあります。契約書には「本契約はテスト投稿1本に関するもので、継続時の条件は別途協議する」と明記しておきます。また、お試し段階で競合商品の投稿を禁止する独占条項を付けるのは避けるのが一般的です。1本のテスト投稿に対して長期の独占を求めると、相手の負担が大きすぎるためです。独占が必要な場合は、本採用の段階で対価とあわせて提示します。

よくある失敗と回避策

お試し起用のよくある失敗は、設計・実施・判定のどの段階でも「条件をそろえないこと」と「基準を後から決めること」に集約されます。以下に代表的な10の失敗を段階ごとに整理しました。自社の進め方と照らし合わせて、当てはまる項目がないか確認してください。

設計段階の失敗

設計段階では、次の4つの失敗が多く見られます。いずれもテスト開始前に防げるものなので、設計書を作る段階でチェックしておきます。

  • 失敗1: 候補が少なすぎる――2〜3人では比較にならず、全員が不合格だった場合に本採用の候補がいなくなります。本採用予定人数の2〜3倍を確保します。
  • 失敗2: 単価を大幅に下げる――相場の半額以下にすると応募者が偏り、本採用時の実力を測れません。通常の相場で依頼します。
  • 失敗3: 媒体や形式がばらばら――フィード投稿とリールを混ぜると、数字の差が人によるものか形式によるものか分かりません。全員同じ形式にそろえます。
  • 失敗4: 計測の仕組みを後から作る――投稿後にURLやコードを発行しても過去のクリックは取り戻せません。投稿前に1人ずつ発行します。

実施段階の失敗

実施段階では、依頼の仕方と運用の細部で失敗が起きます。テストの精度を下げる原因になるため、担当者間で手順を共有しておくことが大切です。

  • 失敗5: 台本を細かく指定しすぎる――全員が同じ文章を投稿すると、その人らしさが出ず相性を判断できません。伝えるべき事実だけを指定し、表現は任せます。
  • 失敗6: 投稿日がばらばら――1週目と4週目では季節や話題が変わり、条件がそろいません。投稿日の範囲を1週間程度に収めます。
  • 失敗7: インサイト共有を依頼し忘れる――保存数やリーチは本人しか見られません。共有のタイミングと方法をブリーフに書きます。

判定段階の失敗

判定段階では、人の印象や社内の事情が判断に入り込みやすくなります。基準と記録に立ち返ることで、ほとんどの失敗は避けられます。

  • 失敗8: 結果を見てから基準を決める――印象の良い人を残す理由を後付けしがちです。基準はテスト前に文書化します。
  • 失敗9: いいね数だけで判断する――いいねは商品への関心を表しにくい指標です。保存率・クリック率・コメントの質を合わせて見ます。
  • 失敗10: 見送りの理由を残さない――理由が残っていないと、次回の選定で同じタイプの人を選び直してしまいます。評価シートに見送り理由を記録し、選定基準の見直しに使います。

失敗を防ぐ最小限のチェックリスト

  • 候補は本採用予定人数の2〜3倍いるか
  • 媒体・形式・投稿日の範囲・PR表記は全員共通か
  • 計測用URLとクーポンコードを投稿前に1人ずつ発行したか
  • 判定基準と評価シートをテスト前に文書化したか
  • 契約書に「継続時の条件は別途協議」と明記したか

お試し起用を仕組みとして回す運用体制

お試し起用は、1回で終わらせず「選定→テスト→判定→本採用→次の選定への反映」を繰り返す仕組みにすると、回を重ねるごとに人選の精度が上がります。テストのたびに評価シートと判定理由を残しておけば、どんなタイプのインフルエンサーが自社の商品と相性が良いかという傾向が、社内の知見として蓄積されます。

担当者の役割分担

少人数の会社でも、少なくとも「依頼と進行を担当する人」と「判定を担当する人」は分けるのが理想です。進行の担当者はインフルエンサーと密にやり取りするため、どうしても印象に引っ張られやすくなります。判定の担当者が評価シートだけを見て判断することで、公平性が保たれます。1人で担当せざるを得ない場合は、判定を投稿から1週間以上空けて行い、評価シートの数値を先に見てから投稿を見直す順番にすると、印象の影響を小さくできます。

本採用後も評価を続ける

本採用に進んだ人も、評価をやめないことが大切です。継続起用では回を重ねるごとにフォロワーの反応が落ちる「マンネリ化」が起きることがあるため、お試し起用で使った評価シートを使い続け、テスト時の数値と比べて大きく下がっていないかを定期的に確認します。数値が下がった場合は、訴求や企画を変えて再テストする、契約期間の区切りで見直すといった対応を取ります。

プラットフォームを使うと効率化できる部分

候補探し、依頼条件の一斉送付、投稿の確認、成果の計測までを担当者が手作業で行うと、お試し起用の人数を増やすほど負担が大きくなります。インフルエンサーのマッチングプラットフォームを使えば、条件を示して応募を募り、やり取りや投稿の記録を一か所にまとめられるため、テストの条件をそろえる作業や評価シートへの転記が楽になります。特に、人ごとの計測と記録が自動で残る仕組みは、お試し起用の判定精度を高めるうえで役立ちます。

本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。