インフルエンサーを選ぶとき、フォロワー数やエンゲージメント率は確認していても、「直近の投稿のうちどれくらいが案件投稿か」まで数えている企業はまだ多くありません。案件ばかりのアカウントに依頼すると、フォロワーが紹介を広告として流し見してしまい、同じ費用でも成果が出にくくなります。この記事では、インフルエンサーの案件投稿比率(PR投稿比率)の定義から、直近30投稿を使った調べ方、#PR表記の見分け方、比率と反応率・信頼性の関係、目安と判定区分、評価表への組み込み手順、起用後に比率を健全に保つ依頼設計までを、選定の担当者がそのまま社内の確認手順として使える形で整理します。

この記事の要点

  • 案件投稿比率とは、インフルエンサーの直近の投稿のうち、企業から依頼を受けたPR投稿が占める割合のことで、フォロワー数やエンゲージメント率だけでは見えない「アカウントの宣伝色の濃さ」を表します。
  • 比率は直近30投稿を1件ずつ「明示されたPR」「PRの可能性が高い投稿」「自主的な商品紹介」「日常の投稿」の4区分に振り分けて数えると、担当者ごとのぶれが小さくなります。
  • 本メディア編集部の目安(2026年10月時点)では、30%以下は起用しやすい状態、30〜50%は反応の確認が必要、50%超は慎重に判断する水準です。統計的な基準値ではなく、反応率とあわせて判断するための目安です。
  • 比率は単独で合否を決めず、PR投稿の反応維持率・コメントの中身・競合案件の有無と組み合わせて評価表に落とし込みます。
  • 起用後も、投稿本数・投稿間隔・訴求の自由度を依頼設計で調整すれば、インフルエンサーの案件投稿比率を健全に保ちながら成果を出しやすくなります。

案件投稿比率とは何か(PR投稿比率の定義)

案件投稿比率とは、インフルエンサーの一定期間の投稿のうち、企業から報酬や商品提供を受けて行ったPR投稿(案件投稿)が占める割合のことです。「PR投稿比率」「タイアップ比率」と呼ばれることもあり、本記事ではいずれも同じ意味で扱います。計算式は「案件投稿の本数 ÷ 対象期間の全投稿の本数 × 100」で、たとえば直近30投稿のうち9本が案件投稿であれば、比率は30%になります。

案件投稿に含めるものと含めないもの

案件投稿に含めるのは、金銭の報酬を受けた投稿だけではありません。商品やサービスの無償提供を受けた投稿、イベントへの招待を受けた投稿、アフィリエイトの成果報酬を受け取る前提で紹介した投稿も、企業が表示内容に関わっている限り案件投稿として数えます。一方で、本人が自分で購入して自主的に紹介した投稿や、日常の写真・雑談・作品の投稿は案件投稿に含めません。この線引きを社内で決めておかないと、担当者によって比率が大きく変わってしまいます。

選定指標の中での位置づけ

案件投稿比率は、フォロワー数やエンゲージメント率と並ぶ「アカウントの質」を見る指標の一つです。フォロワー数は届く人数の大きさ、エンゲージメント率は反応の強さを示しますが、どちらも「そのアカウントが普段どれくらい宣伝をしているか」は教えてくれません。案件投稿比率は、フォロワーがPRをどれだけ見慣れているか、そして本人の推薦にどれだけ重みが残っているかを推し量るための指標です。

投稿頻度や競合案件の確認との違い

案件投稿比率は、投稿頻度の確認や競合案件の確認と重なる部分がありますが、見ている対象が異なります。投稿頻度の確認は「今も活発に発信しているか」を見る工程で、詳しくはインフルエンサーの投稿頻度と稼働状況を見極める確認手順で解説しています。競合案件の確認は「自社と競合する企業の案件を受けていないか」を見る工程です。本記事では、その二つの間にある「PR案件の割合」という選定軸に絞り、数え方・目安・評価表への組み込み方・起用後の依頼設計までを掘り下げます。

案件投稿比率が選定で重要になる理由

案件投稿比率が選定で重要になるのは、PR投稿が多すぎるアカウントでは一つ一つの推薦の説得力が薄れ、同じ費用をかけても成果が出にくくなるからです。フォロワーはインフルエンサーの「本音のおすすめ」に価値を感じてフォローしているため、宣伝の割合が高まるほど、紹介される商品への関心は下がりやすくなります。

推薦の重みは比率に反比例しやすい

インフルエンサーの推薦は、日常の発信の中に時々混ざるからこそ「この人が勧めるなら試してみたい」と受け止められます。毎日のように別々の商品を紹介していると、フォロワーは個々の推薦を広告として流し見するようになります。とくに同じカテゴリの商品が短い間隔で次々と紹介されていると、「どれが本当に良いのか分からない」という印象を与え、自社の商品も埋もれてしまいます。

ステマ規制後は比率が外から見えやすくなりました

2023年10月1日に景品表示法のステルスマーケティング規制(いわゆるステマ規制)が施行され、事業者が関与した投稿には「広告」「PR」などの表示が求められるようになりました。消費者庁の運用基準では、事業者が表示内容の決定に関与した投稿は、一般消費者に広告と分かる形で表示する必要があると整理されています。その結果、2026年10月時点ではPR表記のある投稿が増え、外部から案件投稿比率を数えやすくなりました。表記のルール全体はステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドで確認できます。

費用対効果とリスクの両面に影響します

案件投稿比率は、費用対効果だけでなくリスク管理にも関わります。比率が極端に高いアカウントは、短期間に多くの企業の案件を受けているため、競合企業の商品と自社の商品が近い時期に並ぶ可能性が高くなります。また、案件を数多くこなすことが目的になっていると、商品を十分に試さずに投稿したり、表記を付け忘れたりする事故も起きやすくなります。比率を確認することは、成果の見込みと事故の起こりやすさを同時に点検することにつながります。

案件投稿比率が高いアカウント・低いアカウントの性質

案件投稿比率が高いアカウントは企業案件に慣れていて進行が速い反面、推薦の重みが下がりやすく、比率が低いアカウントは推薦の信頼性が高い反面、進行に手間がかかりやすいという性質があります。比率の高低そのものに良し悪しがあるわけではなく、施策の目的に合うかどうかで評価が変わります。

比率が高いアカウントの傾向

比率が高いアカウントには、企業とのやり取りに慣れていて、指示書の読み込みや締め切りの管理がしっかりしているという長所があります。PR表記の付け方や投稿後の報告も手慣れていることが多く、担当者の負担は小さくなります。一方で、フォロワーがPRを見慣れているため、PR投稿の反応が通常投稿より大きく落ちていることがあります。また、同じ週に複数の企業の商品を紹介しているケースもあり、自社の商品の印象が残りにくくなります。

比率が低いアカウントの傾向

比率が低いアカウントは、日常の発信を中心にファンとの関係を築いているため、PR投稿でもフォロワーが好意的に反応しやすい傾向があります。初めての案件や数少ない案件として紹介されると、「この人が選んだ商品」として強く記憶に残ります。ただし、企業案件の経験が少ないと、PR表記のルールや撮影の段取り、投稿後のデータ共有などを一から説明する必要があり、進行に時間がかかることもあります。

観点比率が低いアカウント(目安30%以下)比率が高いアカウント(目安50%超)
推薦の説得力高い。本人の選択として受け止められやすい下がりやすい。広告として流し見されやすい
PR投稿の反応通常投稿に近い反応を維持しやすい通常投稿より落ちていることが多い
進行のしやすさ説明や確認に手間がかかることがある指示書・締め切り・報告に慣れている
競合と並ぶリスク低い近い時期に競合商品と並ぶ可能性が高い
向いている施策購買や来店を狙う施策、信頼が重要な商材認知の拡大、短期間に本数を出す施策

施策の目的で「合う比率」は変わります

施策の目的が購買や申し込みであれば、推薦の重みが残っている比率の低いアカウントを優先するのが基本です。一方で、新商品の発売直後に短期間で多くの人に名前を知ってもらうことが目的であれば、進行に慣れた比率の高いアカウントを一部に組み込むのも合理的です。複数の層を組み合わせる考え方はインフルエンサーのフォロワー数別の使い分けとミックス設計の記事も参考になります。大切なのは、比率を一律の足切り条件にせず、施策の目的と照らして評価することです。

案件投稿比率の調べ方(直近30投稿の判別手順)

案件投稿比率は、直近30投稿を1件ずつ確認し、あらかじめ決めた4つの区分に振り分けて数えるのが最も再現性の高い調べ方です。期間で区切るより本数で区切るほうが、投稿頻度の違うアカウント同士を同じ物差しで比べやすくなります。

対象期間を「直近30投稿」にする理由

直近30投稿を対象にするのは、投稿頻度が週2〜3回のアカウントでおおむね2〜3か月分に相当し、最近の傾向を捉えるのに十分な量だからです。10投稿程度だと、たまたま案件が重なった時期に当たると比率が大きく振れます。反対に100投稿まで遡ると、案件の受け方が変わった最近の状況が薄まってしまいます。投稿頻度が極端に高いアカウントや低いアカウントでは、「直近30投稿、かつ直近90日以内」のように期間の条件を添えるとよいでしょう。

4つの区分で1件ずつ振り分けます

判別では、「明示されたPR」と「日常の投稿」の二択にせず、その中間を区分として持つことが大切です。表記はないものの案件の可能性が高い投稿や、自分で購入した商品の紹介を別に数えておくと、比率の見落としと過大評価の両方を防げます。

区分判別の手がかり比率への算入
A:明示されたPR「#PR」「#広告」「#提供」などの表記、プラットフォームのタイアップ投稿ラベル、「〇〇様からいただきました」の記載算入する
B:PRの可能性が高い投稿企業アカウントのタグ付け、割引コード、商品の型番やリンクの記載、他のインフルエンサーと同時期の同一商品紹介参考値として別に数え、確認後に判断する
C:自主的な商品紹介「自分で買った」と明記、購入品まとめ、長期間の愛用品の紹介算入しない(宣伝色の参考として記録)
D:日常の投稿商品の訴求がない日常・作品・雑談・情報発信算入しない

記録シートに残して比率を計算します

振り分けた結果は、投稿日・区分・ジャンル・いいね数・コメント数を列に持つ記録シートに残します。比率は「A ÷ 30」を基本値とし、「(A+B) ÷ 30」を上限値として並べて書いておくと、表記のない案件が多いアカウントを見逃しません。基本値と上限値の差が大きいアカウントは、表記の運用に不安がある可能性があるため、次の章で説明する方法でBの区分をもう一段詳しく確認します。シートは一人の担当者が作ったあとに、別の担当者が数件を抜き取って同じ区分になるかを確かめると、判別のぶれを抑えられます。

#PR表記と案件投稿の見分け方

案件投稿の見分け方の基本は、ハッシュタグやキャプションの表記とプラットフォームの公式ラベルの両方を確認することです。表記の場所や書き方は人によって違うため、キャプションの冒頭だけを見て判断すると見落としが生まれます。

キャプション・ハッシュタグ・画像内の表記

PR表記は、キャプションの冒頭、ハッシュタグの並び、画像や動画の中の文字のいずれかに入っていることが多いです。消費者庁の運用基準では、表記が文章の中に埋もれていたり、大量のハッシュタグの中に紛れていたりすると、広告と分かりにくい表示として問題になり得るとされています。確認するときは、キャプションを「続きを読む」まで開き、ハッシュタグを最後まで見て、動画であれば冒頭と最後の画面の文字も確認します。

プラットフォームの公式ラベル

主要なSNSには、案件投稿であることを示す公式の機能があります。Instagramではブランドコンテンツツールを使うと投稿の上部に「タイアップ投稿」と企業名が表示され、TikTokではコンテンツの開示設定を使うと「プロモーションコンテンツ」などのラベルが付きます。YouTubeでは動画の設定で有料プロモーションを含むことを申告すると、再生時に「プロモーションを含みます」と表示されます(いずれも2026年10月時点の各サービスの機能名に基づきます)。公式ラベルが付いた投稿は、区分Aとして確実に数えられます。

表記のない案件を見抜く手がかり

区分Bに当たる投稿は、表記がないだけで案件である可能性があるため、いくつかの手がかりを組み合わせて判断します。同じ時期に複数のインフルエンサーが同じ商品を同じような構図で紹介している、企業の公式アカウントがその投稿をリポストしている、割引コードや専用のリンクが付いている、といった状況が重なるほど案件の可能性は高まります。ただし、表記がないことをもって本人を疑うのではなく、選定の段階で「案件の受け方と表記の運用」を本人に質問し、回答を記録しておくのが穏当な進め方です。

判別で迷ったときの原則

  • 公式ラベルか明確なPR表記があるものだけを区分Aに数え、推測で区分Aに入れない
  • 迷う投稿は区分Bに入れ、基本値と上限値の両方を記録する
  • 区分Bが多いアカウントは、選定時のヒアリングで案件の受け方と表記の運用を確認する

案件投稿比率と反応率・信頼性の関係

案件投稿比率は、それ単独ではなく「PR投稿の反応が通常投稿と比べてどれだけ維持されているか」と組み合わせて見ることで、初めて選定に使える指標になります。比率が高くても反応が落ちていないアカウントもあれば、比率が低くてもPR投稿だけ極端に反応が弱いアカウントもあります。

PR投稿の反応維持率を計算します

反応維持率は、記録シートの区分Aの投稿の平均いいね数(またはエンゲージメント数)を、区分Dの投稿の平均で割って求めます。本メディア編集部が置いている目安(2026年10月時点)では、この値が70%程度以上あれば、フォロワーがPR投稿も好意的に受け止めていると判断できます。50%を下回る場合は、PR投稿がフォロワーに流し見されている可能性が高いため、比率が低くても慎重に評価します。エンゲージメント率そのものの計算方法と目安はインフルエンサーのエンゲージメント率の目安と見方で整理しています。

比率と反応維持率の組み合わせで判断します

比率と反応維持率を組み合わせると、アカウントを4つの型に分けて考えられます。比率が低く反応維持率が高い型は、最も推薦の重みが残っている状態です。比率が高くても反応維持率が高い型は、PRの選び方や見せ方が上手く、フォロワーとの信頼関係が保たれている状態と考えられます。比率が高く反応維持率が低い型は、宣伝疲れが起きている可能性が高く、費用対効果は期待しにくくなります。

型案件投稿比率反応維持率評価の考え方(想定例)
信頼維持型低い(30%以下)高い(70%以上)購買を狙う施策で優先的に起用を検討する
PR上手型高い(30%超)高い(70%以上)見せ方を参考にしつつ、競合と並ぶ時期を確認する
PR不慣れ型低い(30%以下)低い(50%未満)商品との相性と構成の指示で改善できるかを見る
宣伝疲れ型高い(50%超)低い(50%未満)原則として見送り、次回の施策で再確認する

コメントの中身で信頼性を確かめます

数字に加えて、PR投稿についたコメントの中身を見ると、フォロワーの受け止め方がよく分かります。「どこで買えますか」「使ってみたい」といった具体的な質問や感想が付いていれば、推薦として機能しています。反対に、絵文字だけのコメントや定型文のようなコメントが並ぶ場合や、「最近PRばかり」といった不満の声が見える場合は、比率の数字以上に信頼が下がっている可能性があります。コメントの読み取り方はインフルエンサーのコメント欄で購買意欲と質を見極める方法が参考になります。また、反応の数字そのものが水増しされていないかはフェイクフォロワーの見分け方と選定でのチェック手順で確認しておきましょう。

案件投稿比率の目安と判定区分

案件投稿比率の目安は、本メディア編集部の実務上の整理(2026年10月時点)で、30%以下が「起用しやすい」、30〜50%が「反応を確認して判断する」、50%超が「慎重に判断する」の3段階です。これは公的な基準や統計データではなく、選定の判断をそろえるための目安であり、商材やSNSの種類によって調整する前提で使います。

3段階の判定区分

判定区分は、比率だけで機械的に決めず、前の章で説明した反応維持率と組み合わせて使います。比率が30%以下でも反応維持率が極端に低い場合は条件付きに下げ、比率が50%を超えていても反応維持率が高く、ジャンルが自社の商材と一致している場合は条件付きに上げる、といった調整を認めておくと、優れた候補者を取りこぼしにくくなります。

案件投稿比率(直近30投稿)アカウントの状態判定の目安追加で確認すること
0%企業案件の経験がない、または受けていない起用可(進行の説明を丁寧に)PR表記の方法と進行のルールを事前に説明する
1〜30%日常の発信が中心で、PRが自然に混ざっている起用しやすい同ジャンルの案件が直近に重なっていないか
30〜50%PRの多さがフォロワーに意識され始めている反応を確認して判断反応維持率が70%程度以上あるか、コメントに不満が出ていないか
50%超アカウント全体が宣伝中心に見えやすい慎重に判断反応維持率、競合案件の有無、表記の運用を本人に確認

SNSの種類による調整

目安はSNSの種類によって調整します。Instagramのフィード投稿は一覧で並んで見えるため、比率の高さがプロフィールを開いた人にすぐ伝わります。ストーリーズは24時間で消えるため、フィードの比率に含めず別に確認するのが一般的です。YouTubeは1本あたりの制作負担が大きく投稿本数が少ないため、比率が少数の動画で大きく動きます。動画の場合は「動画全体が案件か、動画の一部で紹介しているか」も区別して記録すると、実態に近い数字になります。

ジャンルと商材による調整

美容やファッションのように、商品の紹介そのものが発信の中心になっているジャンルでは、自主的な商品紹介も多いため、案件投稿比率がやや高めに出やすい傾向があります。一方、日常や趣味の発信が中心のジャンルで比率が高い場合は、フォロワーが期待している内容とのずれが大きく、宣伝疲れが起きやすくなります。医療や金融など信頼性が特に重視される商材では、目安を一段厳しくし、30%を超える候補者は反応とコメントを丁寧に確認するのが安全です。

案件投稿比率を選定基準に組み込む手順(評価表)

案件投稿比率を選定基準に組み込むには、比率を他の指標と並べた評価表の1項目として配点し、合計点と足切り条件の両方で判断する仕組みにするのが効果的です。比率だけを足切りにすると優れた候補者を取りこぼし、比率を見ないと宣伝疲れのアカウントを選んでしまうため、点数と条件の両方で扱います。

手順1:評価項目と配点を決めます

評価表には、ブランドとの適合性、フォロワー属性、エンゲージメント率、案件投稿比率、PR投稿の反応維持率、コメントの質、競合案件の有無、稼働状況などの項目を並べます。案件投稿比率は、購買を狙う施策では配点を高めに、認知の拡大を狙う施策では低めに設定します。評価表全体の作り方はインフルエンサー評価表の作り方と応募者選考の採点基準で詳しく解説しています。

評価項目配点(想定例)5点の基準1点の基準
案件投稿比率15点直近30投稿で30%以下50%超
PR投稿の反応維持率15点通常投稿の70%以上通常投稿の50%未満
同ジャンル案件の重なり10点直近30投稿で同ジャンルの案件なし同ジャンルの案件が3件以上
表記の運用10点すべての案件に公式ラベルか明確な表記表記のない案件の疑いが複数
その他(適合性・属性・コメントの質・稼働状況)50点各社の評価基準に沿って採点

配点は5段階の評価に項目ごとの重みを掛けて100点満点に換算します。数字はあくまで想定例のため、自社の施策の目的に合わせて調整してください。

手順2:足切り条件を別に決めます

点数とは別に、合計点に関係なく見送る足切り条件を決めておきます。たとえば「比率50%超かつ反応維持率50%未満」「直近30投稿の中に競合企業の案件がある」「表記のない案件の疑いが複数あり、ヒアリングでも説明がない」といった条件です。足切り条件は少なく、明確にしておくのがポイントです。条件が多すぎると候補者が残らず、結局は担当者の判断で例外を作ることになってしまいます。競合案件の確認範囲はインフルエンサーの競合案件を確認する方法と起用前の注意点を参照してください。

手順3:判定の理由を数字で記録します

評価が終わったら、判定の区分とあわせて理由を数字で記録します。「比率27%・反応維持率82%」「比率56%・同ジャンル案件4件」のように書いておくと、施策の終了後に成果と照らし合わせて、目安や配点が適切だったかを検証できます。見送った候補者も理由とともに記録しておけば、半年後に比率が下がっているかを確認して、次の施策で改めて候補に入れることができます。

起用後に案件投稿比率を健全に保つ依頼設計

起用後に案件投稿比率を健全に保つには、自社の依頼そのものが比率を押し上げすぎないように、投稿本数・投稿間隔・訴求の自由度を依頼設計の段階で調整することが重要です。選定で比率の低いアカウントを選んでも、依頼の出し方によっては短期間で宣伝色が濃くなってしまいます。

投稿本数・間隔・時期の重なりを調整します

1人のインフルエンサーに短期間で多くの投稿を依頼すると、そのアカウントの比率は一気に上がります。複数本の投稿を依頼する場合は、1〜2週間以上の間隔を空け、その間に日常の投稿が入る余地を残すのが基本です。本数を確保したい場合は、1人あたりの本数を増やすより、起用する人数を増やして1人あたりの負担を分散するほうが、比率と成果の両面で安定しやすくなります。投稿本数の考え方はインフルエンサー施策の投稿本数を決める考え方と配分方法でも整理しています。

依頼する前に、本人に今後1か月程度の案件の予定を確認し、他社の案件、とくに同じジャンルの案件と公開日が近接しないように調整します。同じ週に似た商品の紹介が続くと、フォロワーにとってはどちらの商品も印象に残りません。公開日の調整を依頼するときは、本人のスケジュールを尊重しつつ、「前後3日は同ジャンルの案件を避けたい」のように具体的な条件で伝えると合意しやすくなります。

本人の言葉で語れる自由度を残します

案件投稿が「宣伝らしく」見える大きな原因は、企業が用意した文言や構成をそのまま使わせることです。訴求したい要点と表現の禁止事項だけを明確にし、構成や言い回しは本人の普段の発信に合わせて任せると、PR投稿でも日常の投稿に近い自然さが保たれ、反応維持率も下がりにくくなります。指示書で何を決めて何を任せるかはインフルエンサーディレクションの進め方と指示書を参考にしてください。

長期起用では比率を定期的に確認します

同じインフルエンサーに継続して依頼する場合は、3か月に1回程度、比率と反応維持率を再計測します。継続起用によって自社の案件が比率の大半を占めるようになっていないか、他社の案件が増えて宣伝色が濃くなっていないかを確認し、必要に応じて依頼の本数や間隔を見直します。継続起用の相手としては、比率が安定している人を選ぶと、長期にわたって推薦の重みを保ちやすくなります。

案件投稿比率を見るときの注意点

案件投稿比率を見るときに最も注意すべき点は、比率の高さだけでインフルエンサーの誠実さや能力を判断しないことです。比率は宣伝色の濃さを示す目安にすぎず、数え方や時期によって大きく変わるため、いくつかの誤判定のパターンを知っておく必要があります。

一時的な案件の集中を常態と誤解しない

年末商戦や新生活の時期、大型のセール期間などには、多くのインフルエンサーで一時的に案件が集中します。その時期だけを切り取って比率を数えると、普段より高い数字が出てしまいます。比率が高く出た場合は、その前の30投稿も確認して、継続的な傾向なのか一時的な集中なのかを見分けましょう。

表記の丁寧さを減点しない

ステマ規制に誠実に対応しているインフルエンサーほど、商品提供だけの投稿やイベント招待の投稿にもきちんと表記を付けるため、比率が高く出ることがあります。逆に、表記を付けていないアカウントは比率が低く見えます。区分Bの上限値を併記し、表記の運用を評価表の加点項目にしておけば、誠実な対応をしている人が不利になる事態を避けられます。

アカウントの削除・アーカイブに注意します

過去のPR投稿をアーカイブや削除で非表示にしているアカウントでは、見えている投稿だけで数えると比率が実態より低くなります。投稿番号の飛びや、ハイライトに残っている商品紹介と本人のフィードの食い違いなどに気付いたら、選定時のヒアリングで「過去3か月に受けた案件の件数」を本人に確認し、自己申告の数字も記録に残しておきます。

案件投稿比率を確認するときのチェックリスト

  • 直近30投稿(かつ直近90日以内)を対象にしたか
  • 4区分で振り分け、基本値(A)と上限値(A+B)の両方を記録したか
  • PR投稿の反応維持率を計算し、比率と組み合わせて判断したか
  • 一時的な案件の集中ではないか、前の期間も確認したか
  • 同ジャンル・競合企業の案件が近い時期に入っていないか確認したか
  • 判定の理由を数字で記録したか

案件投稿比率は、フォロワー数やエンゲージメント率では見えない「推薦の重み」を測るための実用的な指標です。目安を機械的な合否基準にせず、反応維持率やコメントの中身と合わせて評価表に組み込み、起用後も依頼設計で比率を健全に保つことで、インフルエンサー施策の費用対効果を安定して高められます。選定基準全体の見直しには失敗しないインフルエンサー選定7つのポイントもあわせてご覧ください。

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