インフルエンサー案件に応募が集まったあと、誰を通して誰を落とすかを決める段になって手が止まる、という相談をよくいただきます。フォロワー数の多い順に並べれば作業は早く終わりますが、そうやって選んだ人が投稿しても反応がほとんど出なかった、という結果になりがちです。かといって一人ずつアカウントを眺めて「なんとなく良さそう」で決めていくと、担当者が変わったとたんに基準がぶれますし、社内で「なぜこの人を選んだのか」と聞かれたときに説明ができません。この記事では、インフルエンサーの評価を100点満点の評価表に落とし込み、応募者を機械的にさばくための配点設計と採点基準、点数に関係なく落とす足切り項目、複数人で採点したときのブレをそろえる手順までを、そのままスプレッドシートに移せる形で解説します。

この記事の要点

  • インフルエンサーの評価表とは、複数の候補者を同じ評価軸と同じ配点で採点し、合計点で並べ替えられるようにした選考シートです。感覚ではなく点数で比較できる状態を作ることが目的です。
  • 配点はフォロワー属性の一致度30点・エンゲージメントの質25点・コンテンツ品質20点・ブランド適合15点・進行のしやすさ10点の100点満点を基本形にしてください。
  • フォロワー数そのものを配点に入れないことが、評価表を機能させる最大のコツです。フォロワー数はリーチの見込みを計算するための前提条件であって、良し悪しを表す点数ではありません。
  • 点数をつける前に足切り項目を通してください。広告表記の不備、直近の炎上、競合案件との抵触、フォロワーの不自然な急増は、合計点が何点でも不合格にする条件です。
  • 応募が50人を超えたら二段階選考にしてください。数値だけで絞る一次スクリーニングと、投稿を目で見る二次評価に分けると、1人あたり3分前後で処理できます。

インフルエンサー評価表が必要になる場面と役割

インフルエンサーの評価表が必要になるのは、候補者が3人を超えた時点です。2人までなら並べて見比べれば判断できますが、3人以上になると人間の頭は全項目を同時に比較できなくなり、直前に見た候補の印象に引きずられます。応募型の案件で20人、50人と集まる場合はなおさらで、評価軸を文章にして固定しておかないと、最初の10人と最後の10人でまったく違う基準の採点になってしまいます。

評価表の定義と選考シートとしての位置づけ

インフルエンサーの評価表とは、複数の候補者を同じ評価軸・同じ配点・同じ採点基準で採点し、合計点で比較できるようにした選考シートです。単なるチェックリストとの違いは、項目に重みがついていて合計点が出る点にあります。チェックリストは「確認したかどうか」を管理する道具ですが、評価表は「誰を通すか」を決める道具です。この違いを意識せずにチェックリストだけで運用すると、全項目にチェックが付いた候補が10人並んだ時点で判断ができなくなります。

評価表が担う役割は3つあります。1つ目は候補者を順位づけできる状態にすること、2つ目は選考の判断を後から説明できる記録として残すこと、3つ目は施策が終わったあとに「高得点の人が本当に成果を出したか」を検証して基準を改善することです。3つ目まで回して初めて、評価表は自社の資産になります。選定で見るべき観点そのものを整理したい場合は失敗しないインフルエンサー選定7つのポイントもあわせてご覧ください。

感覚で選んだときに起きる3つのずれ

感覚で選ぶと、決まったパターンのずれが起きます。1つ目はフォロワー数への引きずられで、数字が大きい候補を無意識に高く評価してしまう現象です。2つ目は見た目の華やかさへの偏りで、写真のクオリティが高いアカウントを、フォロワー層が自社の顧客と合っていなくても選んでしまうことがあります。3つ目は順番効果で、最初に見た候補が基準になり、後半に見た候補を厳しく採点してしまう傾向です。

これらは担当者の能力の問題ではなく、比較のときに誰にでも起きる認知の癖です。だからこそ、癖が出ない仕組みを先に用意する必要があります。評価表は、その仕組みをもっとも安く作れる方法です。

公募型と指名型での使い分け

評価表の使い方は、応募を待つ公募型と、こちらから声をかける指名型で変わります。公募型では母集団が大きく、質のばらつきも大きくなりますので、足切りと一次スクリーニングを厚めにして、上位だけを丁寧に見る使い方になります。指名型では候補が最初から絞られていますので、足切りは軽くし、詳細な採点で誰から声をかけるかの優先順位を決める使い方になります。

どちらの場合も評価表そのものは共通で構いません。変えるのは足切りの厳しさと、二次評価に進める人数の割合だけです。1枚の評価表を両方の入口で使い回せるようにしておくと、社内での運用が定着しやすくなります。

評価表を作る前に決める3つの前提

評価表を作る前に決めることは、施策の目的・母集団の集め方・合格ラインの3つです。この3つが決まっていないまま項目を並べ始めると、思いついた観点をすべて入れた30項目の巨大なシートができあがり、採点が終わらずに使われなくなります。評価表の項目数は多くても12項目、実務では8項目前後が現実的な上限です。

施策の目的から評価軸を逆算する考え方

評価軸は、その施策で何を達成したいかによって変わります。認知拡大が目的ならリーチの広さと保存・シェアの発生しやすさが重くなり、購入や予約の獲得が目的ならフォロワーの購買行動と過去のPR投稿での反応が重くなります。二次利用して広告素材に転用する前提なら、コンテンツの品質と権利処理への協力度合いが重要になります。

ここを曖昧にしたまま「良さそうな人」を探すと、評価軸が総花的になり、結局どの目的にも最適化されていない候補が上位に来ます。施策のKPIを先に決めてから評価表に着手してください。目的とKPIの立て方はインフルエンサー施策のKPI設計とテンプレートで整理しています。

母集団の規模と質の把握

母集団の人数によって、評価表に求められる精度は変わります。応募が10人で採用枠が5人なら、評価表は順位づけの補助にとどまり、実際にはほぼ全員を見ることになります。応募が100人で採用枠が10人なら、評価表は90人を落とすための道具として機能させる必要があり、一次で機械的に絞り込む設計が欠かせません。

応募人数評価表の役割推奨する進め方
10人未満順位づけの補助全員を目視評価し、評価表は記録として残します
10〜30人順位づけと足切り足切りを通したうえで全員を採点します
30〜100人絞り込みが主目的数値による一次スクリーニングを挟みます
100人以上絞り込みと工数管理一次を機械的に処理し、上位30人だけを目視します

応募人数が読めない段階では、30人を超えた場合の運用を先に決めておくことをおすすめします。想定より多く集まったときに設計を変える余裕はありませんので、多い側に合わせて準備しておくほうが安全です。

合格ラインを先に決める理由

合格ラインは、採点を始める前に決めてください。採点結果を見てからラインを引くと、「この人を通したいからラインを下げる」という後付けの調整が入り、評価表を作った意味がなくなります。先に70点と決めておけば、70点に届く候補が5人しかいなかった場合に「枠を埋めるために基準を下げるか、追加で募集するか」という、本来向き合うべき判断が表に出てきます。

合格ラインを先に決めることで見えるもの

合格ラインを先に決めておくと、母集団の質そのものを評価できるようになります。ラインを超える候補が想定の半分しかいなかったのであれば、それは選考の問題ではなく募集条件や告知の問題です。報酬水準、案件内容の見せ方、募集をかけた場所のいずれかを見直す必要があるという情報が手に入ります。採点後にラインを動かしてしまうと、この情報が消えてしまいます。

100点満点の配点設計と評価軸の内訳

配点は、フォロワー属性の一致度30点・エンゲージメントの質25点・コンテンツ品質20点・ブランド適合15点・進行のしやすさ10点の100点満点を基本形にしてください。この配分は、施策の成果に効く順番と、選考時点で確認できる情報量の両方を踏まえたものです。5軸に絞ることで、1人あたりの採点時間を3分以内に収められます。

5つの評価軸と推奨配点

評価軸配点見るものデータの取り方
フォロワー属性の一致度30点年齢・性別・地域が自社の顧客と重なるかインサイトのスクリーンショット提出、または応募フォームでの申告
エンゲージメントの質25点反応の量ではなく、保存・コメントの中身と自然さ直近10投稿の平均値とコメント欄の目視
コンテンツ品質20点写真・動画の見やすさ、説明文の情報量、投稿の一貫性プロフィールと直近投稿の目視
ブランド適合15点世界観・言葉づかい・価格帯の感覚が自社と合うか過去のPR投稿と普段の投稿の目視
進行のしやすさ10点応募文の丁寧さ、返信の速さ、条件への理解度応募時のやりとりの記録

この表でフォロワー数が独立した評価軸になっていない点に注意してください。フォロワー数は「何人にリーチできるか」を計算するための前提条件であり、多いほど良い候補という意味ではありません。フォロワー規模ごとの役割分担はインフルエンサーのフォロワー数別の使い分けとミックス設計で解説していますので、起用する層を決める段階で参照してください。

商材タイプ別の配点の振り分け

商材によって、どの軸が成果を左右するかは変わります。単価が低くて衝動買いされる商材ではエンゲージメントの質が効き、単価が高くて比較検討される商材ではコンテンツ品質とブランド適合が効きます。以下は商材タイプ別に配点を振り直した例です。

商材タイプ属性一致エンゲージコンテンツブランド適合進行
基本形(汎用)3025201510
低単価の日用品・食品3035151010
高単価の耐久財・住宅351525205
コスメ・美容302025205
店舗・地域集客4025151010
広告二次利用が前提2515301515

店舗集客の配点で属性一致が40点に上がっているのは、来店できる距離に住んでいるフォロワーがいなければ、他の項目が満点でも成果が出ないためです。このように、その施策で「これがゼロなら成立しない」軸を見つけて重くするのが配点設計の考え方になります。

配点を動かすときのルール

配点を変える場合は、採点を始める前に確定させ、同じ案件の中では途中で変えないでください。途中で配点を変えると、変更前に採点した候補と変更後の候補が比較できなくなります。どうしても変えたい事情が出てきた場合は、変更後の配点で全員を採点し直すのが原則です。

また、1つの軸に40点を超える配点を与えないことをおすすめします。1軸が支配的になると、実質的にその軸だけで選んでいるのと同じになり、複数軸で見る意味が薄れます。上限は40点、下限は5点を目安にしてください。

評価項目ごとの採点基準と0〜5点の物差し

採点基準は、各項目を0〜5点の6段階で定義し、点数ごとに「どんな状態なら何点か」を文章で書き切ってください。段階を細かくしすぎると採点者が迷い、粗くしすぎると差がつきません。6段階に定義文を添えた形が、採点速度と再現性のバランスがもっとも良くなります。素点に配点の重みを掛けて合計する方式にすると、配点を変えても採点基準を作り直さずに済みます。

フォロワー属性一致度の採点基準

フォロワー属性の一致度は、想定顧客と重なるフォロワーの割合で採点します。インサイト画面のスクリーンショットを提出してもらい、主要な属性が何%を占めるかを見る方法が確実です。提出が難しい場合は、コメントしている人のアカウントを10件ほど開いて傾向を確認する簡易法でも代用できます。

素点状態の目安
5想定顧客と一致する属性が70%以上を占めています
4一致する属性が55〜70%です
3一致する属性が40〜55%で、主要層と重なっています
2一致する属性が25〜40%で、周辺層が中心です
1一致する属性が25%未満ですが、重なる層は存在します
0属性データが確認できない、または想定顧客とほぼ重なりません

海外フォロワーの比率が高い場合は、国内向け商材では一致率から差し引いて計算してください。属性データの読み方と一致率の考え方はインフルエンサーのフォロワー属性分析と一致率の見方で詳しく解説しています。

エンゲージメントの質の採点基準

エンゲージメントは率の数字だけで採点しないでください。2026年9月時点で各SNSマーケティング支援会社が公開しているベンチマーク記事に共通して示されている水準では、Instagramのフィード投稿の平均エンゲージメント率はおおむね1〜3%台、インフルエンサーとして活動しているアカウントでは5%前後まで上がるとされています。ただしこの数字はフォロワー規模によって大きく変わり、フォロワーが少ないほど高く出る性質がありますので、規模の違う候補を率だけで並べると小規模アカウントが自動的に上位に来ます。

素点数値の目安(同規模帯の中での相対評価)コメント欄の状態
5同規模帯の平均を明確に上回っています投稿内容に触れた具体的なコメントが複数あります
4同規模帯の平均をやや上回っています感想中心のコメントが安定してついています
3同規模帯の平均並みです絵文字や短文が中心ですが不自然さはありません
2同規模帯の平均をやや下回っていますコメントが少なく、いいね偏重です
1平均を大きく下回っていますコメントがほとんどありません
0数値が取得できません定型文や海外アカウントの短文が並んでいます

採点で見るべきなのは、率の高さよりも反応の中身です。投稿の内容に触れたコメントがついているアカウントは、フォロワーが投稿を読んでいる証拠であり、PR投稿でも同じ深さで受け止められる可能性が高くなります。逆に絵文字だけのコメントが大量についているアカウントは、数字が高くても購買につながりにくい傾向があります。率の計算方法と規模別の目安はインフルエンサーのエンゲージメント率の目安と見方にまとめています。

コンテンツ品質とブランド適合の採点基準

コンテンツ品質は、写真・動画の見やすさ、説明文の情報量、投稿テーマの一貫性の3点で採点します。ブランド適合は、世界観・言葉づかい・扱っている価格帯の感覚が自社と合うかで採点します。この2つは主観が入りやすい項目ですので、採点基準の文章をとくに具体的に書いておく必要があります。

素点コンテンツ品質ブランド適合
5そのまま広告素材に使える水準で、テーマも一貫しています自社の既存クリエイティブに並べても違和感がありません
4見やすく情報量も十分で、軽い修正で使えます世界観がおおむね重なっています
3標準的な品質で、投稿としては問題ありませんずれはありますが、依頼書で調整できる範囲です
2写真が暗い、説明文が短いなど改善点がありますターゲットは近いものの、トーンが異なります
1投稿ごとに品質のばらつきが大きい状態です価格帯や価値観の感覚が離れています
0直近3か月の投稿がありません自社の方針と相容れない発信が含まれます

ブランド適合の採点では、普段の投稿と過去のPR投稿の両方を見てください。普段の世界観がきれいでも、PR投稿になると急に説明的になって浮いてしまう人がいます。PR投稿でも自分の言葉で語れているかどうかが、本番での再現性を左右します。

足切り項目とリスクチェックの運用

足切り項目は、合計点がどれだけ高くても不合格にする条件です。点数の加減点で扱うと、他の項目が高得点の候補が通ってしまいますので、加点方式とは切り離して、通過・不通過の判定として先に処理してください。足切りの確認は1人あたり1分程度で終わりますので、採点の前段に置くと全体の工数も下がります。

点数に関係なく不合格にする5項目

足切り項目判定の基準確認方法
広告表記の不備過去のPR投稿に#PRや「PR」の明示がありません過去のタイアップ投稿を3件確認します
直近の炎上・トラブル直近12か月に謝罪投稿や活動休止がありますアカウント名で検索し、投稿履歴を確認します
競合案件との抵触直近3か月に競合商材のPR投稿がありますタイアップラベルとハッシュタグを確認します
フォロワーの不自然な急増短期間に大きく増えた形跡があり、反応が伴いませんフォロワー推移と反応数の比率を確認します
連絡が成立しない応募後の確認連絡に一定期間返信がありません期限を明記した確認連絡を1回送ります

足切りに該当した候補は、点数をつけずに不通過として記録してください。理由を1行残しておくと、同じ人が別の案件に応募してきたときに再確認の手間が省けます。ただし炎上や活動休止は時間が経てば状況が変わりますので、記録には判定した日付を必ず添えておいてください。

フォロワーの不自然な伸びを見つける手順

フォロワー数の水増しは、フォロワー数と反応数の比率、フォロワーの中身、増え方の3点から見つけられます。フォロワーが1万人いるのに、いいねが常に50件前後で止まっているようなアカウントは、実際に見ている人がフォロワー数に見合っていない可能性があります。フォロワー一覧を開いて、プロフィール写真も投稿もないアカウントが並んでいないかも確認してください。

短期間の急増も手がかりになります。数か月にわたって緩やかに増えているアカウントは自然ですが、特定の週だけ大きく増えて、その後の反応がまったく増えていない場合は注意が必要です。判定の具体的な手順はフェイクフォロワーの見分け方と選定でのチェック手順にまとめていますので、確認作業の前に一度目を通しておくと判断が速くなります。

競合案件と過去の炎上の確認手順

競合案件の確認は、候補者のアカウント内でタイアップ投稿を絞り込み、直近3か月ぶんの商材名を書き出す方法が確実です。同じカテゴリの商材を直前に紹介している場合、フォロワーからは一貫性がないと受け取られますし、競合側との契約に競業避止の条項が入っていることもあります。自社が競合をどう定義するかは、選考前に社内で文章にしておいてください。

過去の炎上については、アカウント名と一般的な検索語を組み合わせて確認する方法が基本です。本人の投稿だけを見ていても、削除されていれば分かりません。まとめサイトの断片的な情報を鵜呑みにせず、一次情報として本人の投稿や公式発表が残っているかまで確認したうえで判断してください。競合の動向を体系的に押さえる方法は競合のインフルエンサー施策を調べる競合分析の手順で解説しています。

応募者が多いときの二段階選考フロー

応募者が50人を超えたら、数値だけで絞る一次スクリーニングと、投稿を目で見る二次評価の二段階に分けてください。全員を同じ深さで見ようとすると、1人10分としても50人で8時間を超え、選考が施策のボトルネックになります。二段階に分ければ、同じ50人を2時間半程度で処理できます。

一次スクリーニングの機械的な絞り込み

一次では、応募フォームで集めた数値と足切り項目だけを使い、投稿は見ません。見る項目を絞ることで、1人あたり30秒から1分で処理できます。ここで残す人数の目安は、採用枠の3倍から5倍です。採用枠が10人なら30人から50人を残す計算になります。

一次スクリーニングで使う項目

一次で使うのは、足切り5項目の通過判定、フォロワー属性の主要層の一致、直近10投稿の平均反応数、直近1か月の投稿本数の4点だけにしてください。応募フォームの設計段階でこの4点が数値として集まるようにしておくと、スプレッドシートの並べ替えとフィルタだけで一次を終えられます。応募時に何を聞くかを決めることが、選考工数を決める最大の要因です。

二次評価で投稿を見る順番

二次評価では、見る順番を固定してください。順番を固定すると、候補ごとに見る情報の量がそろい、採点のばらつきが減ります。おすすめの順番は、プロフィール文、直近3投稿、コメント欄、過去のPR投稿、ストーリーズやハイライトの5段階です。この順で見ると、最初の2段階で明らかに合わない候補を早く判定できます。

1人あたりの上限時間も決めておいてください。3分と決めておけば、迷った候補に時間を使いすぎることを防げます。3分で決められない候補は「保留」に入れ、全員を見終わってから保留だけをまとめて再評価するほうが、結果的に速く終わります。

人数別の所要時間の目安

応募人数一次(1人30〜60秒)二次に進む人数二次(1人3分)合計の目安
30人約20分15人約45分約1時間5分
50人約35分25人約75分約1時間50分
100人約70分35人約105分約2時間55分
200人約140分40人約120分約4時間20分

※所要時間は応募フォームで数値が事前に集まっている前提の目安です。インサイトの提出を個別に依頼する運用にすると、待ち時間が加わって全体で数日単位に伸びます。応募者が100人を超える規模では、二次に進める人数を35人前後で頭打ちにするほうが、選考期間を守りやすくなります。

複数人で採点するときのブレのそろえ方

複数人で採点するときは、本番の採点を始める前にサンプル3件を全員で採点し、点差の理由を突き合わせてください。この作業をキャリブレーションと呼びます。30分程度で終わりますが、これを省くと同じ候補に対して採点者間で20点以上の差が出ることがあり、合計点が意味を持たなくなります。

採点前のキャリブレーション

キャリブレーションでは、明らかに良い候補・平均的な候補・合わない候補の3件を選び、全員が個別に採点してから点数を見せ合います。差が出た項目について「なぜその点にしたか」を口頭で説明し合うと、採点基準の文章では埋まらない解釈のずれが表に出てきます。ずれが見つかった項目は、その場で基準の文章に追記してください。

このとき、全員の点数を一致させる必要はありません。目的は点数をそろえることではなく、物差しの目盛りをそろえることです。同じ候補に対して3点と4点が付くのは許容範囲ですが、2点と5点に分かれるようであれば基準の書き方に問題があります。

点差が開いたときの合議ルール

採点者2名で運用する場合、合計点の差が15点以上開いた候補だけを合議の対象にしてください。差が小さい候補は平均値で処理して構いません。全件を合議すると時間がかかりすぎ、二段階選考にした意味がなくなります。

2名の合計点差処理方法目的
0〜9点平均値をそのまま採用します誤差の範囲として扱います
10〜14点平均値を採用し、差の理由をコメント欄に記録します次回の基準改善に使います
15点以上2名で該当項目のみを再確認し、合意点を出します解釈の食い違いを解消します
足切りの判定が割れた場合点差にかかわらず必ず合議します不合格判定の誤りを防ぎます

合議で結論が出ない場合は、決裁者を1名決めておいて最終判断を委ねてください。決着の手順を先に決めておかないと、判断が保留のまま滞留し、候補者への連絡が遅れます。連絡の遅れは辞退の最大の原因ですので、選考の進行そのものを設計に含めてください。

コメント欄を必須にする効果

評価表には、点数の隣に短いコメントを書く欄を必ず設けてください。コメントを書く前提にすると、採点者は「なぜこの点なのか」を言語化する必要があり、直感だけで数字を置くことが減ります。1項目につき15文字程度でも効果があります。

さらに、施策が終わったあとに実際の成果と照らし合わせるとき、点数だけでは何が当たって何が外れたかが分かりません。「コメント欄で商品への言及が多い」と書いてあれば、その観察が成果につながったのかを検証できます。この積み重ねが、次の案件で使う採点基準の精度を上げます。

合格ラインの決め方と補欠・追加募集の判断

合格ラインは100点満点で70点を出発点にし、枠数と応募数から上下させてください。70点は、5軸すべてで素点3〜4がついている状態にあたり、「大きな欠点がなく、複数の軸で平均を上回っている」候補が通る水準です。85点以上は優先的に確保したい候補、55点未満は今回の案件には合わない候補という区切りになります。

枠数から逆算した合格ラインの引き方

状況合格ラインの扱い取るべき行動
70点以上が枠数の1.5倍以上ラインを75点に引き上げます上位から順に打診し、辞退に備えます
70点以上が枠数と同数程度70点のまま運用します全員に打診し、補欠を並行して確保します
70点以上が枠数の半分程度ラインは維持します合格者だけ先に確定し、追加募集をかけます
70点以上がほとんどいないラインを下げません募集条件と告知先を見直して再募集します

枠が埋まらないときにラインを下げたくなりますが、そこで下げた分は投稿の質として返ってきます。枠数を埋めること自体が目的化していないかを、一度立ち止まって確認してください。予算と枠数は、母集団の質に合わせて調整できる変数です。

補欠リストの作り方と連絡のタイミング

合格ラインを超えた候補のうち、枠に入らなかった人は補欠として記録してください。インフルエンサー案件では、打診しても日程が合わない、条件が折り合わないといった理由で1割から3割が辞退します。補欠がない状態で辞退が出ると、選考をやり直すことになり、施策全体が後ろ倒しになります。

補欠への連絡は、正式合格者の承諾が取れてから行うのが原則です。ただし、結果を長く待たせると他案件に流れてしまいますので、選考結果の通知予定日を最初に伝えておいてください。打診時の文面の作り方はインフルエンサーへの依頼文面の書き方とテンプレート例文を参考にすると、承諾率を落とさずに待ってもらいやすくなります。

母集団が足りないときの打ち手

ラインを超える候補が集まらない原因は、報酬水準・案件内容の魅力・告知の届き方の3つのどれかにあります。報酬が相場を下回っていれば応募数そのものが伸びませんし、報酬が十分でも案件内容が伝わっていなければ、条件だけを見た人が集まって質が下がります。どこに原因があるかは、応募数と合格率の組み合わせで切り分けられます。

応募数と合格率で原因を切り分ける

応募数が少なく合格率が高い場合は、告知が届いていないことが原因ですので、募集をかける場所を増やしてください。応募数が多く合格率が低い場合は、案件内容や求める人物像の伝え方に問題がありますので、募集要項に具体的な条件を書き足してください。応募数も合格率も低い場合は、報酬水準か商材の訴求そのものを見直す必要があります。候補の集め方を広げる手段はインフルエンサーの探し方6手段と候補リストの作り方で整理しています。

評価表をスプレッドシートに落とす手順

評価表はスプレッドシート1枚で運用できます。専用ツールを導入しなくても、列構成と入力ルールを決めておけば、複数人での同時採点も並べ替えも問題なく回せます。ここでは、そのまま使える列構成を示します。

列構成と入力ルール

内容入力ルール
A〜Cアカウント名・URL・フォロワー数応募フォームから自動で流し込みます
D足切り判定「通過」「不通過」のプルダウンで選びます
E足切りの理由不通過の場合のみ1行で記入します
F〜J5軸の素点0〜5の整数のみ入力できるよう制限します
K合計点素点×配点の重みを計算する数式を入れます
L〜P各軸のコメント15文字程度で採点理由を書きます
Q採点者名複数人運用ではプルダウンで選びます
R判定「合格」「補欠」「不合格」「保留」から選びます
S連絡日結果を通知した日付を記録します

素点の入力を0〜5に制限しておくと、誤入力による合計点の異常を防げます。合計点の列は数式で自動計算し、直接編集できないよう保護しておいてください。複数人で採点する場合は、同じ構成のシートを採点者ごとに分けて作り、集計シートで突き合わせる方式が扱いやすくなります。

選考結果の連絡と再応募の扱い

不合格の連絡では、落選理由を細かく伝える必要はありません。「今回の案件の方向性と合わなかった」という趣旨で簡潔に伝えるのが一般的です。理由を詳しく書くと反論を招くことがありますし、採点内容は社内の判断材料ですので、そのまま開示するものではありません。

一方で、次回以降の案件で声をかけたい候補には、その旨を一文添えておくと関係が続きます。今回の商材に合わなかっただけで、別の商材では上位に来る候補が必ず出てきます。不合格者のうち65点以上だった人は別リストに保存しておき、次の案件の告知時に個別に案内すると、母集団の質が回を追うごとに上がっていきます。

施策後に評価表を更新するサイクル

施策が終わったら、合計点と実際の成果を突き合わせてください。高得点だった人の投稿が伸びなかった場合、その軸の配点が高すぎるか、採点基準が実態と合っていない可能性があります。逆に、ぎりぎりで通した候補が突出した成果を出したなら、見落としている評価軸があるということです。

更新のタイミングは、案件ごとではなく3案件から5案件をまとめて振り返るのが現実的です。1案件だけでは偶然の影響が大きく、配点を動かす根拠になりません。複数案件を横断して見ると、自社の商材で本当に効く軸が浮かび上がってきます。案件を並行して回す場合の記録の残し方はインフルエンサー20人を同時に動かす進行管理と抜け漏れ対策を参考にしてください。

評価表の運用でつまずきやすい3つの点

評価表がうまく機能しなくなる原因は、配点の偏り・項目の多すぎ・データ取得のコストの3つに集約されます。いずれも設計段階で防げるものですので、シートを作る前に確認しておいてください。運用が始まってから直すと、途中で基準が変わって比較ができなくなります。

フォロワー数を配点に入れる誤り

もっとも多いつまずきが、フォロワー数を評価軸のひとつとして配点に入れてしまうことです。フォロワー数が多い候補が自動的に高得点になり、結果として従来どおりの選び方に戻ります。フォロワー数は、リーチの見込みを計算し、報酬額を算定するための前提条件として別枠で扱ってください。

同じ理由で、報酬額の安さを加点項目にすることもおすすめしません。安さは予算配分の話であり、その候補が成果を出せるかどうかとは別の軸です。どうしても費用対効果を選考に反映したい場合は、合計点を報酬額で割った「1点あたりの単価」を参考値として別の列に出し、同点の候補が並んだときの判断材料に使う程度にとどめてください。

項目が多すぎて採点が終わらない状態

評価軸を細かくすればするほど正確になると考えて、15項目、20項目と増やしてしまうケースがあります。しかし項目が増えるほど1人あたりの採点時間が伸び、途中から集中力が落ちて後半の採点が雑になります。結果として、項目が少ない評価表よりも精度が下がることさえあります。

目安として、5軸・各0〜5点の構成で1人3分に収まるかを試してください。3分を超えるようであれば、確認に時間がかかっている項目を特定し、応募フォームで事前に集める情報に振り替えられないかを検討します。選考の速さは、シートの精緻さではなく、情報の集め方で決まります。

プラットフォームの審査で代替できる範囲

評価表の負担は、応募が集まる前の段階でどこまで質が担保されているかによって大きく変わります。誰でも登録できる状態から集めた応募では、足切りの段階で半分近くが落ちることも珍しくありません。登録時に審査があるプラットフォームを使えば、足切りに該当する候補が入口で減りますので、評価表は上位の順位づけに集中できます。

ただし、プラットフォーム側の審査が代替できるのは、明らかな不正や実態のないアカウントの排除までです。自社の商材との属性一致やブランド適合は、その企業にしか判断できませんので、評価表は必ず自社で持ってください。ツールで数値を取得し、判断は自社の基準で行うという役割分担が現実的です。数値取得に使えるツールの比較はインフルエンサー分析・選定ツールの比較と選び方にまとめています。

採用したあとの指示出しまで含めて設計しておくと、選考で見た良さが投稿に反映されやすくなります。依頼書の作り方はインフルエンサーディレクションの進め方と指示書で解説していますので、合格者を確定させたら次の工程として準備を進めてください。

本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。