駅や電車の中で見る交通広告と、SNSで発信者に紹介してもらうインフルエンサー施策。どちらも「まだ知らない人に知ってもらう」ための手段ですが、届く相手も、接触の回数も、費用のかかり方も大きく異なります。本記事では、交通広告とインフルエンサー施策を、接触特性、費用相場、地域商圏との相性、費用対効果の測り方、リードタイムの5つの観点で比較します。さらに2026年10月時点の公開データをもとに、月100万円から1,000万円までの予算規模別の配分例と、両者を連動させる設計までを整理します。広告予算の配分を決める経営者やマーケティング担当者が、社内で説明できる判断材料を持ち帰れる内容です。

この記事の要点

  • 交通広告は「同じ人に、同じ場所で、何度も見せる」媒体で、インフルエンサー施策は「関心のある人に、信頼している個人の言葉で届ける」施策です。役割が違うため、優劣ではなく分担で考えます。
  • 電通「2025年 日本の広告費」(2026年3月5日発表)によると、2025年の交通広告費は1,736億円(前年比108.6%)で、駅の大型デジタルサイネージや車内ビジョンを中心に伸びています。
  • 交通広告は沿線や駅周辺という地域商圏に強く、反復接触で想起を作れます。インフルエンサー施策はクリック導線と体験談で検討から購入までを埋めます。
  • 費用対効果を比べるときは、CPMの分母、認知率の上がり幅、指名検索の増分という3つの物差しを揃えてから並べます。
  • 月100万円規模なら交通広告は駅や路線を絞った短期掲出に留め、インフルエンサー施策を厚くする配分が現実的です。交通広告を軸にするのは、掲出を数週間以上続けられる予算が確保できてからです。

交通広告(OOH)の基礎と接触特性

交通広告は、移動中の人に繰り返し接触できる点で他の媒体と性格がはっきり異なる広告です。インフルエンサー施策と比較する前に、交通広告がどのような媒体で、どのような接触を生むのかを整理しておきます。

交通広告とは、電車の車内や駅構内、バス、タクシー、空港などの交通機関とその施設に掲出する広告の総称です。看板や屋外ビジョンなどの屋外広告と合わせて、家の外で接触する広告という意味でOOH(Out of Home)広告と呼ばれます。本記事では、OOHのうち特に駅や車内などの交通メディアを対象に、インフルエンサー施策との比較と予算配分の考え方をまとめます。

交通広告の主な媒体と特徴

交通広告は掲出場所ごとに媒体が細かく分かれており、それぞれ接触する人の数と滞在時間が異なります。代表的な媒体を一覧にすると次のとおりです。

媒体掲出場所接触の特徴向いている目的
中吊り広告電車の車内天井付近乗車中に数分間視界に入る新商品・キャンペーンの短期告知
窓上・ドア横ステッカー電車の車内側面同じ車両で毎日目に入る沿線住民への継続的な想起
車内ビジョンドア上のデジタル画面動画で15秒前後の訴求映像で伝えたい商材の認知
駅貼りポスター駅構内の通路・ホーム通過時に短時間接触駅周辺商圏への告知
駅デジタルサイネージ改札付近・コンコース大画面で多くの通行者に接触話題化・ブランド認知
バス車体・バス停広告路線バス・停留所生活道路で反復接触地域密着型の店舗・サービス
タクシー広告後部座席のタブレット乗車中に動画を視聴経営者・ビジネス層向けのBtoB商材

交通広告の接触特性は「反復」「受動」「場所」

交通広告の接触は、反復性、受動性、場所との結びつきという3つの特性で説明できます。通勤や通学の経路は毎日ほぼ同じため、同じ人が同じ広告に1日2回、週に10回といった頻度で接触します。広告を探しに行くのではなく移動中に自然と目に入る受動的な接触であり、広告を避けにくい点も特徴です。さらに、駅名や路線と結びついて記憶されるため、「あの駅の近くにある店」「あの路線で見たサービス」という形で地域と紐づいた想起が残ります。

一方で、受動的な接触であるがゆえに、見た人がその場で行動を起こすことは多くありません。スマートフォンのようにタップして商品ページへ移動する導線がないため、見た後に自分で検索する、店舗の前を通ったときに思い出すといった、時間差のある行動に期待する媒体だと理解しておく必要があります。

市場規模から見た交通広告の現在地

交通広告の市場は、人の移動が回復したことで再び拡大しています。電通が2026年3月5日に公表した「2025年 日本の広告費」によると、2025年の交通広告費は1,736億円で前年比108.6%、屋外広告費は3,042億円で前年比105.3%でした。同資料では、鉄道の車内ビジョンや中づり、ステッカーなどの車両内媒体が前年を上回り、駅媒体では大型デジタルサイネージへの出稿需要が引き続き高いと説明されています。タクシー広告もBtoB企業の出稿増加で大幅に伸びたとされています。

総広告費8兆623億円のうちインターネット広告費が過半数を占める中でも、交通広告が伸びているという事実は重要です。デジタル広告が増えるほど、スマートフォンの外で接触できる媒体の価値が相対的に見直されていると読むことができます。

インフルエンサー施策とのリーチ・接触文脈の違い

交通広告とインフルエンサー施策の最大の違いは、届く人数ではなく、どのような状態の人にどのような文脈で届くかにあります。同じ1回の接触でも、受け手の心理状態と次の行動のしやすさがまったく異なります。

移動中の受動接触と、フィードでの能動接触

交通広告の受け手は、目的地へ向かう途中にたまたま広告を目にしています。関心の有無を問わず届くため、まだ商品カテゴリに興味を持っていない層にも接触できる点が強みです。これに対してインフルエンサー施策の受け手は、自分が選んでフォローしている発信者の投稿を、自分の意思で見ています。商品ジャンルへの関心があらかじめ高い層に届くため、接触人数は少なくても検討に進む確率が高くなります。

企業の声として届くか、第三者の体験として届くか

交通広告は、企業が自らの言葉で発信するメッセージとして受け取られます。表現は企業が完全にコントロールでき、ブランドの世界観を正確に伝えられる一方、受け手からは宣伝として認識されます。インフルエンサー施策では、発信者が実際に使った感想として届くため、使用感や生活の中での使われ方が伝わりやすくなります。ただし2023年10月1日に施行された景品表示法のステルスマーケティング規制により、広告であることの明示が必要です。PR表記をしたうえでも、信頼する個人の体験談として受け止められる点が強みになります。

行動までの距離とクリック導線

行動までの距離では、インフルエンサー施策がはっきり有利です。投稿にはリンクやクーポンコード、プロフィールからの導線を設置でき、関心を持った人をその場で商品ページや予約ページへ送れます。交通広告では、QRコードを掲出しても移動中に読み取る人は限られ、多くの場合は後から検索する行動に頼ることになります。

比較軸交通広告インフルエンサー施策優位な側
接触の起こり方移動中に受動的に目に入るフォロー中の発信を能動的に見る目的による
届く相手関心の有無を問わず沿線・駅の利用者ジャンルに関心がある層目的による
接触頻度同じ人に毎日反復して接触投稿ごとに1回が基本交通広告
メッセージの主体企業(表現を完全に管理できる)発信者個人(体験談として届く)目的による
行動導線検索や来店など時間差の行動リンク・クーポンで即時に移動インフルエンサー
地域の絞り込み路線・駅単位で物理的に絞れる発信者の居住地やフォロワー属性で絞る交通広告
効果測定推計値や間接指標が中心投稿ごとの反応を個別に取得インフルエンサー

この表から分かるとおり、交通広告は接触頻度と地域の絞り込みで、インフルエンサー施策は行動導線と測定のしやすさで優位に立ちます。どちらか一方がすべての面で勝つ構図ではないため、自社の課題がどの軸にあるかで配分を決めることになります。

交通広告の費用相場とインフルエンサー起用の費用感

交通広告の費用は、媒体と路線、掲出期間で大きく変わり、首都圏の主要路線で中吊りを1週間出すと数百万円規模になります。インフルエンサー起用は1人あたり数万円から始められるため、最初に必要な金額の桁が違います。

交通広告の料金例

交通広告の料金は鉄道会社や媒体社が媒体ごとに定めています。料金比較サイト「アイミツ」が掲載している料金例(記事更新日2025年1月8日、2026年10月時点で確認)をもとに、代表的な媒体の水準を整理すると次のとおりです。いずれも税抜の掲出料の例で、制作費や代理店手数料は含みません。実際の料金は時期や条件で変わるため、出稿前には必ず媒体社から見積もりを取ってください。

媒体・路線掲出期間掲出料の例(税抜)
中吊り広告 JR東日本 山手線7日間430万円
中吊り広告 JR東日本 中央線7日間265万円
中吊り広告 東京メトロ 東西線2〜3日65万円
中吊り広告 東急 田園都市線平日2日間50万円
中吊り広告 西武 池袋線2日間36万円
駅貼りポスター 等級A(B0サイズ)7日間7万6,000円/枚
駅貼りポスター 等級C(B0サイズ)7日間3万6,000円/枚

駅貼りポスターは1枚単位で見ると安く見えますが、実際には複数駅・複数枚をセットで掲出することが多く、総額は数十万円から百万円台になるのが一般的です。駅の大型サイネージやジャック広告になると、数百万円以上の予算が必要になります。加えて、ポスターの制作費や印刷費として数十万円程度を見込んでおく必要があります。

インフルエンサー起用の費用感

インフルエンサー起用の費用は、フォロワー単価2〜4円が一つの目安です。フォロワー1万人のマイクロ層であれば1投稿あたり数万円、フォロワー1,000〜1万人のナノ層であれば商品提供と数千円から数万円の謝礼で依頼できるケースもあります。投稿の撮影や編集は発信者が担うことが多いため、交通広告のように制作費が別途かかる構造にはなりにくい点も特徴です。フォロワー規模別の詳しい費用はインフルエンサー起用の料金相場ガイドにまとめています。

最初の一手に必要な金額の差

最初の一手に必要な金額を比べると、両者の違いはさらに明確になります。交通広告で効果を検証できる最低限の規模は、路線を絞った短期掲出でも数十万円から、主要路線では数百万円です。インフルエンサー施策は10万〜30万円規模でもナノ・マイクロ層を5〜10人起用でき、どの訴求が反応を得られるかを検証できます。予算が限られる企業ほど、検証のための少額出稿ができるかどうかが重要な判断材料になります。

料金表の金額は「掲出料」だけです

交通広告の料金表に載っている金額は、多くの場合が掲出料のみです。実際の総額には、ポスターやデジタル素材の制作費、印刷費、代理店手数料、媒体社の掲出審査にかかる時間的コストが加わります。インフルエンサー施策と比較するときは、両者とも「企画から掲出・投稿までにかかる総額」で並べると判断を誤りません。

地域商圏×反復接触の相性

交通広告が最も力を発揮するのは、商圏が特定の沿線や駅周辺に限られている場合です。路線や駅を選ぶことで、物理的に商圏内の人だけに繰り返し接触できるため、店舗型ビジネスとの相性が非常に良い媒体です。

沿線商圏と交通広告の相性

交通広告は、沿線に住む人や駅を毎日使う人に対して、毎日同じ場所で接触を重ねられます。たとえば駅前のクリニックや学習塾、不動産会社、飲食店であれば、最寄り駅とその前後の数駅に絞った駅貼りポスターや、沿線を走る車両のステッカーが有効です。来店してほしい人の生活動線そのものに広告を置けるため、エリア外への無駄な配信が発生しにくくなります。

反復接触は、すぐに必要ではない商材でも効果を発揮します。歯科医院や引っ越し、習い事のように「必要になったときに思い出してもらう」ことが重要な業種では、日々の接触で名前と場所を記憶に残しておくことが、需要が発生したときの選ばれやすさにつながります。

ローカルインフルエンサーとの重ね方

インフルエンサー施策でも地域を絞ることは可能ですが、絞り方の性質が異なります。地元在住の発信者や、地域のグルメ・子育て情報を発信するローカルアカウントを起用すれば、フォロワーの多くが同じ商圏に住んでいる状態を作れます。ただしフォロワーの居住地は完全には一致しないため、商圏外への到達がある程度含まれる前提で考える必要があります。地方の店舗集客での発信者の選び方はローカルインフルエンサーで店舗集客を設計する方法で詳しく解説しています。

交通広告で駅周辺の認知を作り、ローカルインフルエンサーの投稿で実際の店内の様子や体験を伝えるという組み合わせは、地域ビジネスの定番になりつつあります。駅で名前を見た人が、SNSで店舗名を検索したときに体験談が見つかる状態を作ることで、来店への最後の一押しになります。

全国展開の商材では役割が変わる

全国で販売する商材の場合、交通広告の役割は「話題の起点づくり」に変わります。渋谷や新宿、梅田などの主要ターミナル駅で大型ボードやデジタルサイネージを展開し、その様子がSNSで写真付きで拡散されることを狙う使い方です。この場合、交通広告は全国の人に直接届くわけではなく、SNSでの二次拡散を通じて到達を広げることになります。そのため、全国商材では交通広告単体の到達よりも、インフルエンサー投稿や話題化と連動させた総合的な設計の巧拙が成果を左右します。

商圏のタイプ交通広告の役割インフルエンサー施策の役割推奨される比重
駅前・沿線の単店舗最寄り駅での反復接触と場所の記憶店内体験や口コミの可視化交通広告をやや厚く
都市圏の多店舗チェーン主要路線での面的な認知店舗ごとの来店理由づくり均等に近い配分
全国ECの商材ターミナル駅での話題化の起点購入導線と体験談の量産インフルエンサーを厚く
BtoBサービスタクシーやビジネス街の駅での認知専門家・経営者層の発信者による解説目的により判断

費用対効果を揃えて比較する指標(CPM・認知・検索)

交通広告とインフルエンサー施策の費用対効果は、CPM、認知率の変化、指名検索の増分という3つの物差しを揃えたときに初めて比較できます。媒体ごとに報告される数字の定義が違うため、そのまま並べると判断を誤ります。

CPMは分母の定義を揃えて計算する

CPMは1,000回接触あたりの費用で、媒体をまたいだ比較に最も使われる指標です。交通広告では、媒体社が提示する想定接触数や駅の乗降客数をもとに計算するのが一般的です。計算例として、掲出料430万円の枠で媒体社の想定する延べ接触数が5,000万回であれば、CPMは86円になります。インフルエンサー投稿の場合は表示回数を分母にし、Bloom編集部の整理では表示ベースのCPMは2,000〜8,000円程度に収まることが多くなっています。

数字だけを見ると交通広告が圧倒的に安く見えますが、この比較には注意が必要です。交通広告の接触数は「広告の前を通った人」の推計であり、実際に広告を見たかどうかまでは分かりません。インフルエンサー投稿の表示回数は、少なくとも画面上に投稿が表示された回数です。接触の濃さが違う指標をそのまま比較せず、注視率や視認率の調査がある場合はそれを掛け合わせて「実際に見た人数」に近づけてから比較してください。

認知率とブランドリフトで比べる

認知を目的とする場合は、施策前後の認知率の変化で比較するのが最も確実です。対象エリアや対象年齢でアンケートを取り、施策前と施策後で「知っている」と答えた人の割合がどれだけ上がったかを測ります。交通広告では掲出エリアの住民と非掲出エリアの住民を比べる方法、インフルエンサー施策では投稿に接触した人と接触していない人を比べる方法がよく使われます。調査の設計方法はブランドリフト調査とアンケート設計の記事で詳しく解説しています。

指名検索の増分で比べる

交通広告とインフルエンサー施策の両方に共通して使いやすい指標が、指名検索の増分です。交通広告を見た人の多くは後から商品名や店名で検索するため、掲出期間中の指名検索の増え方は交通広告の効果を測る重要な手がかりになります。インフルエンサー施策でも、投稿を見た人がリンクを踏まずに検索するケースが多いため、指名検索は投稿の影響を補足する指標になります。指名検索の取り方と増分の出し方はインフルエンサー施策の指名検索を測る方法にまとめています。

指標交通広告での取り方インフルエンサー施策での取り方比較時の注意点
CPM掲出料÷想定接触数×1,000起用費÷表示回数×1,000接触の定義が異なるため注視率で補正する
認知率の変化掲出エリアと非掲出エリアの比較接触者と非接触者の比較同じ設問・同じ対象年齢で測る
指名検索の増分掲出期間と前後の期間の比較投稿日前後の比較同時期の他施策の影響を切り分ける
来店・購入専用クーポンや来店アンケート専用コードやリンク計測交通広告は直接計測が難しい前提で見る

同時期に出稿すると効果が混ざります

交通広告とインフルエンサー施策を同じ週に開始すると、指名検索の増分がどちらによるものか切り分けられなくなります。効果を比較したい段階では、開始時期を2週間程度ずらすか、交通広告の掲出エリアとインフルエンサー施策の対象エリアを分けて設計してください。

出稿までのリードタイムと表現上の制約

企画から露出までの期間は、交通広告が1〜3か月、インフルエンサー施策が3〜6週間が目安です。交通広告は人気の枠ほど早く埋まり、掲出前の審査もあるため、季節商材では早めの枠確保が欠かせません。

交通広告には媒体社の掲出審査がある

交通広告は、鉄道会社などの媒体社が定める広告掲出基準に沿った審査を通過しなければ掲出できません。公共の空間に掲出されるため、表現の過激さや比較広告、医療や健康に関する効能表現などは厳しく確認されます。審査で差し戻しが入ると修正と再提出が必要になり、掲出日に間に合わないリスクも生じます。人気の路線や繁忙期の枠は数か月前から予約が埋まることもあるため、枠の確保と審査の期間を逆算してスケジュールを組む必要があります。

インフルエンサー施策はPR表記と投稿確認が要点

インフルエンサー施策では、媒体社の審査はない代わりに、広告であることを明示するPR表記と、投稿内容の事前確認が必要です。景品表示法のステルスマーケティング規制や薬機法に抵触しないよう、投稿案を企業側で確認してから公開する運用が一般的です。発信者の選定から投稿までは、打診と契約に1〜2週間、商品の発送と撮影に1〜2週間、投稿案の確認に数日を見込みます。

掲出後に表現を変えられるかどうか

掲出後の柔軟性にも大きな差があります。紙の交通広告は一度掲出すると期間中の差し替えができず、反応が悪くても期間終了まで同じ表現が掲出され続けます。デジタルサイネージであれば素材の差し替えは可能ですが、再度の審査が必要になる場合があります。インフルエンサー施策では、最初の数人の投稿の反応を見てから、後続の発信者への依頼内容を調整できます。反応を見ながら訴求を磨きたい段階では、この柔軟性が大きな価値になります。

工程交通広告インフルエンサー施策
企画・媒体選定2〜4週間1〜2週間
枠確保・発信者選定人気枠は数か月前から予約打診から契約まで1〜2週間
制作デザイン・印刷で2〜4週間発信者が撮影・編集し1〜2週間
審査・確認媒体社の掲出審査投稿案の事前確認で数日
掲出後の修正紙媒体は期間中の差し替え不可後続の投稿から調整可能

併用時の予算配分シミュレーション

交通広告とインフルエンサー施策の予算配分は、月間の予算規模と目的によって適正な比率が変わります。ここでは月100万円、月300万円、月1,000万円の3つの予算規模で、地域型の店舗ビジネスを想定した配分の例を示します。

配分の考え方の根拠として参考になるのが、ジェイアール東日本企画と野村総合研究所が2025年10月29日に発表した共同研究です。関東圏でテレビ・デジタル・OOHの最適な予算配分を検証したもので、KPIが購入意向の場合は予算1.5億円までは「デジタル×OOH」の組み合わせが適正とされました。小規模の予算では、一定のリーチを確保しながら接触頻度を高めやすいデジタルとOOHへの配分が適正で、特に1日2回接触する交通メディアが有効だと考察されています。この結果は、交通広告とSNS施策の組み合わせが中小規模の予算でも合理的であることを裏付けています。

月100万円の場合の配分例

月100万円の予算では、インフルエンサー施策を中心に置き、交通広告は最寄り駅に絞った小規模な掲出に留めるのが現実的です。主要路線の中吊りは1週間でこの予算を超えるため選択肢から外れます。駅貼りポスターを最寄り駅とその周辺駅に数枚掲出し、残りの予算でローカルインフルエンサーを10人前後起用する配分が考えられます。

月300万円の場合の配分例

月300万円になると、交通広告とインフルエンサー施策をほぼ同じ比重で組み合わせる選択肢が生まれます。私鉄の路線を選んだ短期間の中吊りや、沿線の複数駅への駅貼りポスターに予算の4割程度を使い、残りでインフルエンサーを20〜30人起用します。交通広告の掲出期間の前後に投稿を集中させることで、駅で見た名前をSNSで検索したときに体験談が見つかる状態を作れます。

月1,000万円の場合の配分例

月1,000万円規模になると、主要路線の中吊りや駅の大型サイネージを使った面的な展開が可能になります。この段階では交通広告に予算の半分以上を配分し、インフルエンサー施策は話題化と購入導線の役割に集中させます。交通広告の掲出風景をインフルエンサーに撮影してもらう企画など、両者を連動させた設計で相乗効果を狙えます。

月間予算交通広告インフルエンサー施策主な使い方
100万円20万〜30万円(2〜3割)70万〜80万円(7〜8割)最寄り駅の駅貼り+ローカル発信者10人前後
300万円100万〜150万円(3〜5割)150万〜200万円(5〜7割)私鉄路線の短期中吊り+発信者20〜30人
1,000万円500万〜700万円(5〜7割)300万〜500万円(3〜5割)主要路線の中吊り・大型サイネージ+話題化

上の表はBloom編集部による配分の例であり、商材や商圏、競合状況によって適正な比率は変わります。最初の1〜2か月は配分を固定せず、指名検索や来店数の反応を見ながら比率を調整していくことをおすすめします。年間を通じた予算の組み立て方はインフルエンサー施策の年間予算計画の記事も参考にしてください。

交通広告とインフルエンサー施策を連動させる設計

交通広告とインフルエンサー施策を併用する場合は、それぞれを別々に出稿するのではなく、時期とメッセージを連動させることで効果が大きくなります。具体的には、投稿のタイミング、掲出物の話題化、素材の相互活用の3点を設計します。

掲出の前後に投稿を集中させる

投稿は交通広告の掲出開始の1〜2週間前から積み上げておくのが基本です。駅や車内で広告を見た人が商品名を検索したときに、SNS上に体験談や使用シーンが並んでいる状態を作っておくことで、検索から購入への転換率が高まります。掲出期間中にも追加の投稿を重ねれば、交通広告で生まれた関心をSNS上で受け止め続けられます。

掲出物そのものを投稿の題材にする

駅の大型ボードやジャック広告など、目を引く掲出物はそれ自体がSNSの投稿題材になります。インフルエンサーに掲出場所を訪れて撮影してもらえば、交通広告の到達を沿線の外まで広げられます。実際に電通の「2025年 日本の広告費」でも、繁華街の大型ボードを中心に、SNSでの拡散を意識したインパクトのある屋外広告の展開が数多く見られたと報告されています。撮影してもらう場合は、駅構内での撮影ルールを事前に媒体社や施設に確認しておく必要があります。

インフルエンサーの素材を交通広告に活用する

逆方向の連動として、インフルエンサーが制作した写真や動画を、二次利用の許諾を得たうえで交通広告の素材に使う方法もあります。実際に反応の良かった投稿の素材を駅のデジタルサイネージや車内ビジョンに使えば、検証済みの訴求で交通広告を出稿できるため、失敗のリスクを下げられます。ただし交通広告への転用は、発信者との契約で使用媒体と期間を明確にしておくことが前提です。

検索の受け皿を先に用意する

交通広告にはタップして移動する導線がないため、広告を見た人の行動はほぼ検索経由になります。掲出前に、商品名や店名で検索したときに表示されるWebサイト、SNSアカウント、インフルエンサーの体験談がそろっているかを確認してください。受け皿がない状態で交通広告を出すと、生まれた関心が競合や比較サイトに流れてしまいます。

配分を決める前に確認したいチェックリスト

交通広告とインフルエンサー施策の配分は、商圏、予算、目的、測定方法、スケジュールの5つが決まれば、おおむね判断できます。逆にこれらが曖昧なまま配分を決めると、結果が出なかったときに原因を特定できません。

配分判断の前に確認する5項目

  • 商圏の広さ:来てほしい人が特定の沿線や駅周辺に集中しているなら交通広告の比重を上げ、全国に散らばっているならインフルエンサー施策の比重を上げます。
  • 月間予算の絶対額:主要路線の中吊りを1週間出せる予算があるかどうかで、交通広告を軸にできるかが決まります。
  • 目的の優先順位:地域での想起を作りたいのか、すぐに購入や予約を増やしたいのかを明確にします。
  • 測定方法の準備:指名検索、認知率、来店数のうち、何を共通の物差しにするかを事前に決めます。
  • 掲出時期の確定度:発売日や開店日が動く可能性がある場合は、枠を早期に押さえる必要のない施策から始めます。

迷ったら小さく検証できる側から始める

配分に迷っている段階であれば、少額から始められて反応を見ながら調整できるインフルエンサー施策で訴求を検証し、その結果を交通広告の表現に生かす順番が合理的です。反応の良かった訴求や素材が分かってから交通広告に投資すれば、掲出後に差し替えができないという交通広告の弱点を補えます。マス広告との比較の考え方はTVCMとインフルエンサー起用の比較記事、デジタル広告との使い分けはSNS広告とインフルエンサー施策の使い分け比較も併せて参考にしてください。

交通広告が向いている企業と向いていない企業

交通広告が向いているのは、商圏が沿線や駅周辺に限られる店舗ビジネス、月間で数百万円以上の広告予算を確保できる企業、そして必要になったときに思い出してもらうことが重要な業種です。一方、商圏が全国に広がるEC商材や、月間の広告予算が100万円を下回る企業、すぐに効果を測りながら改善したい企業は、インフルエンサー施策を中心に据えたほうが投資を回収しやすくなります。自社がどちらに当てはまるかを確認したうえで、交通広告とインフルエンサー施策の役割分担を決めてください。

本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。