インフルエンサー施策を任せる会社を3社まで絞ったものの、提案書の見た目と担当者の印象で決めそうになっている、という相談は少なくありません。検索して出てくる「おすすめ40社」のような比較記事をいくら読んでも、自社にとっての順位は出てきません。この記事では、発注先そのものを紹介するのではなく、候補を横並びで採点するための評価シートの作り方に絞って解説します。候補を集める前に決めておく失格条件、評価項目12個の選び方と定義の書き方、目的別の重み配分、5段階スコアの言語化、3社ぶんの記入例と加重合計の計算、複数人で採点するときの運用ルール、稟議への載せ方と発注後の再採点までを、そのまま自社のスプレッドシートに写せる形で整理しました。なお金額や料率の目安は、いずれも2026年9月時点で公開されている一般的な情報にもとづく整理です。

この記事の要点

  • 評価シートは候補を見てから作ると、印象の後付けになります。候補を集める前に、項目と配点を固定するのが原則です。
  • 構造は「失格条件で落とす」→「12項目を加重採点する」→「点差を解釈する」の3層です。点数だけで自動的に決めるものではありません。
  • 重みは合計100点で配り、1項目あたりの上限を15点にします。費用に関する項目の合計は20〜30点が実務の落としどころです。
  • スコアは5段階にし、各点数の状態を文章で定義します。証拠が確認できていない項目は3点を上限にして、期待値で加点しないようにします。
  • 総合点の差が5点以内なら実質的に横並びです。その場合は総額の絶対値と、社内に企画を作れる人がいるかどうかで決めた方が施策は前に進みます。

インフルエンサーの発注先比較に評価シートが必要になる理由

発注先の評価シートとは、インフルエンサー施策を任せる候補企業を、あらかじめ決めた評価項目と配点にもとづいて同じ基準で採点し、点数とその根拠を1枚にまとめた比較表です。必要になる理由は単純で、提案を聞いた順番と担当者の印象によって結論が動いてしまうからです。3社の提案を1週間かけて聞くと、最後に会った会社の印象が最も濃く残ります。人の記憶は等しく残らないという前提に立ち、聞いた直後にその場で点数と根拠を書き残す仕組みが評価シートです。

提案の印象で決めると社内で説明できなくなります

印象で決めた選定は、決裁の場で崩れます。決裁者から「なぜB社ではなくA社なのか」と質問されたときに、「提案が一番よかったからです」としか答えられないためです。決裁者が知りたいのは、どの観点で何点差がついたのか、その差は今回の目的にとって重要な観点なのか、という2点です。この2点に答えられる資料が手元にあるかどうかで、決裁のスピードは大きく変わります。

もうひとつの問題は、担当者が異動したときに判断の理由が引き継がれないことです。1年後に「この発注先を継続するか」を検討する場面で、当時なぜその会社を選んだのかが残っていないと、比較をゼロからやり直すことになります。評価シートは選定作業のためだけではなく、次の見直しのための記録としても効いてきます。

比較記事の「おすすめ〇〇選」では自社の順位は出ません

発注先を検索すると、40社や47社を並べた比較記事が上位に表示されます。掲載社数の多さは候補を知るうえでは役に立ちますが、そこに書かれている選び方は、対応範囲・インフルエンサーの数と質・料金体系・二次利用の可否といった3〜4項目にとどまることが多く、自社の事情を反映した順位づけまでは踏み込んでいません。2026年9月時点で確認できる主要な比較記事を見ても、掲載企業の一覧と特徴の紹介が中心で、読者が自社で採点するための配点や採点基準まで提供している例はほとんど見当たりませんでした。

つまり、候補を集めるところまでは外部の記事で足りますが、絞り込みは自社で設計する必要があります。評価シートは、その自社側の設計を担う道具です。プラットフォームとキャスティング会社の構造的な違いについてはキャスティング会社 vs プラットフォーム徹底比較で整理していますので、候補の型を理解する段階ではあわせてご覧ください。

評価シートが特に効く3つの場面

評価シートを作る手間に見合う効果が出るのは、次の3つの場面です。逆にいえば、単発のギフティングを1社に頼むだけといった小さな取引では、ここまでの設計は不要です。

この3つのいずれにも当てはまらない場合は、失格条件のチェックリストだけを使い、加重採点は省略しても構いません。全部を作ることが目的ではなく、判断の質を上げることが目的です。

発注先の評価シートを作る5つのステップ

評価シートは、①候補の型を分類する ②失格条件を決める ③評価項目を12個に絞る ④重みを100点で配分する ⑤5段階の採点基準を言語化する、という5つのステップで作ります。合計の作業時間は3時間半ほどで、慣れれば半日かからずに完成します。一度作れば次回以降は項目定義を流用できますので、最初の1回にきちんと時間をかける価値があります。

5ステップの全体像と所要時間

ステップやることできあがるもの目安時間
1. 型の分類候補を3タイプ+自社運用に振り分ける候補一覧(型つき)30分
2. 失格条件点数以前の最低ラインを8項目決めるノックアウト表30分
3. 項目の絞り込み評価項目を12個に決め、定義文を書く項目定義シート60分
4. 重みの配分合計100点になるよう配点する配点表30分
5. 採点基準5段階それぞれの状態を文章化する採点ルール60分

この順番には意味があります。型の分類を先に済ませておかないと、評価項目が特定の型に有利な内容に偏ります。たとえば「専属ディレクターの有無」を項目に入れてしまうと、その時点でプラットフォーム型の候補は自動的に不利になります。型を先に見渡してから、どの型でも答えられる項目に整えることが大切です。

候補を集める前に作るのが原則です

評価シートは、候補の提案を聞く前に完成させてください。提案を聞いてから項目を決めると、印象の良かった会社の強みがそのまま評価項目になり、シートが結論の後追いになります。実務では、社内で施策の目的と予算枠が固まった時点、つまり候補企業に問い合わせを送る前の段階が作成のタイミングです。

すでに提案を1社聞いてしまった場合でも、そこで手を止めてシートを作る方が結果は良くなります。その際は、聞いた会社の提案書をいったん閉じ、施策の目的から項目を書き出すようにしてください。目の前の提案書を見ながら項目を書くと、必ず引きずられます。

作るのは1人、確認は3人という分担

シートの作成そのものは1人で進めた方が速く進みます。全員で項目を出し合うと、項目数が増えるだけで収束しません。原案を1人で作り、採点に参加する3人で30分だけレビューして確定させる流れが効率的です。レビューで見るのは、項目の抜け漏れではなく、重みが目的と合っているかどうかに絞ってください。

インフルエンサーの発注先3タイプと比較の前提そろえ

インフルエンサーの発注先は、キャスティング会社・広告代理店・マッチングプラットフォームの3タイプに大きく分かれます。このほか、進行管理だけをフリーランスのディレクターに任せる形と、自社で直接インフルエンサーに交渉する形があります。型が違えば費用構造も対応範囲も違いますので、同じ土俵に載せる前に、まずどの型なのかを一覧に書き込んでおきます。

型ごとの対応範囲と費用構造

タイプ主な対応範囲費用構造の特徴向いているケース差が出やすい評価項目
キャスティング会社候補選定・交渉・契約・進行管理報酬+手数料(報酬額の10〜30%程度が目安)候補探索に社内の手を割けない候補の母数と質、進行管理
広告代理店・SNS運用会社企画・キャスティング・制作・広告配信・レポートディレクション費や月額運用費を含む総額型施策全体を1社に任せたい企画提案の質、効果測定レポート
マッチングプラットフォーム候補検索・応募管理・やり取り・支払いの仕組み提供月額利用料または成果連動(10〜20%程度が目安)選定と進行を自社で回せる総額と単価、見積の透明性
フリーランスディレクター進行管理とディレクションのみ人日単価または月額固定企画はあるが手が足りない進行管理、契約条件
自社で直接交渉すべて自社で実施インフルエンサー報酬のみ少人数・小額から試す費用は最良、実行力は最低

表に示した手数料の水準は、2026年9月時点で各社が公開している解説記事から読み取れる一般的なレンジであり、実際の料率は案件規模と対応範囲によって変わります。費目の分解の仕方はインフルエンサー起用の見積書の読み方と費用内訳の確認ポイントに整理していますので、届いた見積書を採点する段階で参照してください。規模別の報酬相場はインフルエンサー起用の料金相場【2026年完全ガイド】にまとめています。

型が違う候補を同じシートで比べる工夫

型の違いを吸収する方法は2つあります。1つ目は、評価項目を「誰がやるか」ではなく「何が担保されるか」で書くことです。「専属ディレクターがつくか」ではなく「投稿前の内容チェックが誰の手で何回行われるか」と書けば、プラットフォーム型の候補も自社で担当者を立てる前提で回答できます。

2つ目は、自社側の負担工数を費用に換算して足すことです。プラットフォーム型は手数料が低い代わりに社内工数が増えますので、月あたり何時間の作業が発生するかを見積もり、社内の時間単価を掛けて総額に加算します。この一手間を入れないと、費用の項目でプラットフォーム型が過大に有利になります。自社運用と外部委託の線引きの考え方は自社運用 vs 代理店委託 メリデメ完全ガイドで詳しく扱っています。

自社運用を「0社目」として必ず並べます

候補一覧には、自社で直接インフルエンサーに依頼する選択肢を必ず1列入れてください。外注する前提だけで比較すると、外注しないという選択肢が最初から消えます。自社運用の列を置くと、「外注に払う金額で何が買えているのか」が点数として見えるようになり、手数料の妥当性を判断しやすくなります。

実際に自社運用を選ぶかどうかは別の問題です。この列の役目は基準線を引くことにあります。候補が2社しかない場合も、この列を足すだけで比較の軸が安定します。

点数をつける前に落とす失格条件の決め方

失格条件とは、点数の高低にかかわらず候補から外す最低ラインのことです。加重採点だけで決めると、致命的な欠点があっても他の項目で点数を稼いだ候補が上位に来てしまいます。法令対応や契約の可否といった論点は、点数で足し引きするものではありませんので、採点の前に通過判定として処理します。実務では8項目前後に収めるのが扱いやすい分量です。

法令とガイドラインへの対応

最初に確認するのは、ステルスマーケティング規制への対応体制です。2023年10月から景品表示法の指定告示によりステマは規制対象になっており、広告であることを明示しない投稿は広告主側の責任として問われます。発注先に確認すべきなのは、PR表記のルールが文書化されているか、投稿前に表記の有無をチェックする工程が組み込まれているか、インフルエンサー側への説明を誰が行うのかの3点です。規制の内容と実務対応はステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドにまとめています。

化粧品・健康食品・医薬部外品などを扱う場合は、薬機法に沿った表現チェックの工程があるかも失格条件に含めてください。表現の可否は商材ごとに変わりますので、発注先が自社商材のカテゴリで確認フローを持っているかを聞きます。商材別の注意点は薬機法とインフルエンサー起用の基本と商材別NG表現・確認フローで解説しています。

契約と支払いの基本条件

契約書を交わさずに進めようとする候補は、金額にかかわらず外してください。特に確認したいのは、インフルエンサーへの報酬を誰が誰に支払うのか、投稿の権利が誰に帰属するのか、投稿後に問題が起きたときの一次対応を誰が担うのかという3点です。この3点が契約書に書けない相手は、トラブル時に必ず揉めます。契約書に入れるべき条項はインフルエンサー契約書の作り方と必須チェック項目に一覧化しています。

失格条件チェックリスト8項目

No確認項目確認する内容確認方法
1ステマ規制への対応PR表記のルールが文書化され、投稿前チェックの工程がある運用マニュアルまたは手順の提示
2商材別の表現チェック薬機法・景表法に沿った確認フローを持っている過去案件での確認体制のヒアリング
3契約書の締結自社雛形または先方雛形での書面締結に応じる雛形の事前開示
4支払い責任の明確さ誰が誰にいつ支払うかが契約上で特定できる契約書ドラフトの支払条項
5会社としての実在性登記情報・所在地・取引実績が確認できる登記情報と取引先の確認
6素材とデータの取扱い商品画像や顧客情報の取扱ルールが定められている秘密保持契約と社内規程の確認
7二次利用条件の事前明示媒体・期間・地域・改変可否を発注前に提示できる見積書または提案書の記載
8実施報告の提出投稿URLと実数値を所定の形式で提出する過去のレポート見本

8項目のうち1つでも「対応できない」という回答が返ってきた場合は、その理由を確認したうえで候補から外すか、条件付きで残すかを決めます。条件付きで残す場合は、いつまでに何が整うのかを書面で受け取ってください。口頭の「対応可能です」だけで通過させると、発注後に工程が存在しないことが判明します。

失格条件を点数に混ぜてはいけない理由

失格条件を加重採点の1項目にすると、法令対応が2点でも他の項目が満点なら総合1位になり得ます。実際にステマ表記の漏れが起きたときに失うのは、施策の成果ではなくブランドの信用です。取り返しがつかない論点は通過判定として扱い、点数の世界に持ち込まないでください。

発注先を比較する評価項目12個の設計

評価項目は12個が実務の上限です。20項目を超えると1社の採点に1時間近くかかるようになり、複数人での採点が現実的に回らなくなります。逆に3〜4項目では候補の型が違うときに差がつかず、結局は印象で決めることになります。候補力・実行力・費用・体制とリスク・実績という5つの大分類に2〜3項目ずつ割り当てると、抜けが出にくい構成になります。

大分類は5つに固定します

大分類を固定しておく利点は、項目を追加したくなったときに「どの分類が薄いのか」で判断できることです。思いついた順に項目を足していくと、候補力の項目ばかり増えて体制やリスクの観点が1つしかない、といった偏りが生まれます。分類ごとの項目数を2〜3に保つルールを先に置いてください。

評価項目12個の一覧

大分類評価項目何を見るか確認手段
候補力1. 候補の母数と質提案できるインフルエンサーの数と、審査や実績確認の仕組み候補リストのサンプル提示
2. 自社ジャンルへの適合度自社商材のカテゴリで実際に起用できる人がいるか実名または匿名の候補5名以上
3. 候補提示のスピードと差し替え余力初回リスト提示までの日数と、断られたときの代替案過去案件のリードタイム
実行力4. 企画と構成の提案の質商材理解にもとづく訴求軸の提案があるか提案書の中身
5. ディレクションと投稿前チェック指示書の粒度と、投稿前に誰が何回チェックするか指示書の見本
6. 進行管理と連絡のレスポンス窓口の一本化、返信の速さ、遅延時の連絡問い合わせ段階の実測
費用7. 総額と単価の水準予算内に収まるか、投稿1本あたりの単価は妥当か見積書
8. 見積内訳の透明性費目に分解され、手数料の計算基数が明記されているか見積書の内訳欄
9. 二次利用と追加費用の条件二次利用の4条件、修正回数、キャンセル料の段階見積書の備考欄と契約書
体制とリスク10. 法令とガイドラインの運用失格条件を満たしたうえで、体制がどこまで厚いか運用マニュアルの内容
11. 契約条件とトラブル時の対応責任範囲の明確さと、炎上や遅延の一次対応契約書ドラフトと過去事例
実績12. 同業種の実績とレポート品質近い業種・規模での実績と、報告書の粒度事例資料とレポート見本

この12項目は、どの型の候補にも答えられる書き方に整えてあります。項目6の連絡レスポンスは、提案を聞く前の問い合わせ段階で実測できる数少ない項目ですので、最初の問い合わせメールを送った時刻と返信が届いた時刻を控えておいてください。発注後の体感に最も直結する項目でありながら、提案書からは絶対に読み取れない情報です。

項目の定義は「何を見て何点にするか」まで書きます

項目名だけを並べたシートは、採点者ごとに解釈が割れます。「候補の母数と質」という項目名から想像する内容は、人によって登録者数のことだったり、実際に動いてくれる人の数だったりします。定義文には、確認する対象物と、判断の分かれ目になる線を書いてください。たとえば「提示された候補リストのうち、自社商材のカテゴリで直近1年に投稿実績がある人が何名いるか」と書けば、採点者が違っても同じ数字を見ることになります。

定義を書く作業は面倒ですが、ここを飛ばすと合議の場で「その項目の意味が違う」という議論に時間を取られます。1項目あたり2行、合計24行の作業ですので、シートを作る60分のうち半分をここに使う配分が適切です。選定そのものの考え方は失敗しないインフルエンサー選定7つのポイントもあわせて参考にしてください。

業種特有の項目は1つだけ足します

医療・金融・食品のように広告規制が強い業種では、13番目として業種特有の項目を1つ足すことを認めてください。ただし足すのは1つまでです。2つ以上足したくなった場合は、既存の12項目のどれかと統合できないかを先に検討します。項目数の上限を守ることが、シートを実際に運用しきるための条件になります。

重み配分の考え方と目的別3パターンの配点

重みは合計100点で配り、1項目あたりの上限を15点にします。上限を設けないと、担当者が重視する項目に30点や40点が集まり、実質1項目で結論が決まるシートになってしまいます。配分の起点になるのは施策の目的です。目的が変われば重みも変わりますので、まず自社の施策がどのパターンに近いかを決めてから配点に入ります。

目的別3パターンの配点表

評価項目認知拡大型EC売上直結型初回テスト型
1. 候補の母数と質1288
2. 自社ジャンルへの適合度121210
3. 候補提示のスピードと差し替え余力6612
4. 企画と構成の提案の質12108
5. ディレクションと投稿前チェック886
6. 進行管理と連絡のレスポンス8812
7. 総額と単価の水準101214
8. 見積内訳の透明性6810
9. 二次利用と追加費用の条件6104
10. 法令とガイドラインの運用886
11. 契約条件とトラブル時の対応666
12. 同業種の実績とレポート品質644
合計100100100

認知拡大が目的の場合は、リーチを取れる候補の数と、話題になる企画を作れるかどうかに点を寄せます。EC売上が目的の場合は、購買につながるジャンル適合度と、投稿を広告に転用するための二次利用条件を厚くします。初回テストの場合は、早く小さく試せることが最優先ですので、スピードと総額に点を集め、実績やレポート品質は軽くしておきます。

費用の重みを上げすぎると起きること

費用に関する項目7・8・9の合計は、20〜30点に収めてください。合計が40点を超えると、実行力が低くても安い候補が総合1位になります。その結果として起きるのは、社内の担当者が本来は発注先がやるはずだった作業を巻き取り、見えないところで人件費を払う状態です。安く発注できたという報告と、担当者の残業が同時に発生している状況は、費用の重みが過大なシートの典型的な副作用です。

反対に、費用の合計が10点を下回るのも実務的ではありません。予算を超える候補が上位に来ると、決裁の場で最初の一言が「高い」になり、点数の議論に入る前に差し戻されます。予算という制約は、点数の外側にある現実として必ず反映させてください。

重みは候補を見る前に決めて動かしません

配点を決める作業は、候補の提案を1社も聞いていない段階で終わらせます。提案を聞いた後に配点を触ると、無意識のうちに好印象の会社が有利になる方向へ動きます。これは意図的な操作ではなく、人の判断の癖として自然に起こります。だからこそ、配点表を確定した時点で日付を入れて保存し、採点中は編集しないという運用ルールを置いてください。

どうしても配点を見直したい事情が出てきた場合は、変更した理由と変更前後の点数の両方を残します。両方を残しておけば、決裁の場で「配点を変えたら順位が入れ替わった」という指摘が出ても説明できます。KPIから逆算して重みを決める方法についてはインフルエンサー施策のKPI設計とテンプレートが参考になります。

5段階スコアの基準を言語化する手順

スコアは5段階にし、各点数がどういう状態を指すのかを文章で定義します。数字だけを置いて「感覚で5段階つけてください」と依頼すると、採点者ごとに基準がずれ、点数を足し合わせる意味がなくなります。3段階では差がつかず、10段階では基準を書き分けられませんので、5段階が実務的な落としどころです。

5段階の一般定義

点数状態判断の目安
5期待を明確に上回る資料・実データ・実物のいずれかで裏づけが提示されている
4期待を満たし、一部は上回る裏づけは部分的だが、説明に具体性がある
3標準要求は満たすが、他社と差別化される点はない
2一部が不足自社側の工数や別の手当てでカバーする必要がある
1要求を満たさない対応できない、または質問への回答が得られない

この一般定義を土台に、項目ごとの記述も書き分けておくと精度が上がります。全12項目ぶんを書くのが理想ですが、時間がない場合は点差がつきやすい項目、つまり重みの大きい上位4項目だけでも記述を用意してください。

3点を「標準」に置きます

3点を平均ではなく「要求を満たしている状態」として定義することが重要です。3点を平均の意味で使うと、候補が全体的に弱いときに相対評価となり、要求水準を満たしていない候補に3点がついてしまいます。評価シートは候補同士の順位づけと同時に、そもそも発注してよい水準かどうかの判定も担っています。絶対評価の物差しとして3点を置いてください。

全社の合計点が60点を下回った場合は、候補の集め直しを検討する合図です。順位はついたけれども、どの候補も要求水準に届いていないという状態が数字で見えるのは、絶対評価にしておく最大の利点です。

確認できていない項目は3点を上限にします

証拠が提示されていない項目に4点や5点をつけないというルールを、シートの先頭に明記してください。提案の場で「もちろん対応できます」と言われただけの項目は、確認済みではなく未確認です。未確認は減点ではありませんので、標準の3点として扱い、資料が届いた時点で採点を更新します。この運用にしておくと、資料を出す会社と出さない会社の差が自然に点数へ表れます。

点数「見積内訳の透明性」の記述例
5費目ごとに分解され、手数料の計算基数と二次利用の4条件が明記されている
4主要な費目には分解されているが、一部が「一式」表記のまま残っている
3報酬・手数料・実費の3区分までは分解されている
2総額と数量のみが記載され、内訳は口頭での説明にとどまる
1「一式」表記だけで、分解を依頼しても応じない

このように書き分けておけば、採点者が3人いても同じ見積書には同じ点数がつきます。記述を用意する手間はかかりますが、合議の時間が半分以下になりますので、全体では時間の節約になります。

評価シートのレイアウトと3社の記入例

シートは1行1項目・1列1社の形にし、点数の右に必ず根拠欄を置きます。根拠欄がないシートは、後から見返したときに点数の意味が思い出せません。「4点」とだけ書かれた記録は、1か月後には情報量がゼロになります。「候補リスト20名中、自社カテゴリでの直近投稿実績が12名」と書いてあれば、1年後でも判断を再現できます。

列の構成

スプレッドシートの列は、左から「大分類/評価項目/重み/A社スコア/A社根拠/A社加重点/B社スコア/…」の順に並べます。加重点は「重み×スコア÷5」で計算しますので、全項目で満点を取ったときの合計がちょうど100点になります。スコアの単純合計ではなく加重点の合計を見るという点を、シートの見出しにも書いておいてください。

根拠欄は1項目あたり40字程度で十分です。長文を書こうとすると採点が止まりますので、数字と固有名詞を1つずつ入れることを目安にしてください。提案を聞いた直後、記憶が新しいうちにその場で埋めるのが最も効率的です。

3社の採点例と加重合計

実際の記入例を示します。EC売上直結型の配点を使い、A社をキャスティング会社、B社をSNS運用代理店、C社をマッチングプラットフォームとした場合の採点結果です。加重点は小数第1位まで表示しています。

評価項目重みA社A社加重B社B社加重C社C社加重
1. 候補の母数と質858.034.858.0
2. 自社ジャンルへの適合度1249.637.249.6
3. 提示スピードと差し替え余力633.633.656.0
4. 企画と構成の提案の質10510.048.024.0
5. ディレクションと投稿前チェック858.046.423.2
6. 進行管理と連絡のレスポンス846.434.846.4
7. 総額と単価の水準1224.837.2512.0
8. 見積内訳の透明性834.823.258.0
9. 二次利用と追加費用の条件1048.036.036.0
10. 法令とガイドラインの運用858.046.446.4
11. 契約条件とトラブル時の対応644.844.833.6
12. 同業種の実績とレポート品質443.232.432.4
合計10079.264.875.6

この結果から読み取れることは3つあります。1つ目は、B社が64.8点で他の2社から10点以上離れており、今回の目的では選択肢から外れるということです。2つ目は、A社とC社の差が3.6点しかなく、実質的には横並びだということです。3つ目は、A社とC社の点差の中身が正反対だという点です。A社は企画とディレクションで、C社は費用と透明性で点を稼いでいます。

点差の読み方

総合点の差が5点以内の場合は、点数で優劣をつけないでください。5点は12項目のうち1〜2項目の採点が1段階ずれれば簡単に動く幅であり、採点の誤差の範囲内です。この場合に見るべきなのは、点差の中身がどの分類に集まっているかです。上の例であれば、社内に企画を作れる人がいるならC社、いないならA社という判断になります。

点差の解釈の目安

  • 15点以上の差:明確な差です。上位の候補で進めて問題ありません。
  • 5〜15点の差:差はありますが、失格条件と予算の再確認を挟んでから決めてください。
  • 5点以内の差:横並びです。点数ではなく、社内リソースの有無と担当者との相性で決めた方が実務は回ります。
  • 全社が60点未満:候補の集め直しを検討する合図です。順位より水準を疑ってください。

点数はあくまで議論の出発点であり、自動的に結論を出す装置ではありません。評価シートの本当の価値は、何を根拠に何点をつけたのかという記録が残ることにあります。

複数人で採点するときの運用ルール

採点は3人以上で、独立採点からばらつきの確認を経て合議に進む順番で行います。1人で採点すると、その人の関心が強い項目に点数が集まり、関心の薄い項目が一律3点になる傾向が出ます。3人いれば偏りが打ち消され、意見が割れた項目だけを議論すればよくなりますので、時間の使い方としても効率的です。

採点者の選び方

採点者は、施策を主導するマーケティング担当者、発注後に実務を回す現場担当者、費用と契約を見る管理部門または上長という3つの立場から1人ずつ選ぶのが標準的な構成です。全員がマーケティング部門から出ると、費用と契約の項目が甘くなります。逆に管理部門だけで採点すると、企画の質を評価できません。立場の違いをそのまま採点のばらつきとして拾うことが、この構成の狙いです。

実際に投稿の進行を担当する人を必ず入れてください。進行管理と連絡レスポンスの項目は、日々やり取りする人が最も的確に評価できます。決裁者を採点者に入れるかどうかは組織によりますが、入れる場合は他の採点者より先に点数を出さないよう順番を管理してください。

独立採点から合議までの手順

手順やること時間の目安注意点
1. 独立採点各自が自分のシートに点数と根拠を記入する1社15分他の人の点数は見ない
2. 集計3人ぶんの点数を1枚に並べ、差を可視化する15分平均だけでなく差も見る
3. 論点の抽出2点以上ずれた項目だけを抜き出す10分ずれの数は通常3〜5項目
4. 合議抽出した項目の根拠を突き合わせて確定する30分多数決ではなく根拠で決める
5. 確定確定点で加重合計を再計算する10分変更した点は履歴を残す

合議で使う時間は30分に区切ってください。時間を区切らないと、点数の議論ではなく候補企業への好みの表明が始まります。30分で決まらない項目が残った場合は、その項目を追加確認の対象にして、発注先に質問を投げてから再採点します。

2点以上ずれた項目だけを議論します

3人の点数が1点差に収まっている項目は、議論する価値がありません。全項目を順番に確認していく進め方は、時間の大半を合意済みの項目に使うことになります。差が2点以上ついた項目だけを抜き出すと、通常は3〜5項目に絞られますので、そこに議論を集中させてください。

差が生まれる原因の多くは、見ている資料が違うことにあります。1人だけが追加資料を受け取っていた、1人だけが担当者と電話で話していた、といった情報の非対称が点数の差として現れます。合議の場では点数の高低を争う前に、それぞれが何を見て採点したのかを確認してください。多くの場合、情報をそろえた時点で差は自然に消えます。

評価シートを稟議と発注後の運用につなげる方法

評価シートは決裁資料の別紙として添付し、発注後は同じ項目で3か月後に再採点します。選定が終わった瞬間にシートを閉じてしまうと、せっかく作った物差しが1回きりの使い捨てになります。同じシートを継続して使うことで、社内に発注先を見る基準が蓄積されていきます。

稟議に載せるのは3行だけです

決裁者に12項目の表をそのまま見せても、判断はできません。稟議書の本文に載せるのは、総合点・決め手になった項目・次点との差という3行に要約してください。たとえば「A社79.2点、C社75.6点、B社64.8点。A社は企画とディレクションで差をつけており、次点との差は3.6点で僅差」という書き方であれば、決裁者は数秒で状況を把握できます。詳細な採点表は別紙として添付すれば十分です。

次点との差が僅差である事実は、隠さずに書いてください。僅差であることを書いておくと、決裁者から条件の追加交渉を指示された場合に、次点の候補へ切り替える判断がしやすくなります。稟議資料の組み立て方はインフルエンサーマーケティングの稟議を通す提案資料の作り方で詳しく扱っています。

落選した候補への連絡と関係の残し方

落選の連絡では、点数そのものは開示しないことをおすすめします。開示すると採点基準についての議論が始まり、双方にとって生産的ではありません。伝えるのは、今回の判断軸として何を重視したのかという一点に絞ってください。「今回は初回テストのため提示スピードを重視した」という伝え方であれば、相手も納得しやすく、次の機会にもつながります。

次点だった候補には、次回の検討時期を伝えておくと関係が続きます。インフルエンサー施策は継続すると発注先を分散させる場面が出てきますので、1社に絞り切らずに関係を残しておく方が、結果として選択肢が広がります。

発注後3か月で同じシートを再採点します

選定時の点数は提案書にもとづく予測値であり、実際の実行力とは一致しないことがあります。発注から3か月後、あるいは1クールの施策が終わった時点で、同じ12項目を実績ベースで採点し直してください。予測と実績の差が大きかった項目は、次回の選定で確認方法を見直すべき対象になります。

再採点で特に差が出やすい項目選定時の見え方実績で判明すること
3. 提示スピードと差し替え余力過去案件のリードタイムの説明断られたときに代替案が何日で出るか
5. ディレクションと投稿前チェック指示書の見本の完成度実際の案件で指示書がどこまで作り込まれるか
6. 進行管理と連絡のレスポンス問い合わせ段階の返信速度案件が混み合う時期の返信速度
9. 二次利用と追加費用の条件見積書の備考欄の記載実際に追加請求が発生したかどうか
12. 同業種の実績とレポート品質過去のレポート見本自社案件で届くレポートの粒度

再採点の結果は、継続発注の判断材料としてそのまま使えます。効果測定の指標づくりはインフルエンサー施策の効果測定の方法と計測ツール、長期で組む場合の契約設計はインフルエンサーの継続起用と長期契約の設計・運用ガイドを参考にしてください。実行中にトラブルが起きた場合の対処はインフルエンサー案件のトラブル対処と督促・返金の実務にまとめています。

Bloomを候補の1社として採点する場合

Bloomは、審査制インフルエンサー30,000人の中から条件に合う候補を自社の画面上で絞り込み、誰にいくら支払うのかを人単位で確認したうえで発注できるプラットフォームです。評価シートの項目でいえば、候補の母数と質、総額と単価の水準、見積内訳の透明性で点を取りやすい構造になっています。一方で、企画と構成の提案やディレクションは自社で担う前提になりますので、その工数を費用に換算したうえで採点してください。初期費用0円・相場の1/3の水準から始められますので、比較の基準線を引く1列として並べてみてください。

発注先の比較で本当に難しいのは、候補を集めることではなく、集めた候補を同じ物差しで測ることです。失格条件で最低ラインを引き、12項目を100点で加重し、5段階の状態を文章で定義する。この3つを候補の提案を聞く前に準備しておけば、選定の時間は半分になり、決裁の説明は圧倒的に楽になります。まずは自社の施策の目的を1つ決めて、目的別3パターンの配点表から近いものを写すところから始めてみてください。なお、本記事に記載した料率や金額の目安は2026年9月時点で公開されている一般的な情報にもとづく整理であり、実際の条件は案件と事業者によって変わります。

本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。