自社の公式アカウントを装った偽アカウントがフォロワーにDMを送っている、起用中のインフルエンサーの写真が投資勧誘の広告に使われている、自社名を騙った偽の案件オファーがインフルエンサーに届いている。こうしたなりすまし被害は、企業に落ち度がなくても信用を削ります。本記事では、インフルエンサーなりすましの3つの類型を整理したうえで、公式アカウントの明示や起用前の本人確認といった平時の予防策、発覚から24時間の初動フロー、Instagram・X・TikTok・YouTubeの通報手順、ファン向け注意喚起文の文例、公的窓口と法的手段までを、2026年9月時点の一次情報をもとに解説します。広報・ブランド保護の担当者が、社内の対応手順をそのまま作れる内容です。

この記事の要点

  • インフルエンサーなりすましは「偽アカウント」「偽DMでの案件オファー」「著名人を無断使用したなりすまし広告」の3類型に分かれ、類型ごとに通報先と注意喚起の内容が変わります。
  • 予防の柱は、公式アカウント一覧ページの公開、認証バッジの取得、連絡経路の一本化、起用前の本人確認の4つです。偽物を消すより「本物を一目で確認できる状態」を先に作るほうが被害を抑えられます。
  • 発覚後は、証拠保全、事実確認、プラットフォームへの報告、ファンへの注意喚起を24時間以内に並行して進めます。削除を待ってから注意喚起するのでは遅すぎます。
  • Instagram・X・TikTok・YouTubeはいずれもなりすましをポリシーで禁止しており、アプリ内の報告機能と専用フォームを用意しています(2026年9月時点)。
  • 国も対策を強めており、2026年8月7日には7府省庁がGoogle・LINEヤフー・Meta・TikTok Japan・X Corp.に対し、なりすまし詐欺広告への対策強化を合同で要請しました。

インフルエンサーなりすましの主な手口と3つの類型

インフルエンサーなりすましの手口は、偽アカウントの開設、偽DMによる案件オファー、著名人の肖像を無断で使ったなりすまし広告の3類型に大別できます。どの類型かによって被害者も通報先も変わるため、最初に類型を見極めることが対応の出発点になります。

インフルエンサーなりすましとは、第三者がインフルエンサー本人や、インフルエンサーを起用する企業の名前・写真・ロゴを無断で使い、本人や公式であるかのように装って発信や連絡を行う行為です。自社や起用者の発信そのものが批判を集める「炎上」とは原因が異なり、加害者は外部の第三者です。発信が原因の炎上への対処はインフルエンサー施策の炎上対策と発生時の初動対応で整理しているため、本記事では第三者による偽装に絞って解説します。

偽アカウントによるなりすまし

典型的なのは、本物のプロフィール画像と自己紹介文をコピーし、ユーザーネームだけを微妙に変えた偽アカウントです。アンダーバーの数を増やす、アルファベットのOを数字の0に置き換える、末尾に「official」「gift」「cp」などを付けるといった手口が典型です。偽アカウントは本物の投稿にコメントしたフォロワーへDMを送り、「プレゼントに当選しました」と偽って個人情報や送料名目の支払いを求めます。企業の公式アカウントが偽装される場合もあれば、企業とタイアップ中のインフルエンサーが偽装され、キャンペーンの告知に便乗される場合もあります。

偽DMによる案件オファー詐欺

二つ目は、企業やPR会社を名乗ってインフルエンサーに偽の案件オファーを送る手口です。実在するブランド名や担当者名を使い、「アンバサダーに選ばれました」「商品購入後に報酬と合わせて返金します」などと持ちかけ、商品代金や登録料を先に払わせます。この類型では被害者はインフルエンサー側ですが、名前を使われた企業にも問い合わせと風評被害が集中します。自社が正規にオファーを送る場合の文面や経路を明確にしておくことが、そのまま偽オファーとの見分けやすさにつながります。正規オファーの型はインフルエンサーへの依頼文面の書き方とテンプレート例文を参考にしてください。

著名人を無断使用したなりすまし広告

三つ目は、著名人やインフルエンサーの写真・動画を無断で使い、投資の勧誘などに誘導する「なりすまし広告」です。近年は生成AIで本人の顔や声を合成したディープフェイクも使われています。広告は正規の広告枠を通じて配信されるため、一般の利用者には本物のタイアップ広告との区別がつきにくいのが特徴です。起用しているインフルエンサーがこの被害に遭うと、企業との正規タイアップ投稿まで疑われる二次被害が起こります。

類型主な被害者典型的な接点企業が受ける影響
偽アカウントフォロワー・顧客コメント欄からのDM、偽キャンペーン問い合わせ増加、個人情報被害への不信
偽DMの案件オファーインフルエンサー企業・PR会社を名乗るDMやメール正規オファーの返信率低下、風評被害
なりすまし広告広告を見た一般利用者SNSの広告枠、外部サイトへの誘導起用者と企業の信頼低下、正規広告への疑念

なりすまし被害が企業の信用問題になる理由

なりすまし被害は、企業が加害者でなくても「なぜ放置したのか」と問われる信用問題になります。被害を受けた顧客やファンにとって、偽物を見分けられなかった原因は企業側の情報発信不足に見えるためです。

公的統計に見る被害の規模

SNSを入口とする詐欺被害は拡大を続けています。警察庁が2026年6月5日に公表した「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」によると、2025年のSNS型投資詐欺の認知件数は9,523件、被害額は1,288.0億円で、いずれも前年より増加しました。当初の接触手段はバナー等広告が3,785件、ダイレクトメッセージが3,549件で、この2つで全体の約8割を占めます。同資料では、バナー等広告の中に著名人の画像や動画を無断で使用した広告が確認されたとも記載されています。

さらに、2026年8月7日の7府省庁合同要請の別紙では、同じ警察庁資料を引用し、SNS型投資詐欺でバナー等広告が接触手段になった際のツールの割合をYouTube 27.1%、Instagram 16.3%、TikTok 10.4%、Facebook 6.5%、LINE 4.8%、X 2.1%と示しています。インフルエンサー施策でよく使う媒体ほど、なりすまし広告の舞台にもなりやすいことがわかります。

ブランドと起用者に及ぶ二次被害

なりすましの本当の損失は、偽物が消えた後も残る「本物への疑い」です。偽キャンペーンの被害を受けた人は、次に本物のキャンペーン告知を見ても応募をためらいます。偽オファーを受けたインフルエンサーは、同じ企業名からの正規オファーを詐欺と判断して無視するようになります。インフルエンサー施策は信頼を借りて成立する手法のため、信頼の毀損は施策の成果に直接響きます。

放置した場合に問われやすい論点

企業は偽アカウントの運営者ではないため、原則として偽アカウントの行為そのものに責任を負うわけではありません。ただし、なりすましを把握していながら注意喚起をせず、公式の見分け方も示さなかった場合、顧客からの苦情や報道の場面で説明責任を問われやすくなります。法的責任の有無とは別に、対応の遅れは企業姿勢の問題として受け取られると考えてください。

「放置すれば消える」は期待しない

偽アカウントは、プラットフォームへの報告がなければ長期間残ることがあります。削除されても別のユーザーネームで再作成されるケースも珍しくありません。1件ごとの削除で終わらせず、予防策と監視体制をセットで整えてください。

平時に整えるなりすまし予防策と公式アカウントの明示

なりすまし予防で最も効果が大きいのは、偽物を探すことではなく「本物がどれか」を誰でも確認できる状態を作ることです。本物の一覧と連絡ルールが公開されていれば、ファンもインフルエンサーも自力で偽物を見分けられます。

公式アカウント一覧ページを自社サイトに置く

まず、自社サイトに公式SNSアカウントの一覧ページを設けます。媒体ごとにユーザーネームを正確に記載し、プロフィールへのリンクを張ります。あわせて「このページに掲載されていないアカウントは当社の公式アカウントではありません」と明記してください。各SNSのプロフィール欄からもこのページへリンクすると、双方向で本物を証明できます。キャンペーンの当選連絡をDMで行うかどうか、DMで金銭や口座情報を求めることがあるかどうかも、同じページに書いておくと偽キャンペーンの被害を大きく減らせます。

認証バッジを取得する

主要SNSには、本人や公式であることを示す認証バッジの仕組みがあります。認証の取得条件や費用はサービスごとに異なり、改定も頻繁なため、申請時点で各社のヘルプセンターを確認してください。認証バッジは万能ではなく、偽アカウント側が名前やアイコンにバッジ風の絵文字を入れて装う例もあります。バッジの有無だけで判断させるのではなく、公式一覧ページと組み合わせて案内するのが確実です。

連絡経路を一本化する

企業からインフルエンサーへの連絡経路を一本化することは、偽オファー対策の要です。たとえば「初回連絡は公式ドメインのメールアドレスか、利用しているマッチングプラットフォームからのみ行う」「個人のフリーメールや個人SNSからオファーを送らない」「報酬の受け取りにインフルエンサー側の先払いを求めることは一切ない」といったルールを決め、公式サイトに公開します。社内の担当者が個人アカウントからDMを送る運用を許すと、偽物と本物の区別がつかなくなります。

予防策防げる類型導入の手間運用上の注意
公式アカウント一覧ページ偽アカウント・偽DM小(1日)アカウント新設・廃止時に必ず更新
認証バッジの取得偽アカウント中(審査・費用あり)取得条件は媒体ごとに異なり改定も多い
連絡経路の一本化と公開偽DMの案件オファー中(社内ルール整備)担当者の個人アカウント利用を禁止
起用者との合意事項の共有なりすまし広告・偽DM小(契約時に説明)正規タイアップの告知方法を事前に揃える
定期的な検索監視全類型中(週次の作業)表記ゆれ・英字表記も検索対象に含める

起用前にインフルエンサー本人をどこまで確認するか

起用前の本人確認は、「連絡してきた相手が、そのアカウントの本当の持ち主か」を確かめる範囲まで行えば十分です。フォロワーの質の見極めとは別の作業であり、偽アカウントや乗っ取られたアカウントとの契約を防ぐことが目的です。

確認の深さは取引の重さで変える

全員に同じ深さの確認を求めると、ギフティングのような小規模案件で手間が見合いません。報酬額や二次利用の有無、ブランドへの影響度に応じて確認の深さを変えるのが現実的です。フォロワーが実在するかどうかの判定はフェイクフォロワーの見分け方と選定でのチェック手順で解説しているため、ここでは「本人かどうか」の確認に絞って整理します。

確認レベル対象の目安確認内容
レベル1:アカウント照合ギフティング・少額案件やり取りしている相手が、候補アカウントのDMまたはプロフィール記載の連絡先から連絡しているか。ユーザーネームの一字一句の一致
レベル2:連絡経路の相互確認有償タイアップメールで受けた連絡を、候補アカウントのDMでも「このメールはご本人ですか」と確認する。過去投稿の継続性と開設時期の確認
レベル3:身元と権限の確認高額案件・長期契約・広告出演事務所所属の有無と事務所への照会、契約名義と支払先口座名義の一致、代理人の場合は委任関係の確認

事務所や代理人を名乗る相手への確認

「インフルエンサーの事務所です」「マネージャーです」と名乗る相手には、所属事務所の公式サイトに記載された代表連絡先へ企業側から照会するのが確実です。相手が送ってきた電話番号やメールアドレスに折り返すだけでは、偽物同士で口裏を合わせられてしまいます。インフルエンサー本人のプロフィールに事務所名やマネジメント連絡先が記載されているかどうかも、あわせて確認してください。

契約書に入れておきたい条項

本人確認の結果は契約書に反映させます。具体的には、契約名義人がアカウントの正当な管理者であることの表明保証、報酬の振込先を契約名義と同一にする旨、アカウント乗っ取りやなりすましを把握した場合に相互に速やかに通知する義務、なりすまし発生時の注意喚起に協力する旨の4点です。契約書全体の組み立てはインフルエンサー契約書の作り方と必須チェック項目にまとめています。

振込先口座の変更依頼は必ず二経路で確認

契約後に「振込先が変わりました」という連絡が届いた場合は、乗っ取りやなりすましの可能性を疑ってください。連絡を受けた経路とは別の経路で本人に確認し、確認が取れるまで振込を保留するのが安全です。

なりすましを早期発見する監視体制の作り方

なりすましは、発見が早いほど被害者の数を小さく抑えられます。専用ツールがなくても、検索キーワードの固定化、社外からの通報窓口、起用者との情報共有の3点を整えれば、中小企業でも十分に機能する監視体制を作れます。

監視キーワードを固定して定期検索する

週に一度、決まったキーワードで各SNSを検索する運用から始めます。対象は、ブランド名の正式表記・略称・英字表記・カタカナ表記、公式アカウントのユーザーネーム、主力商品名、起用中インフルエンサーの名前です。ユーザーネーム検索では、アンダーバーやピリオドの有無、末尾に数字や「official」が付いた形も確認してください。広告については、MetaやGoogleが公開している広告の透明性を確認できる機能で、自社名や起用者名を含む広告を確認する方法も有効です。

社外からの通報を受ける窓口を用意する

自社だけで全てのなりすましを見つけることはできません。問い合わせフォームに「なりすまし・偽アカウントの情報提供」という区分を設け、URLとスクリーンショットを送ってもらえるようにします。ファンや取引先から届く情報は、自社の定期検索よりも早いことが多く、特にDMでの被害は外から見えないため通報が唯一の発見手段になります。

起用インフルエンサーとの情報共有ルール

インフルエンサー本人のもとには、偽アカウントを見たフォロワーからの連絡が最初に集まります。起用時に「自分や当社を名乗る偽アカウントや偽オファーを見つけたら、担当者に共有してください」と依頼し、共有先を明確にしておきます。逆に、企業側が起用者のなりすましを見つけた場合も速やかに本人へ伝えます。Instagramのように原則として被害者本人の報告を前提とするサービスもあるため、双方の連携がなければ削除まで進みません。

なりすまし発覚時の初動対応フロー

なりすましが発覚したら、証拠保全、事実確認と影響範囲の把握、プラットフォームへの報告、注意喚起の4つを24時間以内に並行して進めます。報告を先に行うと偽アカウントが削除され、証拠が残らないことがあるため、証拠保全だけは必ず最初に行ってください。

ステップ1:証拠保全

偽アカウントのプロフィール画面、問題の投稿やDM、広告のスクリーンショットを取得します。スクリーンショットには、表示中のURL、ユーザーネーム、取得日時が写るようにします。ユーザーネームは後から変更される場合があるため、プロフィールURLもテキストで控えます。被害者から届いたDMの画面も、送信者のユーザーネームがわかる形で提供してもらいます。証拠は後の削除申出や法的手続きで必要になるため、取得者と取得日時を記録した一覧表で管理してください。

ステップ2:事実確認と影響範囲の把握

次に、本当に自社や起用者と無関係なアカウントかを確認します。まれに、社内の別部署や代理店が開設した非公式アカウントだったというケースがあるためです。無関係と確認できたら、偽アカウントのフォロワー数、DMを受け取った人の数の推定、金銭や個人情報の被害報告の有無を把握します。被害報告があるかどうかで、注意喚起の強さと公的機関への相談の要否が変わります。

ステップ3:社内エスカレーションと役割分担

広報、カスタマーサポート、法務、施策担当の4者で情報を共有し、役割を決めます。広報は注意喚起文、カスタマーサポートは問い合わせ対応の想定問答、法務は法的手段の要否判断、施策担当は起用インフルエンサーとの連絡を担います。問い合わせ窓口で「当社とは無関係です」とだけ答えると被害者が突き放されたと感じるため、報告方法や公的な相談窓口もあわせて案内する想定問答を用意してください。

時間の目安やること担当
発覚〜1時間証拠保全、無関係であることの確認、関係者への第一報発見者・施策担当
1〜6時間プラットフォームへの報告、起用インフルエンサーへの連絡、影響範囲の把握施策担当・広報
6〜24時間公式SNSと自社サイトでの注意喚起、問い合わせ対応の想定問答の配布広報・カスタマーサポート
24時間以降削除状況の追跡、再作成の監視、金銭被害がある場合の公的機関への相談と法的手段の検討広報・法務

起用者が関係する案件で投稿の取り下げや契約上の対応が必要になった場合の進め方は、インフルエンサー案件のトラブル対処と督促・返金の実務も参考にしてください。

主要SNSのなりすまし通報窓口と報告手順

Instagram・X・TikTok・YouTubeはいずれもなりすましをポリシーで禁止し、アプリ内の報告機能を用意しています。ただし、誰が報告できるか、アカウントを持っていない場合にどうするかはサービスごとに異なるため、事前に手順を把握しておくことが重要です。以下は2026年9月時点で各社のヘルプセンターに掲載されている内容をもとに整理したものです。画面の文言や手順は変更されることがあるため、実際の報告時は必ずリンク先を確認してください。

サービスアプリ内での報告フォーム・その他押さえておきたい点
Instagramプロフィールの[オプション]→[報告]→[アカウントの報告]→[なりすましアカウントである]アカウントを持たない被害者用フォーム、代理人用フォームなりすまし被害の報告は原則として被害を受けた本人が行う
Xアプリ内の専用報告手続き自分や自分のブランドのなりすましを報告する窓口規約に沿ったパロディ・解説・ファンアカウントは認められている
TikTokプロフィールのシェアボタン→[報告]→[アカウントを報告]→[別人になりすましている]オンラインフォーム(米国と米国以外で手順が異なる)Webブラウザからも報告可能
YouTubeなりすましが疑われるチャンネルを報告プライバシーガイドラインに基づく削除リクエストAIで本人の容姿や声を模倣するなりすましも禁止対象

InstagramとMeta系サービスでの報告

Instagramヘルプセンターの「なりすましアカウント」によると、報告できるのは「あなた」「あなたがフォローしている人」「有名人または公人・著名人」「ビジネスまたは組織」になりすましているアカウントです。アプリでは相手のプロフィールを開き、[オプション]から[報告][アカウントの報告][なりすましアカウントである]と進み、なりすましのタイプを選択します。同ヘルプでは、なりすまし被害の報告は被害を受けている本人しかできず、本人以外は本人に報告を促すよう案内されています。つまり、起用インフルエンサーがなりすまされた場合は、企業が代わりに報告するのではなく、本人に報告してもらう段取りが必要です。Instagramアカウントを持っていない被害者や、代理人として対応する場合には専用フォームが用意されています。また、知的財産権侵害の報告を除き、報告は匿名で行われると記載されています。

XとTikTokでの報告

Xの「信頼性」ポリシー(2025年4月版)は、他人を欺く目的で他の個人・グループ・組織のアイデンティティを偽装することを禁止しています。一方で、情報の議論・風刺・共有を目的とする規約に沿ったパロディ・解説・ファンアカウントは認められているため、ファンアカウントであることを明示しているアカウントは削除対象にならない可能性があります。自分や自分のブランドへのなりすましはポリシーページ内の窓口から報告でき、偽装アカウントはアプリ内の専用報告手続きでも報告できます。

TikTokサポートの「なりすましアカウントを報告する」では、アプリの場合はプロフィール上部のシェアボタンから[報告][アカウントを報告][別人になりすましている]を選び、自分または有名人のどちらがなりすまされているかを選択して送信する手順が案内されています。米国以外のなりすましをオンラインフォームで報告する場合は、トピックで違反疑いの報告、カテゴリーでアカウント違反、報告理由でなりすましを選ぶ流れです。

YouTubeと広告のなりすましへの対応

YouTubeの「なりすましに関するポリシー」は、個人・団体・チャンネルの許可なきなりすましを禁止し、AIを使って個人の声や姿をコピーし、その個人が承認しているかのように見せかけることも含むと明記しています。チャンネル名に「本物」や「公式」を入れて公式を装う、既存の団体と視覚的に似たハンドルを使うといった行為が禁止例として挙げられています。なりすまし被害に遭っている場合はチャンネルを報告でき、本人の容姿や声を模倣したAI生成コンテンツにはプライバシーガイドラインに基づく削除リクエストも使えます。審査ではパロディや風刺かどうか、公人を扱ったものかどうかも考慮されます。

なりすまし広告は、通常の投稿とは別に、各サービスの広告に付いている報告メニューから報告します。広告は配信が止まると表示されなくなるため、報告より先に広告画面と遷移先URLを保存しておくことが特に重要です。

起用者のなりすましは「本人の報告」が必要な場合がある

Instagramのように被害者本人の報告を前提とするサービスでは、企業がいくら報告しても手続きが進まないことがあります。起用インフルエンサーには、報告手順のリンクと保全した証拠をまとめて渡し、本人が報告しやすい状態を企業側で用意してください。

ファン向け注意喚起文の出し方と文例

注意喚起は、偽アカウントの削除を待たずに、発覚から24時間以内に出すのが原則です。削除には時間がかかることがあり、その間にもDMの被害は広がるため、先に利用者側に見分け方を伝えるほうが被害を抑えられます。

掲載場所とタイミング

注意喚起は、自社サイトのお知らせ、被害が起きているSNSの公式アカウント、必要に応じて他のSNSの公式アカウントの3か所に出します。SNSの投稿はタイムラインで流れてしまうため、固定表示の機能を使い、削除が確認できるまで上部に残します。起用インフルエンサーがなりすまされた場合は、本人のアカウントでも同じ内容を発信してもらい、企業側の投稿と相互に参照できるようにします。偽アカウントのユーザーネームを記載するかどうかは、記載することで偽アカウントへの流入が増えないかを考えたうえで判断してください。

注意喚起文の文例

以下は、偽アカウントによる偽キャンペーンが発生した場合を想定した文例です。自社の状況に合わせて調整してください。

文例:当社を装う偽アカウントに関するご注意

現在、Instagram上で当社の公式アカウントを装った偽アカウントが確認されています。偽アカウントは、当社の公式アカウントと同じ画像を使い、ユーザーネームの一部を変えて「キャンペーンに当選しました」とのダイレクトメッセージを送っています。当社の公式アカウントは、当社サイトの公式アカウント一覧ページに掲載しているもののみです。当社がダイレクトメッセージでクレジットカード情報や送料の支払い、外部サイトへのログインをお願いすることはありません。不審なメッセージを受け取った場合は、リンクを開かず、返信をしないでください。すでに個人情報を入力された方や金銭の被害に遭われた方は、お近くの警察署または警察相談専用電話「#9110」へご相談ください。当社は現在、プラットフォーム運営会社へ報告を行っています。ご心配をおかけし申し訳ございません。

避けたほうがよい表現

注意喚起では、「当社は一切関係ありません」とだけ書く突き放した表現は避けます。被害者は企業のファンであることが多く、責任を回避する姿勢に見えると本物への信頼まで損ないます。一方で、被害の補償を約束するような表現も、事実関係が確定する前には控えてください。偽アカウントを「犯罪者」と断定する表現も、法的な判断が出る前は避け、「当社とは無関係のアカウント」という事実の記載にとどめるのが安全です。キャンペーン告知と注意喚起が同じ時期に重なる場合は、正規のキャンペーン投稿にも公式一覧ページへのリンクを添えると混乱を防げます。PR投稿の表記ルールと注意喚起の表現が矛盾しないよう、ステマ規制と#PR表記の実務ガイドで正規投稿の表示方法も確認しておいてください。

公的窓口への相談と法的手段の検討

プラットフォームへの報告で削除されない場合や、金銭被害が出ている場合は、公的な相談窓口と法的手段を並行して検討します。法的手段は時間と費用がかかるため、被害の大きさと再発の可能性を見て、弁護士と相談しながら判断するのが現実的です。

公的な相談窓口

削除依頼の方法がわからない場合は、総務省の支援事業である違法・有害情報相談センターに相談できます。総務省のページによると、同センターはサイト管理者等への削除依頼の方法などの相談を受け付けており、相談はWebフォームのみで受け付けています。金銭被害や個人情報の詐取が発生している場合は、被害者に警察への相談を案内するとともに、企業としても所轄の警察署に相談してください。消費者トラブルとしての相談先には消費者ホットライン「188」もあります。

削除請求と発信者情報開示請求

法的手段としては、プラットフォーム事業者への削除請求と、なりすましを行った人物を特定するための発信者情報開示請求が中心になります。これらを定めているのが、情報流通プラットフォーム対処法です。2025年4月にプロバイダ責任制限法の改正法が施行されて法律名が変わり、大規模なプラットフォーム事業者に削除対応の迅速化と運用状況の透明化が義務付けられました。総務省は2025年4月30日にGoogle LLC(YouTube)、LINEヤフー株式会社、Meta Platforms, Inc.(Facebook・Instagram・Threads)、TikTok Pte. Ltd.、X Corp.を大規模特定電気通信役務提供者に指定しています。各社の削除申出窓口と削除基準は総務省のページから確認できます。

ロゴや商標、写真の無断使用が伴う場合は、商標権や著作権の侵害として主張できる場合もあります。ただし、どの権利侵害として請求するかで必要な証拠や手続きが変わるため、証拠を整理したうえでインターネット上の権利侵害に詳しい弁護士へ相談してください。

なりすまし広告をめぐる国の動き

なりすまし広告については、国もプラットフォーム事業者への働きかけを強めています。総務省は2024年6月21日、著名人等になりすまして投資勧誘等を図るなりすまし型「偽広告」への対応について、Meta Platforms, Inc.と一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構に要請しました。

さらに2026年8月7日には、警察庁・金融庁・消費者庁・デジタル庁・総務省・法務省・経済産業省の7府省庁が合同で、Google LLC、LINEヤフー株式会社、Meta Platforms, Inc.、TikTok Japan、X Corp.に対し、なりすまし詐欺広告への対策強化を文書で要請しました。要請の別紙では、電子的な認証手段の活用を含む広告主の本人確認、広告主情報の表示など広告の透明性向上、削除要請への迅速な対応の3点を求め、具体的な実施内容を2026年10月16日までにデジタル庁へ報告するよう求めています。また同別紙によると、総務省の違法情報ガイドラインが2026年8月6日に改定され、著名人の名義を無断で使って虚偽の投資実績を示すなりすまし詐欺広告が違法情報として新たに明記されました。企業としては、こうした制度の変化によって削除申出が通りやすくなる余地があることを押さえつつ、自社の予防策を進めておくことが大切です。

インフルエンサーなりすまし対策の実務チェックリスト

なりすまし対策は、平時の準備と発生時の対応を一枚のチェックリストにしておくと、担当者が替わっても同じ水準で動けます。以下を社内の広報マニュアルやインフルエンサー施策の運用ルールに組み込んでください。

平時に済ませておく項目

発生時に確認する項目

プラットフォーム経由の起用で得られる安心材料

偽DMによる案件オファー詐欺は、企業とインフルエンサーの連絡がSNSのDMに分散していることが温床になります。審査制のマッチングプラットフォームを通じて起用すれば、企業もインフルエンサーも登録済みの相手とやり取りする形になり、「DMで届いた見知らぬ企業名のオファー」と正規の依頼を区別しやすくなります。連絡経路の一本化を社内ルールだけで徹底するのが難しい場合は、起用の入口そのものをプラットフォームにまとめることも有効な選択肢です。

本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム「Bloom」(株式会社ハーマンドット)が運営しています。