インテリアや料理、結婚式の準備でPinterestを開いたことがある方は多いと思いますが、企業のマーケティングチャネルとして本格的に運用している国内企業はまだ多くありません。InstagramやTikTokと同じ感覚で運用すると、更新頻度ばかりを気にして成果が出ないという結果になりがちです。この記事では、PinterestがSNSではなく画像検索・保存型のプラットフォームであるという前提から出発し、投稿の寿命が長い理由、相性の良い商材と悪い商材、企業アカウント運用とクリエイター起用の使い分け、他媒体で制作したUGCやPR素材の二次活用先としての位置づけ、始め方と計測の実務までを整理しました。2026年8月時点の公開情報にもとづく内容です。
この記事の要点
- PinterestはSNSというより画像検索・保存型のプラットフォームです。ピンは公開直後だけでなく、数か月から数年にわたって流入を生み続けます。
- フロー型SNSが「今日の露出」を作るのに対し、Pinterestは「積み上がる導線」を作ります。同じ運用工数でも成果が現れる時間軸が異なりますので、3〜6か月は評価を待つ設計にしてください。
- 相性が良いのはインテリア・レシピ・ファッション・ウェディング・DIY・旅行など、検討期間が長く画像で意思決定が進む商材です。即時性の高いニュース系や、視覚化しにくい無形サービスは苦戦します。
- クリエイター起用は「Pinterestに載せる素材を作ってもらう」ことと「クリエイター自身のアカウントで面を取る」ことを分けて考えると、費用の設計を誤りません。
- 他媒体で制作したUGCやPR投稿の素材は、二次利用の許諾さえ取れていればPinterestで再活用できます。新規制作費をかけずに面を厚くできる、費用対効果の高い打ち手です。
Pinterestマーケティングの全体像と押さえるべき前提
Pinterestマーケティングとは、画像検索・保存型のプラットフォームであるPinterest上に、ユーザーが将来の行動のために保存したくなるビジュアルを継続的に置き、自社サイトや実店舗への長期的な流入をつくる取り組みです。InstagramやTikTokのように「今日どれだけ見られたか」を追う運用とは、設計思想がまったく違います。ここを取り違えたまま始めてしまうと、毎日投稿しているのに数字が伸びないという状態に陥りやすくなります。
SNSと呼ぶと設計を誤る理由
Pinterestは一般にSNSとして分類されることが多いのですが、実際の使われ方はソーシャルネットワークというより検索ツールに近いものです。ユーザーは友人の近況を追いに来るのではなく、「6畳 レイアウト」「作り置き 常備菜」「秋 コーデ」といった言葉で検索し、気に入った画像を自分のボードに保存していきます。フォローしている相手の投稿を眺めるより、検索とレコメンドから未知のアカウントの画像に出会う比率が高いという点が、他媒体との決定的な違いです。
この構造がもたらす帰結は二つあります。ひとつは、フォロワー数が少なくても検索経由で見つけてもらえるという点です。開設直後のアカウントであっても、検索意図に合致したピンであれば表示される余地があります。もうひとつは、いいねやコメントといった反応の総量を追っても意味が薄いという点です。Pinterestで見るべきは、保存された回数と外部サイトへの遷移であり、フォロワーとの関係性の濃さではありません。
「保存」という行動が持つ意味
Pinterestで最も重要な行動は保存です。ユーザーがピンを保存するとき、それは「気に入った」という感想の表明ではなく、「あとでこれをやる/買う/作る」という意思の記録に近いものになります。引っ越しを控えた人がインテリアのボードを作り、結婚式の準備を始めた人が会場装花のボードを作るという使われ方が典型です。つまり保存は、購買や来店の何週間も前に発生する検討の初動を可視化した行動だと考えることができます。
この性質があるため、Pinterestは購入直前のユーザーを刈り取るチャネルとしては弱く、検討が始まる瞬間に第一想起を取るチャネルとして強いという特性を持ちます。刈り取りを担う検索連動型広告や、認知を担うショート動画とは、役割が重なりません。媒体ごとの役割分担についてはInstagram・TikTok・YouTube インフルエンサー施策の媒体比較で整理していますので、あわせてご覧ください。Pinterestはその比較軸のさらに外側にある、別の性質の面だとお考えいただくのが正確です。
成果が出るまでの時間軸を先に合意しておく
Pinterest運用を社内で始める際は、評価のタイミングを最初に合意しておいてください。ピンが検索結果やレコメンドに載るまでには時間がかかりますので、開始1か月の数字で判断すると、ほぼ確実に「効果がない」という結論になります。実務上は、3か月で保存数の傾向を見て、6か月でサイト流入の実数を評価し、12か月で継続可否を判断するという三段階が現実的です。この時間軸を関係者と共有できていないことが、Pinterest運用が途中で止まる最大の原因になっています。
ストック型プラットフォームとフロー型SNSの違い
Pinterestの最大の特徴は、公開したピンが投稿直後だけでなく、数か月後・数年後にも見られ続ける点です。InstagramやXの投稿がタイムライン上で数時間から数日で流れていくのに対し、Pinterestのピンは検索とレコメンドの対象として残り続けます。ある支援会社の解説では、投稿の効果が数か月から数年にわたって続くという表現がされており、実務上の感触ともおおむね一致します。ただし、すべてのピンが自動的に長寿命になるわけではなく、検索意図に合致していることが前提です。
投稿の寿命が長くなる仕組み
寿命が長くなる理由は、Pinterestの表示ロジックが時系列ではなく関連性を軸にしているためです。ユーザーがある言葉で検索したとき、システムはピンの画像・テキスト・リンク先の情報から関連性を判定し、投稿日が古くても適合度が高ければ上位に出します。加えて、保存されたピンは保存した本人のボードに残り、そのボードを見た第三者にも届きます。この二次的な広がりが時間差で発生するため、公開から数か月後に急に流入が増えるという現象も起こります。
もうひとつ見逃せないのが、Pinterestのピンが外部の画像検索結果にも露出しうるという点です。自社サイトのブログ記事を素材にピンを作っておくと、Pinterest内の検索、Pinterestのレコメンド、外部の画像検索という三つの入口ができます。1枚の画像に対して入口が複数あることが、投稿単位の投資回収期間を長くしています。
フロー型とストック型の比較
両者の違いを、運用設計で判断が分かれる項目に絞って整理しました。どちらが優れているという話ではなく、目的に応じて使い分けるための対照表としてお使いください。
| 比較項目 | フロー型SNS(Instagram・TikTok・X) | ストック型Pinterest |
|---|---|---|
| 主な流入元 | フォロワーのタイムライン・レコメンド | キーワード検索・関連ピン・外部画像検索 |
| 投稿が見られる期間 | 数時間〜数日が中心です | 数か月〜数年に及ぶ例があります |
| フォロワー数の重み | 大きく影響します | 影響は限定的です |
| 成果が出るまで | 投稿直後から数日で判定できます | 3〜6か月かけて積み上がります |
| 重視する指標 | リーチ・視聴完了率・エンゲージメント率 | 保存数・アウトバウンドクリック・表示回数 |
| ユーザーの検討段階 | 認知〜比較が中心です | 検討の初動〜情報収集が中心です |
| 更新を止めたとき | 露出はほぼゼロに戻ります | 既存ピンからの流入は残ります |
| 過去素材の再利用 | 同一素材の再投稿は嫌われがちです | 切り口を変えた再ピンが機能します |
この表でとくに注目していただきたいのは、最後の二行です。更新を止めても流入がゼロにならないという性質と、過去素材を再利用できるという性質は、人員の限られた企業にとって大きな意味を持ちます。毎日投稿できる体制がなくても、質の高いピンを一定数積み上げていれば資産として働き続けるためです。
「更新頻度より母数」という発想の転換
フロー型SNSでは更新が止まると存在ごと忘れられますが、Pinterestでは公開済みのピンが働き続けます。そのため、毎日1枚を無理に出すより、月に一度まとめて20〜30枚を制作して公開するほうが運用として続きやすい面があります。撮影やデザインをまとめて行い、公開だけを分散させるという進め方が、少人数のチームには現実的です。
日本国内のユーザー像と検索行動の特徴
日本国内のPinterest利用者数は、複数の媒体まとめによれば月間1,000万人台とされています。2026年8月時点で公開されている国内SNSユーザー数の比較記事では、Pinterestの国内月間利用者数を1,050万人前後から1,280万人程度とする数値が見られますが、公表元や集計時点によって差がありますので、絶対値ではなく規模感として捉えてください。世界全体の月間アクティブユーザー数は6億人規模とされており、国内比率はまだ小さいのが実情です。
利用者の属性と使われ方
利用者の属性としては、女性比率が高く、年齢層は20代後半から40代前半が中心とされる整理が多く見られます。ただし近年は男性利用者や若年層の増加も指摘されており、カテゴリによって当てはまる層は変わります。ファッションやインテリアでは女性利用者の存在感が大きい一方、DIYやガジェット、キャンプ関連では男性利用者も一定数います。自社カテゴリのユーザー像は、一般的な統計ではなくPinterest内で実際に検索してみて、どんなピンが並ぶかを確認するほうが確実です。
| 観点 | 2026年8月時点で語られている傾向 | 実務での読み替え |
|---|---|---|
| 国内月間利用者数 | 1,000万人台とする集計が複数あります | 主要SNSより小さい分、競合も少ない面です |
| 男女比 | 女性比率が高いとされています | 女性向け商材は初速が出やすい傾向です |
| 中心年齢層 | 20代後半〜40代前半が中心とされています | 可処分所得のある検討層に届きます |
| 利用目的 | アイデア収集・計画づくりが中心です | 購入直前ではなく検討初動を取る面です |
| 1回あたりの行動 | 複数枚を連続で保存する使い方が多く見られます | 関連ピンをまとめて用意する価値があります |
季節の検索が先行して立ち上がる
Pinterestの検索は、実際の消費より前倒しで立ち上がるという特徴があります。クリスマスの飾りつけを10月に調べ始める人、翌春の結婚式の準備を前年の秋から始める人が、Pinterestには一定数います。準備のためのプラットフォームである以上、当然といえば当然の現象です。したがって施策のスケジュールも、他媒体より前倒しで組む必要があります。季節商戦の逆算設計そのものについてはインフルエンサーの季節キャンペーン設計と逆算スケジュールで詳しく扱っていますが、Pinterestではその逆算にさらに1〜2か月を上乗せしてお考えください。
この前倒し性は、裏を返せば公開の遅れが致命傷になりにくいという意味でもあります。フロー型SNSではピーク当日を外すと価値が大きく下がりますが、Pinterestのピンは翌年の同じ季節にも再び検索されます。1年目に間に合わなかった素材が2年目に効いてくるという回収の仕方ができる点は、他媒体にはない利点です。
キーワードの入れ方が結果を左右します
Pinterestでは、画像の美しさと同じくらい、テキスト情報が重要になります。ピンのタイトルと説明文、ボード名、リンク先ページのタイトルに、ユーザーが実際に打ちそうな言葉が入っているかどうかで表示のされ方が変わります。ブランド名だけを入れた説明文は、そのブランドを知っている人にしか届きません。「1LDK 一人暮らし レイアウト」「30分 作り置き 鶏むね」のように、検索する側の語彙で書くことが基本になります。
Pinterestと相性の良い商材・悪い商材
Pinterestと相性が良いのは、検討期間が長く、画像で意思決定が進み、季節や人生のイベントに紐づく商材です。具体的にはインテリア・住宅、レシピ・食品、ファッション、ウェディング、DIY・手芸、旅行の6領域が代表格として挙げられます。逆に相性が悪いのは、即時性が価値の中心にあるもの、視覚化しにくい無形サービス、そして検討ではなく衝動で買われる低単価品です。
相性が良い6カテゴリの理由
この6領域に共通しているのは、ユーザーが「完成形のイメージ」を先に集めてから行動を決めるという点です。部屋づくりも、料理も、結婚式も、旅行も、実行の前に理想像を集める工程が存在します。その工程がまさにPinterestで行われているため、企業のビジュアルが検討テーブルに乗りやすくなります。住宅・インテリア領域のインフルエンサー活用については住宅・インテリア業界のインフルエンサー活用と長期検討商材のKPI設計で長期検討商材のKPI設計を扱っていますので、Pinterest運用と組み合わせる際の参考になります。
| カテゴリ | 相性 | 効きやすいピンの型 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| インテリア・住宅 | 非常に良い | 間取り別の実例・ビフォーアフター | 生活感の演出度合いで保存率が変わります |
| レシピ・食品 | 非常に良い | 工程が読める縦型画像・材料表記 | 完成写真だけでは保存されにくくなります |
| ファッション | 良い | 季節・シーン別のコーディネート | 単品カットより着用全身が有利です |
| ウェディング | 非常に良い | 装花・会場・ヘアメイクの実例 | 準備期間が長く前倒しの公開が要ります |
| DIY・手芸 | 良い | 手順の分解・完成イメージ | 難易度と所要時間の明記が効きます |
| 旅行・観光 | 良い | モデルコース・持ち物リスト | 季節と地名をテキストに含めてください |
| 美容・コスメ | やや良い | メイク手順・カラー別の仕上がり | 薬機法表現の確認が別途必要です |
| BtoB・SaaS | やや悪い | 図解・テンプレート配布 | 検討者が集まる場ではありません |
| ニュース・時事 | 悪い | ― | 即時性が価値の中心で寿命と噛み合いません |
| 低単価の衝動購入品 | 悪い | ― | 検討工程がなく保存行動が起きにくいです |
相性が悪い商材に共通する三つの条件
相性が悪い商材には、共通する条件が三つあります。第一に、購買の意思決定に「計画」の工程がないことです。第二に、価値が画像に写らないことです。第三に、情報の鮮度が価値そのものであることです。この三つのうち二つ以上に当てはまる商材は、Pinterestに労力を割いても回収が難しくなります。無理に運用するより、他媒体に資源を寄せる判断のほうが健全です。
ただし、商材そのものは相性が悪くても、周辺のコンテンツで入口を作れる場合があります。たとえば会計ソフトそのものは保存されませんが、「確定申告の書類チェックリスト」や「開業初年度の経費一覧」といった図解であれば保存される余地があります。商材を直接見せるのではなく、その商材が解決する状況の側からビジュアルを設計するという発想の転換で、相性の壁を部分的に越えられます。
「とりあえずInstagramの投稿を流す」は成果につながりにくい運用です
Instagramに出した正方形の投稿をそのままPinterestへ転載する運用は、多くの場合ほとんど成果を生みません。Pinterestで表示されやすい縦長比率と噛み合わないうえ、Instagram向けのキャプションには検索されるキーワードが入っていないためです。二次活用そのものは有効ですが、比率とテキストの作り直しは必須だとお考えください。詳しくは後述の二次活用の章で整理しています。
企業アカウント運用の設計と最初の90日
企業がPinterestを始める場合、最初にビジネスアカウントを開設してください。ビジネスアカウントでなければ、広告出稿・アナリティクス・リッチピン・ショッピング関連の機能が使えません。既存の個人アカウントをビジネスアカウントへ切り替えることもできますが、企業として運用するのであれば新規で開設し、担当者の異動があっても引き継げる管理体制にしておくほうが安全です。以下は2026年8月時点の一般的な仕様にもとづく整理ですので、開設時には公式のヘルプで最新の内容をご確認ください。
開設から公開までの実務ステップ
初期構築は、順番を守るだけで手戻りが大きく減ります。実務でよく使われる並べ方は次のとおりです。
| 順番 | やること | 目安期間 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 1 | ビジネスアカウント開設・プロフィール整備 | 1日 | プロフィール文に検索語を入れ忘れがちです |
| 2 | 自社サイトのドメイン認証 | 1〜3日 | 認証しないと計測が不完全になります |
| 3 | リッチピン等の連携設定 | 数日 | サイト側のメタ情報整備が前提になります |
| 4 | ボード設計(8〜12本) | 3〜5日 | 社内都合の分類にすると検索と噛み合いません |
| 5 | 初期ピン30〜50枚の制作 | 2〜4週間 | 枚数を優先して品質が落ちる例が多くあります |
| 6 | 公開開始・週次で追加 | 継続 | 一気に大量公開せず分散させてください |
| 7 | 90日目の初回レビュー | ― | ここで判断を急がないことが重要です |
ボード設計は、社内の商品カテゴリではなくユーザーの目的で切ってください。「2026年春夏コレクション」より「通勤コーデ」「休日コーデ」「小柄さん向け」のほうが、検索と保存の両方に接続します。ボード名そのものが検索対象になりますので、ここでの言葉選びが後々の流入量を左右します。
ピンの作り方で差がつく点
ピンの制作では、比率・文字量・情報の完結度という三点を押さえてください。縦長比率が推奨されるのは、フィード上での占有面積が大きくなるためです。文字は入れたほうが保存されやすくなりますが、入れすぎると画像としての魅力が落ちます。そして、ピンの中だけで内容がある程度わかることが重要です。リンク先を開かないと意味がわからないピンは保存されず、結果としてクリックも伸びません。
クリエイティブの考え方そのものは、他媒体のPR投稿と共通する部分も多くあります。訴求の型については成果が出るPR投稿クリエイティブの作り方と7パターンで7つのパターンを整理していますので、Pinterest向けに縦長へ組み替える際の下敷きとしてお使いください。
運用体制と工数の目安
運用工数は、月20〜40枚のピンを出す前提で、制作を含めて月20〜30時間程度を見込むのが現実的です。うち大半は画像制作の時間ですので、既存の商品写真や記事素材が豊富な企業ほど工数は下がります。専任者を置く必要はありませんが、担当者が一人だけで属人化すると異動時に運用が止まりますので、テンプレートとキーワードのリストをドキュメント化しておいてください。
企業アカウント運用とクリエイター起用の使い分け
Pinterestにおけるクリエイター起用は、「Pinterestに載せる素材を作ってもらう」ことと「クリエイター自身のアカウントで面を取る」ことを分けて考えてください。この二つは目的も費用感も異なり、混同したまま発注すると期待した成果が得られません。国内のPinterestでは、Instagramのように大規模なフォロワーを持つクリエイターの層が厚いとは言えませんので、後者を主軸に据える設計は慎重に判断する必要があります。
三つの起用パターン
実務で選ばれるパターンは大きく三つに分かれます。それぞれの向き不向きを整理しました。
| パターン | やること | 主な成果 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|
| 素材制作型 | クリエイターに撮影・制作だけを依頼し、自社アカウントで公開します | 自社ボードの質と量が上がります | 社内に撮影リソースがない企業です |
| 本人アカウント型 | Pinterestで実際に運用しているクリエイターに本人名義で公開してもらいます | クリエイターのフォロワーと保存経由の露出が得られます | 該当ジャンルの実運用者が見つかる場合です |
| 他媒体連動型 | Instagram等での投稿を主とし、副次的にPinterestへも展開してもらいます | 1回の発注で複数媒体の面を取れます | すでに他媒体の施策がある企業です |
2026年8月時点の国内事情を踏まえると、多くの企業にとって現実的なのは素材制作型と他媒体連動型です。本人アカウント型は、インテリアやレシピのように国内でもPinterestを主戦場にしているクリエイターが実在するジャンルに限って検討するとよいでしょう。候補を探す際は、フォロワー数ではなく直近のピンの保存数と、ボードが継続的に更新されているかを確認してください。
費用の考え方と契約の要点
素材制作型で発注する場合、費用の性質は撮影・制作の外注に近くなります。フォロワー単価で見積もる考え方は当てはまりませんので、納品枚数と使用範囲で金額を決めるほうが双方にとって明快です。他媒体連動型の場合は、主となる媒体の投稿費用に、Pinterestへの展開分を追加する形が一般的です。追加分を無償の「おまけ」として要求すると関係が悪くなりますので、少額でも明示的に積んでおくことをおすすめします。
契約面では、二次利用の範囲を必ず文面に落としてください。Pinterestは投稿が長期間残る性質がありますので、使用期間を「1年」と定めた場合、期間終了後にピンを削除する運用が発生します。実務上は、Pinterest向けの素材については使用期間を長めに設定するか、期間満了時の扱いを事前に決めておくほうがトラブルになりません。契約の詰め方はインフルエンサー契約書の作り方と必須チェック項目で整理しています。
広告表記の扱い
企業から金銭や商品の提供を受けて投稿する場合、Pinterestであっても広告であることの明示が必要です。景品表示法上のいわゆるステマ規制は媒体を限定していませんので、Instagramと同じ考え方で対応してください。ピンの説明文の冒頭に表記を入れる、画像内にも表記を入れるといった対応が実務的です。規制の考え方と表記の実務はステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドにまとめています。
Bloomから見た、Pinterest起用の現実的な進め方
審査制インフルエンサー30,000人が登録するBloomでも、Pinterest単独での起用依頼はまだ多くありません。実際に多いのは、Instagram向けの撮影を依頼した際に、あわせて縦型の静止画を数点追加してもらい、それを企業側のPinterestアカウントで使うという進め方です。1案件あたりの追加コストを抑えながらPinterestの面を厚くできるため、最初の一歩としては取り組みやすい形だと考えています。
UGC・PR素材の二次活用先としてのPinterest
Pinterestは、他媒体で制作したUGCやPR投稿素材の二次活用先として、費用対効果がもっとも高い置き場のひとつです。インフルエンサー施策で撮影された写真、キャンペーンで集まったユーザー投稿、広告用に制作したクリエイティブは、いずれも制作費がすでに支払われています。それらをPinterestで再構成すれば、追加の制作費をほとんどかけずに検索面を確保できます。UGCの集め方と活用の全体像はUGCマーケティングの活用法と二次利用の進め方で扱っていますので、許諾の取り方はそちらをご確認ください。
素材の出どころ別に見た再活用の型
どの素材をどう作り替えるかを、出どころ別に整理しました。いずれも二次利用の許諾が取れていることが前提です。
| 素材の出どころ | Pinterestでの作り替え方 | 追加で必要な作業 |
|---|---|---|
| インフルエンサーのPR投稿写真 | 縦長にトリミングし、使用シーンを言語化したテキストを重ねます | 比率調整・文字入れ・許諾確認 |
| リール・ショート動画 | 印象的な数カットを静止画として切り出します | 画質確認・キャプション作成 |
| ユーザー投稿(UGC) | 複数投稿をテーマ別にまとめ、ボード単位で見せます | 個別の掲載許諾・クレジット表記 |
| 自社ブログ記事 | 見出しを図解化し、記事URLへリンクします | 図解制作・リンク先の表示確認 |
| 広告クリエイティブ | 訴求文を検索語に置き換えて再構成します | 広告色の緩和・テキスト書き換え |
| 商品カタログ写真 | 使用シーンの写真と組み合わせて文脈をつけます | シーン写真の追加撮影 |
1案件から何枚のピンが作れるか
1回のインフルエンサー案件から生まれる素材は、写真が20〜40枚、動画が1〜3本というのが標準的なところです。ここから作れるピンは、単純な転載であれば数枚にとどまりますが、切り口を変えて再構成すれば15〜25枚程度まで増やせます。同じ写真でも、「使い方」「サイズ感」「他アイテムとの組み合わせ」「季節の着回し」といった異なる文脈で見せれば、それぞれ別の検索語に接続するためです。この積み上げが、Pinterestを継続する現実的な燃料になります。
ただし、同一画像を文言だけ変えて大量に投稿する行為は、品質の低いピンとみなされる可能性があります。少なくともトリミングや構成を変え、実際に異なる価値を提供する形にしてください。数を稼ぐことが目的化すると、アカウント全体の評価を下げる結果になりかねません。
二次利用の許諾で確認すべき四点
二次利用でトラブルになるのは、範囲の解釈違いです。契約時に確認すべき点は四つあります。使用できる媒体にPinterestが含まれているか、使用期間はいつまでか、トリミングや文字入れといった加工が認められているか、そして広告への転用が可能かという点です。とくに三点目は見落とされがちですが、Pinterest用に縦長へトリミングする時点で加工に該当します。「原本のまま使用」という条件で許諾を得ていた場合、そのままでは使えません。
Pinterest広告とオーガニック運用の役割分担
Pinterest広告は、オーガニック運用が積み上がるまでの時間を買う手段として位置づけるのが実務的です。オーガニックのピンが検索面で回り始めるまでには数か月かかりますが、広告であれば公開初日から表示を確保できます。ただし広告を止めれば表示も止まりますので、広告だけで運用すると他媒体と同じフロー型の性質に戻ってしまいます。両輪で回すことが前提です。
広告で押さえておきたい設計
Pinterest広告は、通常のピンを広告として配信する仕組みが基本になります。したがって、オーガニックで反応の良かったピンをそのまま広告に回すという運用ができます。この「オーガニックでテストして広告で伸ばす」という順序は、制作費の無駄が出にくい進め方です。逆に、広告専用のバナー然としたクリエイティブは、Pinterestのフィードの中で浮きやすく、成果が出にくい傾向があります。
ターゲティングでは、興味関心に加えてキーワードを指定できる点がPinterestらしい特徴です。ユーザーが実際に検索する言葉に対して出稿できますので、検索連動型広告に近い設計思考が使えます。配信の詳細な仕様は変更されることがありますので、出稿前に管理画面と公式ヘルプで2026年8月時点の内容をご確認ください。
広告とインフルエンサー施策の配分
広告予算とインフルエンサー起用の予算をどう分けるかは、他媒体と同じ考え方が使えます。素材が足りていない段階では制作側に、素材が揃った段階では配信側に寄せるという配分が基本です。広告と施策の使い分けについてはSNS広告とインフルエンサー施策の使い分け比較で整理していますので、Pinterestに限らない全体設計の参考にしてください。
広告を止めた瞬間にゼロに戻る設計は避けてください
Pinterestの利点はストック性にあります。広告だけを回してオーガニックのピンを積み上げていないと、予算を止めた時点で流入がなくなり、Pinterestを選んだ意味が失われます。広告費を投じる際は、同じ期間にオーガニックのピンも一定数公開し続ける体制をあわせて確保してください。
効果測定の指標と運用チェックリスト
Pinterestで見るべき指標は、表示回数・保存数・アウトバウンドクリック・そしてサイト側で計測する遷移後の行動の四つです。エンゲージメント率のような他媒体の指標をそのまま持ち込むと、評価を誤ります。とくに保存数は、Pinterest特有の先行指標として重要です。保存が増えているのにクリックが伸びない場合は、ピンは魅力的だがリンク先への動機づけが弱いという診断ができます。
指標の見方と打ち手
| 指標 | 何がわかるか | 伸びないときの打ち手 |
|---|---|---|
| 表示回数 | 検索とレコメンドに載っているか | キーワード・ボード名・説明文を見直します |
| 保存数 | ユーザーの計画に入ったか | ピン単体で完結する情報量に作り替えます |
| アウトバウンドクリック | サイトへ動機づけできたか | 続きが知りたくなる余白を残します |
| リンク先の滞在・回遊 | ピンと着地の内容が一致しているか | 着地ページをピンの文脈に合わせます |
| コンバージョン | 最終成果につながったか | 検討初動向けの受け皿を用意します |
サイト側の計測は、Pinterestからの流入に判別可能なパラメータを付けたうえで、解析ツールで別チャネルとして見られるようにしておいてください。Pinterest経由の流入は検討初動の段階が多いため、初回訪問での成約率は低く出ます。その代わり、再訪問や指名検索の増加として遅れて現れることがありますので、単月の直接成果だけで判断しないことが大切です。効果測定の設計全般はインフルエンサー施策の効果測定の方法と計測ツールで扱っています。
3か月・6か月・12か月の判断基準
継続判断は三段階で行ってください。3か月目は表示回数と保存数が右肩上がりになっているかを見ます。ここで横ばいであれば、キーワード設計かボード設計に問題があります。6か月目はサイト流入の実数と、流入が特定のピンに偏っていないかを見ます。上位数枚に依存している場合は、勝ちパターンを横展開する余地があるということです。12か月目に、投下した工数と得られた流入・成果を突き合わせて継続可否を判断します。
始める前の実務チェックリスト
着手前に、次の項目を確認しておくと立ち上がりが早くなります。ひとつでも空欄がある状態で走り出すと、途中で手が止まりやすくなります。
Pinterest運用 着手前チェックリスト
- 自社商材が、検討期間の長い・画像で判断される・季節やイベントに紐づくのいずれかに当てはまるかを確認しました。
- Pinterest内で主要キーワードを検索し、競合や近いジャンルのピンがどう並ぶかを目視しました。
- ビジネスアカウントの管理者を複数名にし、担当者の異動でも引き継げる体制にしました。
- 自社サイトのドメイン認証と、流入計測のパラメータ設計を済ませました。
- 初期ピン30枚分の素材(写真・図解)の当てがあり、なければ調達手段を決めました。
- 既存のインフルエンサー案件・UGCについて、Pinterestでの二次利用が許諾範囲に含まれるかを確認しました。
- 3か月・6か月・12か月の評価基準と、判断者を社内で合意しました。
Pinterestは、短期の売上をつくるチャネルではありません。半年から1年かけて検索面を確保し、更新を止めても働き続ける導線を持つことに価値があります。他媒体の運用に追われて素材が余っている企業ほど、追加投資の少ない打ち手として検討する価値が大きいはずです。まずは既存素材の棚卸しから始めて、30枚のピンを作るところから着手してみてください。
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