InstagramもTikTokもYouTubeも運用しているインフルエンサーに、まとめて投稿を依頼したいと考える企業は増えています。しかし、プロフィールに並ぶ複数SNSのフォロワー数をそのまま信じて依頼すると、メインの媒体以外の投稿がほとんど見られず、費用に見合わない結果に終わることがあります。本記事では、1人のインフルエンサーが複数SNSでどれだけ発信できるかを見極めるための確認項目を、媒体ごとの実力差、媒体横断の発信力、連携投稿の可否、インサイトでの裏付け、契約と表記の順に整理します。発注前にそのまま使える5軸の評価シートも用意したので、候補者の比較にお役立てください。

この記事の要点

  • インフルエンサーの複数SNS展開力とは、1人の発信者が複数の媒体それぞれで成果を出し、同じ企画を媒体に合わせて届け分けられる力のことです。
  • フォロワーの合計数では展開力は分かりません。媒体ごとの再生数・保存数・エンゲージメントを分けて確認し、「本当に強い媒体」と「名前だけある媒体」を見分けます。
  • 確認項目は「媒体ごとの実力差」「媒体横断の発信力」「連携投稿の可否と転用のしやすさ」「インサイトの裏付け」「契約・表記・権利」の5つに整理できます。
  • 連携投稿は、同じ動画をそのまま流す転載型、素材を共通にして編集を変える再編集型、媒体ごとに作り直す個別制作型に分かれ、費用と成果の出方が異なります。
  • 発注前に5軸の評価シートで採点し、メイン媒体を1つ決めてからサブ媒体を足す順番で起用すると、費用の無駄と期待外れを防げます。

インフルエンサーの複数SNS展開力とは

インフルエンサーの複数SNS展開力とは、1人の発信者がInstagram・TikTok・YouTube・Xなど複数の媒体で継続的に成果を出し、同じPR企画を媒体ごとの見せ方に作り替えて届けられる力のことです。複数のアカウントを持っているだけでは展開力があるとはいえず、各媒体で実際に見られ、反応され、行動につながっているかどうかで判断します。

展開力を構成する3つの要素

複数SNS展開力は、大きく3つの要素に分けて考えると見極めやすくなります。1つ目は、媒体ごとの実力です。メインの媒体だけでなく、サブの媒体でもフォロワーに見られているか、再生数や保存数が安定しているかを確認します。2つ目は、媒体横断の発信力です。どの媒体でも同じ人だと分かる世界観を保ちながら、媒体の文化に合わせて話し方や尺を変えられるかどうかを見ます。3つ目は、連携投稿の可否と転用のしやすさです。1回の撮影から複数媒体向けの投稿を作れるか、媒体をまたいだ送客の導線を設計できるかを確認します。

この3つがそろっている発信者は、1回の依頼で複数の接点をつくれるため、発注企業にとって費用対効果の高い相手になります。反対に、1つでも欠けていると、サブ媒体の投稿がほとんど見られなかったり、転用した投稿が媒体の空気に合わずに伸びなかったりします。

フォロワーの合計数では測れない理由

複数SNSを運用しているインフルエンサーのプロフィールには、「総フォロワー30万人」のように合計値が書かれていることがよくあります。しかし、合計値は展開力を示す数字ではありません。たとえば、Instagramが25万人でTikTokが5万人の発信者と、Instagramが10万人・TikTokが10万人・YouTubeが10万人の発信者では、合計は同じでも媒体ごとの強さがまったく異なります。また、過去に伸びた媒体のフォロワーが残っているだけで、現在はほとんど更新していない媒体が合計に含まれていることもあります。合計値ではなく、媒体ごとの直近の成果を分けて見ることが出発点です。

媒体比較・リーチ重複の記事との違い

本記事は、どの媒体を使うべきかを比べる記事ではなく、1人のインフルエンサーが複数の媒体でどれだけ発信できるかを見極める確認項目に絞って解説します。媒体そのものの特徴や向いている商材を比べたい場合は、Instagram・TikTok・YouTube インフルエンサー施策の媒体比較が先に役立ちます。また、複数のインフルエンサーを同時に起用するときにフォロワーが重なる問題は、インフルエンサー施策のリーチ重複を避ける選定の進め方で扱っています。本記事は「媒体を決めた後、その媒体で本当に戦える人かどうか」を確かめる段階の記事として読み分けてください。

複数SNS展開力を見極めるべき案件の条件

複数SNS展開力の見極めが必要になるのは、1人のインフルエンサーに2つ以上の媒体での投稿を依頼する案件です。単一媒体だけの依頼であれば、その媒体の実力を確認すれば十分ですが、複数媒体をまとめて依頼する場合は、媒体ごとの実力差が費用対効果を大きく左右します。

展開力が成果を左右する案件

展開力が特に重要になるのは、次のような案件です。新商品の発売時に、認知と検索の両方を一度に取りたい案件では、短尺動画で知ってもらい、長尺動画や画像投稿で詳しく理解してもらう流れが必要になります。また、予算が限られていて起用人数を増やせない案件では、1人あたりの接点を増やすことが合理的です。さらに、投稿素材を広告や自社サイトでも二次利用したい案件では、縦型動画・横型動画・静止画を一度に用意できる発信者を選ぶと、制作の手間が大きく減ります。

こうした案件では、「Instagramは強いが、TikTokは始めたばかり」という発信者に両方を依頼すると、TikTok側の成果が想定を大きく下回ることがあります。依頼する媒体すべてで一定の実力があるかどうかを、契約前に確かめておく必要があります。

単一媒体で十分な案件

一方で、すべての案件で複数SNS展開が必要なわけではありません。ターゲットが特定の媒体に集中している場合や、検証段階で少額から始めたい場合は、最も強い媒体1つに絞って依頼した方が成果を測りやすくなります。たとえば、BtoBの商材でX中心に情報収集する層を狙う場合や、レシピ系の商材でInstagramの保存を狙う場合は、無理に媒体を増やすと1投稿あたりの質が下がることもあります。複数媒体は「足せば足すほど良い」ものではなく、目的に対して必要な媒体だけを足す考え方が基本です。

判断に迷ったときの目安

複数媒体で依頼するかどうか迷ったときは、「その媒体の投稿だけで達成したい目標を説明できるか」を基準にすると判断しやすくなります。Instagramは保存とプロフィールへの遷移、TikTokは新規層への認知、YouTubeは比較検討の後押しというように、媒体ごとに役割を言えるのであれば複数展開の意味があります。役割を説明できない媒体は、追加費用を払っても成果を評価できないため、外した方が無難です。

媒体ごとの実力差を測る確認項目

媒体ごとの実力差は、フォロワー数ではなく、直近の投稿が実際にどれだけ見られ、反応されているかで測ります。同じ発信者でも、媒体によって「見られる力」は数倍から数十倍の差があることが珍しくないため、依頼予定の媒体ごとに数字を分けて確認します。

媒体別に見るべき指標

媒体ごとに、成果を表す指標は異なります。Instagramではフィード投稿の保存数とリールの再生数、TikTokでは再生数のばらつきと視聴維持、YouTubeでは動画ごとの再生数と視聴者の平均視聴時間、Xでは表示回数と引用・返信の内容が主な判断材料です。下の表は、2026年10月時点で各媒体の公式アプリ内の分析画面(インサイト、アナリティクス)から確認できる代表的な項目をもとに、確認のポイントを整理したものです。

媒体主に見る指標実力があるサイン注意したいサイン
Instagramリール再生数、保存数、プロフィールへのアクセスフォロワー外への表示が多く、保存が安定しているいいねは多いが保存とアクセスが極端に少ない
TikTok再生数の中央値、視聴維持、コメント内容伸びない投稿でも一定の再生数を保っている1本だけ突出し、他は数百回程度にとどまる
YouTube動画ごとの再生数、平均視聴時間、登録者の増減登録者数に対して新しい動画の再生数が見合っている登録者は多いが直近の動画の再生数が少ない
X表示回数、引用・返信、リンクのクリック引用や返信で会話が生まれている表示回数に比べて反応がほとんどない
YouTubeショート・リール等の短尺再生数と完全視聴の割合同じ素材でも媒体に合わせて冒頭を変えている他媒体の透かしが入ったまま転載している

指標の見方は媒体ごとに異なりますが、共通して大切なのは「平均値」ではなく「中央値」と「ばらつき」を見ることです。1本だけ大きく伸びた投稿があると平均値は高く見えますが、依頼した投稿が同じように伸びる保証はありません。直近10〜15本の投稿の数字を並べ、真ん中の値と、低い側の値がどのくらいかを確認すると、実力をより正確に把握できます。エンゲージメント率の目安や計算方法は、インフルエンサーのエンゲージメント率の目安と見方もあわせて参考にしてください。

メイン媒体とサブ媒体の見分け方

複数SNSを運用している発信者には、ほぼ必ず「メイン媒体」と「サブ媒体」があります。メイン媒体は、撮影や企画に最も力を入れ、ファンとの関係が深い媒体です。サブ媒体は、メイン媒体の素材を転用したり、告知のためだけに使ったりしている媒体です。見分けるときは、投稿ごとに作り込みの度合いが違うか、コメントへの返信がどの媒体で多いか、プロフィールのリンクがどの媒体に誘導しているかを確認します。サブ媒体であっても成果が出ていれば問題ありませんが、サブ媒体に対してメイン媒体と同じ単価を支払うのは割高になりやすいため、費用交渉の材料としても把握しておきます。

直近の伸びと更新頻度

媒体ごとの実力は、現在の数字だけでなく、直近3〜6か月の推移で判断します。フォロワーが伸びている媒体は、発信者自身が力を入れている媒体であり、PR投稿も丁寧に作ってもらえる可能性が高くなります。反対に、更新が月に1回程度まで落ちている媒体や、フォロワーが減り続けている媒体は、依頼しても十分な成果を期待しにくい状態です。また、アルゴリズムの変化によって媒体ごとの伸び方は変わるため、過去に伸びた実績よりも直近の数字を重視します。

媒体横断の発信力を測る確認項目

媒体横断の発信力は、「どの媒体でも同じ人として信頼されているか」と「媒体ごとに見せ方を変えられているか」の2点で確認します。媒体をまたいでファンが付いている発信者は、1つの商品を複数の角度から伝えられるため、認知から購入までの流れをつくりやすくなります。

世界観とトーンの一貫性

まず、媒体ごとの投稿を並べて見て、同じ人物の発信として一貫しているかを確認します。Instagramでは丁寧な暮らしを見せているのに、TikTokでは過激な企画ばかりという場合、媒体ごとにファン層が分かれており、ブランドにとっての安全性も媒体ごとに評価し直す必要があります。一方で、世界観は同じでも、TikTokではテンポよく話し、YouTubeでは落ち着いて詳しく説明するといったように、媒体の文化に合わせて話し方を変えられている発信者は、横断の発信力が高いと判断できます。一貫性と適応力の両方を見ることが大切です。

フォロワーの重なりと媒体ごとの客層

同じ発信者の複数アカウントでも、フォロワー層は媒体ごとに異なります。TikTokでは10代から20代前半が多く、Instagramでは20代から30代の女性が多い、YouTubeでは男性比率が高いといったように、媒体によって届く相手が変わることはよくあります。媒体ごとのフォロワー属性(性別・年齢・地域)をインサイトで確認し、自社のターゲットと一致する媒体はどれかを見極めます。属性の見方と一致率の計算方法は、インフルエンサーのフォロワー属性分析と一致率の見方で詳しく解説しています。

また、同じファンが複数の媒体をフォローしている場合、媒体を増やしても新しい人には届きません。熱心なファンほど複数媒体をフォローする傾向があるため、媒体を足すときは「どれだけ新しい人に届くか」も意識します。媒体間の重なりは厳密には測れませんが、コメント欄に同じアカウント名が繰り返し登場するか、各媒体の属性が大きく違うかを見ると、おおよその傾向をつかめます。

媒体間の送客導線

複数SNS展開力が高い発信者は、媒体同士をつなぐ導線を自然に設計しています。TikTokの短尺動画で興味を持った人をYouTubeの詳しいレビューに誘導する、Instagramのストーリーズで投稿の公開を予告する、Xで投稿の裏話を補足するといった動きです。過去のPR投稿で、こうした媒体間の誘導がどのように行われていたかを確認すると、依頼時に媒体ごとの役割分担を提案してもらえるかどうかが分かります。導線を設計できる発信者には、媒体ごとの投稿内容を細かく指定するより、目的を伝えて構成案を出してもらう方が成果につながりやすくなります。

媒体横断の発信力を見るときのチェック

  • どの媒体の投稿も、同じ人物の発信として違和感なく見られますか。
  • 媒体ごとに、尺・話し方・冒頭の見せ方を変えていますか。
  • 媒体ごとのフォロワー属性を、インサイトの画面で確認できますか。
  • 過去のPR投稿で、媒体同士をつなぐ誘導が行われていましたか。
  • コメントへの返信が、メイン媒体以外でも行われていますか。

連携投稿の可否と転用の確認項目

連携投稿の可否は、1回の撮影や企画から、複数の媒体向けの投稿をどの形式で作れるかで確認します。連携投稿の形式によって、発信者の制作負担、費用、媒体ごとの成果の出方が大きく変わるため、発注前に形式を決めて合意しておくことが重要です。

連携投稿の3つの形式

連携投稿は、大きく「転載型」「再編集型」「個別制作型」の3つに分けられます。転載型は、1本の動画や画像をそのまま複数の媒体に投稿する形式で、費用は抑えられますが、媒体の文化に合わないと伸びにくくなります。再編集型は、撮影素材は共通にしながら、冒頭の見せ方、尺、字幕、縦横の比率を媒体ごとに編集し直す形式です。個別制作型は、媒体ごとに企画から撮影まで別に行う形式で、成果は出やすい一方で費用と期間がかかります。

形式内容費用の目安向いている場面注意点
転載型同じ投稿を複数媒体にそのまま掲載単媒体の費用に少額を上乗せ告知・キャンペーン案内など情報が中心の投稿他媒体の透かしや画面比率のずれで伸びにくい
再編集型共通素材を媒体ごとに編集し直す単媒体の費用に編集分を上乗せ商品紹介、使用感のレビュー編集の範囲と本数を事前に決める必要がある
個別制作型媒体ごとに企画・撮影から行う媒体数に応じて積み上げ新商品の発売、認知と検討を同時に狙う施策制作期間が長くなり、確認の手間も増える

表の費用の目安は、2026年10月時点で一般的に見られる考え方を整理したもので、実際の金額は発信者や媒体の組み合わせによって異なります。具体的な相場を把握したい場合は、媒体ごとの単価を確認したうえで、形式ごとの上乗せ分を個別に見積もってもらうのが確実です。

転用できる素材とできない素材

連携投稿を依頼する前に、どの素材が転用できるかを発信者と確認します。縦型の短尺動画は、Instagramのリール、TikTok、YouTubeショートの間で転用しやすい素材です。一方で、横型の長尺動画は短尺の媒体にそのままでは使えず、切り抜きの編集が必要になります。また、媒体ごとに使える音源が異なるため、ある媒体の音源を使った動画を別の媒体に転載すると、音声が使えなかったり、権利の問題が生じたりすることがあります。BGMや効果音をどう扱うかは、発信者が媒体ごとのルールを理解しているかを確かめるうえでも有効な質問です。

媒体ごとの作り直しにかかる手間

連携投稿の質は、発信者が媒体ごとの作り直しにどれだけ手間をかけられるかで決まります。過去のPR投稿を媒体ごとに見比べ、冒頭の数秒、字幕の入れ方、投稿文の長さ、ハッシュタグの付け方が媒体に合わせて変えられているかを確認します。すべての媒体で同じ字幕・同じ尺の動画が並んでいる場合は、転載型が中心の発信者と考えられます。転載型が悪いわけではありませんが、再編集型を前提に費用を支払うのであれば、作り直しの範囲を契約書や依頼書に明記しておく必要があります。

インサイトデータで裏付ける手順

複数SNS展開力は、公開されている数字だけでなく、発信者から提供してもらうインサイトデータで裏付けます。インサイトとは、各媒体のアプリ内で本人だけが見られる分析データのことで、フォロワー外への表示やフォロワー属性など、外からは見えない情報を確認できます。

依頼するスクリーンショットの項目

インサイトは、媒体ごとに次の項目のスクリーンショットを依頼すると、比較しやすくなります。フォロワー属性(性別・年齢・地域)、直近30日または90日のリーチ数や表示回数、過去のPR投稿の個別の成果(再生数・保存数・リンクのクリック数)の3種類です。媒体ごとに期間をそろえて提出してもらうと、媒体間の比較がしやすくなります。依頼する際は、提出されたデータを選定以外の目的に使わないことを伝え、取り扱いに配慮します。

数値の読み方と想定例

媒体ごとのインサイトがそろったら、依頼予定の媒体ごとに「1投稿あたり何人に届きそうか」を見積もります。ここでは、あくまで考え方を示すための想定例として、Instagramのフォロワー8万人・TikTokのフォロワー6万人の発信者を考えます。Instagramのリール再生数の中央値が2万回、TikTokの再生数の中央値が8,000回であれば、フォロワー数の差は小さくても、実際に届く人数は2倍以上の差があることになります。この場合、TikTokの投稿にInstagramと同じ費用を支払うと、1再生あたりの費用は2倍以上になります。媒体ごとに再生単価を出して比べると、どの媒体に費用をかけるべきかが明確になります。

項目(想定例)InstagramTikTok
フォロワー数8万人6万人
直近15本の再生数の中央値2万回8,000回
投稿1本の費用(仮定)10万円10万円
1再生あたりの費用5円12.5円

上の表は計算方法を示すための仮定の数字であり、実際の相場や特定の発信者の数値ではありません。再生単価だけで判断せず、保存数やリンクのクリック数など、目的に合った指標でも同じように比べると、より実態に近い判断ができます。

不自然な数値のサイン

媒体ごとのインサイトを見比べると、不自然な数値に気付けることがあります。ある媒体だけフォロワー数に比べて反応が極端に少ない、フォロワーの地域が海外に大きく偏っている、ある時期に短期間でフォロワーが急増しているといった場合は、購入されたフォロワーが含まれている可能性があります。複数媒体を運用している発信者は、伸び悩んだ媒体だけ数字を水増ししているケースもあるため、媒体ごとに確認することが大切です。具体的な見分け方は、フェイクフォロワーの見分け方と選定でのチェック手順で解説しています。

契約・表記・権利で確認すべき項目

複数SNSで投稿を依頼する場合は、媒体ごとにPR表記、二次利用の範囲、費用の内訳を契約前に確認します。媒体が増えるほど確認すべき項目も増えるため、口頭の合意ではなく、依頼書や契約書に媒体ごとの条件を書き分けておくことが重要です。

媒体ごとのPR表記

2023年10月1日から、景品表示法に基づくいわゆるステルスマーケティング規制が施行されており、企業が依頼したPR投稿は、広告であることが一般の消費者に分かるように表示する必要があります(消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準)。複数媒体で投稿する場合は、すべての媒体で表記が必要です。各媒体にはタイアップ投稿ラベルなど独自の表示機能がありますが、機能の名称や仕様は変わることがあるため、最新の仕様は各媒体の公式ヘルプで確認してください。転載型の投稿では、元の媒体で付けた表記が別の媒体では表示されないこともあるため、媒体ごとに表記が入っているかを公開後に確認します。表記の考え方は、ステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドも参考にしてください。個別の表現が問題ないかの判断は、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。

二次利用と投稿媒体の範囲

投稿素材を広告や自社サイトで使いたい場合は、どの媒体の素材を、どの範囲で、どのくらいの期間使えるかを決めておきます。複数媒体で投稿してもらうと、縦型動画・横型動画・静止画など素材の種類が増えるため、素材ごとに利用範囲を書き分ける必要があります。また、発信者のアカウントから広告を配信する手法を使う場合は、媒体ごとに権限の付与方法が異なるため、事前に対応できるかを確認します。権利の考え方は、インフルエンサー投稿の肖像権・著作権対応と二次利用の範囲で詳しく解説しています。

費用の積み上げ方

複数媒体の費用は、媒体ごとの単価を合計するだけでなく、形式ごとの上乗せと、まとめて依頼する場合の調整を分けて考えると整理しやすくなります。たとえば、メイン媒体の投稿を基本料金とし、サブ媒体への転載は少額の追加、再編集は編集の手間に応じた追加、個別制作は媒体ごとの通常単価という形で内訳を出してもらいます。内訳が分かれていれば、成果が出なかった媒体を次回から外す判断もしやすくなります。逆に「複数媒体セットでいくら」という見積もりだけでは、どの媒体にいくら払っているのかが分からず、次回の改善につなげにくくなります。

契約前に書き分けておきたい項目

  • 投稿する媒体と、媒体ごとの本数・形式(転載・再編集・個別制作)を決めましたか。
  • すべての媒体でPR表記を入れることを、依頼書に明記しましたか。
  • 素材ごとの二次利用の範囲・期間・媒体を書き分けましたか。
  • 媒体ごとの費用の内訳を、見積もりで確認しましたか。
  • 公開後のインサイト提出を、媒体ごとに依頼しましたか。

複数SNS展開力の評価シート

複数SNS展開力は、5つの軸で採点すると、担当者ごとの判断のぶれを抑えられます。感覚で「いろいろな媒体で活躍している」と判断するのではなく、同じ基準で候補者を比べることで、社内での説明もしやすくなります。

5軸の採点表

下の表は、複数SNS展開力を評価するための採点表の例です。各軸を1〜5点で採点し、合計25点満点で比べます。軸の重みは案件の目的によって変えてかまいません。たとえば、素材の二次利用が主な目的であれば「連携投稿の対応力」の重みを大きくし、認知の拡大が目的であれば「サブ媒体の実力」の重みを大きくします。

評価軸確認する内容5点の状態1点の状態
メイン媒体の実力再生数・保存数の中央値、直近の伸び中央値が安定し、直近3か月も伸びている一部の投稿だけが伸び、他は低い
サブ媒体の実力依頼予定のサブ媒体の中央値と更新頻度メイン媒体の半分以上の成果が出ているほとんど更新されていない
媒体横断の一貫性世界観・トーン・ファン層の重なり方同じ人として信頼され、見せ方は媒体ごとに最適化媒体ごとに別人のような発信
連携投稿の対応力再編集の経験、素材の種類、導線の設計再編集と送客導線の提案ができる転載しかできず、透かしも残る
データの開示と信頼性インサイトの提出、数値の自然さ媒体ごとに期間をそろえて提出できる提出を断る、または数値に不自然な点がある

判定ラインと起用パターン

採点の結果は、合計点だけでなく、どの軸が低いかで起用の仕方を変えると活用しやすくなります。合計20点以上で、すべての軸が3点以上であれば、複数媒体をまとめて依頼する候補になります。合計が高くてもサブ媒体の実力が2点以下であれば、メイン媒体だけに依頼し、サブ媒体は転載型の少額追加にとどめる方が費用対効果は良くなります。連携投稿の対応力が低い場合は、編集を自社や制作会社で行う前提で、素材の提供だけを依頼する方法もあります。データの開示が1点の場合は、他の軸が高くても起用を見送る判断が無難です。選定全体の評価方法は、失敗しないインフルエンサー選定7つのポイントもあわせて確認してください。

見誤りやすいポイント

評価シートを使っても見誤りやすいポイントがいくつかあります。1つ目は、有名な媒体の数字に引きずられ、サブ媒体の弱さを見落とすことです。2つ目は、過去のバズ投稿を実力と考えてしまうことで、1本の大ヒットは再現できるとは限りません。3つ目は、PR投稿の成果を確認せずに、通常の投稿だけで判断することです。PR投稿では反応が落ちる発信者もいるため、過去のPR投稿の数字も必ず確認します。4つ目は、媒体ごとのファン層の違いを無視することで、届けたい相手がいない媒体に費用をかけてしまう原因になります。

発注から公開までの進め方

複数SNSでの発注は、メイン媒体を1つ決め、その媒体の企画を軸にサブ媒体の役割を足していく順番で進めると失敗しにくくなります。媒体ごとの役割、公開の順番、振り返りの指標を事前に決めておくことで、施策の後に「どの媒体が効いたのか」を判断できるようになります。

依頼時に伝える情報

発注時には、施策の目的、ターゲット、媒体ごとの役割、連携投稿の形式、PR表記のルール、二次利用の範囲、公開後に提出してほしいデータの7点を伝えます。特に媒体ごとの役割は、「TikTokで新しい人に知ってもらい、Instagramで保存してもらい、YouTubeで比較検討の材料にしてもらう」のように具体的に伝えると、発信者が構成を考えやすくなります。表現の細部は発信者に任せる余地を残し、守ってほしい事項と自由に表現してよい部分を分けて伝えることが、成果の出る投稿につながります。

公開の順番とスケジュール

複数媒体の公開日は、すべて同じ日にするより、役割に合わせて順番を決めた方が効果を測りやすくなります。たとえば、ストーリーズやXで公開を予告し、当日に短尺動画を公開し、数日後に詳しいレビューを公開する流れにすると、媒体ごとの反応を時系列で確認できます。ただし、間隔を空けすぎると話題が途切れるため、1〜2週間以内にすべての媒体の公開を終えるのが目安です。制作期間は、再編集型であれば単媒体の制作期間に数日を足し、個別制作型であれば媒体の数に応じて余裕を持たせて設定します。

施策後の振り返り

公開後は、媒体ごとにインサイトを提出してもらい、事前に決めた指標で成果を比べます。再生数や保存数のほか、媒体ごとに専用のリンクやクーポンコードを用意しておくと、どの媒体から購入や問い合わせにつながったかを把握しやすくなります。振り返りの結果、成果が出た媒体は次回も継続し、成果が出なかった媒体は外すか形式を変えて再挑戦します。こうした検証を重ねると、その発信者の「本当に強い媒体」が分かり、次回以降の発注の精度が上がります。

Bloomでは、審査を通過したインフルエンサー30,000人の中から、ジャンルやフォロワー層を見ながら候補を探せます。案件を公開して応募を募る形にすると、依頼したい媒体での発信に意欲のある発信者から手を挙げてもらえるため、媒体ごとの実力を比較しながら選べます。複数の媒体での投稿を条件にしたい場合は、案件の募集内容に媒体ごとの本数や形式を明記し、応募者のアカウントを本記事の評価シートで採点すると、選定の判断がそろいやすくなります。料金は初期費用0円・月額3万円(税別)から利用できます。

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