インフルエンサーから上がってきた投稿案を前にして、どこまで直してよいのか迷った経験はないでしょうか。誤字だけを直せばよいのか、表現そのものに踏み込むべきなのか、その基準が社内にないと、担当者ごとに指摘の粒度がばらつき、修正のやりとりが何往復も続きます。逆に何も見ずに公開してしまえば、薬機法や景品表示法に触れる言い回し、PR表記の漏れ、価格やキャンペーン期日の誤りが、そのまま広告主である企業の責任として世に出てしまいます。この記事では、インフルエンサー投稿の校正で確認すべき表現を、PR表記・法規制・数値の根拠・事実関係・表記ゆれ・権利まわりの6つの観点に分解し、2026年9月時点のルールに沿って、そのまま社内で使えるチェックリストと差し戻し基準の形にまとめました。

この記事の要点

  • インフルエンサー投稿の校正とは、公開前の投稿案について、表現が法令・契約・事実に反していないかを確認し、直すべき箇所を具体的に指摘する作業です。文章の好みを整える作業ではありません。
  • 見る順番は、PR表記、薬機法などの業法、景品表示法、事実関係、表記ゆれ、権利まわりの6段階です。この順で見ると、公開を止める重大な指摘が先に出るため、手戻りが最小になります。
  • 指摘は「必ず直す」「できれば直す」「任せる」の3段階に分けて伝えます。段階を付けずに全部を同じ強さで返すと、インフルエンサー本人の言葉が消えて投稿の説得力が落ちます。
  • PR表記は、キャプション冒頭など投稿を開いた瞬間に目に入る位置に、広告だと一読でわかる言葉で置きます。大量のハッシュタグの末尾に紛れている状態は、消費者庁の運用基準に照らして危険です。
  • 校正の工数は依頼段階で決まります。NG表現の一覧と必須文言を依頼書に添えて渡しておけば、上がってくる原稿の差し戻し回数は目に見えて減ります。

インフルエンサー投稿の校正で見る範囲と担当の分け方

インフルエンサー投稿の校正とは、公開前の投稿案について、文章と画像の表現が法令・契約・事実に反していないかを確認し、修正が必要な箇所を具体的に指摘する作業です。誤字脱字を拾うだけの作業ではありませんし、文章の好みを企業側の趣味に寄せる作業でもありません。公開したあとに取り返しがつかなくなる部分を、公開前に止めることが目的になります。

ここを最初に定義しておかないと、校正の範囲が担当者ごとに広がったり狭まったりします。ある担当者は語尾の言い回しまで直し、別の担当者は法令表現を見落とすという状態は、チェック体制がないのと同じです。まず何を見る作業なのかを社内で一文にしてから、担当を割り振ってください。

校正・校閲・監修の線引き

実務では3つの作業が混ざりがちですので、分けて考えると指摘が整理されます。校正は、表記や文字そのものの誤りを直す作業です。校閲は、書かれている内容が事実と合っているかを確認する作業です。監修は、その分野の専門家が内容の妥当性を保証する作業になります。

インフルエンサー投稿で企業が担うのは、主に校正と校閲です。監修が必要になるのは、医薬品的な効能に触れる商材や、医療・金融のように専門家の確認が前提になる分野に限られます。自社の商材がどこに当たるかを先に決めておくと、毎回の判断で迷わなくなります。

誰が何を見るかの役割分担

校正を1人に集約すると、担当者の知識の範囲がそのままチェックの上限になります。次の表のように観点ごとに見る人を分けておくと、抜けが起きにくくなります。

観点主に見る人見る内容判断の拠りどころ
PR表記施策担当表記の有無・位置・文言景品表示法とプラットフォーム規約
業法表現法務または薬事担当効能・効果の言い回し薬機法・医療広告ガイドライン等
数値と比較施策担当と法務根拠資料の有無景品表示法と社内の根拠ファイル
事実関係商品担当商品名・価格・期日・仕様公式サイトと商品資料
表記ゆれ施策担当ブランド表記と用語の統一ブランドガイドライン
権利まわり施策担当写り込み・素材・音源契約書と素材の利用規約

15名前後の会社であれば、法務専任がいないことのほうが多いはずです。その場合は、業法表現だけを外部の広告審査サービスや顧問弁護士に回し、それ以外は社内で完結させる形が現実的です。全部を外に出すとコストが合いませんし、全部を社内で見ると業法の判断で必ず詰まります。

校正にかけられる時間の現実

投稿案が上がってから公開までに使える時間は、実務では2営業日から3営業日程度しかないことがほとんどです。インフルエンサー側にも撮影と編集の予定がありますので、企業側が1週間抱え込むと投稿日がずれます。逆に当日返しを常態化させると、確認が形だけになります。

目安としては、原稿受領から24時間以内に一次確認を返し、修正版は12時間以内に確認して確定させる形が回しやすい設計です。この時間割を守るために、次の章から解説する観点をチェックリスト化して、毎回ゼロから考えないようにしてください。複数人を同時に動かす場合の締切設計はインフルエンサー20人を同時に動かす進行管理と抜け漏れ対策で詳しく整理しています。

公開前に必ず見るPR表記の位置と文言

PR表記の校正では、投稿を開いた瞬間に目に入る位置にあるか、広告だと一読でわかる言葉になっているかの2点を見ます。表記があるかどうかだけを確認して終わりにすると、実質的に判別できない表示として問題になり得ます。2023年10月1日に施行された景品表示法上の指定告示、いわゆるステマ規制では、事業者の表示であることが一般消費者にとって判別困難な表示が不当表示に当たると定められています。

重要なのは、規制の対象が広告主である企業だという点です。インフルエンサー本人ではなく、依頼した側が責任を負います。表記の判断をインフルエンサー任せにできない理由がここにあります。

表記の位置で見るポイント

位置の確認は、実際にスマートフォンでその投稿を開いた状態を想像しながら行ってください。キャプションが折りたたまれる媒体では、折りたたまれた状態で見える範囲にPR表記が入っている必要があります。「もっと見る」を押さないと表示されない位置にあるものは、直してもらう対象です。

動画では、説明欄の冒頭に置くだけでは足りない場合があります。音声と字幕のどちらでも広告だと伝わる形にしておくと安全です。冒頭数秒にテキストで表示し、あわせて説明欄の1行目にも記載する二重の作りが、現在の実務では標準になりつつあります。

使ってよい文言と避ける文言

文言は、広告だと一読でわかるかどうかで判断します。消費者庁の運用基準では、広告・宣伝・プロモーション・PRといった文言や、企業から提供を受けている旨を文章で書く方法が例示されています。次の表は、実務でよく見る表記を判定したものです。

表記判定校正での扱い
#PR(キャプション冒頭)そのまま通します
#広告 / #プロモーションそのまま通します
「◯◯様からご提供いただきました」文章表記として通します
#PR(30個のタグの末尾)危険冒頭へ移動を依頼します
#sponsored のみ(日本向け投稿)要注意日本語表記の併記を依頼します
#コラボ / #ありがとうございます不可広告と伝わらないため差し替えます
#アンバサダー のみ不可PR表記を別途追加します
画像内に薄い色で小さく表示不可テキストでの明示に変更します

判定の考え方は、その表記を見た人が広告だと気づくかどうかに尽きます。社内で議論が割れたら、その時点で一般消費者にも伝わっていないと考えて、より明確な表記に寄せてください。表記ルールの背景と運用の詳細はステマ規制とは?景表法対応と#PR表記の実務ガイドにまとめています。

プラットフォーム機能との併用

各SNSが用意しているタイアップ投稿ラベルや有料プロモーション表示は、必ず併用してもらってください。機能を使えばハッシュタグは不要という判断は危険です。ラベルは媒体の仕様変更で見え方が変わりますし、外部への転載やスクリーンショットでは残りません。

PR表記で差し戻しが起きやすい3つの型

1つ目は、下書き段階では冒頭にあった表記が、投稿直前にハッシュタグをまとめた際に末尾へ移動してしまう型です。2つ目は、複数枚の画像投稿で1枚目にだけ表記がなく、2枚目以降に入っている型です。3つ目は、ストーリーズで24時間限定の投稿にだけ表記を入れ忘れる型になります。いずれも原稿確認では見つからず、公開直前や公開後に発覚します。公開後すぐにもう一度目視する運用を組み込んでおいてください。

薬機法にかかる表現の見分け方と言い換え

薬機法の観点で見るのは、その商品が持っていない効能を投稿が語っていないかという一点です。化粧品なのに医薬品のような治療効果を語っていないか、健康食品なのに体の特定部位に作用すると読める書き方になっていないかを確認します。判断に迷う表現が出てきたら、まず「これは商品の承認区分で言ってよい範囲か」に置き換えて考えてください。

薬機法の広告規制は、化粧品・医薬部外品・健康食品・医療機器を扱う企業だけの問題ではありません。食品や雑貨でも、体への効果を語れば医薬品的な表現として扱われます。自社商材は関係ないと決めつけずに、一度は観点として通してください。

判定の基本手順

手順は3ステップで固定できます。第1に、投稿の中から体や肌の変化に言及している文をすべて抜き出します。第2に、その表現が商品の承認区分で認められた効能の範囲に収まっているかを確認します。化粧品であれば、厚生労働省が示す化粧品の効能の範囲として56項目が定められており、その外に出る表現は使えません。第3に、範囲外だった表現を、認められた範囲の言葉に置き換えて修正案として渡します。

この3ステップを踏むと、指摘が「なんとなく危ないので消してください」ではなく「この効能は言えないので、この言い方に変えてください」という形になります。インフルエンサー側も納得しやすく、修正が1往復で終わります。

NG表現と言い換えの対応表

実際に上がってくる原稿でよく見る表現を、言い換え例とあわせて整理しました。2026年9月時点で各法律事務所や薬機法審査サービスが公開している解説に共通して示されている考え方に沿ったものです。

商材原稿に出やすい表現問題点言い換え例
化粧品シミが消えました医薬品的な治療効果の標榜になります日やけによるシミ・そばかすを防ぎます
化粧品毛穴が小さくなります身体の変化を断定しています肌を引き締めてキメを整えます
化粧品ニキビが治ります疾病の治療を意味します肌を清潔に保ちます
化粧品アンチエイジング老化を止める意味に読めます年齢に応じた手入れをします
健康食品飲むだけで痩せます医薬品的な効能の標榜になります食事と運動の習慣づくりに取り入れています
健康食品免疫力が上がります身体機能への作用を述べています毎日の健康習慣として続けています
健康食品疲れが取れます身体の不調の改善を意味します忙しい日の習慣にしています
雑貨・食品肩こりが楽になります医薬品・医療機器的な効能になります使ったあとの心地よさを楽しんでいます

言い換え例はあくまで方向性を示すものですので、最終的な可否は商品の承認区分と表示内容の全体で判断してください。商材別の詳しい確認フローは薬機法とインフルエンサー起用の基本と商材別NG表現・確認フローで解説しています。

体験談とビフォーアフターの扱い

体験談は、薬機法の校正でもっとも判断を誤りやすい部分です。効果効能に関する体験談は、「個人の感想です」「効果には個人差があります」といった注記を添えても、医薬品的な効能の標榜であること自体は変わりません。注記を付ければ何でも言えるという理解は誤りですので、原稿の段階で切り分けてください。

ビフォーアフター画像も同様です。使用前後の変化を並べて見せる構成は、変化が商品によるものだと読ませる表現になりますので、商材によっては差し替えを依頼する必要があります。撮影条件や照明が揃っていない写真であればなおさらです。判断に迷ったら、変化そのものではなく使っている場面を見せる構成に振り替えてもらうのが、もっとも早い解決策になります。

景品表示法で問題になる数値・比較・価格の表現

景品表示法で問題になるのは、実際よりも品質が良く見える表現と、実際よりも取引条件が得に見える表現の2つです。前者が優良誤認表示、後者が有利誤認表示と呼ばれます。校正では、投稿の中の数字・比較・価格の3か所を重点的に見れば、この2つはほぼカバーできます。

2024年10月に施行された改正景品表示法では、確約手続の導入とあわせて、優良誤認表示と有利誤認表示に対する直罰規定が新設されました。従来は措置命令や課徴金が中心でしたので、公開前の確認をしていない状態のリスクは以前より重くなっています。

優良誤認になりやすい言い回し

優良誤認で引っかかりやすいのは、根拠のない最上級表現と、数字を伴う効果の断定です。「業界No.1」「日本初」「満足度98%」といった表現は、その根拠を示す調査資料が手元にあり、調査方法まで説明できる場合にだけ使えます。インフルエンサーが善意で書き足した最上級表現が、企業に根拠がないまま公開されるケースが実務では非常に多く見られます。

校正では、数字と最上級表現を機械的に洗い出し、それぞれに根拠資料が紐づくかを確認してください。紐づかないものは削除を依頼します。根拠がある場合も、調査対象・期間・方法を投稿内かリンク先で確認できる状態にしておく必要があります。

有利誤認と価格・期間の表記

価格まわりの表現は、投稿が公開される時点で正しいかどうかで判断します。原稿を書いた時点では正しくても、公開日にはキャンペーンが終わっているという事故が起こります。特に「通常価格からの割引」を示す二重価格表示は注意が必要です。

消費者庁の価格表示に関する考え方では、比較対照に使う価格は最近相当期間にわたって実際に販売されていた価格である必要があるとされています。実務上の目安としては、セール開始前の一定期間に相当日数その価格で販売した実績があるかどうかで判断されます。実績がない価格を通常価格として書いた投稿は、公開前に必ず直してください。

表現の型確認すること根拠がないときの直し方
業界No.1・売上第1位調査機関・調査期間・対象範囲表現ごと削除します
満足度◯%調査対象者数と設問文数値を外して定性表現にします
◯日で実感試験データの有無と商材区分使用期間の事実だけを書きます
通常価格◯円→◯円通常価格での販売実績現在価格のみの表記にします
今だけ・期間限定終了日と公開日の前後関係具体的な終了日を明記します
先着◯名様在庫数と締切の運用実際の上限数に合わせます
初回無料継続課金の条件と解約方法条件を同じ視認性で併記します

打消し表示の見え方

条件や例外を小さく添える打消し表示は、書いてあるかどうかではなく、実際に読めるかどうかで判断されます。動画の最後に1秒だけ表示される注記や、画像の隅に薄い色で入る文字は、打消しとして機能していないと評価される可能性があります。強調表示と同じくらいの視認性で並べる形に直してもらってください。

そもそも打消しが必要な強調表示を使わないほうが、投稿としても読みやすくなります。校正の際は、注記を足す方向ではなく、断定を弱める方向で修正案を出すほうが結果的に早く決着します。

事実関係と固有名詞の照合で防ぐ差し戻し

事実関係の校正は、投稿に出てくる固有名詞・数字・日付を一次情報と一文字ずつ突き合わせる作業です。法令の判断と違って専門知識は不要ですが、集中力が要るため、法令チェックとは別のタイミングで行うほうが精度が上がります。ここを飛ばすと、公開後に「商品名が違う」「価格が古い」という指摘が顧客から入ります。

照合の原則は、記憶で確認しないことです。必ず公式サイトや商品資料の画面を開き、投稿案と並べて見比べてください。特に長い商品名やシリーズ名は、担当者ほど記憶で読み飛ばします。

商品名・ブランド名の表記統一

表記のずれがもっとも起きやすいのが商品名です。大文字と小文字、全角と半角、中黒の有無、スペースの有無、シリーズ名の省略といった要素が組み合わさると、1つの商品名に何通りもの書き方が生まれます。ブランド名が誤って書かれた投稿は、検索でも拾われず、二次利用もしにくくなります。

対策としては、依頼書に正式表記を1行で書いて渡し、校正時にはその1行と投稿案を文字単位で比較する形が確実です。コピーして貼り付けてもらう前提で渡すと、そもそも打ち間違いが起きません。

価格・期間・在庫の照合

価格は、税込か税抜か、送料が含まれるか、定期購入の初回価格かで意味が変わります。投稿では「◯円」としか書かれないことが多いため、どの条件の価格なのかを校正時に確定させてください。税抜価格だけを大きく書いた投稿は、それ自体が有利誤認の入口になります。

キャンペーン期間は、公開日と終了日の関係を必ず確認します。投稿予定日が後ろにずれた場合、期間の記載も連動して直す必要がありますので、公開日を動かしたときに校正をやり直す運用にしておいてください。在庫連動の企画では、売り切れた場合の投稿の扱いも事前に決めておくと安全です。

リンクとコード類の実地確認

投稿に載るURL、クーポンコード、計測用パラメータは、校正時に必ず自分の端末で開いて動作を確認します。目視だけでは、全角混じりのURLや期限切れのコードを見つけられません。特にプロフィール欄のリンクは、投稿とは別の場所を差し替える運用になりますので、投稿公開の直前にもう一度確認してください。

計測用パラメータが投稿ごとに違う場合は、誰の投稿にどのパラメータを渡したかの対応表を持っておくと、校正のたびに照合できます。ここが崩れると、公開後の効果測定がすべて狂います。効果測定の設計はインフルエンサー施策の効果測定の方法と計測ツールで整理しています。

表記ゆれと読みやすさを整える校正の実務

表記ゆれの校正は、読みやすさのためではなく、検索と二次利用のために行います。ブランド名や商品名の書き方が揃っていれば、SNS内検索でも拾われますし、後から広告素材として使うときの整合も取れます。逆に、インフルエンサー本人の言葉づかいまで揃えにいくと、投稿の自然さが失われて成果が落ちます。

ここが校正の中でもっとも線引きが難しい部分です。揃えるべきものと、揃えてはいけないものを、あらかじめ決めておいてください。

統一すべき表記の種類

統一の対象になるのは、企業側が正解を持っている表記だけです。具体的には、ブランド名、商品名、サービス名、会社名、キャンペーン名、機能名、そして商標記号の有無が該当します。これらは正式表記が1つに決まっていますので、ずれていれば直す対象になります。

一方で、話し言葉の語尾、絵文字の量、改行の位置、ひらがなと漢字の使い分けは、インフルエンサー本人の文体です。ここに手を入れると、フォロワーが違和感を覚えて反応が鈍ります。実際、投稿の説得力は語り口の自然さに支えられていますので、企業の広報文らしく直すほど成果は下がります。

直してよい表現と直さない表現の線引き

対象扱い理由
ブランド名・商品名の表記必ず直します正解が1つに決まっています
価格・期日・仕様の記載必ず直します事実と異なると不当表示になります
法令に触れる効能表現必ず直します広告主の責任が問われます
誤字脱字・変換ミス指摘しますブランドの信頼に関わります
語尾や口調直しません本人の文体が投稿の価値です
絵文字・顔文字の量直しませんフォロワーとの距離感を作ります
改行や余白の取り方直しません媒体ごとの読ませ方があります
感想の表現の強さ条件付きで調整します断定が法令に触れる場合のみ直します

この線引きを依頼書の段階で共有しておくと、インフルエンサー側も安心して自分の言葉で書けます。何を直されるかわからない状態だと、当たり障りのない原稿が上がってきて、結果として投稿の質が下がります。

文字数と改行の制約

媒体ごとの表示上限も校正の対象です。折りたたみが発生する位置に重要な情報が来ていないか、ハッシュタグの数が媒体の推奨を超えていないかを確認してください。特にPR表記と、商品名、遷移先の案内は、折りたたみより前に置く必要があります。

動画では、字幕の文字数と表示時間の関係も見ます。1秒あたり4文字から6文字程度が読める速度の目安ですので、それを超える情報量の字幕は読まれません。読ませたい情報が字幕にしかない場合は、キャプションにも書いてもらってください。

画像・動画・音源に潜む権利まわりの確認

画像と動画の校正では、写り込みと素材の出どころの2つを見ます。文章だけを確認して画像を素通りさせると、公開後に第三者から連絡が来る事態につながります。文章の校正と同じ時間をかける必要はありませんが、観点として必ず通してください。

権利まわりは、投稿として公開する場面と、企業が二次利用する場面で必要な確認が変わります。二次利用を予定しているなら、校正の段階で使える素材かどうかまで見ておくと後戻りがありません。

写り込みのチェック

屋外や店内で撮影された写真では、第三者の顔、他社のロゴや看板、キャラクター商品、書籍の表紙などが写り込みます。背景にたまたま写った看板がただちに問題になるわけではありませんが、その要素が画面の主役になっていたり、コラボや推奨があるように見えたりする場合は差し替えを依頼してください。

人物の写り込みは、個人が特定できるかと、その人物が写真の中心になっているかで判断します。判断に迷う場合は、加工での対応を求めるより、別カットへの差し替えを依頼したほうが早く解決します。

音源とフォントのライセンス

短尺動画で使われる音源は、プラットフォームの音源ライブラリから選んだものであっても、商用利用の可否が分かれます。企業案件では使えない音源が含まれることがありますので、案件用の音源は使用可能なものを企業側から指定しておくのが安全です。

動画に使われるフォントやテンプレート素材も同じです。編集アプリの標準素材は問題ないことが多い一方で、外部から入手した素材は利用規約の確認が必要になります。二次利用を予定している場合はとくに、素材の出どころを投稿ごとに記録しておいてください。二次利用の進め方はUGCマーケティングの活用法と二次利用の進め方で解説しています。

加工・レタッチの扱い

商品そのものの見え方を変える加工は、校正で止める対象です。色味を実物と大きく変えるフィルターや、容量が違って見えるトリミングは、商品の内容についての誤認を生みます。雰囲気を作るための一般的な補正と、商品の特徴を偽る加工は分けて考えてください。

体型や肌の加工についても、海外では表示義務を設ける動きが出ています。日本国内で直ちに義務があるわけではありませんが、実物と大きく異なる仕上がりは投稿の信頼を損ないますので、案件のルールとして加工の程度を決めておくと安心です。

商材別に追加で見るべき表現の観点

商材によって、追加で見るべき法令と業界基準が変わります。共通の観点だけで校正を終えると、その業界特有の落とし穴を見落とします。自社の商材が次の表のどこに当たるかを確認し、該当する観点をチェックリストに足してください。

商材追加で見る観点とくに注意する表現
化粧品・医薬部外品薬機法の効能範囲治す・消す・改善する・予防する
健康食品・サプリ薬機法と健康増進法部位への作用・病名・痩せる
美容医療・クリニック医療広告ガイドライン治療体験談・術前術後写真・費用の一部表示
金融・保険金融商品取引法と業界規則元本保証・必ず儲かる・利回りの断定
酒類業界の広告自主基準未成年に見える出演・飲酒の強要表現
食品食品表示法と健康増進法栄養や健康の保持増進に関する断定
不動産宅建業法と不動産の表示規約完全・完璧・格安・日本一
人材・教育職業安定法と誇大広告の規制必ず就職できる・確実に合格する

化粧品と健康食品で分かれる判断

同じ美容系でも、化粧品と健康食品では言える範囲が違います。化粧品は肌に直接使うため、肌表面に関する一定の効能が認められています。一方で健康食品は口から摂るものですので、体の中の変化に触れた時点で医薬品的な効能の標榜になります。「肌がうるおう」は商材によって扱いが変わる表現の代表例です。

校正では、まず商品の区分を確認してから表現を見る順番を徹底してください。区分を確認せずに表現だけを見ると、必要以上に削らせるか、逆に見逃すかのどちらかになります。健康食品の実務は健康食品・サプリのインフルエンサー起用と薬機法対応の実務で詳しく解説しています。

医療・金融で必要になる追加の確認

美容医療やクリニックの案件では、医療広告ガイドラインが適用されます。治療内容や効果に関する体験談は広告として認められておらず、術前術後の写真も詳細な説明なしには使えません。インフルエンサーが自分の体験を語る形式そのものが制約を受けますので、企画の段階から構成を組み直す必要があります。

金融・保険の案件では、利回りや元本の安全性に関する断定が問題になります。個人の運用実績を紹介する形式も、誤解を招く表現になりやすい領域です。いずれの分野も、社内の一般的な校正では判断しきれませんので、専門の確認者を必ず1人置いてください。

校正の指摘を伝えるときの書き方と差し戻し基準

校正の指摘は、必ず直す・できれば直す・任せるの3段階に分けて伝えます。段階を付けずに指摘を並べると、インフルエンサー側は全部を必須と受け取り、原稿が企業の広報文のようになります。それでは投稿の説得力が落ち、成果も下がります。

3段階に分ける効果はもう1つあります。「必ず直す」だけを抜き出せば、公開を止めるべき指摘が何件あるかが一目でわかりますので、社内の承認判断が速くなります。

指摘の3段階と伝え方

区分対象伝え方未対応時の扱い
必ず直す法令違反・事実誤認・PR表記漏れ該当箇所と修正案をセットで示します公開を止めます
できれば直す誤字脱字・表記ゆれ・折りたたみ位置理由を添えて依頼します公開はしますが記録に残します
任せる語尾・絵文字・構成の好み感想として伝えるか伝えませんそのまま公開します

区分を伝えるときは、区分名だけでなく理由を必ず添えてください。「法令上この表現は使えないため」「価格が改定されているため」と書けば、相手は次回から自分で避けられるようになります。理由のない指摘は同じ修正を毎回繰り返す原因になります。

修正依頼の文面の型

修正依頼は、箇条書きで該当箇所を引用し、区分・理由・修正案の3点を並べる形が伝わりやすい型です。文章で長々と説明すると、どこを直せばよいのかが埋もれます。1件につき3行以内を目安にしてください。

修正案まで書いて渡すのが、もっとも往復を減らす方法です。「この表現は使えません」だけを返すと、相手は代替案を考える負担を負い、上がってきた案がまた使えないという往復が生まれます。企業側は自社商材の言える範囲を知っていますので、書ける側が書いたほうが早く終わります。依頼書の作り方はインフルエンサーディレクションの進め方と指示書で整理しています。

何往復までに収めるか

修正のやりとりは、原則2往復までに収める設計にしてください。1往復目で「必ず直す」をすべて出し切り、2往復目で確認して確定させます。3往復目に入る案件は、依頼段階の情報が足りていなかったか、企画そのものに無理があったかのどちらかです。

往復が増えるほど、インフルエンサー側の心証は悪くなります。継続的に起用したい相手ほど、確認の負担を軽くしておくことが次の依頼のしやすさにつながります。継続起用の考え方はインフルエンサーの継続起用と長期契約の設計・運用ガイドにまとめています。

校正を仕組みにして工数を減らす運用設計

校正の工数は、依頼書の作り込みでおおよそ7割が決まります。上がってきた原稿を直す作業を効率化するより、直す必要のない原稿が上がってくる状態を作るほうが、効果がはるかに大きくなります。校正の負担が重いと感じている場合、原因は校正の手順ではなく依頼の内容にあります。

ここでは、依頼段階で渡すもの、社内で持つチェックリスト、そして記録の残し方の3点に絞って設計を示します。

依頼段階で渡すもの

依頼書に添えるのは、正式表記の一覧、必須で入れてもらう文言、使えない表現の一覧、そして参考になる過去の投稿例の4点です。使えない表現の一覧は、抽象的な禁止事項ではなく、実際に差し戻した表現をそのまま並べる形が効きます。「治る」「消える」「必ず」といった具体的な単語で示してください。

参考投稿を1本添えるだけでも、上がってくる原稿の質は変わります。文章で説明するより、実物を見せたほうが早く伝わるためです。PR投稿の構成パターンは成果が出るPR投稿クリエイティブの作り方と7パターンで紹介しています。

公開前チェックリストの持ち方

チェックリストは、観点ごとに並べて、上から順に見るだけで終わる形にしてください。次の一覧は、この記事で扱った観点を実務の順番に並べたものです。自社の商材に合わせて行を足し引きして使えます。

確認項目区分
1PR表記が冒頭など目立つ位置にあります必ず直す
2PR表記の文言が広告と一読でわかります必ず直す
3プラットフォームのタイアップ機能を併用しています必ず直す
4効能・効果の表現が商材の区分の範囲内です必ず直す
5体験談が医薬品的な効能を語っていません必ず直す
6ビフォーアフター画像の扱いが商材の基準に合っています必ず直す
7最上級表現と数値に根拠資料があります必ず直す
8二重価格表示に販売実績の裏づけがあります必ず直す
9キャンペーンの期日が公開日と整合しています必ず直す
10打消し表示が強調表示と同じ視認性で読めます必ず直す
11商品名・ブランド名が正式表記と一致しています必ず直す
12価格の税込・税抜と送料の条件が明確です必ず直す
13URLとクーポンコードが実機で動作します必ず直す
14計測用パラメータが投稿ごとに正しく割り当てられています必ず直す
15他社ロゴや第三者が主役として写り込んでいません必ず直す
16音源とフォントが商用利用の条件を満たしています必ず直す
17商品の見え方を偽る加工がありません必ず直す
18商材別の追加観点を通しています必ず直す
19誤字脱字と変換ミスがありませんできれば直す
20重要な情報が折りたたみより前にありますできれば直す
21字幕の情報量が読める速度に収まっていますできれば直す
22ハッシュタグの数と内容が媒体の運用に合っていますできれば直す
23語尾や絵文字は本人の文体のままです任せる

チェックリストを機能させる3つの条件

1つ目は、確認した人の名前と日時を残すことです。誰も名前を書かないチェックリストは、いずれ形だけになります。2つ目は、差し戻した実例を項目に追記していくことです。実際に起きた事故が並んでいるリストは読まれます。3つ目は、公開後にもう一度同じリストで見ることです。原稿確認では正しかったのに、投稿時に崩れた箇所を拾えます。

記録を残して次に活かす

校正の記録は、案件ごとに1枚のシートにまとめておいてください。残すのは、確認日時、確認者、指摘件数、区分別の内訳、そして差し戻した表現そのものです。3案件ぶんも溜まれば、自社の商材で繰り返し出る表現の傾向がはっきり見えてきます。

傾向がわかったら、依頼書のNG表現一覧に追記します。この循環が回り始めると、校正にかかる時間は案件ごとに短くなっていきます。逆に記録を残さない運用では、担当者が変わるたびに同じ事故が起こります。

なお、複数のインフルエンサーを同時に動かす施策では、原稿の回収と確認状況の管理そのものが負担になります。Bloomのようなマッチングプラットフォームを使うと、依頼から原稿の受け取り、投稿URLの回収までを同じ画面で管理できますので、誰の原稿が未確認なのかを探す時間がなくなります。校正の質を上げる前に、まず原稿が集まる場所を1か所にまとめることをおすすめします。

本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。