インフルエンサーマーケティングの市場規模は、国内で年間860億円(2024年・サイバー・バズ/デジタルインファクト調べ)、2029年には1,645億円に達すると予測されている成長市場です。この記事は、事業会社のマーケティング担当者に向けて、2026年7月時点で公表されている国内外の市場データを一箇所に集め、推移と予測、SNS媒体別の内訳、広告費全体との比較、企業側の実施状況、単価トレンドまでを表で整理しました。単に数字を並べるのではなく、それぞれの数値が自社の予算配分と施策設計にとって何を意味するのかまで踏み込んで解説します。

この記事の要点

  • 国内のインフルエンサーマーケティング市場は2024年で860億円、2029年に1,645億円へ約1.9倍に伸びる予測です(サイバー・バズ/デジタルインファクト、2024年11月発表)。
  • 上位概念のソーシャルメディアマーケティング市場は2024年で1兆2,038億円。うち約89%はソーシャル広告で、インフルエンサー枠は約7%にとどまります。
  • 縦型ショート動画のインフルエンサー起用は2024年246億円・前年比137%で、市場内で最も伸び率の高い領域です。
  • 日本の総広告費は2025年に8兆623億円、インターネット広告費が初めて過半数の50.2%を占めました(電通、2026年3月発表)。
  • 市場拡大は単価上昇と表裏一体のため、相場より安く調達する手段を持てるかどうかが中小企業の分岐点になります。

インフルエンサーマーケティング市場規模の基礎データ

インフルエンサーマーケティングの国内市場規模は、2024年時点で860億円です。これはサイバー・バズとデジタルインファクトが2024年11月13日に発表した「国内ソーシャルメディアマーケティングの市場動向調査」による推計で、前年比116%の伸びを示しています。国内でこの領域を継続的に定点観測している調査は限られており、2026年7月時点でも同調査が国内市場規模の事実上の標準指標として引用されています。

市場規模の定義と数え方

インフルエンサーマーケティング市場とは、企業がSNS上の発信者に投稿・動画制作・出演などを依頼するために年間で支出する費用の総額を指します。ここには発信者への報酬だけでなく、仲介する代理店やキャスティング会社に支払うフィー、企画やディレクションの費用も含まれます。一方で、企業が自社アカウントを運用するための費用や、SNSプラットフォームに直接支払う広告出稿費は別カテゴリとして集計されるのが一般的です。市場規模の数字を比べるときは、この「どこまでを含めた金額か」がずれていないかを最初に確認してください。

860億円という水準の意味

860億円という金額は、国内の広告市場全体から見れば決して大きくありません。同じ年の国内テレビメディア広告費が1兆円台後半の規模であることを踏まえると、インフルエンサーマーケティングはまだ全体の一部を占めるにすぎない水準です。ただし重要なのは絶対額ではなく伸び率であり、前年比116%という数字は、成熟したマス媒体が横ばいから微減で推移するなかでは突出しています。規模はまだ小さいものの、最も速く伸びている領域である、というのが2026年7月時点の正確な位置づけになります。

数字を見るときの3つの注意点

市場規模のデータを読むときには、いくつか注意すべき点があります。第一に、調査機関ごとに定義が異なるため、国内と海外の数字を単純比較すると桁違いの差が出ることがあります。第二に、公表値の多くは確定値ではなく「見通し」であり、後の調査で遡って修正される場合があります。第三に、ギフティングのように現金が動かない取引や、企業とインフルエンサーが直接契約した小規模な案件は捕捉されにくく、実態は公表値よりやや大きい可能性があります。数字は方向性をつかむための道具と割り切り、細かい桁の一致にこだわらないほうが実務では有用です。施策そのものの前提知識はインフルエンサーマーケティングの基礎ガイドで整理しています。

国内市場規模の推移と2029年までの予測

国内市場は2024年の860億円から、2029年には1,645億円へ約1.9倍に拡大すると予測されています。年平均に直すと約14%の成長が5年間続く計算になり、国内の広告関連市場としては極めて高い水準です。同じ調査シリーズの過去の発表分とあわせて時系列で並べると、成長の連続性がはっきり見えてきます。

年次推移の一覧

以下は、サイバー・バズ/デジタルインファクトの複数年の発表から国内インフルエンサーマーケティング市場規模を抜き出した一覧です。発表年度の異なる推計値が混在するため、備考欄に出典の発表時期を明記しています。

国内市場規模区分備考(出典の発表時期)
2022年615億円実績見通し2022年11月発表分の推計
2024年860億円実績見通し(前年比116%)2024年11月発表分の推計
2025年1,021億円予測2022年11月発表時点の予測値
2027年1,302億円予測2022年11月発表時点の予測値
2029年1,645億円予測2024年11月発表分の予測値

成長率をどう読み解くか

この推移から読み取るべきは、成長が一過性のブームではなく構造的なものだという点です。2022年から2024年までの2年間で約1.4倍に増え、そのうえで2029年までさらに1.9倍という予測が置かれています。伸びの背景には、SNS利用者数そのものの増加ではなく利用時間の伸長、縦型ショート動画の一般化、そして広告を避ける消費者行動の定着があります。企業が「広告枠を買う」から「信頼できる人に語ってもらう」へ支出をシフトさせる動きが続いている、という読み方が妥当です。

予測が保守的に見える理由

1,645億円という2029年の予測値は、現場の体感よりも保守的に映るかもしれません。理由のひとつは、この調査が縦型ショート動画のインフルエンサー起用を別カテゴリとして切り出している点にあります。両者を合算すると2029年で2,281億円規模となり、印象はかなり変わります。また、社員やスタッフを起用する企業内クリエイター施策や、UGCの二次利用にかかる費用など、インフルエンサーマーケティングと隣接しながら別枠で集計される支出も増えています。企業が実際に「SNS上の人の発信力へ投じる金額」は、公表される市場規模より一段大きいと考えたほうが実態に近くなります。

ソーシャルメディアマーケティング市場での位置づけ

インフルエンサーマーケティングは、1兆2,038億円のソーシャルメディアマーケティング市場のうち約7%を占める領域です。同じ調査では、SNSを使った企業のマーケティング支出全体を6カテゴリに分けて推計しており、その内訳を見ると資金がどこに集中しているかが一目でわかります。

2024年のカテゴリ別内訳

次の表は、サイバー・バズ/デジタルインファクトが2024年11月に発表した2024年のカテゴリ別内訳です。構成比は市場全体1兆2,038億円に対する概算値になります。

カテゴリ2024年の市場規模構成比の目安前年比
ソーシャルメディア広告1兆727億円約89%
インフルエンサーマーケティング860億円約7%116%
インフルエンサーマーケティング(縦型ショート動画)246億円約2%137%
アカウント運用支援・企画・分析ツール等約205億円約2%
市場全体1兆2,038億円100%113%

広告とインフルエンサーの役割分担

構成比が示すのは、SNS関連支出の圧倒的多数がいまだ広告出稿だという事実です。運用型広告は配信量と成果を機械的にコントロールできるため予算を積みやすく、社内の説明もつけやすい特性があります。対してインフルエンサー施策は、人が介在する分だけ運用の再現性が読みにくく、予算を大きく張りにくい構造にあります。この差を埋める鍵が効果測定であり、成果を数字で示せるようになるほど社内予算は取りやすくなります。測定の具体的な手順はインフルエンサー施策の効果測定の方法と計測ツールで解説しています。

「7%」を機会として読む

この7%という構成比は、裏を返せば伸びしろの大きさを示しています。ソーシャル広告のクリック単価は上昇傾向が続いており、広告一辺倒の運用では効率が頭打ちになる企業が増えています。そこで、広告で刈り取る前段の「信頼形成」をインフルエンサー投稿に担わせ、良質な投稿素材を広告クリエイティブへ二次利用して広告効率も同時に改善する、という組み合わせが実務で定着しつつあります。7%の枠を10%、15%へ引き上げる企業が増えるほど、市場規模の予測は上振れしていくと考えられます。

SNS媒体別の市場規模と利用者データ

媒体別では、YouTubeが280億円、Instagramが260億円で市場を二分しています。これも2024年のサイバー・バズ/デジタルインファクト調査による内訳で、金額ではYouTubeがわずかに上回る一方、案件数ではInstagramが上回るというのが実務での感覚です。媒体選定を市場データから判断するには、市場規模と利用者数の両方を並べて見る必要があります。

媒体別の市場規模と国内利用率

次の表は、媒体別の市場規模(サイバー・バズ/デジタルインファクト、2024年11月発表)と、国内のネットユーザーに占める利用率(ICT総研「2024年度 SNS利用動向に関する調査」、2025年1月22日発表)を並べたものです。

SNS2024年の起用市場規模国内利用率施策上の特徴
YouTube280億円65.4%尺が長く説明力が高い一方、単価も高めです
Instagram260億円54.5%案件数が最多。ビジュアル商材と好相性です
TikTok縦型ショート動画246億円の主戦場30.6%伸び率が最も高く、フォロワー外への拡散が期待できます
X(旧Twitter)個別内訳の公表なし55.9%拡散性が高く、話題化と即時性に強みがあります
LINE個別内訳の公表なし74.7%利用率は首位ですが、発信型のPRには向きません

SNS利用者数はすでに8,450万人規模

ICT総研の同調査によると、国内のSNS利用者数は2024年末時点で8,452万人、ネットユーザーに占める普及率は79.0%です。2026年末には8,550万人・80.1%に達する見通しとされており、利用者の絶対数はすでに飽和に近づいています。つまり今後の市場成長は「使う人が増えるから」ではなく、「一人あたりの利用時間と購買への影響力が増すから」起きるという構図になります。この違いは施策設計に直結し、リーチの取り合いよりも、いかに深く刺さる文脈で語ってもらうかが競争軸になります。

TikTokの伸びが示す媒体シェアの変化

同調査ではTikTokの利用率が前回調査から約11ポイント増え、Facebookを抜いて国内5位に浮上しました。総務省「令和7年版 情報通信白書」でも、TikTokの利用率は10代で65.7%、20代で58.7%と若年層への浸透が突出しています。若年層をターゲットにする商材であれば、市場規模の絶対額が小さいTikTokにあえて予算を寄せる判断が合理的になる場面もあります。媒体ごとの向き不向きはInstagram・TikTok・YouTubeの媒体比較で詳しく整理しています。

世界のインフルエンサーマーケティング市場規模

世界のインフルエンサーマーケティング市場規模は、2025年時点で約325億ドルです。Influencer Marketing Hubが公表している年次のベンチマークレポートによる数字で、2026年には400億ドル前後まで伸びるとの見通しが複数の調査会社から示されています。ただし海外の推計は調査機関によって定義も金額も大きく異なるため、絶対値ではなく成長の方向性をつかむ目的で使うのが安全です。

海外データの扱いには注意が必要です

グローバル市場規模は、調査機関によって同じ年でも2倍以上の開きが出ることがあります。プラットフォームの利用料やツール費用を含めるか、EC連携のアフィリエイト報酬を含めるかで定義が変わるためです。社内資料に引用するときは、必ず調査機関名と発表時期をセットで記載し、複数のソースを並べてレンジで示してください。

日本市場が世界に占める比率

国内の860億円を1ドル150円で概算すると約5.7億ドルとなり、世界市場325億ドルに対して2%弱にとどまります。日本の総広告費が世界の広告市場に占める比率はこれより明確に大きいため、インフルエンサーマーケティングに限っては日本の投資水準が国際的に見て低いと言えます。この差は、日本企業がマス広告と運用型広告に予算を厚く配分してきた歴史の裏返しでもあり、裏を返せば今後のシフト余地が大きいことを意味します。

海外先行トレンドから読む次の展開

海外市場で先行している動きは、数年遅れで国内にも波及する傾向があります。具体的には、単発のPR投稿から長期契約のアンバサダー化への移行、EC売上に連動した成果報酬型契約の普及、そしてクリエイター自身がブランドを立ち上げる動きです。いずれも「一度きりの発注」から「継続的な関係構築」へ重心を移す方向で共通しています。長期関係の設計方法はアンバサダープログラムの設計と運用の始め方にまとめました。

成長率の高さが意味すること

世界市場は2020年前後の100億ドル規模から5年ほどで3倍以上に拡大しており、年平均で30%前後の成長を続けてきた計算になります。これほどの成長が続く市場では供給側であるインフルエンサーの数も急増しますが、同時に質の高い発信者の取り合いは激しくなります。市場が伸びている今のうちに、相性の良い発信者との関係を先に築いておくことが、数年後の調達コストを左右します。

広告費全体から見たSNS・動画へのシフト

日本の総広告費は2025年に8兆623億円となり、インターネット広告費が初めて構成比の過半数を超えました。電通が2026年3月5日に発表した「2025年 日本の広告費」によるもので、総広告費は前年比105.1%と4年連続で過去最高を更新しています。インフルエンサーマーケティングの市場規模を正しく位置づけるには、この上位の資金の流れを押さえておく必要があります。

2025年の広告費の主要数値

電通の同発表および「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」から、市場を理解するうえで重要な数値を抜き出しました。

区分2025年の金額前年比補足
総広告費8兆623億円105.1%4年連続で過去最高を更新
インターネット広告費4兆459億円110.8%構成比50.2%で初の過半数
マスコミ四媒体広告費2兆2,980億円98.4%前年水準を維持
インターネット広告媒体費3兆3,093億円111.8%
ソーシャル広告費1兆3,067億円118.7%媒体費の39.5%
動画(ビデオ)広告費1兆275億円121.8%推定開始以降で初の1兆円突破

ソーシャルと動画が同時に伸びている

注目すべきは、ソーシャル広告費が118.7%、動画広告費が121.8%と、いずれもインターネット広告全体の伸びである110.8%を大きく上回っている点です。この2つが重なる領域、すなわちSNS上の縦型動画こそが、いま最も資金の集まっている場所になります。インフルエンサーによる縦型ショート動画の市場が前年比137%と突出して伸びているのは、この大きな潮流の一部として説明できます。

2026年の見通し

電通デジタルの同分析では、2026年のインターネット広告媒体費を3兆5,840億円(前年比108.3%)、動画広告費を1兆1,783億円(同114.7%)と見通しています。伸び率はやや緩やかになるものの、動画が全体を牽引する構図は変わりません。自社の予算配分を検討する際は、この「動画が伸びる前提」に自社の制作体制が追いついているかを点検してください。動画クリエイティブを内製で量産するのは難易度が高く、だからこそ制作能力を持つインフルエンサーへの外部委託が合理的な選択肢になります。

企業側の実施状況と課題のデータ

実施企業が抱える最大の課題は、効果測定の難しさです。PLAN-Bが2025年2月21日から3月13日にかけてインフルエンサーマーケティング実施経験者160名に行った調査では、「効果測定が難しい」が40.0%で最多となり、「成果が予測しづらい」が39.4%、「発信情報のコントロールが難しい」が31.3%と続いています。市場規模が伸びる一方で、現場の運用課題は明確に残っているという構図です。

課題と選定基準の実態

同調査の主要な数値を整理すると、企業が何に困り、何を基準に発信者を選んでいるかが見えてきます。

設問カテゴリ項目回答率
実施上の課題効果測定が難しい40.0%
実施上の課題成果が予測しづらい39.4%
実施上の課題発信情報のコントロールが難しい31.3%
選定時に重視する情報投稿の定量指標(インプレッション・いいね・保存数など)32.5%
選定時に重視する情報過去のPR実績データ20.1%
二次利用コンテンツの二次利用を実施している61.3%

二次利用が標準運用になりつつある

この調査で特に示唆的なのは、実施企業の61.3%がコンテンツの二次利用を行っている点です。二次利用の内訳はチラシ・POP・営業資料への掲載が44.9%、広告クリエイティブへの活用とWebサイト掲載がそれぞれ42.9%となっています。さらに二次利用の効果として「商品・サービスの新たな訴求軸や活用法の発掘」が52.0%、「コンバージョン率の向上」が33.7%、「売上の向上」が30.6%と報告されており、投稿を一度きりで終わらせない運用が費用対効果を押し上げていることがわかります。二次利用の具体的な進め方はUGCマーケティングの活用法と二次利用の進め方で手順ごとに解説しています。

課題データが示す打ち手

課題の上位2つがいずれも「成果の見えにくさ」に関するものである以上、打ち手は明確です。発注前にKPIと計測方法を決め、専用クーポンコードやUTMパラメータで流入と売上を紐づけ、投稿単位で結果を残す運用を最初から組み込んでください。加えて、選定時に重視される情報の1位が投稿の定量指標である点も見逃せません。フォロワー数ではなくエンゲージメント指標で選ぶことが、すでに現場の標準になりつつあります。指標の見方はエンゲージメント率の目安と見方にまとめました。

単価トレンドと費用相場の水準

2026年7月時点の一般的な水準として、インフルエンサー起用のフォロワー単価は1人あたり2〜4円が目安です。市場が拡大し発注企業が増えるほど、人気のある発信者の単価は上昇圧力を受けます。ここで示すのは公開されている料金表を横断して整理した目安であり、確定した公式統計ではないため、交渉の出発点として扱ってください。

フォロワー層別の費用目安

次の表は、2026年7月時点で一般に流通しているフォロワー層別の1投稿あたり費用の目安です。実際の金額は媒体・ジャンル・二次利用の範囲によって上下します。

フォロワー数1投稿の費用目安単価が動きやすい要因
ナノ〜1万人ギフティング〜5万円実績の有無で大きく変わります
マイクロ1万〜10万人3万〜15万円ジャンル人気と稼働率で変動します
ミドル10万〜30万人15万〜80万円専属契約の有無が影響します
マクロ30万〜100万人50万〜200万円事務所フィーが上乗せされます
メガ100万人〜200万円〜タレント性と競合排除条件で跳ね上がります

媒体によって単価の水準が違う

同じフォロワー数でも、媒体によって単価の水準は変わります。2026年7月時点の目安として、Instagramのフィード投稿はフォロワー単価2〜3円、YouTubeの動画内紹介は4〜6円程度と、制作工数の大きい媒体ほど高くなる傾向があります。TikTokはフォロワー単価が比較的抑えられる一方、フォロワー外への拡散が見込めるため、単価あたりの到達効率で見ると有利になる場面があります。層別・媒体別の詳しい算定ロジックはインフルエンサー起用の料金相場ガイドで個別に解説しています。

単価上昇に対する現実的な備え

市場が年率14%前後で伸びる環境では、人気ジャンルの発信者の単価も同じ方向に動きます。中小企業が取れる備えは3つあります。第一に、成果が出た発信者とは早めに継続契約へ移行し、価格を固定することです。第二に、ミドル以上に一点集中するのではなく、マイクロ層を複数起用して単価変動の影響を分散することです。第三に、仲介マージンの薄い調達経路を持っておくことです。相場の1/3で始められる調達手段があるかどうかで、同じ予算から得られる投稿数は数倍変わります。

市場を動かす3つの構造変化

市場の伸びを牽引しているのは、縦型ショート動画・AI活用・ナノマイクロ層へのシフトという3つの構造変化です。いずれも一時的な流行ではなく、費用構造や制作フローそのものを変える動きであり、市場規模の予測値の前提になっています。

変化1:縦型ショート動画の主流化

インフルエンサー起用のうち縦型ショート動画は、2024年に246億円・前年比137%となり、2029年には636億円へ拡大すると予測されています。市場全体の伸び率を大きく上回るペースで、5年で約2.6倍という計算になります。背景には、TikTok・Instagramリール・YouTubeショートの3媒体が横並びで縦型を推している構造があり、1本の動画を複数媒体へ展開できる効率の良さも普及を後押ししています。写真中心の運用しか経験がない企業にとっては、動画で語れる発信者を確保できるかどうかが今後の分かれ目になります。

変化2:AIとバーチャルインフルエンサーの浸透

Influencer Marketing Hubが2026年4月に公開した年次ベンチマークレポートでは、インフルエンサー施策で何らかのAI活用をしていないと答えたマーケターは10.56%にとどまりました。またバーチャルインフルエンサーを起用したことがあるブランドの比率は、前年の60%から73%へ上昇しています。AIは候補選定・偽フォロワー検知・投稿分析といった運用面の効率化から入り、次にクリエイティブ生成へ広がる流れです。ただし消費者が求めているのは実体験に基づく信頼であるため、AIは選定と分析の精度を上げる道具として使い、語りの部分は人に委ねる設計が現実的です。

変化3:ナノ・マイクロ層への予算シフト

単価上昇とエンゲージメント率の低下が同時に起きているマクロ・メガ層から、ナノ・マイクロ層へ予算を移す動きも定着しています。同じ100万円でメガ1名を起用するより、マイクロを10〜30名まとめて起用するほうが、総リーチ・投稿本数・二次利用できる素材数のいずれでも上回るケースが多いためです。市場規模が伸びている割に1件あたりの平均単価が急騰していないのは、この小口・多数化が同時に進んでいることが一因と考えられます。層別の使い分けはマイクロインフルエンサー活用の完全ガイドで詳しく扱っています。

3つの変化に共通する示唆

縦型動画・AI活用・小口多数化はいずれも、「1本の大型契約」から「多数の小さな契約を効率よく回す運用」への移行を意味します。市場が伸びるほど管理する案件数が増えるため、選定から契約・支払い・レポートまでを仕組みで処理できる体制があるかどうかが、そのまま成果の差になって現れます。

データを自社の予算設計に落とし込む方法

市場データを実務で使う最短の方法は、成長率をそのまま自社の予算配分の見直し基準に置き換えることです。国内市場が年率14%前後で伸び、ソーシャル広告が118.7%、動画広告が121.8%で伸びている環境で自社のSNS関連予算が前年横ばいであれば、相対的にシェアを落としていることになります。まずは自社の配分を市場の伸びと並べて点検してください。

予算設計への落とし込み手順

具体的には、次の順序で検討すると判断がぶれません。第一に、SNS関連支出のうちインフルエンサー施策が占める比率を出し、市場全体の構成比である7%と比べます。第二に、その比率を10%前後まで引き上げた場合に何本の投稿が確保できるかを、フォロワー単価2〜4円の目安から逆算します。第三に、得られた投稿を広告クリエイティブや営業資料へ二次利用する前提で、1本あたりの実質単価を割り戻します。二次利用を織り込むと、同じ支出でも費用対効果の見え方は大きく変わります。

測れる設計にしてから拡大する

市場が伸びているからといって、いきなり予算を増やすのは危険です。PLAN-Bの調査で最大の課題が効果測定であったとおり、測れない支出は社内で継続の承認を得られません。まずは5〜10名規模の小さなテストで、専用クーポンコードとUTMによる計測を仕込み、投稿単位のCPAとエンゲージメントを記録します。勝ちパターンが見えてから面へ広げるのが、市場の成長に乗りながらリスクを抑える現実的な進め方です。

プラットフォーム型が有利になる理由

案件数が増えるほど、選定・交渉・契約・支払い・レポートの管理コストが成果を圧迫します。市場データが示す小口多数化の流れは、裏を返せば管理負荷の増大そのものです。マッチングプラットフォームを使えば、条件検索から依頼・契約・支払いまでを一元化でき、10名でも30名でも運用が破綻しにくくなります。初期費用がかからず成果報酬で始められる形であれば、テスト段階から本格運用まで同じ仕組みのまま拡張できます。

まとめ

インフルエンサーマーケティングの市場規模は、国内860億円から2029年1,645億円へ、縦型ショート動画を含めれば2,281億円規模へ向かう成長市場です。ただし数字を眺めているだけでは何も変わりません。自社のSNS予算に占める比率を市場構成比と比べ、測れる形で小さく始め、二次利用まで含めて費用対効果を計算し、勝ちパターンを面へ広げる。この4ステップに落とし込んで初めて、市場データは実務の武器になります。2026年7月時点の数字を出発点に、自社の配分を一度見直してみてください。

本メディアは、審査制インフルエンサー30,000人のマッチングプラットフォーム『Bloom』(株式会社ハーマンドット)が運営しています。